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「EVE Online」のCCP Gamesが創立10周年記念パーティを開催。CEOが語るその歴史
2007/06/15 12:00
 2007年6月2日に,MMORPG「EVE Online」のデベロッパ/パブリッシャであるCCP Gamesの10年記念パーティが開催された。また,パーティの前日である6月1日には,20名ほどのプレス関係者を集め,EVE Onlineの説明会がアイスランドの首都,レイキャビク市にあるCCP本社で行われたので,その様子をお伝えしよう。

 説明会では,同社CEOであるHilmar Petursson(ヒルマル・ピエトルソン)氏により,EVE Onlineの歴史についてが語られた。
 1997年にCCP Gamesが設立され,プレプロダクションと呼ばれるパイロット版のようなものが制作された。その後,紆余曲折を経て2003年の5月に正式サービスが開始されたわけだが,このあたりは,2007年3月にサンフランシスコで開催されたGame Developers Conferenceの記事が詳しい。



CCP Games CEO Hilmar Petursson(ヒルマル・ピエトルソン)氏
 サービス開始から4年という月日が経ったEVE Onlineの会員数は,20万人以上。ピエトルソン氏は,MMORPGをテーマパーク型とプレイグラウンド型の二つに分け,テーマパーク型としては「EverQuest」「World of Warcraft」を挙げ,その特徴を以下のように説明した。

多くの遊びが用意されている
目的がはっきりしている
ストーリーが理解しやすい
遊びやすい

 これに対してプレイグラウンドは公園の砂場のようなゲームであり,

連続性がないので,先が読みづらい
より現実に近い経験ができる
社会的なつながり強く,友人を作りやすい

 といった特徴を挙げた。そして,EVE Onlineや「Ultima Online」をプレイグラウンド型であると説明し,ゴールが明確でない,全員が“ヒーロー”にはなれない,ストーリーがプレイヤーに伝わりづらい,といった欠点を指摘。一方,テーマパーク型の欠点として,リアルさの欠如,自由度の低さ,プレイヤーがゲームの展開を読みやすい点などを挙げた。また,プレイヤーの興味が新アイテムの獲得,新ダンジョンの攻略などに向いてしまうため,開発側は,常に新コンテンツを提供しなければならなくなるという問題点も挙げていた。



集まったプレス関係者の出身地は,アメリカ,イギリス,ドイツ,ノルウェー,ロシア,ポーランドなどさまざま。ちなみに,アジアからの参加は4Gamerのみだった
 EVE Onlineは,プレイグラウンド型の長所である社会性の強さに着目し,ゲームとソーシャルネットワークの間を狙ったという。そのために,コミュニティを分断しないようにし,古いプレイヤーと新規プレイヤーが交流を持つとメリットがあるようするといった工夫を行ってきたとのこと。
 また,こういったコミュニティは,構成人数が増えれば増えるほど,その中で行えることが増えていき,楽しみが広がっていく。テーマパーク型のゲームは,ある程度の数のプレイヤーは必要だが,一定数を超えると特定のアイテムをドロップする敵を奪い合うといった弊害がある。しかしプレイグラウンド型ではプレイヤー数の増加によるデメリットはほとんどないと説明していた。
 EVE Onlineは,一つのワールドで世界中の人が遊べるゲームであり,多いときは同時接続者が3万人を超えるときもあるという。そしてその中でのパワーバランスはプレイヤー達の行動によって変化し,発掘した鉱石の価格なども需要と供給のバランスによって決まっていく。プレイヤー数が少ないと単純にプレイ時間の長い人が有利になりがちだが,EVE Onlineはプレイヤー数が多いので,一人の影響力は小さくなり,そういったことは少ないとのことだ。
 また,1ワールド内にすべてのプレイヤーが接続しているため,出身国ごとにコミュニティが形成され(出身国とは違うコミュニティにも加われる),ゲーム内でロシア対アメリカ対フランスといった争いが繰り広げられているという。さらに,アップデートの情報だけでなく,EVE Onlineの中で起きたことなどが書かれた雑誌も会員向けに出版されており,現実とゲーム世界がシンクロした良い例といえる。

 最後にピエトルソン氏は「EVE Onlineは4周年を迎えたところだが,これは始まりに過ぎない。まだまだ成長していくので,まだEVE Onlineを体験していない人も,このおそろしく現実的な世界での生活を楽しんでもらいたい」とコメントし,プレゼンテーションを締めた。



Carl Christian Frederiksen(カール=クリスチャン・フレデリクセン)氏
 続いて,次期大型アップデート「Revelations II」について,ゲームデザイナーのCarl Christian Frederiksen(カール=クリスチャン・フレデリクセン)氏が説明した。

 Revelations IIでは,さまざまなアップデートが行われるが,中でもとくに大きな変更は,前哨基地の拡張性が増し,3段階のアップグレードを行えるようになること。一段階につき,五つのアップグレード方法が用意されているが,最初の選択によってのちのアップグレード方法が決定するという。先を見据えたアップグレードが必要になるようだ。
 また,Corporation(ギルドのようなもの)とAlliance(ギルド同士の同盟的なもの)の運営に関するツールにも修正が加えられ,Allianceのヒストリータブ,Shareholder reportの表示機能,Corporation内のHangerとStacking間で移動できる機能,範囲内にいる宇宙船のセンサーを使用不能にする「ECM」などが追加され,Stealth bomberがAOEBombを装備できるようになるという。さらに“Heat”というシステムとレベル5のAgent Missionも追加される。Heatが実装されることで,ダメージを受ける危険性はあるがモジュールの性能を一時的にアップさせられるとのこと。
 現在は各種バランス調整などを行っており,6月19日(現地時間)に実装される予定だ。


 日本人の読者として気になるのは,何度かお伝えしている,EVE Onlineの日本語クライアントの話だろう。担当者に聞いたところ,翻訳作業自体はほぼ終了しているとのこと。現在はゲーム内で使用される日本語として意味が通りやすくなるように修正したり,インタフェース内に収まりきらない文章の長さを調節したりといった,最終的な詰めの作業が行われている。8月の実装に向け着々と準備は進んでいるようだ。)

CCP社内の様子。欧米の会社らしく照明が若干暗いという以外は,いたって普通だ。元々魚の加工工場だった建物の2階と3階がオフィスとして利用されている


0:00AMに向けカウントダウンが行われた。CCPには若い社員が多く,年に数回こういった感じのパーティが行われているという
 創立10周年のパーティは,レイキャビク市内にあるNASAというクラブで行われた。日本の会社が行うものとはかなり趣が異なり,大音量の中で,踊りまくり,飲みまくりといった感じのパーティだ。大きな声を出して隣の人と話をしなければならないので,けっこう疲れたが(そしてのどが渇く),偉い人の毒にも薬にもならない“お言葉”はなく,愛想笑いを浮かべる必要がなかったのは嬉しい。
 会場では,EVE Onlineに登場するキャラクターのような格好をした人達が給仕をしており,ゲーム内で有名なドリンクQuafe(ウォッカベースのカクテルだった)が用意されていたり,EVE Onlineのムービーが常に流れていたりと,らしさあふれるパーティだった。11:00PMからは関係者以外でも招待状を持っていれば入場できるようになっており,会社の創立記念パーティに関係者以外の人が大勢いたというのも凄いが,3:00AMを過ぎてもCEO,CFOといった会社の重役が会場内を歩き回っていたことにも驚いた。



 CCPは以前お伝えしたとおり,テーブルトークRPG「Vampire: The Masquerade」などで知られるWhite Wolf Publishingと合併しており,White Wolf Publishingが権利を所有しているRPGのオンラインゲーム化を予定している。このプロジェクトに関しては未定だが,White Wolfのノウハウを生かし,EVE Onlineのパッケージ販売も予定しているという。同梱されるものなど詳細は決まっていないが,販売予定地域には日本も含まれているので,近い将来,店頭でEVE Onlineのパッケージを見かけるという日がくるかもしれない。
 ピエトルソン氏によると,EVE Onlineはプレイヤー同士のつながりがとくに強く,サービス開始から4年という月日が経った現在も,会員数は増え続けているという。EVE Onlineは,同じSF MMORPGである「Earth & Beyond」「Star Wars Galaxies」が苦戦を強いられているなかで(Earth and Beyondのサービスは終了している),着実に成長している。日本からは遠く離れたアイスランドにある会社がサービスしているゲームではあるが,近いうちに日本語化も行われることなどを考えると,EVE OnlineとCCP Gamesの動きには注目しておきたいところだ。(noguchi)


EVE Online
■開発元:CCP Games
■発売元:CCP Games
■発売日:2003/05/06
■価格:19.95ドル
→公式サイトは「こちら」
EVE Online(Macintosh)
■開発元:CCP Games
■発売元:CCP Games
■発売日:2007/08/15
■価格:N/A
→公式サイトは「こちら」

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http://www.4gamer.net/news/history/2007.06/20070615120001detail.html