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ELEVEN-UPとコーエーに聞く,「真・三國無双BB」のISP開放&今後の展望
2007/05/15 17:15
 ELEVEN-UPとコーエーが運営するオンラインアクションゲーム「真・三國無双BB」(以下,無双BB)が,いよいよ明日(5月16日)から,Yahoo! BBとSoftBank ブロードバンド サービスのユーザーのみというISP制限を撤廃し,さらに“月額基本料金+従量課金”という従来の料金体系から,完全な従量課金制へと移行する。
 オンラインゲーム史を振り返ってもなかなか珍しい試みを経て,開発・運営陣がどのような経験を得,そしてどのような判断のもとに今回のサービス変更へと踏み切ったのか。このあたりについて,ELEVEN-UP「真・三國無双BB」運営プロデューサー 栗原 哲氏と,コーエー「真・三國無双BB」開発プロデューサー 藤重 和博氏に,話を聞かせてもらった。



■ISP限定では,ゲーム外のコミュニティが広がらない

左から:ELEVEN-UP 栗原 哲氏,コーエー 藤重 和博氏
4Gamer:
 ISP開放の直前ということで忙しい時期だと思いますが,本日はよろしくお願いします。

ELEVEN-UP 栗原 哲氏(以下,栗原氏):
 こちらこそ,よろしくお願いします。いま現場は,戦場のようになっていますよ。

コーエー 藤重 和博氏(以下,藤重氏):
 私以外のスタッフは,本当に忙しそうにしてます。今ここにいるのが申し訳ないような……。

4Gamer:
 ちょうど一週間前ですしね。では早速ですが,ISP制限の解除について,その経緯から改めて教えてください。

栗原氏:
 無双BBはご存じのとおり,爽快感を重視したアクションゲームです。そしてISP制限は,Yahoo! BB(以下,Y!BB)と,SoftBankブロードバンド サービスという,同一ネットワークの下でサービスを行うことで,一定のレイテンシーを保障しようというところから始まりました。
 その後,2006年11月に正式サービスを開始してからも,引き続きコーエーさんと技術検証を行ってきました。その結果,現在の一般的なネットワーク環境ならば,とくにISPを制限しなくても,一定のサービス品質を確保できると判断したのです。また,ビジネス面から見ても,ISP制限を外すメリットが大きいと考えました。

4Gamer:
 なるほど。ISP制限の解除を先に提案したのは,ELEVEN-UP側ということで考えてよいでしょうか?

栗原氏:
 そうですね。ソフトバンクBB(以下,SBB)と事前に交渉を行って,ある程度感触を掴んでから,コーエーさんに提案したといった形です。

4Gamer:
 確かにISP制限の解除となると,SBB側との交渉が最重要課題になりますしね。ところで今回のISP開放は,無双BBのサービスイン当初からあった話なんですか?

栗原氏:
 いえ,当初はそういった予定はなかったですね。

4Gamer:
 ということは,ビジネス立ち上げ当初は,Y!BB会員のみで成立するという読みがあったわけですね。Y!BB会員の中で,無双BBをプレイするようなゲーマー率はどれくらいだと見ていましたか?

栗原氏:
 5〜10%くらいだろうと考えていましたが,ビジネスモデルの計算に組み込んで,具体的に予想していたというわけではないです。ただ,無双シリーズのプレイヤー層とY!BBのユーザー層とは,そんなに外れていないという思いはありました。
 とはいえ,PCの推奨スペックについては,比較的ライトユーザーが多いY!BB会員が持っているものよりは,若干高かったかなと思います。ユーザーの属性,PCスペック,回線品質という,三つのラインがビシッと合っていたかというと,多分そうは言えないでしょうね。とくにPCスペックのところが,多くのY!BB会員にとって厳しかった気がします。

4Gamer:
 なるほど。Y!BB会員が当時約500万人だとして,その5%だと25万人程度のプレイヤー数を見込んでいたわけですね。

藤重氏:
 ええ。プレイステーション2のハードが当時約1800万台くらい出ている中で,無双シリーズの売り上げ本数が,一作品についてミリオンを出していることを考えると,5%というのは決して無理な数字ではないかな,と。中古市場まで視野に入れると,売り上げ本数は約2倍あるといわれているので,十分カバーできると考えました。



4Gamer:
 その当時,Y!BBからはプレイヤー数を予測する参考になるような数字は提示されていたんですか?

栗原氏:
 回線の何パーセントがレイテンシー何秒,といった数字は技術チームから聞きましたが,Y!BB会員数に関する具体的な資料はありませんでした。

4Gamer:
 そうだったんですね。そういった中で正式サービスを開始して約半年経ちますが,振り返ってみてどんな印象ですか?

栗原氏:
 遊ばれ方を見ても,運用面から見ても,MMORPGとは全然違うなあと感じますね。GMコールの内容や,メールで寄せられる要望を見ても,それは感じます。

4Gamer:
 MMORPGでは見たことのないような要望,ですか……。具体的にはどういったプレイヤー層なんでしょう?

栗原氏:
 MMORPGには,なぜか分かりませんが「ゲーム内の価値観等がゲーム外の大規模掲示板などでの議論に支配される」という雰囲気があるじゃないですか。それと比較すると,無双BBのプレイヤーは,上品というか良識的な方が多い感じはあります。

4Gamer:
 それは裏を返せば,Y!BB会員の中で初めてオンラインゲームに興味を持ってくれたような人がメインになったがゆえ,ということでしょうか。

栗原氏:
 そうでしょうね。

4Gamer:
 正しい位置を掘っていけば,まだまだ潜在的なプレイヤー層が眠っているといえるのかもしれませんね。ところで,無双BBの現在の会員ID数はどれくらいなんですか?

栗原氏:
 ごめんなさい。会員ID数は非公開です。

4Gamer:
 では,当初の予測値と比べてみてどうでしたか? 上か下か,だけでも。

栗原氏:
 当初の予定から比べると少ないです。

4Gamer:
 予測を下回ってしまった原因は,どこだと思われますか?

栗原氏:
 一つは,先ほどもお話ししたように,三つの要素がガッチリと合わなかったことです。それともう一つ,半年間運営を続けていて感じたことは,ゲーム外のコミュニティの発展がうまくいかなかったということです。
 というのも,コミュニティの連鎖の中のどこかにY!BB会員以外の人が入ってしまうと,そこで途切れてしまうんですね。ゲーム内では,当然Y!BBの会員しかいませんから,目立ったトラブルもなくコミュニティもうまく機能するんですが。

4Gamer:
 うーん,ISPを限定していることで,ゲーム外のコミュニティも割とうまく回りそうにも思えたのですが。

栗原氏:
 我々も最初はそう思って,Yahoo! のSNSである「Yahoo! Days」でコミュニティを作ったりもしたんですが,なかなか思うようにいかなかったですね。「友達の家はフレッツ回線で……」という人がいたら,そこで終わってしまうんです。

4Gamer:
 そこがISP限定の弱点ということですね。

栗原氏:
 ええ。オンライン上での付き合いって,接点が切れると空中分解しやすいですからね。

4Gamer:
 ではコミュニティに関しては,ISP開放に向けて新しい施策はあるんですか?

栗原氏:
 現時点では,これまでの制限が外れることによって新しい人達にどんどん参加してもらって,健全なコミュニティが作られていくことに期待しています

4Gamer:
 これまでは,興味はあるけどプレイできなかった,という人が多いでしょうから,期待が持てそうですね。では逆に,そういった「クローズドながらも良いコミュニティ」が出来ていた現状で,ISP開放後にいわゆる“場慣れした人達”が大量に入ってくることに対して,危惧はありますか?

栗原氏:
 危惧はしています。ただ,無双BBの場合,ロビーは勢力ごとに分かれていますし,我々がコントロールをするべく気を配ってるエリアが,MMORPGと比べて圧倒的に少ないので,運営手法でカバーできるだろうと思っています。



■無双BBのコンセプトを壊さずに,新規プレイヤーに対するフォローも

4Gamer:
 しかし無双シリーズというブランドが持つ影響力を考えると,ISP開放後は無双BBで初めてオンラインゲームをプレイするという人も入ってくるのではと思いますが,色々な意味で何らかのフォローが必要になりそうですね。

栗原氏:
 新規のプレイヤーさんに対しては,最初のとっつきが肝心だと思っています。これについて,まずは5月16日に「練兵官(れんぺいかん)」という新しい仕様が実装されます。これは簡単にいうと,チュートリアルの充実バージョンです。「義」という経験値のようなものが規定値に達するまで,無料で遊べるようになります。

藤重氏:
 それともう一つ,ゲーム内のコミュニティを強化する要素を導入しようと思っています。元々,無双BBのプレイヤーの皆さんは,アクションゲームが好きな方と,無双武将や世界観が好きな方の両方がいますが,いまはどちらかというと,世界観の部分をもっと強化していかなければと思っているところです。
 そのとっかかりとして,5月16日のアップデート後は,自分が仕えた武将によって攻撃力や防御力が上がったりといった,特徴を出せるようになります。そのほかにも,長く仕えているといいことがあったりなど,それぞれの無双武将に対して,もっと親しみを持てる仕様を今後も追加していこうと思っています。

4Gamer:
 そうなると,同じ武将に仕えることで,プレイヤー同士のつながりも強くなりそうですね。今後はどれくらいのペースでアップデートされていく予定になっているんですか?

藤重氏:
 だいたい,3か月に一回のスパンで大型アップデートを行っていく予定です。5月16日のアップデートとは別の機会になりますが,アクションの核となる武器についても,プレイヤーの皆さんがパラメータをカスタマイズできる要素を検討しています。

4Gamer:
 武器のカスタマイズは面白そうな要素ですね。そのほかにも,プレイヤーとしては無双武将の追加も気になるところだと思いますが……。

藤重氏:
 無双武将の追加は,新しいシナリオを増やしたときに行う予定です。新しいシナリオは,すでに実装されているものとは年代が違うので,いまはいない武将も登場します。

4Gamer:
 そのシナリオアップデートは,いつ頃になりそうですか?

藤重氏:
 そこはゲーム内の状況や,プレイヤーの皆さんからのご要望などを見ながらタイミングを計ろうかと。それによって例えば,いまの「反董卓連合」シナリオをもう一つ作ってもいいですし,違うシナリオを求める声が多ければ,そちらを実装しようかなと考えています。大型アップデートのタイミングにこだわる必要もないと思っていますので,ご要望に合わせてフレキシブルに動くつもりです。

4Gamer:
 シナリオの追加は,臨機応変に行っていくということですね。では,より無双シリーズらしく,対戦時の人数が増えたりはしないんでしょうか?


藤重氏:
 みなさん言われます(笑)。しかし“一騎当千の爽快感”が無双シリーズのコンセプトとなっているので,それができなければ無双じゃなくなってしまいます。仮に100対100になって自分が斬られる側にまわったら,爽快なプレイがしにくくなってしまう。それは“無双”じゃないですよね? プレイヤーはすべて,自分が指揮官の立場で軍勢をつれて参戦しているので,それらとインフラのバランスを考えたら,4対4が妥当だと判断しました。
 もし,8対8や16対16が実現できるうまい方法が見つかれば,また違うゲーム性を提供できるでしょうし,いつかやってみたいと思っています。

栗原氏:
 8対8や16対16って,プレイを始めたばかりの頃の意見としては多いのですが,やり込んでいるプレイヤーさんからはあまり聞こえてこないんです。50対50とか聞くと,単純に数字の面で見れば凄そうに見えますし,運営する側の立場としてコーエーさんに相談したこともあります。そのときもいまのような話をして,4対4のバランスがちょうどいい,と言われて確かに納得しました。ゲームに慣れている人からの要望で,人数を増やしてくれといったものは意外とないんですよね。

4Gamer:
 なるほど……言われてみればそうですね。やみくもに多人数にするのではなく,まずはそれに見合ったゲーム性を実現するのが先ということですね。単純に人数を増やせば面白くなるというものではなく,「オンラインゲーム」である前に“無双”である,と。

栗原氏:
 そうですね。それとたぶん,プレイヤーキャラ(PC)とあまり戦いたくない,という方もいるのではないでしょうか。PCに会うと避ける方もいますが,そういう方達はきっとザコを気兼ねなく斬りたいのではないでしょうか。

4Gamer:
 確かにぜんぶPCだと,FPSとあまり変わらなくなってしまう気もしますね。周りがみんな強くて瞬殺されておしまい,みたいなことにもなりかねません。

藤重氏:
 無双シリーズがプレイヤーの皆さんに受け入れられた理由は,簡単な操作で多彩なアクションができ,爽快なプレイが体験していただけたことにあると思っています。
 全盛時の格闘ゲームは,続編が出るにつれてどんどん複雑な操作性になって,マニア化していった部分があると思うのですが,難しいことを考えなくても楽しめるからこそ,無双シリーズはヒットしただと思います。そこをしっかり保たないと,無双シリーズとは呼べなくなってしまいます。

4Gamer:
 それこそが無双シリーズの核ですからね。

藤重氏:
 ええ。ただ,そうはいっても,多人数でも違った面白さを見つけ出せるような気もします。それで爽快なゲームを作れたら,無双BBもまた次のステップに上がれるはずなので,そこは今後も追求していきます。



■プレイヤーにとっての理想的な料金体系とは?

4Gamer:
 ところで,ISP制限が外れることによって,インターネットカフェでの展開はどうなるんですか?

栗原氏:
 もちろん続けますよ。無双BBがY!BB独占だった頃は,ほかのISPのプレイヤーさんが遊べる場所はインターネットカフェだけでした。しかし今後はそうでなくなるので,これまでは通常の二倍近かった無双軍檄の値段も,通常の価格に値下げします。
 オープンな場所でプレイしてもらうと楽しさもアップするし,ゲームに触れてもらう機会も増えます。それに,友達同士で並んでプレイすると面白いんですよね。そういった,ちょっと違う遊び方を提案するのは,今後もアリだと思います。

4Gamer:
 確かに,わいわいやるのは楽しいですよね。あまり殺気立たずに(笑)。
 ところで,無双軍檄といえば,今のプレイヤーさん一人当たりの月額の利用料金はどれくらいなんですか?

栗原氏:
 AOGCのときは月額2500円くらいでしたが,あまり変わってないですね。数十円といったレベルで微妙に上がっている気もしますが,誤差範囲だと思います。

4Gamer:
 AOGCでのアンケートの母数はどれくらいだったんですか?

栗原氏:
 あのときのアンケートでは,数千だったと思います。

4Gamer:
 ではあまり偏りはなさそうですね。月額2500円という数値は,運営側から見ていかがでしょう。

栗原氏:
 数字的には定額課金以上,アイテム課金未満といったところですよね。

藤重氏:
 たぶん定額よりは高くなるだろうな,とは思っていましたが,大体予想通りの金額です。

4Gamer:
 では,ISP制限を外した後の目標値はどうでしょうか?

栗原氏:
 とくに目標値は設定していないのですが,人が増えることでマッチングの待ち時間が短くなる分,若干上がるのではと予測しています。

4Gamer:
 戦闘の回数が増えるわけですからね。ISP開放という決断にあたり,おそらく課金の手法についてELEVEN-UPとコーエーの間で議題に上ったと思うのですが,あえてまだ従量課金を採用している理由というのは,どこにあるのでしょうか?

藤重氏:
 もちろん,さまざまな検討を行いましたが,無双BBをプレイする人にとって,これが最適な課金スタイルであるというのが,両社の間で出された結論です。

栗原氏:
 無双BBの遊ばれ方を見ると,カジュアルゲームに近いのではないかと感じます。となると,カジュアルゲームで月額課金スタイルというのは難しいんじゃないかなと。そうかといって,「月額基本料金無料+アイテム課金」というスタイルも,無双BBの場合,お金払った人がその分だけ強くなるというのでは問題があります。

藤重氏:
 ご存じのように,当社のほかのタイトルは月額課金スタイルですし,社内でも「なんで定額にしないの?」という意見も多く見られました。しかし,無双BBはこれまで従量課金として進めてきたわけで,ビジネスモデルをドラスティックに変えてしまうと,支払ったお金に見合ったゲームサービスという意味でのコンテンツサービスとして,おかしくなってしまいます。したがって,今回のISP開放というタイミングでは,無理に変更する必要はないだろうと考えました。

4Gamer:
 それぞれのタイトルが持つゲームサービスと,プレイヤーの遊び方を合わせて考えることが,料金プランを決定するときに重要であると。ちなみに,プレイヤーは,一日に何時間くらい――というか,何バトルくらい遊ぶのでしょうか?

栗原氏:
 一日に約5〜6回ではないでしょうか。大体,平均で月に90バトルなんですよ。そこから考えると,週に四日くらいプレイして,一日5〜6回というのが平均的なプレイスタイルだと思います。

4Gamer:
 この課金システムについて,プレイヤーからの評判はどうなんでしょうか?

藤重氏:
 賛否両論ですね。最初のころはとくに,高いというプレイヤーの方が多かったように見えます。ただ,実際に見てみると,プレイ料金の平均は月額で2000円強ですし,アイテム課金制の一般的なMMORPGよりはよっぽど安いと思います。そういう意味では,いまでは極端に高いと感じる人も少なくなったのではないでしょうか。

栗原氏:
 最初は,「一日4時間で月に30日プレイしたら2万円だ。だから,無双BBは月額2万円のゲームだ」と,言われていました。でも,このゲームを毎日、一日4時間プレイするのは結構つらいですよね(笑)。

4Gamer:
 以前お話ししたときも,確かイベントのバトルが18分くらいになっちゃって。一バトル18分を遊び続けるのはつらいですよね,って話した気がします。毎日4時間もプレイしたら,きっと親指の皮がむけちゃいますよ(笑)。

藤重氏:
 最初に社内で企画を出したときも,「10分とか15分で決着がつくのは短くないか?」という声はありました。でも,無双BBはシナリオを追っていくゲームとは違って,対戦を楽しむゲームですので,30分間もアクションゲームはプレイし続けられないよと説明すると、納得してもらえました。多分,一度プレイしていただければ,皆さんに分かっていただけると思います。

栗原氏:
 このゲームってキャラクターのレベルがないので,週末しか遊べないような人でも,置いてけぼりにならないわけですよ。仮に一緒に遊んでいた人が,出張で10日間ログインできなくても,一緒にダンジョンに行けなくなってしまう,ということはありません。
 また,プレイしなければ課金も発生しません。「今月は10日間遊べなかったけど,その分のお金は必要ないし,友達に置いてけぼりにされていないな」というのが,無双BBのゲームデザインであることを,今ではプレイヤーさんも理解してくれているように思えます。

4Gamer:
 確かにMMORPGで10日間というと,たいていの作品では明確にレベル差が出てしまいますよね。でも,無双BBではそんな心配は必要ないと。
 頭ではよく理解できるんですが,このゲームのメインコンテンツであるバトルに,毎回お金がかかるというのは,個人的にどうしても納得しきれない部分も残ってしまいます。言い方を変えれば,お金を払わなかったときに,このゲームそのものを何も楽しめないわけですよね。

栗原氏:
 それについては,先ほどお話した「練兵官」の導入で,ある程度解消します。そこで面白さが分かってもらえたら,課金して継続的に遊んでください,というのが私達の考えですね。

4Gamer:
 なるほど。例えば,この課金部分を一日遊び放題の「1Dayチケット」や,三日間無制限に遊べる「3Daysチケット」といったような,少し違った見せ方で広げられれば,プレイヤーさん選択の幅が広がる気がします。

栗原氏:
 それと同じ要望はプレイヤーさんからもいただいています。戦闘がメインのゲームで,戦闘に課金するのはどうなんだろう,という考えはいつもあります。ただ,先ほど藤重さんもおっしゃっていたように,ゲームシステムとの相性なども考えると,現状ではこれが最適だと思っています。

藤重氏:
 課金の形式については,今後も検討すべきだと思っていますので,プレイヤーの皆さんからの要望を汲み上げて,ELEVEN-UPさんとアイデアを練ったうえで検討していきたいです。



■価格メリットとサービス品質の両立が,業界全体の課題

4Gamer:
 月額課金制かアイテム課金制か,という事実上ほぼ二択の選択肢の中で,いまやオンラインゲームの収益の仕組みは一つの分岐点に近づいています。こうした現状で,無双BBの従量課金制という手法は斬新ですよね。誰もが考えてはいたけど,誰もやらなかった。

栗原氏:
 ほかの娯楽なら,従量課金は珍しくもなんともないですよね。例えばアーケードゲームとか。でも,オンラインゲームのプレイヤーさんは,プレイ料金を無料にしてほしいといった要望を出してきます。確かに,それが現在主流の課金スタイルであると頭では分かっていても,実際にそういった生の声が来ると,無双BBのゲーム性と課金スタイルの関連性を,プレイヤーさんに納得してもらうのは,なかなか難しいと考えさせられます。

4Gamer:
 アイテム課金制も,最初は非難轟々でしたしね。

栗原氏:
 そうなんです。でも,無双BBのプレイヤーさんの客単価を見ていると,お金の使われ方がとても健全だと思いますね。無双BBでも,一番多く使ってる人で,月額数万円という人はいますが,アイテム課金制のゲームだと,数十万円も使っている人もいますから。このゲームの場合は,理論上そんな金額になることはありません。

4Gamer:
 客単価の分布をグラフにすると,なだらかな曲線を描いているということですか。

栗原氏:
 ええ,そういう意味では理想的だし,収益予測もつけやすいです。

4Gamer:
 アイテム課金のビジネスモデルって,どうやって収益の「絵」を描いているのかといつも思うのですが,これなら確かに予測はつけやすい気がします。

栗原氏:
 先に数字を決定しておいて,それに合わせるように課金アイテムを用意している……のかもしれないですね(笑)。

4Gamer:
 そういったケースも,中にはあるのかもしれませんねえ。では,新しい試みとしてのビジネスモデルを行っている二社にお伺いしたいのですが,オンラインゲーム全体の話として,ビジネスの手法というか収益構造は,今後どのような形になっていくと思いますか?

栗原氏:
 月額課金制は,今後はかなり少なくなると思いますね。それが許されるのは,本当に年に一本出るか出ないかくらいのビッグタイトルだけではないでしょうか。日本で月額課金制できちんと成り立っているタイトルも最近では少ないですよね。コーエーさんの「大航海時代 Online」は,その中でも新しいタイトルだと思いますが,それでも結構前にリリースされたタイトルです。

4Gamer:
 大航海時代 Onlineも,もう正式サービス開始から二年になりますよね。古くからのゲーマーの立場から見ると,なぜ月額課金制が成り立たなくなってしまったのか,素直に疑問に思います。

栗原氏:
 たぶん,オンラインゲームにかかわらず,インターネットコンテンツは無料というのが常識みたいになってしまったんじゃないでしょうか。そういった人が増えてきて,その考えが多数派になってしまったんだと思います。

4Gamer:
 なるほど。そのあたりは我々も痛感しています……。オンラインゲームはもはや,「ゲーム」の一つではなく「インターネットコンテンツ」の一つである,という考え方なんですね。

栗原氏:
 ええ。アーケードゲームが従量制であることや,パッケージゲームに数千円の投資をすることには抵抗を感じなくても,それがオンラインゲームになったとき,無料が常識という考えになってしまう。そうなると,“ゲーム”という部分ではなく,“オンライン”という言葉に,“無料”という属性をくっつけて捉えているんでしょうね。

4Gamer:
 月額課金制タイトルの運営代表のコーエーさんとしては,いまのような考え方はどう思われますか?

藤重氏:
 メーカーの立場として言えるのは,課金もサービスの一部として,プレイヤーさんにいかに遊びやすい環境を作るか,を考える必要があるということです。プレイステーション2で「信長の野望 Online」のサービスを始めたときには,パッケージ代を払っているのに,さらに月額料金も取られるのか,と言われたくらいでした。
 でも次第に定着していって,大航海時代 Onlineを開始したときには,違和感がなくなっていました。プレイヤーさんの中には,「1500円で一日中いつでも遊べる,こんな娯楽はほかにない」とおっしゃる方もいらっしゃいます。

4Gamer:
 月額1500円を日割りで考えるとすると,50円で一日中遊べる娯楽なんてほかにありませんからね。

藤重氏:
 ええ。でも市場全体を見ると,その考えが破綻してきているな,というのは感じます。一日50円の収益で,それをどうやってビジネスとして成り立たせるのかを考えると,後発のタイトルが月額課金制で勝負しづらい状況にあるのは確かです。
 では,客単価を上げる方向性だけを考えればいいのかというと,そうではありません。例えばパチンコ業界の場合,CR機などで客単価を上げた結果,コアな人しか残らなくなってしまい,市場が一時縮小した時期があったと聞いています。
 オンラインゲームがこれからどんどん成長していって,競争や淘汰の中で勝ちを収めるためには,価格メリットも出せて,コンテンツもしっかりしていることが求められます。それこそ電話やインターネットのような,生活必需品に近い質のサービスと言えるくらいにならないと,市場自体が小さくなってしまうでしょう。そうならないように,業界全体で考えていく必要があると感じています。

4Gamer:
 生活必需品に近いサービス品質に高めたうえで,価格メリットも出す……。かなり難しい課題ですが,確かに業界全体で真剣に考えていく必要があることなのでしょう。では最後に,このISP開放を機に,無双BBをどういった作品に育てていきたいのか,コメントをお願いします。

栗原氏:
 これまでISP限定サービスで,すべての人が楽しめる環境ではなかったですが,これからは誰もが気軽に遊べるようになるので,今後はゲーム内容に関しても,プレイヤー数に関しても,無双BBをコンシューマ版の無双シリーズのようなビッグタイトルにしていきたいですね。

藤重氏:
 無双シリーズは当社の中でも大きなシェアを持つタイトルですので,無双BBでより多くの人をオンラインゲームの市場に呼び込めるようにしていきたいです。信長の野望 Onlineや,大航海時代 Onlineとは違った機軸で,無双BBが持つカジュアルな部分を軸に育て上げていきたいと思います。無双BBは,そういったコンテンツの柱にしていきたいです。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。



 読者のみなさんも想像がついていると思うが,無双BBは,ISP限定の接続という物理的/環境的なハードルと,月額+従量課金制という独特の料金プランによるハードルの二つによって,やや苦戦していたことは否めない。
 しかし前者のハードルは,ISP制限の撤廃によって取り除かれ,後者も月額課金部分(実質無料ではあったが)の廃止によって,かなり低減されるだろう。料金面では,それでもまだ従量課金制であるという最後のハードルが残されているが,今回あらためて話を聞かせてもらった限りでは,確かにこの形こそが無双BBにとっての最適な料金プランであるように感じられた。今後の課題は,この心理的なハードルを,どのようなうまい手法で見せ方を変え,プレイヤーに提示できるかにあるだろう。
 こうして,いよいよ5月16日に再スタートを切る無双BBをあらためて見てみると,強力なタイトルであることを再認識する。誰でも従量課金のみで気軽にプレイでき,さらに無料で遊べるチュートリアル機能も充実するため,コンシューマ機で無双シリーズに親しんできた多くのファンが,本作をプレイしてみたいと感じるのではないだろうか。ISP開放&完全従量課金制への移行によって,本作がどこまでプレイヤー数を伸ばせるのか。今後の動向が楽しみだ。(Interview by Kazuhisa&ginger / Photo by kiki)

「サービス開放」ページ
http://www.musou-bb.jp/announce/070425/01/index.html

(2007年5月9日収録)


真・三國無双BB
■開発元:コーエー
■発売元:ELEVEN-UP
■発売日:2006/11/01
■価格:従量課金制
→公式サイトは「こちら」
真・三國無双BB スターターパック
■開発元:コーエー
■発売元:ELEVEN-UP
■発売日:2006/09/25
■価格:1995円(税込)
→公式サイトは「こちら」

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http://www.4gamer.net/news/history/2007.05/20070515171523detail.html