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「モノ」と友達になれるMMORPG,「アミーゴ・アミーガ」の魅力を開発者に聞いてみた
2006/12/26 23:03
 「アミーゴ・アミーガ」は,現在チュンソフトが開発中のMMORPGだ。12月13日までトライアルテスト(クローズドβテスト)が行われており,現在はそのとき得られたフィードバックを元に,来るオープンサービスに向けて仕様変更やバランス調整を行っている段階である。ちなみにビジネスモデルは「基本料金無料+アイテム課金」のスタイルで,正式サービス後6か月間は,ハンゲームによる独占サービスが予定されている。

 アミーゴ・アミーガの情報は今のところ,メディアにはあまり露出されていない。またトライアルテスト期間も終わってしまったため,相当マメにチェックしている人でないと,その存在を今まで見過ごしていたかもしれない。そこで今回は,ゲームズアリーナで開発に携わっている山口尚氏に,本作について話を直接伺ってみた。
 本作に関しては,12月13日に掲載したプレビュー記事があるので,今回はプレビューでは触れられていない部分を中心に質問してみた。ぜひそちらと併せてチェックしてほしい。

注:現在開発中のため,公開時には仕様が変更される可能性があります

■椅子,机,モップ,さらには家までもが友達にできるユニークなMMORPG

ゲームズアリーナのネットワークゲーム開発部部長,山口尚氏
 「アミーゴ・アミーガ」の最大の特徴は,なんといっても,その世界に存在する大半の「物体」に「命が宿っている」ということ。さらにキャラクターは,冒険中に「キラキラ」というリソースを集めることで,これらの物体を仲間にし,共に冒険できるのだ。タイトル名にもある「アミーゴ」とは,これら命の宿った「物」を指しており,例えば「椅子」や「机」などを主人公の仲間にできるのだから驚きである。

 今まで聞いたことがないシステムなのでピンと来ないという人は,とりあえず画面写真を見てもらいたい。一見普通の風景に思えても,目を凝らすと各オブジェクトには目鼻らしきものが付いているのが分かるだろう。アミーゴ達の(良い意味で)ヘンテコな表情がなんとも印象的で,これが独特な世界をさらに独特なものにしている。
 なおアミーゴのグラフィックスデザインを担当したのは,「ストラガーデン」と同じ人とのこと。ストラガーデンとは大分雰囲気が異なるが,斬新で,それでいて奇妙な愛着を感じさせられる,実にユニークなデザインだ。

 アミーゴの種類は,最終的には500〜600に達するとのことで,これはゲーム中に出てくるほとんどのオブジェクトといっても過言ではなさそうだ。さらに面白いのは,各プレイヤーの連れているアミーゴが,フィールド上にちゃんと表示されることだ。プレイヤーキャラがモップや脚立といったアミーゴを連れて,ぞろぞろ歩いているというのは,実に微笑ましい光景ではないか。



 山口氏はプレイを交えながらさまざまなアミーゴを見せてくれたが,「実は開発中のアミーゴには,こんなのもあるんですよ」と言った次の瞬間,筆者は思わず吹き出してしまった。まだアイデアレベルとのことで,具体的な描写は避けるが,なんとそのアミーゴは画面内のほとんどを占めるほどの巨大なアミーゴなのだ。
 ここで「画面が見にくいんじゃないですか?」というツッコミは,野暮といえよう(ゲームにならないくらい見にくくなるのは確かだが)。見た目が楽しければそれでいい,という開き直りっぷりが実に痛快である。このアミーゴはやはり相当なインパクトを与えており,本作のプロデューサーでもあるチュンソフトの社長,中村光一氏も,「このアミーゴは動かさなきゃダメ!(笑)」とイチオシとのことだ。

 トライアルテストでは45種類程度のアミーゴが実装されていて,開発チーム内では「モップ」のアミーゴの人気が高かった。しかし実際にトライアルテストが始まってみると,プレイヤーの間で受けが良かったのは「椅子」で,テスト終盤になって一気に増えてきたという。いったいなぜかというと,椅子はほかのアミーゴと異なり,その上にキャラクターが「座る」ことで直接関わることができたのだ。別に座ったところで体力の回復速度が上がるなどといったメリットはないのだが,その見た目が面白いというだけの理由で,椅子が出るまでキャラクターを作り直したという人も大勢いたそうだ。

 「椅子に座る」というモーションはゲーム内に元から実装されており,それをアミーゴに応用させただけである。したがってアミーゴの中ではイレギュラーといえるケースなのだが,椅子に座ったキャラクター達がのんびりと雑談する展開は,まさしく本作ならではといえよう。山口氏は「全部のアミーゴとなると開発工数の面から現実的ではないですが,せめて序盤に登場するアミーゴについては,キャラクターとの絡みを検討したいですね」と語っていた。確かに考えてみれば,感情表現(エモート)コマンドを500〜600種類追加するのと同じ作業量なので大変かとは思うが,プレイヤーも注目している部分なので,ぜひとも期待したいところだ。

 アミーゴはプレイヤーにとっての「友達」すなわち対等な関係であり,ペットのような主従関係とは異なっている。こういった事情もあることから,各アミーゴ間においてスキルや能力面に極端な差は設けず,自分が気に入ったアミーゴとずっと一緒にいられるバランスになっているという。例えば,小学校の頃に使っていた筆箱などを,大人になってもなかなか捨てられないという人もいるだろう。あのような目に見えない“愛着”をゲーム上で表現したいのだ,と山口氏は熱心に語っていた。



■連携システム「コラボ」などもあるが,基本的にはライトゲーマー寄り

 続いて,MMORPGとしてのゲームシステム面を見ていこう。パッと目ではトゥーンレンダリングが特徴的だが,基本的にはオーソドックスな作りといってよい。それらの中でのポイントとしては,グループを編成した場合,リーダー役のキャラクターが先頭に立ち,ほかのメンバーはその後ろにぞろぞろと自動で付いていく。そしてモンスターとの戦闘方法はエンカウント形式で,順番が回ってきたキャラクターからアクションを起こすという,半ターン制による進行だ。このあたりのイメージとしては,「クロスゲート」や「ディプスファンタジア」に比較的近い。

 プレイヤーが選べる職業は「ファイター」「レンジャー」「マジシャン」の3種類がある。各職業は得意とする武具やステータスが異なるほか,レベルアップと共にさまざまなスキルを習得していく。そして,自分以外のプレイヤーやアミーゴ達と「コラボ」という連携を行えることが,戦闘時における大きな特徴だ。もちろん,単独で攻撃するよりもコラボを行ったほうが強力なのは,いうまでもない。



 トライアルテスト時点,というか序盤では,この「コラボ」に地味な印象を受けた人も中にはいたかもしれない。しかしコラボは大いなる可能性を秘めたシステムであり,スキルなどが増えていくと戦闘がもっと面白くなりそうな雰囲気だ。

 コラボの将来的な広がりについて詳しく聞いてみたところ,例えば回復系のスキルに範囲攻撃を組み合わせることで,味方の範囲回復ができるといった効果を得られる。また四大元素にちなんだ属性に「雷」を加えた五つの属性のスキルをコラボに加えることで,モンスターの弱点属性を狙う,といったテクニカルなプレイも行えるとのことだ。これらのコラボについては,実際に動いている場面は見られなかったのだが,スキルを組み合わせて新たな攻撃方法を見出すというのは楽しそうである。

 しかしコラボに限らず,ゲームシステム自体はあまり複雑化させたくはない,と山口氏は語る。例えば厳密なルールを知らずとも,適当にコラボしていけば「なんか強くなったね」と言ってくれるような,ライトゲーマーでも楽しめるバランスにしたいとのことだ。クエストやレベルアップについても同様,あまり手間が掛からないように調整するということなので安心してほしい。

 そのほか,トライアルテストで評判が良かったというシステムが,生産関連だ。本作の生産は,大別すると「採取」「合成」「分解」の三つに分けられ,それぞれさらに細かなジャンルがある。そしてこの生産は,「スロットゲーム」が採用されているという,ギャンブル的な演出がなされているのだ。このスロットがなかなか面白く,いわゆる材料をコインとしてドラムを回すわけだが,絵柄が「あたり」「はずれ」だけではなく,揃った絵柄によっていろいろ結果が異なってくるのである。
 また,現在自分が連れているアミーゴを生産スロットにセットすることによって,生産時の確率がアップするというのがユニークである。アミーゴによって得意とする生産品目が異なるとのことで,中には生産に特化した強力なアミーゴもいるかもしれない。アミーゴと仲良くして信頼度を上げると,生産効率はより高まるという。



■来年早々にオープンサービス開始!

 気になる今後のサービススケジュールについてだが,2007年1月の早い段階で,オープンサービスが開始される予定だ。これは課金アイテムの実装を除けば,実質的に正式サービス開始といっても差し支えないバージョンのものである。ちなみにこのオープンサービス開始のタイミングでは,トライアルテストで判明した問題点の修正や調整が主な変更点となり,大きなアップデートは行われない模様。
 課金アイテムの実装時期は,サービス開始後の様子を見ながら検討するとのこと。なお導入される課金アイテムのラインナップは,ステータスや取得経験値の上昇といった,いわゆるブースト系が主なものとなる。

 今後のアップデート構想についても聞いたところ,街については現状ある「アルバ」,森をモチーフとした「トゥボレ」や,水の「レスネ」といった村に加え,雪をモチーフとした新エリアの実装を予定しているようだ。それと,トライアルテストでは序盤で投げ出してしまった人が多かったようで,このあたりの手引きをしっかりしたいとのこと。例えばクエストの目的地をマップ画面にポイントで表示したり,キラキラを持っていなくても仲間にできるアミーゴを用意する,といった変更となりそう。個性的なゲームであることは確かなので,初心者に向けたサポート面の整備は必要かもしれない。

 それ以外の仕様に関しては,当面はがらりと変わったりすることはないようだ。改善/調整やバグフィックスは随時行われているが,とりあえず現状の仕様で一人でも多くの人に触れてもらいたいとのこと。言い方を変えると,現在の開発作業は当初の予定通り進んでいるようなので,一安心といったところである。



 今回山口氏に聞いた中でとくに印象深かったのは,「アミーゴを性能面だけで選ぶようになると,それは単なる“道具”になってしまう」という言葉であった。確かにゲームにおいても効率面を追及しがちな昨今だが,それよりも大切なものがある,という点に着目したのはなかなか鋭い。また,国産らしい丁寧なグラフィックスや気配りの利いたクエストシステムなど,肩肘を張らずに遊べるタイトルとして,かなりの人にアピールしそうな雰囲気だ。本稿を読んで気になった読者は,ぜひともオープンサービスに参加して,お気に入りのアミーゴを探し出してみてはどうだろうか。(ライター:川崎政一郎)


アミーゴ・アミーガ
■開発元:チュンソフト
■発売元:ゲームズアリーナ
■発売日:2007/01/10
■価格:N/A
→公式サイトは「こちら」

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http://www.4gamer.net/news/history/2006.12/20061226230315detail.html