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国内サービスが決定した「ネオ・スチーム」開発チームリーダーインタビュー
2006/08/07 23:52
Hong,Chan Hwa氏とHong,Sung Hwa氏
 8月1日,ハンビットユビキタスエンターテインメントはスチームパンクMMORPG「ネオ・スチーム」の日本でのサービスを発表した。
 さて気になるのが,この「ネオ・スチーム」というゲームについてだ。4Gamerでも過去に何度か紹介しており,また先日の発表会レポート記事でも内容について軽く触れられてはいるものの,本質的な部分はいまだ分からないことだらけである。
 そこでこのたび4Gamerでは,開発チームリーダーのHong,Chan Hwa氏と企画パートリーダーのHong,Sung Hwa氏に,ネオ・スチームの詳細についてのインタビューを実施した。

 実はHong,Chan Hwa氏に,ネオ・スチームについてインタビューするのは,4Gamerとしては初めてのことではない。昨年のG★2005の「こちら」で,すでに結構ツッコんだ話を聞いているのだ。
 しかしこのときは,妙に突っ込んだ話はしたものの,あまり基本的なことは聞いている時間がなかった。そこで今回のインタビューでは,過去の情報を補完していく形で,もう少し基本的なところから細かく聞いてみた。

左:ホン・チャンファ(Hong Chan Hwa)氏
「ネオスチーム」開発チームリーダー
・1998年 CCR入社
・1999年 マルスチーム結成,リーダーに。「ポトリス2」開発
・2001年 「ポトリス2ブルー」開発
・2002年 ハンビットソフト入社

右:ホン・ソンファ(Hong Sung Hwa)氏
「ネオスチーム」開発チーム企画パートリーダー
・2003年 ハンビットソフト入社


■特殊な資源が生み出すスチームパンクの世界

4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。今回は,まだまだ日本ではほとんど全容が見えていない「ネオ・スチーム」について,根掘り葉掘り聞いていきたいと思います。本作は「ネオ・スチーム」という資源をめぐり,3か国が争うというスチームパンクMMORPGですよね。まずはスチームパンクという設定について教えてください。

Hong Sung Hwa氏(以下,Sung氏):
 本作は,タイトルにもなっている「ネオ・スチーム」という資源が生み出す蒸気エネルギーを利用した,蒸気機関が発達した世界を舞台としています。ネオ・スチームという資源は,プレイヤー自身が利用することも可能ですし,例えば街中で背景的な装置を動かしているところも見られます。とにかく,この世界を描くうえで最も重要な要素として存在するものです。

4Gamer:
 プレイヤーにとってのネオ・スチームは,「お金」なんかと同じように,数値で所有量が表されるような存在ですか?

Hong,Chan Hwa(以下,Chan氏):
 そのとおりです。ネオ・スチームとは,限られた所有量の中から消費して使っていくような存在です。ただしプレイヤーが直接採取して溜められるようなものではなく,まずは国家に集約され,それから1時間に一度,定期的に国民であるプレイヤーキャラクターに一定量が支給されます。

4Gamer:
 なるほど,お金や経験値のように,敵をガンガン倒して集めるというわけではないのですね。支給といいますと,具体的には?

Sung氏:
 はい。ネオ・スチームは自動的にプレイヤーキャラクターの懐に入ってくるわけではありません。充電する装置があって,この装置にお金を払うことでチャージするのですが,上限があるわけです。支給量の上限は,キャラクターのレベルなどによって決定されます。上限を超えてチャージすることはできないので,使わずに溜め込むということはできません。

4Gamer:
 配給制ということは,あまり無駄遣いはできないわけですね。

Chan氏:
 ネオ・スチームは,ゲーム内のさまざまな分野で必要とされるものです。この限られたネオ・スチームを,どこに使うかというのが,その人のプレイスタイルの方向性に大きく影響してくるでしょう。

Sung氏:
 そして,このゲームでは「国家間の戦争」がメインテーマの一つなわけですが,その中の「攻城戦」でネオ・スチームをどう使うかが,勝敗に大きく影響してくるのです。

4Gamer:
 ええと,たしか3か国は資源をめぐって争っているんですよね。では,その攻城戦の結果によって,各国が手にするネオ・スチームの量にも影響してくるのでしょうか。

Chan氏:
 そうなんです。3か国それぞれの国土である3大陸とは別に,交戦地域である「ロフアイル」というエリアがあります。攻城戦が行われるのもこの地域で,何よりネオ・スチームの採掘が行われるのもロフアイルだけなのです。まだ攻城戦は実装されていないのですが。

Sung氏:
 ネオ・スチームは,ロフアイルだけにある「エネルギーストーン」から採取しています。そして城が建てられているのが,このエネルギーストーンのある場所なんですね。つまり攻城戦の結果というのは,自分が所属する国家の生産量に直接影響を与えます。国家が多く所有しているなら,支給される量にもボーナスがついたりする予定です。

4Gamer:
 城の数が,ネオ・スチーム生産量にほぼ比例する仕組みですね。ちなみに攻城戦が実装されていない現時点では,各国のネオ・スチーム生産量は一定ですか?

Chan氏:
 はい,現在はどちらの国にも均等にネオ・スチームが配分されています。日本のサービスでも,最初は一定のところからスタートするでしょう。これは攻城戦の実装をお待ちください。



■「ネオ・スチーム」を必要とすることとは?

4Gamer:
 先ほど,「ネオ・スチームは,ゲーム内のさまざまな分野で必要とされる」とおっしゃってましたが,具体的にどういったことに使えるのか,聞かせていただけますか。

Sung氏:
 まずは,「スチームマシーン」という要素ですね。これは例えば通常の武器に「コアマシン」と呼ばれる部品を取り付けることで,その武器は「スチームマシーン」というものになります。スチームマシーンは,ネオ・スチームを消費することで「マシナビリティ」という,いわゆる必殺技を使えるようになります。これがネオ・スチームの分かりやすい使い道の一つ目です。

Chan氏:
 移動手段である「スチームライダー」「スチームマイン」といった乗り物は,動力としてネオ・スチームを必要とします。あとは「生産」や,アイテムをアップグレードする「リフォーム」にも,ネオ・スチームを消費します。

4Gamer:
 そのへんが,ネオ・スチームの主な使用目的ですか。

Sung氏:
 現在は,「スチームマシーン」「乗り物」「生産」「リフォーム」の四つがメインですね。また街中の施設を利用するときに,細かくネオ・スチームを消費することもあります。この先,攻城戦が実装されると,攻城戦専用の武器などにもネオ・スチームが必要となりますね。

Chan氏:
 「スチームライダー」「スチームマイン」は,どちらも攻撃力を持ってはいません。攻撃力を持った乗り物は,攻城兵器の導入を待つことになります。



■どの国に所属し,どの職業を選ぶかでプレイスタイルが決まる

4Gamer:
 次は「3か国」について聞きたいと思います。やはり,それぞれ根幹となるスタンスやイデオロギーが異なるわけですよね。

Sung氏:
 韓国と中国ではすでに正式サービスが始まっていますが,当初から予定されていた3か国のうち,まだ2か国のみの実装となっておりまして,日本でも,まずは2か国からのスタートとなります。

Chan氏:
 四つの種族はどの国にも所属できるのですが,3か国には一応それぞれ主導的な種族というのが存在します。まず技術国家「ログウェル共和国」は,もともと機械技術に詳しい「ポム」という種族が,古代国家のテクノロジーを継承し,発達させてきたというバックグラウンドストーリーがあります。神秘国家「エリアッド王国」は,もともと魔法使いだったエルフ達が,魔法とスチーム技術の融合による発展を目指している国です。そしてまだ未実装ですが,自然国家「タクシャン連合」は,獣人系の種族が中心となっている国です。もともと彼らは機械というものを嫌ってきたのですが,やがてネオ・スチームという絶対的なエネルギーを使わざるを得なくなり,渋々使っているといった設定です。

Sung氏:
 これは,ゲーム内で所属国家と種族の関係に有利不利という影響は与えていませんが,ストーリー的に理解度を高めるための設定ですね。

4Gamer:
 なるほど,3か国の背景は分かりました。では実際にゲーム内では,国家による差はどのようなところに出てきますか?

Sung氏:
 そうですね,技術国家ログウェルは装備品などのアイテムが最初から強力である,神秘国家エリアッドは当然ながら魔法が最初から使える,自然国家タクシャンは,これはまだ予定ですがキャラクターのステータスが最初から高いといった差別化が図られています。

Chan氏:
 また,スキルも所属国家によって違ってきます。当然,神秘国家は魔法のスキルが強力といった具合ですね。スキルの7割ぐらいは各国で共通していますが,3割は国ごとに特有のスキルが用意されています。また,用意されているクエストなんかも国ごとに異なります。

4Gamer:
 クラスは,とりあえず初期職業として「戦士」「魔法使い」「放浪者」「技術者」が発表されていますが,これは国ごとの違いはありますか?

Sung氏:
 使えるスキルなどに若干の違いはありますが,基本的には同じですね。ただし,キャラクターがレベル10になるとクラスチェンジするのですが,このとき所属国ごとに2種類ずつ上級職が用意されており,どちらかを選ぶことになります。

4Gamer:
 つまり初期職業が4種類,上級職が24種類あるというわけですね。

Chan氏:
 そうなりますね。24種類全部を紹介するわけにはいかないので,戦士のクラスチェンジを例に挙げてみましょう。技術国家では,純粋に強力な戦士である「ウエポンマスター」か,ヒーラーの能力も兼ね揃えた「ディフェンダー」が選べます。一方の神秘国家の場合,攻撃魔法も使える「魔戦士」か,召喚獣を扱える「テンプラー」かが選べるといった具合です。



■まだ未実装だがメインコンテンツ間違いなしの「攻城戦」

4Gamer:
 現在計画されている,攻城戦の仕様について,可能な範囲で聞かせてください。

Chan氏:
 攻城戦というからには,攻める側と守る側に分かれるわけですが,攻撃側は「攻城兵器」をいかに使うかが重要になってきます。一方の防御側は,砲台など城の設備を利用した「ブロックシステム」というもので敵を撃退します。この攻城兵器とブロックシステムの相性によって,戦闘の結果は大きく変わってくるわけです。

Sung氏:
 従来の攻城戦は,どちらの勢力に人が集まっているかで勝敗が決まってしまうことが多かったのですが,本作ではそういった要素を極力排除しようということで,この攻城兵器とブロックシステムのアイデアが出てきました。

4Gamer:
 つまり兵器やブロックによっては,少人数でも勝てるような攻城戦となるわけですね。

Chan氏:
 そうですね。

4Gamer:
 お城はロフアイルのエネルギーストーンがある場所に存在するとのことでしたが,これはプレイヤーが建てるのですか?

Sung氏:
 いえ,始めから用意されています。城の数は,だいたい5〜10くらいを考えています。

4Gamer:
 ちなみに一度に参加できるプレイヤー数は,どれくらいを予定されていますか?

Chan氏:
 一つの城に限定した話であれば,だいたい100対100ぐらいの規模にしようと考えています。ただし本作では,ロフアイルに存在するすべての城で同時に攻城戦が始まるんですね。また,これはまだハッキリと決まっているわけではないのですが,本作では,ただ門を破壊すれば決着が着くのではなく,城の周辺の要所も占領する必要があったりですとか,複雑な勝利条件を設けて,より戦略的な部分を強化したいと考えています。

4Gamer:
 先ほどの,すべての城で同時に攻城戦が始まるという点について,もう少し詳しく話を伺いたいのですが。

Sung氏:
 攻城戦自体がまだ企画段階なのですが,現在の企画では,5〜10個ある城には相互関係があり,例えばAという城を落とすとBという城に攻めやすくなったりとか,C城からD城への移動を邪魔できたりとか,そういった連携的な要素を盛り込む予定です。

4Gamer:
 最終的には,それが3か国入れ乱れて同時に行われると。

Chan氏:
 今のところ,そういう計画ですね。さらに攻城戦のインターバルを短くするつもりでして,現在の予定では週一度以上の頻度で発生させようと考えています。次の攻城戦ではどこの城に行こうとか,そういった動きや話し合いが活発に行われることになるでしょう。

4Gamer:
 なるほど。それで最終的に所有している城の数によって,各国に入るネオ・スチームの量も変わってくるわけですが,しかしその場合,例えば一国がすべての城を押さえるような事態になってしまったら,逆転が難しくなってきませんか?

Sung氏:
 これもまた企画段階ですが,不利な側のみ使えるサポートなども用意したいと考えています。具体的なものは,まだ申し上げられないのですが。



■もちろんPvPなしでも存分に楽しめる

4Gamer:
 いやー,かなり熱い攻城戦になりそうですね。ところでPvPは攻城戦のみでしょうか?

Chan氏:
 PvP自体はいろいろありますよ。まず敵対国家に乗り込んでいった時点で,敵に攻撃される可能性が出てきます。ロフアイルには,狩りなどができる攻城戦以外の一般フィールドがあり,ここはPvP可能です。またサブマリンに乗って行く「リアランド」というマップがありまして,そこは狩りや戦闘によって,いろいろな褒章が得られる場所ですが,ここでもPvPができます。国家内でPvPの練習をする「修練所」,国に関係なく1対1のPvPができる「決闘場」といった場所もあります。

Sung氏:
 敵対国家の所属キャラクターと戦って勝利すると,「ソウルクリスタル」というアイテムが手に入るのですが,このアイテムを必要とするクエストなどもあるため,これがPvPの動機となることもあるでしょう。

Chan氏:
 また,韓国のサービスでは「国家貢献度」という要素が,次の大きなアップデートで導入されます。これはその名のとおり,所属している国家への貢献度を表すシステムで,これも敵対国家との戦闘によって評価されます。これによって「階級」が上がり,よりハイレベルなアイテムやスチームライダーが使えるようになったりするわけです。

4Gamer:
 なるほど,PvPを主軸とした要素が多く用意されているようですね。逆にPvP以外の遊び方というのはアリですか?

Sung氏:
 もちろん,メインのテーマとしては国家同士のRvRなのですが,日本にはPvPを好まないプレイヤーも多いと聞いています。当然そういった方でも楽しめるよう,PvPを一切しなくてもいい遊び方も用意されていますし,望んでいないのにPvPに巻き込まるようなことは起こらない仕様になっています。

Chan氏:
 本作はPvPを「強制する」のではなく,あくまで興味のある人を「誘導する」ための手法が研究された作品であると,プレイしてみれば理解いただけると思いますよ。

4Gamer:
 分かりました。ええと時間も差し迫ってきたことですし,とりあえず気になる攻城戦などの導入時期を伺ってもよろしいですか。

Chan氏:
 韓国では,攻城戦の実装は年内を予定しています。日本ではもう少し遅くなるでしょうね。三つめの国家については,まだ韓国でも未定なのですが,アイデアとしては既存の2か国とは違う提供の形にしたいですね。例えば最初からは選べず,プレイするには特別な条件が必要だったりとか。具体的には,まだ検討中です。

4Gamer:
 最後に,「こういったところを見てほしい」といったところを含めて,4Gamer:amer読者に一言お願いします。

Sung氏:
 PvPはもちろんですが,非常にたくさんのクエストが用意されているので,まずはそういったところからネオ・スチームの世界に慣れ親しんでもらいたいと思います。

Chan氏:
 細部まで作りこんでいるという自信を持って送り出している作品です。またハードルが低く,誰でも入りやすいゲームですので,ぜひ皆さんに体験してもらいたいですね。

4Gamer:
 ありがとうございました。



 というわけで,特殊な世界観や価値観を持ったネオ・スチームというゲームだが,今回のインタビューで理解してもらえただろうか。基本的には国家間を対立を軸に,RvRへとプレイヤーを誘導するための仕掛けが多く用意されているようだ。
 その一方で,PvPを苦手とする人でも楽しめるための配慮もあり,また,可愛らしいイラストは「スチームパンク」という,マニアックな世界をグッと身近なものにしており,初心者への入りやすさもかなり意識していることを感じさせる。
 まだメイン要素で未実装のものがあるのは気になるところだが,日本での運営に関するスケジュールはもちろん,将来的なアップデートも含めて,今後の動向を楽しみに待ちたい。(Kawamura)


ネオスチーム
■開発元:Mars Team
■発売元:ハンビットユビキタスエンターテインメント
■発売日:2006/10/19
■価格:無料(アイテム課金)
→公式サイトは「こちら」

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/news/history/2006.08/20060807235219detail.html