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[韓国ゲーム事情特別編]HUEのKim社長が語る「Granado Espada」の日本展開 早ければ3月末頃からクローズドβテストの開始も!?
2005/03/11 23:59
<Kim,Young Man氏>(44歳)

1998年 LG LCD社コンテンツ事業チーム長
1999年 Hanbit Soft設立,代表取締役就任
2000年 韓国eスポーツ協会会長
2001年 韓国文化コンテンツ振興院取締役
2005年 ハンビットユビキタスエンターテインメント設立,代表取締役就任
Kimの韓国最新PCゲーム事情 特別編

HUEのKim,Young Man社長インタビュー(2005/3/11)

Text by Kim Dong Wook特派員


 現在,MMORPG王国の韓国で巻き起こっている「World of Warcraft」旋風。これに打ち勝てるのではないかと期待されているタイトルの1本が,「Ragnarok Online」(邦題 ラグナロクオンライン)の父,Kim,Hakkyu氏がプロデュースする「Granado Espada」(以下,GE)だ。
 そのGEには,韓国ゲーム業界において,Kim,Hakkyu氏以上に功績のある人物も関わっている。「StarCraft」(邦題 スタークラフト),「Diablo II」(邦題 ディアブロ II)などで数百万本のセールスを記録させ,プロゲーマーという職業を生み出し,さらには韓国全土にPC BANGブームを巻き起こした立役者でもある,Hanbit Soft社とハンビットユビキタスエンターテインメント(以下,HUE)の社長を兼務するKim,Young Man氏だ。
 今回4Gamerでは,Kim,Young Man氏にGEの日本展開を含めた今後の展望を語ってもらった。

■GE,3月末にも日本でクローズドβテスト開始か?

4Gamer:
 まず,少し急な話ではありますが,GEの日本展開のスケジュールを教えてください。

Kim,Young Man氏(以下,Kim氏):
 まだ,GEのサービスを日本でいつ開始するかといった,具体的なスケジュールを発表できる段階ではありません。HUEは株式を含め,会社設立に関する手続きなどが完了したばかりですからね。ただ,3月からは日本のGMとHUEのスタッフが韓国のIDCセンターにあるサーバーに参加し,英語バージョンでテストを行う予定で,その後,まずは韓国語バージョンのテストスケジュールを決めます。まだ韓国でのサービススケジュールも確定していない状態なので,日本での予定はもう少しお待ちください。
 ただ,状況が許せば(早ければ)3月末頃からクローズドβテストを行うこともできるはずだと思っています。一応社内ではテスト済みの段階ですので,次のステップは,プレイヤーを対象としたテストになると思います。

4Gamer:
 なるほど,もし3月末ならば,もう目の前ですね。これは楽しみです。これまで韓国産オンラインゲームが日本でサービスを開始するときは相当な時差がありましたが,GEはかなり早くに日本でもサービスを開始できるはずだと以前Hakkyuさんから聞いていましたが,ここまで早いとは凄いですね。

Kim氏:
 Kim,Hakkyuプロデューサーは,韓国,日本,中国でほぼ同時のサービス開始を目指しているほどで,韓国と日本の時差はせいぜい1〜2週間くらいだと思っています。GEは,企画初期の段階からローカライズ作業が行いやすいようにデザインされているので,韓国でクローズドβテストを行う時点では,日本語ローカライズ作業も仕上げ段階に入っているはずです。そのため,韓国と日本のサービス開始の時期に,大きな時間の差は出ないでしょう。




■ローカライズは,テキストの日本語化にとどまらない

4Gamer:
 HUE開所式のときのインタビューで,Kim社長は日本のゲーマーの特性をかなり分析しているような気がしたのですが,その分析結果は,日本市場展開に影響を与えるのではないでしょうか?

Kim氏:
 いや,私も日本のゲーマーの特性を100%知っているわけではないです。現在HUEでは日本のゲーマーの特性を分析中ですが,ローカライズという部分ではテキストのみを書き換えるだけではなく,グラフィックスの色使いも含めて,GEそのものの軸がぶれない範囲で,日本のゲーマーの好みに合わせたものにしたいと思っています。

(ここで氏は,以前「StarCraft」などVivendi Universal Games社との韓国ローカライズ作業のときに,韓国側の意見がまったく反映されずにVivendiの意見だけが強調されたという経験を告白)

 マップやアイテムも,日本の雰囲気に合うように変えていきたいですね。デザインやアイテムなども,日本に合ったものを日本で開発してGEに追加できるように,HUE内で開発チームを編成することも考えています。

4Gamer:
 ローカライズには,かなり力を入れているんですね。

Kim氏:
 オンラインゲームとは,パッケージゲームのような完成済みのものではなく,コミュニティなどを通じてプレイヤーと共に作っていくものです。だからこそ,オープンβテスト以後にプレイヤーが望むものを,どの程度汲み上げて反映させていくかが,とくに日本市場では重要だと思います。そうすることで,コンシューマ機で遊んでいる日本のゲーマーも,オンラインゲームに引き寄せられるのではないでしょうか。とくに日本には確固とした独自の文化があり,韓国のゲーマーとは違う特性を持っています。だからこそ,彼らにも合うゲームを作っていこうと考えているわけです。

4Gamer:
 なるほど,どうローカライズされるのか,楽しみに待っています。では少し話題を変えて,GEの有料化モデルについては,どのようにお考えですか?

Kim氏:
 「韓国ではGEを安く遊べるのに,どうして日本では高いのか?」といった批判が生じるようなことは避けたいです。やはり消費者物価の指数などを考慮して,定額制にするとか,アイテム課金にするとか,あるいはタイムクーポン制にするといった具合に,国ごとに有料化モデルは異ってくるでしょう。ただ一つ確実なのは,プレイヤーに対して不利益や不公平感を与えるようにはしないということです。また決済システムは,プレイヤーの利便性を最優先し,さまざまな方式に対応するつもりです。




■日本のオンラインゲーム市場は現在成長中

4Gamer:
 最近,日本でのオンラインゲーム展開では,クライアントの配布方式も非常に重要になってきていますが,そのあたりはどうお考えでしょうか?

Kim氏:
 HUEは流通システムを持っている会社ではありませんので,日本のパートナーと協議し,クライアントを可能な限り早く全国に配布できる方法を考えていきます。私はセールスの仕事を長期間やってきたので,流通に関しては少し自信があります。私はLG SOFT社に勤めていた十数年前から,今までに100回以上日本に出張しています。そして出張時にはいつも,秋葉原のラオックス,T-ZONEといった大型店舗での陳列状況,店頭マーケティング,POPなどを分析していました。そのことが,韓国でStarCraftを350万本売ったことにつながっています。
 ほかにも,私の長年のパートナーであるクレオ「筆まめ」を韓国に流通させたことは,大変な勉強になりました。ちなみに現在では,私がクレオにオンラインビジネスを教えています。

4Gamer:
 なるほど。以前から日本のビジネスの経験があったんですね。では,日本におけるオンラインゲーム市場の発展の可能性についてはどう考えていますか?

Kim氏:
 日本のゲーマーの多くが,コンシューマ機を中心としていることは周知の事実です。でも,彼らがコンシューマ機では味わえないコミュニティという魅力に気づけば,すぐにオンラインゲーム時代へ突入するでしょう。すでにラグナロクオンラインなどの成功事例も出てきています。また,日本政府の"e-Japan計画"によるインフラ構築,既存コンシューマゲームメーカーのオンラインゲーム参入など,日本のオンラインゲーム市場は現在成長中だと思います。HUEが,こんな重要な時期にゲーム王国の日本に進出できるのは,幸運だと思っていますし,我々の力で市場拡大に寄与したいと考えています。

4Gamer:
 インターネットインフラはかなり整備されてきていますが,コアゲーマーを除くと,日本で普及しているPCの多くは3Dゲームに向いていないと思うのですが……?

Kim氏:
 1999年に私がHanbit Soft社を設立したころ,韓国のPC BANGには低スペックのPCしかありませんでした。ですが韓国で「Diablo II」が発売されたとき,全国のPC BANGがPCのスペックをアップグレードしましたし,以後「Warcraft3」(邦題 ウォークラフトIII),「LineageII」(邦題 リネージュII)が発売されたときも同様に,PCアップグレードブームが起こりました。
 楽しみたいコンテンツさえ登場すれば,プレイヤーはPCのスペックをアップグレードするものだと思います。

4Gamer:
 GEでは,中国向けに低スペックのバージョンも準備中だと聞きましたが……。

Kim氏:
 現在,ハイポリゴンバージョンと,中国や東南アジア向けのローポリゴンバージョンのクライアントを開発しています。日本市場は当初,ハイポリゴンバージョンのみを提供する予定でしたが,場合によってはローポリゴンバージョンの提供もあるかもしれません。ローポリゴンバージョンといっても,見た目のグラフィックスのクオリティはほとんど変わりませんので,ご安心してください(笑)。



■Flagship Studios社との共同開発について

4Gamer:
 現在Hanbit Soft社は,ビル・ローパー氏のFlagship Studios社やオーストラリアの会社と共同開発を行っているものなど,複数のプロジェクトが進行中とのことですが,その新作オンラインゲームはいつ頃公開されるのでしょうか? また,日本ではHUEを通じてサービスが行われるのでしょうか?

Kim氏:
 Hanbit Soft社の今後のタイトルは,HUEを通じて日本でも展開することになるでしょう。現在オーストラリアの会社と共同開発中の「ガーディアンズオンライン」は,大規模な攻城戦,これまでの概念を超える戦闘シーン,多彩なアクション性などが特徴です。4〜5月中には,Flagship Studios社の新作(編注:タイトルは決定済みだが未公開),GE,ガーディアンスオンラインなどを公開することを考えています。これらは韓国だけではなく,アジア各国のパートナーに向けて発表することになるでしょう。

4Gamer:
 Flagship Studios社の新作は「Diablo III」を超えるほどの大作と聞いたんですが,どのようなものになりますか?

Kim氏:
 Flagship Studios社の公式サイト(「こちら」)で少し発表がありましたが,現段階ではDiablo IIIとの比較は,意味がないものでしょう。次世代RPG市場は,ロールプレイングに加えてFPS,またはストラテジー的な要素が含まれた,複合的なジャンルがトレンドです。そしてFlagship Studios社の新作は,そのトレンドを間違いなくリードするゲームなのです。こちらは,これまでの経緯から考えると日本ではナムコさんが流通することになると思いますし,その他各国をHanbit Softが担当します。

4Gamer:
 最近のオンラインゲームのトレンドの変化を見ると,RPGから不特定ジャンル全般へと移行している気もしますが,その点はどう考えていますか?

Kim氏:
 オンラインゲームもジャンルが偏重されていくというよりは,市場が広がるにつれてRTS,FPS,スポーツゲームなどの人口も同時に増えると思います。例えばパンヤは,私が韓国e-Sports協会会長として長く苦心してきた,StarCraft以外に新しい種目がなかった状況を解決してくれた秀作だと思います。今後も,オフラインゲームにコミュニティを組み合わせたオンラインゲームが数多く出るはずです。最近,当社がパブリッシング契約を締結した「新野球」というオンラインスポーツゲームも,そういう側面でゲーム市場拡大はもちろん,e-Sports活性化に寄与するタイトルだと思います。

4Gamer:
 なるほど。それではHanbit Soft社の戦略は,今後もオンラインゲームのパブリッシングが中心ですか?

Kim氏:
 当社では最近,「Hanbit On」という新しいコミュニティポータルサイトをオープンしました。HangameやNetmarbleのようなミニゲームを集めたポータルサイトではなくて,オンラインゲーマー同士のコミュニケーションに特化したサイトです。すでにサービスしているパンヤやタントラなどのほか,いずれはGEもHanbit Onで楽しめるようになります。
 オンラインゲームとコミュニティ,ブログ,Miniblic(「こちら」のMini Hompyと同じ系統のもの)が連動するシステムを持っており,ギルドやコミュニティ単位の活動ができる空間を提供するのです。また,他社のゲームコミュニティもここで活動できます。

4Gamer:
 日本でもHanbit Onのサービス予定はありますか?

Kim氏:
 最初,GEの日本サービス開始と同時にHanbit Onのスタートを計画していましたが,まずはGEをスタートさせた後に行うことに変更しました。



■e-Sportsはビジネスとして成立するか?

4Gamer:
 では,先ほどちょっと触れたe-Sportsに関するお話を伺います。Kim社長は今まで韓国のe-Sportsを率先して導いてきたので,この件に関しては誰よりも専門家であると思いますが,韓国ではe-Sportsはビジネスモデルを確立できたのでしょうか?

Kim氏:
 e-Sportsは,韓国ゲーム産業の発展に非常に大きな寄与をしたと思います。プロゲーマーが生まれたり,ゲーム専門放送局もできたりと,さまざまな形に派生しましたが,私はe-Sportsがプロスポーツになり得るのかという問いに対する個人的な所見があります。プロというからには観客がいなければならず,競技の種目には階級も存在しなければならない。また何より,お金を儲けることができなければなりません。競技を見る観客,そして観客のための放送があって,初めてプロスポーツになるのです(関連記事は「こちら」。そして現状,韓国のゲーム専門放送局は,e-Sports中継の収益で運営を維持しているといっても過言ではないレベルまできています。

4Gamer:
 どのようにして,e-Sportsをビジネスに結びつけたのですか?

Kim氏:
 私は1999年にStarCraftを韓国市場で販売するために,当時アニメーション専門テレビ局にStarCraftの対戦をプロモーション番組として提案しました。結局その会社は,それをきっかけにゲーム専門放送局を立ち上げるほどに大きくなりました。対戦が可能なオンラインゲームは,全部リーグ化できると思っています。

4Gamer:
 日本市場では,e-Sportsをビジネスとして成立させるのは難しいと思いますか?

Kim氏:
 最近日本のソフトバンクと楽天がプロ野球チームを持ちましたが,その投資費用と比較すれば,はるかに少ない金額でプロゲームチームを作って運営できますよ(笑)。まぁそれはさておき,製品の購買層であるゲーマー達を攻略するためには,プロゲームチームこそふさわしいのです。韓国ではSKT,KTFなどの大企業がプロゲームチームを設立して,上手に活用しています。

4Gamer:
 しかし韓国では,StarCraftという超人気タイトルがあったからe-Sportsが成功したと思います。日本には,まだそれほどの人気タイトルがないのでは?

Kim氏:
 いえいえ,そうではないのです。私個人の考えでは,今後,リーグ化が可能なジャンルのオンラインゲームが,その役目を果たしてくれるでしょう。ただしそのためには,素人と熟練者の間に明確な実力差が存在しなければなりません。そうすれば,一般ゲーマーがプロゲーマーの競技を見るようになり,プロゲーマーを目指して熱心に練習するようになるでしょう。
 私の経験から考えるに,日本でのe-Sportsブームは多様なゲーム大会が活性化されねばなりません。ゲーマー間での小規模大会から各地域PC BANG大会,学校対抗戦などが自然と開催されるようになれば,いずれプロゲームリーグも生まれてくるでしょう。そうなればメディアと協力して大規模大会が開けるようになります。私も日本でのe-Sportsがブームとなるよう積極的に協力します。

4Gamer:
 ありがとうございます。最後に4Gamer読者に一言お願いします。

Kim氏:
 言うまでもないですが,4Gamerの読者はHUEの重要な顧客だと考えています。これからも4Gamer読者の意見に耳を傾けて,ゲームに反映していきたいと思います。今後もHUEをよろしくお願いします。

4Gamer:
 長時間,ありがとうございました。



「Granado Espada」
 →公式サイトは「こちら」
 →紹介ページは「こちら」

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