紹介記事
日本でもこういう電子書籍リーダー端末を気軽に購入できるようになればいいのに……と思った話
電子があれば,書籍を読める。
ということで,電子書籍のお話を。そういえば,4Gamerでは2012年と2013年に,その年に掲載したインタビュー記事をまとめて電子書籍ファイルとして無料配布してみた(関連記事1,関連記事2)のだが,ここ数年はできなかった。今年もできなかった。理由はいろいろとあるのだが……。
ともあれ,今回,筆者が電子書籍について筆を執ろうと思ったのは,電子書籍ファイルやコンテンツの話ではなく,電子書籍リーダーとして使用している端末について,思うところがあったからだ。
筆者は現在,Kindle Paperwhiteとスマホやタブレットを使って電子書籍を楽しんでいる。
使い分け方としては,例えば徳岡正肇の著作である「ゲームの今 ゲーム業界を見通す18のキーワード」(Amazon.co.jp)のように文字がたっぷり詰まった電子書籍は,(比較的)目に優しい電子ペーパーを採用したKindle Paperwhiteで読み,漫画誌や写真が多めの雑誌などは表示やページめくりの速いスマホやタブレットで読む……といった具合だ。当然,Kindleストア以外にも複数の電子書籍ストアを利用していることになる。
ただ,ごくたまに文字がメインの電子書籍でも,Kindleストア以外で購入したくなるケースもある。そんなときは,スマホやタブレットを使って電子書籍を読むことになるのだが,液晶画面で細かな文字を目で追っていると,どうにも目が疲れてしまい,集中して読み続けることができなくなりがちだ。
それが分かっているからこそ,文字中心の電子書籍はKindleストアで購入しようと心掛けているのだが,ポイント優遇とかセールとかに誘惑されると,お得に目がない節約筆者としては,ついつい「このチャンスを見逃す手などない!」と思ってしまって,買う必要のないものまで買ってしまいがちだ。
冷静に考えてみると,筆者の意志の弱さが悪いだけであり,各種端末や各種電子書籍ストアには何の落ち度もないのだが,やはり自分に甘くありたいのが人間というもの。何が言いたいのかというと,電子ペーパーを採用し,なおかつKindleもそれ以外の電子書籍ストアも楽しめる端末があれば,上記のような問題も解決できるのではないか? ということだ。
海外にはある理想の端末
要は,OSにAndroidを採用し,Goole Play ストアから電子書籍ストア用のアプリをインストールできる,電子ペーパー採用の端末さえあれば……! ということなのだが,そんな夢のような端末が,Onyx international(中国)の「Boox」シリーズや,ICARUS Reader(オランダ)の「Illumina」シリーズ,Yota Devices(ロシア)の「Yota Phone」シリーズといった具合に,海外にはちょいちょいある。決してメインストリームではないが,筆者と同じようなことを思う人がいないわけではないということなのだろう。
そんな折,中国のBoyueというメーカーから,「Likebook Plus」という7.8インチ(1404x1872ピクセル)で300dpiの電子ペーパーを採用した端末が今年の秋ぐらいに発売されたことを知った。販売価格は日本円でおおよそ2万2000円前後のようだ。
SoC(System-on-a-Chip)にCortex-A9/1.5GHz(クアッドコア)を採用し,メインメモリは1GB,ストレージ容量は16GB,そしてAndroidのバージョンは4.2.2と,ここだけを見ると約5年ほど前のスマホのスペックのように見えるが,24段階に調節できるフロントライトも備えているなど,電子書籍リーダー端末だと割り切ってしまえば,そこそこ良い感じでは? という気がする。
ただしここで気になるのは,この端末がBluetoothやIEEE 802.11b/gに対応している点。つまるところ,日本で合法的に使用するには,電気通信事業法および総務省令によって定められた,技術基準適合証明(技適マーク)を取得している必要があるのだ。ところがこの端末は,どうやら日本の技適マークは取得していない模様。
それでも少し,触りたい。向こうが触らせてくれないならば,こっちから触りに行くべきだ。そこで筆者は週末を利用して海を渡り飲茶ついでに軽く触ってきた。その模様を以下の写真や動画で紹介していこう。
短い時間ではあるが,ざっと触った感触は以上のとおりだ。Kindle電子書籍リーダー以外にも,いくつかの電子書籍ストアアプリを使用してみたが,それぞれ数分程度の試用では,ほぼ問題なく読書を楽しめた。ただ,メモリが1GBしかないためか,「Perfect Viewer」などでファイルサイズの大きなPDFなどを開こうとすると,フリーズしたのでは? と,不安になる程度の待ち時間が発生したことは付け加えておきたい。
また,ストレージ容量も16GBと限りがあるうえ,microSDカードにも非対応であるあたりも,気になる人にはネガティブな要素だろう。4Gamerで取り上げておきながらこう言うのも何だが,ゲームで遊びたいという用途にはまったく向かない。これはもう,SoCの性能が〜などという以前に,電子ペーパー自体が動きの激しいものを映し出すのに向いていないのだから諦めるしかない。また,モノクロ16階調の表現力では,当然だが写真や動画にも向かない。
とはいえ,筆者のように「Kindle Paperwhiteを使っているけれども,ほかの電子書籍ストアで購入したものを電子ペーパーで楽しみたい」という願望を持っている人にとっては,けっこう満足できる端末ではないかと思う。
ただ,LikeBook Plusに限らず,多くの電子ペーパー採用Android端末は,OSのバージョンが古い。電子書籍ストア提供者側がアプリを更新するにあたって,古いバージョンのOSを切り捨てることは普通にあり得る。こうしたリスクが気にならないのであれば,ぜひ購入を……と言いたいところだが,前述のとおり日本の技適マークは取得していないのがネックである(※CEマークは本体にも刻印されているので,EU諸国での利用には問題なさそうだ)。
ともあれ,今後,この手の端末を日本で手軽かつ合法的に利用できるようになったら,電子書籍を日常的に利用しているユーザーにとっては嬉しいはず。せめてKindleシリーズや楽天Koboシリーズがもう少しオープンな仕様になっていて,他社のサービスも気軽に利用できれば……と思わなくもないのだが,それが難しい事情もよく分かる。
だからこそ,OSにAndroidを採用し,Google Play ストアの利用にも対応した電子書籍リーダー端末のバリエーションがもっと増えてほしいな……と(お茶を飲みながら)思う次第だ。
●LikeBook Plus
メーカー:Boyue
OS:Android 4.2.2(Jelly Bean)
ディスプレイパネル:7.8インチ E-Ink,解像度1872×1404ドット
プロセッサ(プラットフォーム):Cortex-A9/1.5GHz(クアッドコア)
メインメモリ容量:1GB
ストレージ:16GB
バッテリー容量:2800mAh
無線LAN対応:IEEE 802.11b/g
Bluetooth対応:4.0
USB:Micro-B
本体サイズ:144(W)×198(D)×8.3(H)mm
本体重量:約290g
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