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VRを利用した非対称協力型脱出ゲームをPoznań Game Arenaで試遊してみた
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印刷2016/10/22 19:08

プレイレポート

VRを利用した非対称協力型脱出ゲームをPoznań Game Arenaで試遊してみた

 PS VRが発売され,一層の盛り上がりを見せるVR界隈。ポーランドで開催されているPoznań Game Arenaでも,VRは人気コンテンツとなっている。
 そんななか,特にユニークな発想で作られているVRゲーム「The Heist」を試遊できたので,紹介したい。

画像集 No.002のサムネイル画像 / VRを利用した非対称協力型脱出ゲームをPoznań Game Arenaで試遊してみた


リアル脱出ゲームをVRで表現


画像集 No.003のサムネイル画像 / VRを利用した非対称協力型脱出ゲームをPoznań Game Arenaで試遊してみた
 本作はその名の通り,銀行強盗をするという内容で,ゲームとしてはいわゆる「リアル脱出ゲーム」に近い。要はVRで表現された部屋に配置されている謎を解いて先に進んでいき,最終的に金庫を破れればクリアとなるという流れだ。
 だが「The Heist」が面白いのは,ただ単に脱出ゲームをVR化したからではない。同作は非対称型協力ゲームでもあるのだ。

 本作は,2人のプレイヤーが「VRゴーグル(Gear VRが使用されていた)をかぶって金庫内の状況を説明する」(以下潜入プレイヤー)と「VRゴーグルをかぶらず,現実空間に設置されたコントロールパネルを操作して,金庫の突破を支援する」(以下オペレーター)という違った役割を担う。

オペレーターが操作する操作卓。これに触るだけで楽しそう
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 潜入プレイヤーはVRゴーグルで周囲の状況を確認し,オペレーターに「壁に盾のようなオブジェクトがある」などと情報を伝達する。オペレーターはその情報をもとに,手元の操作盤を見て,何をすればいいかを推測し,試してみる。潜入プレイヤーはそれによって何が起こったかを,オペレーターに報告。この繰り返しによって,謎を解いていくのだ。

スクウェア・エニックスの時田貴司氏(手前)と筆者で協力プレイ。奥の部屋にいる筆者が「こっちの壁にはこんなものがあります」と力説しているところ
画像集 No.007のサムネイル画像 / VRを利用した非対称協力型脱出ゲームをPoznań Game Arenaで試遊してみた
 謎解きの詳しい内容は伏せるが,謎自体の難度はそれほど高くなく,むしろ「状況をどうやってオペレーターに伝えればよいか」「どう報告すれば誤解がないか」に頭を使うあたりが,面白い点でもあるし,悩ましい点でもある。

 VRを利用した脱出ゲーム自体は,「サラと毒蛇の王冠」(グリー)や「Floor Plan」(Turbo Button),「エニグマスフィア〜透明球の謎」(よむネコ)など,すでに複数の作品が存在するし,本作のゲームシステムは,有名なVRゲーム「Keep Talking and Nobody Explode」をベースにしたものと推測できるが,そのアレンジとして,大変に興味深い挑戦と言えるだろう。


ヨーロッパにおける脱出ゲームブーム


ワルシャワの旧市街近くで見つけた脱出ゲームの看板
画像集 No.001のサムネイル画像 / VRを利用した非対称協力型脱出ゲームをPoznań Game Arenaで試遊してみた
 本作においてもう一つ注目したいのは,ゲーマーではなく,一般的な市場のニーズを強く意識していることだ。

 欧州では,脱出ゲームが空前のブームと言ってよい状況にある。フランスやドイツでは地方都市に行っても常設の脱出ゲームを見られるし,ワルシャワでもちょっと歩いただけで2つの常設スポットを発見した(観光案内サイトで脱出ゲームのスポットがオススメされることも多い)。クロアチアのザグレブでは去年から今年にかけて20の常設スポットができたそうだ。無論これは過当競争の極みのような話で,生き残っているのは5〜6店舗ということだが,それでもムーブメントの大きさを感じさせられる逸話である。
 また,ホテルが「脱出ゲームプラン」とでも言うべきものを用意していることもある。この場合はホテルの一室が脱出ゲーム用にセットアップされているという。

 先日開催されたアナログゲーム見本市「Internationale Spieltage SPIEL'16」でも,ボードゲームタイプの脱出ゲームが出展される(関連記事)など,他分野への広がりも始まっている。

 「The Heist」は,このような脱出ゲーム需要の高まりに対し,優れた解答を提供していると言えるだろう。謎の手がかりを配置した本物の部屋を必要としないので,手がかりとなる物を持って帰られたり,壊されたりすることもない。必要なのはVRゴーグルとコントロールパネルであり,コントロールパネルはタブレットなどに置き換え可能だろう。

 また,2人から催行可能(あるいは2人だけしか催行できない)というのもポイントだ。カップルで楽しむ客層をメインターゲットとするならば,2人プレイ限定で構わないのだから。

筆者が説明に困っているところ。「とりあえずなんかそっちの操作盤を触ってみてください」とお願いして,それによる変化を口頭で伝えるということも必要になってくる
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無事金庫破りに成功。報酬として金塊(の形のチョコ)を頂いた
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 そのうえで,ゲーム体験を非対称とすることで,「役割を変えてもう一度やってみたい」と思わせることもできる。コンテンツが1度で消費されてしまいがちな脱出ゲームにおいて,完璧に同じセッティングで(しかもその場で)2回プレイしてもらえるというのは,なかなかうまい作りではないだろうか。


VR市場の爆発に向けた助走


SetappのPawel Paszkiewicz氏
画像集 No.006のサムネイル画像 / VRを利用した非対称協力型脱出ゲームをPoznań Game Arenaで試遊してみた
 「The Heist」を作ったSetapp社は,ポーランドで設立7年の歴史を有するゲームデベロッパだ。現在50人近い社員を有し,コアメンバーはゲーム業界で14年以上働いているという。
 SetappのPawel Paszkiewicz氏は,「これは我々にとって,VRゲーミングにおける最初の一歩でしかない」と語る。また,現状ではGear VRが使用されているが,Oculus RiftやHTC Viveへの対応も進めていく予定とのことだ。

 Paszkiewicz氏はVR市場の可能性について「VR技術は今まさに爆発する直前の段階にある。だから逆に言えば,今すぐにVRでものすごい規模の収益を上げるというのは不可能だ。けれど2〜3年のうちにVR技術は爆発期を迎えるし,そうなったらそこでは大きなお金が動くようになる。だからこそ弊社は今からVR技術を磨いている」と語った。

 とはいえ,VRコンテンツをどうマネタイズするかという点において,「The Heist」はすでにかなり優れた着眼点を有しているように思える。今後さらにVR技術が普及していくなかで,Setapp社がどのようなVRゲームを送り出すのか,注目しておきたいところだ。

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