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Samsung,NVMe接続の新型SSD「SSD 960 PRO」「SSD 960 EVO」を発表。逐次読み出し性能は最大3500MB/sに到達
両製品はいずれも,NVMe 1.2に対応する新型コントローラ「Polaris Controller」を搭載。ハイエンドモデルとなるSSD 960 PROは第3世代V-NAND MLCを搭載して容量は512GB,1TB,2TBの3モデル展開となり,公称逐次読み出し性能は最大3500MB/s,公称ランダム4k読み出し性能は最大440K IOPSに達するという。10月以降順次発売予定で,価格は329.99ドル(税別)から。
一方,価格対性能比を追求したSSD 960 EVOは,第3世代V-NAND 3-bit MLCで容量は250GB,500GB,1TBを実現。公称逐次読み出し性能は最大3200MB/s,公称ランダム4k読み出し性能は最大380K IOPSとなっている。
こちらも10月以降の順次発売予定で,価格は129.99ドル(税別)からだ。
5基のCPUコアを集積した新開発のPolaris Controllerで性能が大幅に向上
Samsungは2015年に,NVMe接続のSSDとして,「SSD 950 PRO」をリリースしている。本製品では逐次読み出し性能が最大2500MB/s,逐次書き込み性能が最大1500MB/sという,Serial ATA 6Gbps接続型SSDを圧倒するスペックを持つが,「(SSD 950 PROでは)Serial ATA(6Gbps)世代と比べて,ランダム書き込み性能を上げることができなかった」とBleuel氏。SSD 960シリーズにおいて最も重要な進化は,このランダム書き込み性能の高速化だとしている。
SSD 950 PROのSSDコントローラ「UBX」は,3基のCPUを集積していたが,「Polaris Controllerでは5つのCPUコアを集積し,それぞれのコアを最適化することで,遅延の低減と転送速度の向上を果たした」と,Bleuel氏は主張していた。
具体的には,CPUコアのうち1基をホスト(PC側)との通信に使用し,残りの4コアでフラッシュメモリを制御しているのだという。
「TLC」という呼び名のほうが一般的な3-bit MLCは,書き込み性能が弱点になりがちだ。そこでSamsungは,2014年登場の「SSD 850 EVO」にて,メモリの一部の領域をSLC NANDとして読み書きし,それを一種のキャッシュとして使うことで3-bit MLCの書き込み速度を向上させる技術を「TurboWrite Technology」(以下,TurboWrite)として導入した。
それに対して,SSD 960 EVOに実装された新しいIntelligent TurboWriteは,TurboWriteの制御をより高度にしたのに加えて,「高速書き込みを行うキャッシュ領域」を拡大しているという。これにより,低価格モデルのSSD 960 EVOでも,上位モデルと比べてそう見劣りしない書き込み性能を実現できるようになったとのことである。
高度な積層技術により,M.2フォームファクタで容量2TBを実現
この容量512GBというフラッシュメモリは,容量32GBのフラッシュメモリセルを16枚積層することで製造しているそうだ。「単に積層するだけでなく,内部の配線などに極めて高度な製造技術を用いている」とBleuel氏はアピールしていた。
新たな熱対策も導入
高速大容量に加えて,新たな熱対策が施されているのもSSD 960シリーズにおいて注目すべき点である。
SSD 950 PROは,動作時にかなりの高温になることがあり,温度がしきい値を超えると性能が低下するのが弱点であると,レビュワーやユーザーから指摘されていた。そこでSSD 960シリーズでは,弱点に対するSamsung流の対策を実装しているという。
第一にSSD 960シリーズでは,SSD 950 PROに比べて電力性能が向上しているという。下のスライドは512GBモデルにおける読み出し時の消費電力を比較したものだが,SSD 950 PROと比べて,SSD 960 PROは約5%,SSD 950 EVOでは約10%の消費電力低減を実現しているそうだ。
また,「シールのような」(Bleuel氏)銅製のヒートスプレッダ「Heat Spreading Label」をモジュールに貼り付けるといった放熱対策も施してある。この銅製ヒートスプレッダによって熱が拡散しやすくなり,従来比で30%も熱拡散の効率が上がっているという。
電力効率の向上と熱拡散シールの効果によって,SSD 950 PROと比べ,SSD 960シリーズは「熱によって性能が低下するしきい値の温度」(Dynamic Thermal Guard Trigger Point)に達するまでの時間が,大幅に伸びているという。結果として,運用時に熱による速度低下が発生しにくくなるわけだ。
Bleuel氏は,SSD 960シリーズに実装された温度管理技術を「Intelligent Thermal Control」と呼んでいた。これにより,SSD 950 PROの弱点がSSD 960シリーズで解消したのかどうかは,実際に検証してみないことにはなんとも言えないものの,Samsungが熱対策に本腰を入れてきたのは間違いない。
競争がますます熾烈になるNVMe対応SSD
さて,価格については前述したとおりだが,各モデルの北米におけるメーカー想定売価のスライドを最後に掲載しておこう。なお,日本における価格情報はいまのところもたらされていない。
以上がSSD 960シリーズの概要となる。非常に高い性能や大容量が売りのSSD 960 PROと,3-bit MLCと新型コントローラなどにより高い価格帯性能比を有するSSD 960 EVOと,どちらもなかなか魅力的なラインナップといえよう。
話は変わるが,9月上旬にIntelが,M.2フォームファクタでNVMe対応のSSD製品「SSD 600p」シリーズを発売したことを耳にしている人もいるだろう。そのカタログ性能は,SSD 960 EVOにすら及ばない程度だが,極めて安価なのが特徴だ。
SSD 950 PROが登場した1年前,M.2フォームファクタのSSD市場においてSamsungは敵なしという状況だった。しかし今では,SSD 600pシリーズを始めとして.M.2フォームファクタ&NVMe対応SSDの選択肢は,かなり増えてきている。そのような状況で発表されたSSD 960シリーズが,市場でこれまでどおりの強さを発揮していけるのかどうか。そういった面からも,注目すべき製品になりそうだ。
SSD 960 PROおよびSSD 960 EVOの製品情報ページ(英語)
SamsungのSSD製品情報ページ
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