お気に入りタイトル/ワード

タイトル/ワード名(記事数)

最近記事を読んだタイトル/ワード

タイトル/ワード名(記事数)

LINEで4Gamerアカウントを登録
旧ソニーのPC部門を受け継いだ「VAIO株式会社」がスタート。「一点突破の発想と審美眼」を持つPC作りを目指す
特集記事一覧
注目のレビュー
注目のムービー

メディアパートナー

印刷2014/07/01 20:50

ニュース

旧ソニーのPC部門を受け継いだ「VAIO株式会社」がスタート。「一点突破の発想と審美眼」を持つPC作りを目指す

7月1日の新聞各紙に掲載された,VAIO社の広告。写真の背景に写っているのは,本社である安曇野市の工場内のようだ
画像集#002のサムネイル/旧ソニーのPC部門を受け継いだ「VAIO株式会社」がスタート。「一点突破の発想と審美眼」を持つPC作りを目指す
 「VAIO」のブランド名で名高いソニーのPC部門が,投資ファンドである日本産業パートナーズに譲渡されると発表されたのは,2014年2月のこと
 VAIOといえば,ゲーマー向けに特化したPCこそなかったものの,薄型化や小型化を追求したノートPCや,ビデオカメラを内蔵したノートPCなど,独自色の強いPCを多数展開していたブランドだ。1.3kg程度の重量で単体GPUを搭載するノートPCを販売していたこともあり,筆者などは「たまに3DゲームもできるモバイルノートPC」として,VAIOを選んでいたこともある。4Gamer読者にもVAIOブランドのPCを持っていた,あるいは現在使っているという人はいるだろう。
 そのVAIOが今後どうなるのかについて,気になっていたという人も少なくないのではないだろうか。

 そして,2014年7月1日,事業譲渡されたPC部門は「VAIO株式会社」(以下,VAIO社)として新たな事業を開始するとともに,第1弾の製品となるノートPC計3製品を発表した。本稿では,同日に開かれた設立記者会見の内容をもとに,VAIO社が今後どのようなビジネスを展開していくのかについてレポートしたい。

画像集#005のサムネイル/旧ソニーのPC部門を受け継いだ「VAIO株式会社」がスタート。「一点突破の発想と審美眼」を持つPC作りを目指す 画像集#004のサムネイル/旧ソニーのPC部門を受け継いだ「VAIO株式会社」がスタート。「一点突破の発想と審美眼」を持つPC作りを目指す
新製品第1弾となるノートPC「VAIO Pro 11」(左)と「VAIO Pro 13」(右)。ただし,元はソニー時代から販売されていた製品なので,これ自体は目新しいものではない


VAIOは今後もソニーストアで販売

当面は日本市場に集中


VAIO社の本社となる,長野県安曇野市の工場。東京からは,新幹線や在来線特急を乗り継いでおよそ3時間ほどのところにある
画像集#012のサムネイル/旧ソニーのPC部門を受け継いだ「VAIO株式会社」がスタート。「一点突破の発想と審美眼」を持つPC作りを目指す
 まず,基本的な情報から整理しておこう。
 新しいVAIO社は,日本市場をターゲットにWindows搭載PCの開発と製造を行う。ソニー時代は世界市場でビジネスを展開していたが,新会社ではまず,日本市場でのビジネスに集中するとのことだ。VAIOのモバイルノートPCは米国でもパワーユーザーの間で人気があったので,ちょっと残念ではある。

 本社が置かれるのは,「VAIOの里」とも呼ばれていた長野県安曇野市の工場だ。ここは,開発と製造に高度な技術を要するモバイルノートPCなどを担当していた工場で,ソニー時代からVAIOの開発部門と製造部門が集約されていた場所でもある。従業員は約240名。なお,製造は自社だけでなく,海外のODMメーカー(相手先ブランドでの製造請負メーカー)でも行われる。これもソニー時代と同様だ。

今後,VAIOの販売はソニーストアでの直販が中心となる
画像集#009のサムネイル/旧ソニーのPC部門を受け継いだ「VAIO株式会社」がスタート。「一点突破の発想と審美眼」を持つPC作りを目指す
 製品の販売は,ソニーグループの販売会社であるソニーマーケティングを通じて,「ソニーストア」での直販方式で行うという。ソニーとのつながりはごくわずかとなってしまったが,販売については,今まで利用していたソニーの直販サイトを引き続き使えるというわけだ。
 直販以外の販売方法も検討されており,今後は一部の量販店店頭で,VAIOの注文ができるコーナーを設置する予定もあるとのこと。ソニー時代にも,「VAIO OWNER MADE取扱店」という名称で,直販限定だったCTOモデルを注文できるコーナーを設置していた大手家電量販店があったので,新会社でも同様の仕組みを踏襲するのだろう。
 なお,法人向けの営業は,販売パートナー企業4社を通じて全国4000店で行うとのことだ。


「本質+α」を突き詰めた製品開発に集中


VAIO社 代表取締役社長の関取高行氏
画像集#003のサムネイル/旧ソニーのPC部門を受け継いだ「VAIO株式会社」がスタート。「一点突破の発想と審美眼」を持つPC作りを目指す
 設立会見に登壇したVAIO社の代表取締役社長である関取高行氏は,新会社のコンセプトとして「本質+α」という言葉を掲げた。
 ここでいう本質とは「PCの本質」を意味する。関取氏は,スマートフォンやタブレットが普及しても,「真剣に向き合う,生産性を上げる,何かを生み出す作業はPCの領域ではないか」と述べ,こうした道具としてのPCを突き詰めていくのが新会社のビジネスであるという考えを示した。

VAIO社が目指すコンセプトと,それを実現する3つの要素。規模の小さいPC専業会社となったことで,ソニー時代のしがらみや思い込みといったものを捨て去り,「PC事業に集中してスピードを上げていく」(関取氏)ことも重要な要素である
画像集#007のサムネイル/旧ソニーのPC部門を受け継いだ「VAIO株式会社」がスタート。「一点突破の発想と審美眼」を持つPC作りを目指す
 本質を突き詰めたうえで「+α」となるのが,「VAIOらしい付加価値」である。関取氏はソニーでのPCビジネスについて,世界各地から寄せられる「顧客の声」を取り込もうとした結果,「結果として機能も性能もてんこ盛りになる嫌いがあった」と振り返った。同様の指摘は当時もあり,社内でも自覚はされていたというわけだが,大企業ゆえのしがらみから,なかなか止めるわけにもいかなかったのだろう。
 一方,VAIO社では集中と絞り込みを行い,「一点突破の発想と審美眼を併せ持つ,愛着を持って長く使っていただけるVAIO」(関取氏)を開発していくことを目指すのだそうだ。

 さて,VAIOらしい付加価値といえば,ソニーが開発した技術を盛り込んだ独自のチップやソフトウェアの存在が思い浮かぶ。ソニーから分離されたことで,こうした差異化につながる技術が使えなくなるのではないか,という懸念を持つ人もいるだろう。これについて関取氏やVAIO社のスタッフは,従来VAIOに使っていたソニー製の差異化技術は,一定の条件下で今後も利用できると明言していた。
 もちろん,これから先,ソニーが開発する技術はこの限りではないとのことだが,ソニー由来の技術や商標がいきなり使えなくなるということはないそうだ。

 PCビジネスに詳しい人なら,規模が小さく日本市場だけに集中した会社となることで,CPUやメモリチップなど,PCを構成する部品の調達コストが上がり,製品価格が高くなってしまうのではないか,と考えるかもしれない。
 質疑応答でこのことを問われた関取氏は,「調達はチャレンジポイント」であると認めたうえで,標準的な部品はODMメーカー側の調達力を活用することでコスト増を押さえられるとの考えを示した。その一方で,製品の差別化につながる部品には,コストをかけていくという。

VAIOの設計製造から品質管理は,ODMメーカーで製造されたものであっても,安曇野の本社工場でチェックをするという。関取氏曰く「安曇野FINISH」とのこと
画像集#008のサムネイル/旧ソニーのPC部門を受け継いだ「VAIO株式会社」がスタート。「一点突破の発想と審美眼」を持つPC作りを目指す
 また,ODMメーカーを積極的に活用するとなると,今度は「品質が低下しないか」という不安が出てくるものだ。そこでVAIO社では,自社製造製品だけでなくODMメーカーが製造した製品も含めて,安曇野の本社工場が全製品の最終仕上げや品質チェックを実施することで,そうした懸念を払拭していくという。


コンセプトを具現化した新生VAIOが登場するのは年末〜来年以降?


新製品の1つである「VAIO Fit 15E」。15.5インチサイズの液晶パネルと光学ドライブを搭載するオーソドックスなノートPCで,2013年にソニーから登場した製品のCPU変更モデルだ
画像集#006のサムネイル/旧ソニーのPC部門を受け継いだ「VAIO株式会社」がスタート。「一点突破の発想と審美眼」を持つPC作りを目指す
 今回はあくまで新会社の設立会見であり,PC事業分離の方針が示されてから半年にも満たないという事情もあるため,同時に発表された新製品はどれも,既存製品のラベルを貼り替えただけだ。そのため,新会社のコンセプトを体現した製品がまだないことを懸念する声は,会見の場でも聞こえた。そうした製品が登場するまでの期間,VAIO社は厳しいビジネス環境に置かれるだろうし,また,そのことも事業計画の中に織り込み済みであろう。厳しい船出になることは,承知の上というわけだ。

 現実的に考えれば,新生VAIOのコンセプトを体現した製品が登場するには,半年から1年程度はかかる。そして半年後である2014年末には,Intelの新しいモバイルCPUである「Core Mプロセッサ」が登場する予定だ(関連記事)。従来以上の低消費電力を謳うCore Mプロセッサを採用した魅力的なPCを実現できれば,VAIO社の先行きに対する懸念を払拭できるかもしれない。

 幸いなことに,そうしたPCの開発を可能とする人材が,VAIO社には残っている。筆者は東京や安曇野で,VAIOの開発部隊を取材した経験が何度もあるのだが,そのときに取材対応していただいた開発部隊のキーパーソンを,会見に続いて行われた懇親会で何人も見かけることができた。根拠としては薄弱かもしれないが,「この人たちが残っているなら,新しいVAIOも大丈夫。面白い製品を作ってくれるだろう」と感じたのだ。

 優秀な人材がいれば成功が約束されるほど,PCビジネスは生やさしいものではない。とはいえ,VAIOの個性的な製品群が,技術力とアイデアのある安曇野の人材によって実現されていたのも事実。ぜひともまた魅力的な製品を作り出して,「日本にはVAIOというイカすPCがあるのだ」ということを,世界に示してもらいたいし,そうした製品の中に,ゲーマーの選択肢に入ってくるような製品が出てくることを期待したいものだ。

画像集#010のサムネイル/旧ソニーのPC部門を受け継いだ「VAIO株式会社」がスタート。「一点突破の発想と審美眼」を持つPC作りを目指す 画像集#011のサムネイル/旧ソニーのPC部門を受け継いだ「VAIO株式会社」がスタート。「一点突破の発想と審美眼」を持つPC作りを目指す
記者会見で配られた名刺入れ(左)。VAIO Proを模したデザインで,内側には液晶パネルやキーボード,側面にはインタフェース類がレーザーで刻印されている(右)。VAIO社の製品というわけではないが,同社製品が持つ細部へのこだわりを表現したものといえよう

VAIO 公式Webサイト


  • この記事のURL:
4Gamer.net最新情報
プラットフォーム別新着記事
総合新着記事
企画記事
スペシャルコンテンツ
注目記事ランキング
集計:04月27日〜04月28日