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国内最年長のプロ格闘ゲーマー,sako氏インタビュー。変化しつつある活動内容と現在の心境,プロを目指す若手へのアドバイスを聞いた
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印刷2020/09/08 12:00

インタビュー

国内最年長のプロ格闘ゲーマー,sako氏インタビュー。変化しつつある活動内容と現在の心境,プロを目指す若手へのアドバイスを聞いた

 KADOKAWA Game Linkageがプロデュースするeスポーツチーム・FAV gamingに所属するプロゲーマー,sako氏。Capcom Cup優勝などプロゲーマーとして華々しい活躍を見せる一方で,ゲーム周辺機器を製造,販売するHORIの公式アンバサダーとしても活動しており,氏が監修を務めたアーケードコントローラ「ファイティングエッジ刃」を愛用している格闘ゲーマーも多いことだろう。

EVO Japan 2020より
画像集#003のサムネイル/国内最年長のプロ格闘ゲーマー,sako氏インタビュー。変化しつつある活動内容と現在の心境,プロを目指す若手へのアドバイスを聞いた

 今回4Gamerは,国内最年長のプロ格闘ゲーマーとして活躍を続けるsako氏にZoomを介してインタビューを行う機会を得た。新型コロナウイルスの流行により,変化しつつあるプロゲーマーの活動内容や現在の心境のほか,eスポーツ文化の盛り上がりやプロゲーマーを目指す若手へのアドバイスなども語られているので,ぜひ読み進めてほしい。


Capcom Pro Tour予選を振り返る。オンライン大会のメリットとデメリット


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。先日,Capcom Pro Tour アジア・東予選大会が実施され,sakoさんも出場しました。大会を戦い抜いた感想を聞かせてください。

sako選手:
 自分の結果は13位タイでした。強豪選手の多い東アジア地区なのでそんなに悪い結果ではないかもですが,今年のCapcom Pro Tourのシステム的には厳しかったですね。ただ,負けた選手がふ〜どとももちで,負けたことは悔しいものの納得できる相手でした。課題も見つかったので,今後につながる大会になったんじゃないでしょうか。

4Gamer:
 そのふ〜どさんやももちさんと,大会前後に対戦はしていましたか。

sako選手:
 いえ,しばらく対戦する機会はなかったんですけど,2人とも個人配信をしているのでどんな動きしてるのかなーってよく“偵察”には行ってました。ももちとは同キャラを使っていることもあって,情報交換はよくしています。

4Gamer:
 今年はCapcom Cupの予選大会がすべてオンラインに変更されました。オンとオフそれぞれに良し悪しがあると思いますが,実際に参加してみて何か思うところはありましたか。

sako選手:
 オンライン大会だと対戦相手によっては通信が安定しないことがあって,そこはやっぱり気になりました。ただ移動時間がまったくないのは大きなメリットで,コンディションの調整がしやすかったですね。毎月何度も海外大会に行くとなると,どうしても移動で疲れたり,時差ボケもあったりで大変なんですよ。
 あとは対戦相手の表情が見えないのはデメリットに感じました。言葉は通じなくても表情や雰囲気で相手がどんな人なのかわかったり,「ゲーム好きそうやな」ってうれしくなったりするオフライン大会ならではの良さがあったんですが,そればかりはオンラインではなかなか補えないですから。

4Gamer:
 オンとオフどちらかを選ぶとしたら。

sako選手:
 ただ単にゲームをするだけなら1人でやるのが好きなんですけど,大会の場合はオンもオフもいいところがたくさんあるように感じます。どちらとは決められないですね。

4Gamer:
 大会で優勝したのは,sakoさんと同じくプロゲーマー黎明期から活躍するウメハラさんでした。

sako選手:
 ウメちゃんはやっぱりレジェンドだなって思わせてくれました。練習をすべて配信して,若手にもアドバイスを送り,手の内をすべて見せている中での優勝ですから文句の付けようがありません。ほんとおめでとうの一言です。

4Gamer:
 sakoさんは大会では新キャラのセスを使用していました。sakoさんと言えば昔から新しいキャラを積極的に使う傾向にありますが,何かポリシーのようなものはあるのでしょうか。

sako選手:
 そもそも自分はゲームをするとき,楽しそうなものを触りたいんです。新しいキャラって未知数だし,どんな動きをするのかも気になって。それで練習しているうちに自然とメインキャラになっていることが多いんじゃないかな。

4Gamer:
 ただ,新キャラの中でもやはり強いとされるキャラをメインに据えている気はします。

sako選手:
 もちろん,戦っていくうえで最低限の武器が揃っていることは前提になります。勝つことも仕事の一環ではありますが,なにより自分が負けず嫌いなので(笑)。手をかけてやると強くなるような,面白くてのびしろがあるキャラが好きですね。今だとセスと並行して影ナル者も使っていますが,現在はそんなに強くないイメージを持たれていますよね。世間の評価はまだ低いですけど自分は戦えると思っていて。半年後や1年後には化けている可能性もありますよ。

4Gamer:
 sakoさんが発掘したキャラですと,ウルトラストリートファイターIVのエレナは素晴らしい活躍を見せていました。

sako選手:
 エレナも自分からすればいくらでも強い武器を持ってるのに,なんでみんな気付かないんだろうって感じでした(笑)。ヒーリングがあるから体力が実質1.5倍あるわけですし。

4Gamer:
 強みに気が付く嗅覚が人よりも優れているのでしょうか。

sako選手:
 優れているかは分かりませんが,出たキャラはとりあえず全部触っています。触ってみないと分からないことは多いんです。触るといってもちょっとではなくて,1か月くらいはみっちり練習して結論を出す。そこまではほかの人もやっていないかもしれません。

4Gamer:
 新キャラ繋がりの話をしますと,シーズンVの新規参戦キャラとして,ダン,ローズ,オロ,あきらが発表されました。

sako選手:
 まずダンですけど,正直に言ってしまうと期待していないですね(笑)。

4Gamer:
 やはりストリートファイターの歴史から見てそんなに強くならなそうでしょうか。

sako選手:
 カプコンさんもあまり期待されていないことは分かってると思うので,手を加えてきそうな感じはします。これまで通りのダンでなく,使っていて面白いキャラにしてほしいですね。

4Gamer:
 そのほかのキャラについてはいかがですか。

sako選手:
 ローズはストIVで触っていたので気になっていますし,オロは設定上,最強クラスのキャラなんで,どう調整してくるか楽しみですね。あきらはジャスティス学園でお世話になったキャラで,ストVでの活躍にも期待したいです。

画像集#006のサムネイル/国内最年長のプロ格闘ゲーマー,sako氏インタビュー。変化しつつある活動内容と現在の心境,プロを目指す若手へのアドバイスを聞いた


配信活動はakikiさんに乗っかる形でスタート。気が付いたら生活の一部に


4Gamer:
 Capcom Pro Tourのオンライン化もそうですが,新型コロナウイルスの世界的な流行により,プロゲーマーの活動内容も大きく変化しつつあるように感じています。sakoさんはどんなところが変化しましたか。

sako選手:
 例年であれば,今頃は海外大会で飛び回っている時期だと思うんですが,今年はすべてなくなってずっと家で練習や配信をしています。もともと家で練習するのは大好きなんで,気持ち的に辛いとかはありませんが。

4Gamer:
 先日ウメハラさんにもインタビューをしたのですが,練習内容もかなり変化しているとおっしゃっていました。

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 2020年7月25日,26日に実施された「Capcom Cup 2020」の予選大会「Capcom Pro Tour Online 2020」アジア東1予選大会を勝ち抜いたウメハラ選手のインタビューをお届けする。予選大会を振り返ってもらうだけでなく,近況や本戦への意気込みなども聞いてきたので,ぜひ読み進めてほしい。

[2020/08/06 17:00]

sako選手:
 それは間違いありません。例年のように大会が続くと,どうしても次の大会に勝つための練習が必要になるんです。有力選手への対策だったり,負けた試合の反省だったりという。でも,今は時間的にも余裕があって,目先の勝ちを拾う練習じゃなくて,遠回りに強くなる練習ができる。結果的に自分のプラスになっています。

4Gamer:
 そのほかでは何かありますか。

sako選手:
 家にずっといることで,個人配信に力を入れられるようになりました。家族と一緒にゲーム配信をするようにもなりました。

sako氏のTwitchチャンネル「sakonoko_game」
https://www.twitch.tv/sakonoko_game

4Gamer:
 最近の個人配信ですと,ウメハラさんらと一緒にプレイしている「Project Winter」が強く印象に残っています。協力プレイや対戦型のネットゲームは普段から遊ばれているのでしょうか。

sako選手:
 実はネットゲームはめちゃくちゃ好きなんですよ。ただ,始めると抜け出せなくなるから,やらないようにしていたんです。

4Gamer:
 本業である格闘ゲームが疎かになってしまうと?

sako選手:
 その通りです。ただ,ウメちゃんがせっかく誘ってくれたものを断るわけにはいかんだろうと(笑)。ゲーム自体もすごく面白かったんですけど,それ以上に配信と相性がいいなと思っていて,みんなが個人配信をしているから,それぞれの視点で楽しめるのがいいですね。終わった後にほかの人の配信を見てしまうくらい好きです。そのほかだと,最近は子供と一緒に「どうぶつの森」を遊んだり,「アメリカン トラック シミュレーター」をプレイしています。

4Gamer:
 sakoさんはこれまであまり配信活動をしてきませんでしたが,今ではかなり積極的にTwitchで配信をしています。何か配信を始めたきっかけがあったのでしょうか。

sako選手:
 きっかけはマネージャーである嫁(akikiさん)がPS4で配信を始めたことです。自分はあまり人前でしゃべるのが得意じゃないので,配信を練習させるつもりで始めたみたいなんです。最初はリビングで配信している嫁にアドバイスを送る程度だったんですが,やっているうちに「ちょっとプレイして見せてよ」「ちょっと顔出してよ」って振られて,気が付いたら自分がメインになってました(笑)。完全に上手いことハメられたなって感じですが,今は配信が楽しいんできっかけを作ってくれた嫁には感謝しています。

4Gamer:
 配信をやってみて面白いと感じた部分はどこになりますか。

sako選手:
 ゲーム好きが集まってくれることですね。大人になるとなかなか同じ趣味の人と出会う機会ってないじゃないですか。とくにゲームってインドアな趣味なので,同じゲームが好きな人とライブで話せる機会は本当に少ない。自分の配信でゲーム好きが集まって話を盛り上がっているとうれしいですし,自分が好きなゲームにも興味を持ってもらえる。配信をしていて本当に楽しいですし,居心地がいいです。

4Gamer:
 新型コロナの流行で家で配信を楽しむという人も多くなったと思います。そのあたりで,変化を実感することはありますか。

sako選手:
 外出自粛のストレスを配信視聴で解消しているという話はよく聞きますね。気軽に友人と集まれない状況ですが,同じ趣味の人が集まるチャンネルでコミュニケーションが取れることは,自分自身も気持ち的にすごく助かっています。また,自粛の影響だと思いますが,昼間から視聴してくれる人が増えましたし,ライブを視聴する習慣が付いたのか視聴数は以前より伸びています。自分もトレーニング中にTwitchの配信を流すことが増えましたし,生活の一部のようになってきています。

4Gamer:
 今後配信で遊ぶ予定のタイトルは何かありますか。

sako選手:
 「Project Winter」が面白すぎたので,知り合いのゲーマーと遊べるコンテンツを何か探したいとは思っています。

4Gamer:
 そこまで「Project Winter」が好きなのであれば,sakoさん主体でメンバーを集めてプレイしても面白そうですね。

sako選手:
 自分が主体になってメンバーを集めるのって,ちょっと苦手なんですよ。飽き性な部分もあるので,急に飽きたらみんなに悪いですし。ただ面白いゲームだし,やりたいのは間違いないのでみんなに相談してみようかなとは考えています。

4Gamer:
 sakoさんといえばほかのプロゲーマー以上にゲームが好きな印象があります。とくに好きなジャンルなどはありますか。

sako選手:
 その質問は困りますね……好きなジャンルが多すぎて(笑)。今だとハクスラ系やダークファンタジーにハマってるけど,パズルもシューティングも音ゲーも好きだし,なんでも好きです。

4Gamer:
 あらゆるジャンルが好きとなると,話題のゲームを配信をしていっても面白そうですね。今ですと「Fall Guys: Ultimate Knockout」がかなり流行していますが。

sako選手:
 そうなんですけど,そういうのって得てしてみんなと被るから,そこがどうなんだろって思うところがあって悩ましいです。あと,自分は配信受けを狙っているわけではなくて,みんなに見せたいゲームややりたいゲームを選んで配信しているので。

4Gamer:
 練習や配信にこれまで以上に力を入れているとのことですが,1日のスケジュールはどんな感じでしょうか。

sako選手:
 自分は朝6時に起きて,ストVの朝練をしています。家族が起きたら一緒に朝食を食べて,子供を保育園に連れていって,そこからまた昼まで練習です。昼食を食べた後に1時間ほど昼寝をして,夕方までは配信か練習ですね。夕方以降は家族で夕食を食べたり,遊んだりして,寝る前にもう1回練習してから22時か23時には寝ていることが多いです。

4Gamer:
 かなり規則正しい生活ですね。これは今の時期だけとかではなく,昔からのルーチンですか?

sako選手:
 基本的にはそうなんですけど,これまでは海外大会があったので,どうしても時差の関係で崩れたり,日本に帰ってきて寝られないことはありました。ここ数か月は規則正しい生活を送れていて,とても快適です。

4Gamer:
 1日のスケジュールを聞くとかなりゲームをプレイしているように思えますが,1日に何時間くらいプレイしているのでしょうか。

sako選手:
 起きてる時間は全部ゲームです(笑)。ストVの練習はずっとしていますし,並行してスマホゲーも遊んでいます。寝る時とお風呂の時以外は全部ゲームしてますね。ご飯を食べているときもつい触ってしまいます。

4Gamer:
 そこまでのゲーム好きになったルーツは何かあるのでしょうか。

sako選手:
 最初にゲームに触れたのは5歳か6歳の頃で,親戚が持っていたPCゲームでした。何を遊んだかはまったく覚えていませんが(笑)。それがきっかけでおとんがMSXを買ってきて,「ザナドゥ」や「ロマンシア」をプレイしたんです。これらは幼稚園の頃ですけど,ちゃんとクリアしました。

4Gamer:
 その年齢でクリアできるのはすごすぎると思いますが……。

sako選手:
 もちろん1人じゃなくて家族のアドバイスも聞いてって感じです(笑)。それからはもうずっとゲームと一緒に人生を歩んできました。

4Gamer:
 それでは格闘ゲームとの出会いはどこからでしょうか。

sako選手:
 初代「ストリートファイター」からです。家から徒歩5分くらいの商店街に駄菓子屋があったんですけど,そこの軒先に筐体があったんです。それが初めてですね。以降はほぼすべての格闘ゲームを遊んでいると思います。

4Gamer:
 これまでに数えきれないほどのゲームを遊んでいそうですが,とくに好きな作品はありますか。

sako選手:
 格ゲーであれば「ヴァンパイアセイヴァー」。自分が格闘ゲームにハマるきっかけを作ってくれた作品なんで思い出深いですね。他ジャンルだとRPGならドラクエ1・2・3。それぞれのジャンルに好きな作品がありすぎて挙げだしたらきりがないです(笑)。

画像集#007のサムネイル/国内最年長のプロ格闘ゲーマー,sako氏インタビュー。変化しつつある活動内容と現在の心境,プロを目指す若手へのアドバイスを聞いた


ギリギリの駆け引きを楽しむことが対戦ゲームの醍醐味


4Gamer:
 プロゲーマー黎明期から活躍を続けるsakoさんから見て,近年のeスポーツの盛り上がりをどう捉えていますか。

sako選手:
 自分はプロゲーマーという職業が日本でまだ定着していないときから活動していますが,近年の盛り上がりはただただすごいですね。自分たちプロゲーマーが活動してきたことが今の状況につながっているのであれば,とてもうれしく思います。ただ,うれしいのは間違いないんですが,急激な盛り上がりに驚いている自分もいます。

4Gamer:
 プロシーンでも,これまでは古参プレイヤーの活躍が常だったものが,EVO Japanを優勝したナウマン選手やsakoさんと同じチームに所属するりゅうせい選手など,若手の活躍も目立ってきました。若手の台頭について何か思うところはありますか。

sako選手:
 若い子は吸収力がすごいですね。経験値は確かに足りないんですが,頭の柔らかさがあるし,成長速度に驚きます。我々おじさんにはそれが脅威だけど,まだなんとか経験値の差で勝てているって感じです。経験値というのは1つの格闘ゲームじゃなくて,これまでやってきた格闘ゲームの積み重ねで,何十年も続けてるわけだから,強いのは当たり前ですし,逆に若い子は1つのゲームしか知らなかったりするから考え方も偏りやすいんです。これはもうしょうがないことですが。

4Gamer:
 若手に攻略を教えることも増えてきたんじゃないですか。

sako選手:
 機会はかなり増えました。若い子が成長しないと業界も成長しないので,そこはみんなで協力していかないといけません。ただ,若手が成長することはうれしいし大歓迎ですけど,本音では攻略を教えたくなかったり(笑)。自分で考えるのが楽しいのに,何で聞いてまうねんって思うこともあります。

4Gamer:
 先日のウメハラさんの優勝もありましたし,sakoさんもEVO Japan 2020で3位に入賞するなど,ベテランの活躍も目立っています。sakoさんは今年で41歳とのことですが,衰えを感じることはあったりしますか。

sako選手:
 反応速度はやっぱり衰えているような気はしますが,経験値による引き出しはずっと増え続けています。あとこれは言葉にしにくい攻略なんですが,経験則から相手の動きが読めたりすることは多いです。eスポーツって聞くと反応速度が上回る若手のほうが有利に思えますけど,今のところトーナメントでは経験値でベテランが勝ちあがっている状況。まだまだ自分も負けたくないですし,生涯現役を貫きたいです。

4Gamer:
 若手が経験値不足とのことですが,今後経験を積むことで地力の差は縮まってくると思いますか。

sako選手:
 そこが実は難しくて,ベテランって今でも経験値を積んでいるんですよ。サボっていれば差が縮まると思いますが,そうはなっていない。若い子には難しいかもしれないけど,自分なりの上達方法も考えてみてほしいんですね。教えられて伸びることはもちろんたくさんあるけど,それだけじゃ必ず限界が来る。教えてくれた人を超えることはできないんです。

4Gamer:
 ベテランが強すぎるため,若い子が独自の攻略で勝てなくて模倣してしまうという話は聞いたことがあります。

sako選手:
 ちょっと厳しく聞こえるかもしれませんけど,若い子は負けることに対して怖がり過ぎなところがありますね。大会でもそれはすごく感じていて,ここぞという場面で勝負に出ない。そこはもっと強気に行っていいだろ! って(笑)。好きなことなんだし,もっと自由にやっていいと思うんですよ。手堅い選択肢ほど読まれやすいから,それだけ裏をかかれることにもなるわけですし。

 格闘ゲームは駆け引きが一番楽しいと思っていて,安定行動だけで勝てるのは対戦ゲームじゃなくてただのアクションゲーム。対戦していて「こいつやりやがった!」って思う瞬間が一番楽しいですし,若い子にもギリギリの駆け引きを楽しんでほしいですね。

EVO Japan 2020より
画像集#002のサムネイル/国内最年長のプロ格闘ゲーマー,sako氏インタビュー。変化しつつある活動内容と現在の心境,プロを目指す若手へのアドバイスを聞いた

4Gamer:
 若手でとくに注目している選手はいますか。

sako選手:
 カワノ君は自分で考えながら攻略しているし,考え方も柔軟でいい。反応速度も優れているし,真面目だし負けず嫌いなところもいいし,彼は絶対伸びると思っています。

4Gamer:
 プロゲーマーという職業が特別珍しくなくなっている昨今,若いプレイヤーがプロゲーマーを目指すということが増えてきました。若手に対してアドバイスや意見などはありますか。

sako選手:
 ゲームで強くなることを目指すのと,プロゲーマーを目指すのはまた別の話だと思っています。自分なんかはプロゲーマーになったときは兼業でした。今後どう変わっていくか分からなかったし,いきなりプロを辞めないといけないこともあると思ったからです。まだ手応えもないのに,ほかのすべてを諦めてプロゲーマーだけを目指すという考え方は危ないかなと感じますし,とくに社会に出ていない子であれば少し引き止めたい気持ちもあります。

 キチンとしたビジョンや目標もないのにプロゲーマーになりたいって子は結構いると思っているんですが,プロゲーマーって,なるよりなったあとのほうが大変ですよ。ずっと努力を続けていかないといけないし,それでご飯を食べていけるか分からない。実際にプロになってからも,そういったリスクを背負い続ける職業ですからね。

4Gamer:
 契約がなくなってプロゲーマーを引退する人も出ています。

sako選手:
 ゲームをやっているから楽しく見えるし,実際に楽しいことも多いんですが,勝ち負けの世界だから苦しい部分もたくさんあるし,そんな中で結果を出さないといけない。応援してくれるファンやスポンサーを意識しする場面も多いし,気を使うところは山ほどありますよ。

4Gamer:
 配信文化が活発になった今ではストリーマーとして活動していく人も増えました。

sako選手:
 配信に力を入れるのはいいと思います。ゲームの結果で名を上げるもよし,配信で有名になるもよし。若い子に伝えたいのはプロゲーマーになる前に勉強や準備をしてからでも遅くないということなんです。自分のように30歳を過ぎてプロゲーマーになった者もいるくらいですから。いろいろな角度で見極めて,自分の人生の進む方向を決めてほしいと思っています。

4Gamer:
 まだまだ先行きが見えない状況が続きそうですが,今後の目標と展望を聞かせてください。

sako選手:
 ずっとこのままの生活が続くとは思っていませんが,オンライン対戦が主流になる可能性もあるため,自分たちの活動内容や練習も変えていかないといけないとは考えています。目標は直近では,Capcom Pro Tour予選と9月からのストリートファイターリーグの優勝ですね。リーグ戦はチームメンバーがかなり面白いと思いません?

4Gamer:
 ネモ選手がリーダーで,ガチくん選手,キチパーム選手,sakoさんの4人ですよね。

sako選手:
 今回もBANルールがありますけど,誰がBANされてもほかの人が機能するチームだと思っています。自分もセスがBANされてもメナトや影ナル者を用意していますし。

4Gamer:
 ライバルで注目しているチームはどこになりますか。

sako選手:
 やっぱりウメちゃんチーム。ウメハラ,カワノ,まちゃぼー,ナウマンってメンバーが強すぎる(笑)。これだけ強いと燃えますよね。ここは絶対に倒したい。

4Gamer:
 最後に読者やファンにメッセージがあればよろしくお願いします。

sako選手:
 毎週水曜日にTwitchで定期配信をやっているのでぜひ遊びにきてください。結構ゆるっとやっているんで,大人の方はつまみ片手にお酒でも飲みながらラジオ感覚で楽しんでもらえればと。本業の格闘ゲームは,Capcom Pro Tour予選とストリートファイターリーグに向けて仕上げていきます。こちらもぜひ応援よろしくお願いします。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

――2020年8月6日収録

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