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【Jerry Chu】「自由」という“諸刃の剣”
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印刷2017/08/26 12:00

連載

【Jerry Chu】「自由」という“諸刃の剣”

Jerry Chu /  香港出身,現在は“とあるゲーム会社”の新人プログラマー

Jerry Chu「ゲームを知る掘る語る」

Twitter:@akemi_cyan


「自由」が最大の魅力


 「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」Nintendo Switch / Wii U 以下,「BotW」)のために,Nintendo Switchを購入した人は多いだろう。筆者もその1人だ。
 これまでに「ゼルダの伝説」シリーズを遊んだことはなかったが,多数の絶賛の声を耳にするうちに「やはりプレイせずにいられない」と思うようになった。

 広大な世界を探索できるオープンワールドゲームは多数存在するが,広大な世界を「自由に探索できる」ことが「BotW」の魅力だ。
 本作のディレクターを務める藤林秀麿氏は,そのコンセプトについて「強制される道順はありません」「どこからでも攻略していけるという自由度」と語っている(関連記事)。

ゼルダ | ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド

 奪われた4体の神獣を解放して,厄災ガノンを倒す。これがプレイヤーに課せられた目的だ。
 リンクは「始まりの台地」で目覚め,パラシュートを持ってハイラルの大地に降り立つ。そして,この瞬間からハイラル全域を自由に探索できる。メインクエストのために東を目指すもよし。メインクエストを無視して,ガノンが巣食うハイラル城に直行してもよし。世界の危機を歯牙にも掛けず,ただ世界を放浪するもよし。世界各地の祠を探し出し,祠の試練に没頭するもよし。
 ストーリーに縛られることなく,壁や扉に阻まれることもなく,広大な世界を自由に闊歩できるのは爽快だ。


「BotW」はどのようにして「自由」を実現したのか


 「BotW」における「自由」は,「最初からマップのどこでも行ける」「ゲームをどの順序でも攻略できる」というものだ。これを実現するために,ゲームのクリアに必要なアイテムを最初からプレイヤーに与えている。
 そのアイテムとは「リモコンバクダン」「マグネキャッチ」「ビタロック」「アイスメーカー」,そして空を滑空できる「パラシュート」である。これらは爆発によって壁を壊したり,時間の流れを止めたりするといった魔法的な能力であり,祠の試練やダンジョンの攻略,ボスの撃破に必要不可欠なものだ。

磁力で金属を動かす「マグネキャッチ」
ゼルダ | ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド

 これらのアイテムは,始まりの台地ですべて手に入る。リンクが目覚めた始まりの台地は高地なので,パラシュートを使わなければハイラルの大地に降りられない。
 そこでプレイヤーはパラシュートを入手するために,試練の祠を攻略して4つのアイテムを集めることになる。つまり,ハイラルの大地に降り立った時点で,メインクエストのダンジョンとほとんどの祠を攻略するときに,プレイヤーは必要なアイテムを持っているというわけだ。

 「すべてのアイテムやアビリティが最初から使える」というアクションアドベンチャーゲームは,かなり珍しい。ゲームの開始直後,主人公は一部の能力しか使えず,進行状況に応じて新しいアイテムやアビリティが開放されるケースが多いのではないだろうか。
 例えば,「大神」「ライズ オブ ザ トゥームレイダー」では,10種類近くのアイテムやアビリティを駆使して攻略していくことになるが,これらは最初からすべて使えるものではない。

多くのアクションゲームには,特定のアイテムを開放しないとアクセスできないポイントが存在する(「ライズ オブ ザ トゥームレイダー」)
ゼルダ | ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド

 このように主人公の能力に制限を設ける仕組みは,ゲームデザインにおいて「ゲート(gate)」と呼ばれる。初心者にいきなり10種類ものアイテムを与えても,使いこなせるわけがない。アイテムを一つずつ開放して,プレイヤーが使いこなせるようになってから,次のアイテムを与えるほうが飲み込みやすいだろう。以前は通れなかったルートを新しいアイテムで切り拓いたときの達成感も得られる。

※ゲームデザインにおいて「ゲート」を用いた例として,Josh Bycer氏の「Examining Gating in Game Design」がある。

 ゲームの中盤に重要なスキルが開放されるケースもある。「Middle Earth: Shadow of Mordor」はオークを次々となぎ倒していくアクションゲームだが,中盤以降には敵を支配して部下にする能力が開放される。オークを支配して同士討ちさせることが可能になり,戦術の幅が大きく広がる。

「敵を支配する」能力を身につけることで,オークを支配する,魔物に騎乗するといった戦術が可能になる(「Middle Earth: Shadow of Mordor」)
ゼルダ | ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド

 近未来の宇宙ステーションを舞台とする「Prey」では,ゲームの中盤にエイリアンの能力が習得できる。「近くのオブジェに擬態する」「敵をマインドコントロールする」といったスキルが使えるようになり,それまでとは攻略法がガラリと変わる。
 だが,エイリアンの能力を習得すると,自動砲塔が主人公をエイリアンと認識して攻撃してくるようになる。これまでは味方だったものが敵になり,プレイヤーは考え方を見直さなくてはならない。

エイリアンをスキャンして能力を獲得するアイテムが得られると,それまでとは攻略法が大きく変わる(「Prey」)
ゼルダ | ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド

 「Middle Earth: Shadow of Mordor」と「Prey」では中盤に重要なスキルが開放されることで攻略法が変化し,後半に入っても新鮮さと刺激が失われない。
 しかし,「BotW」は「中盤にスキルを開放される」というデザイン手法を取らない。メインクエストをクリアしないと攻略に必要なアイテムが入手できないようでは,特定の道順をプレイヤーに強制することになってしまう。これでは「自由」とは呼べない。
 その点,攻略に必要なアイテムを最初からプレイヤーに与えておけば,「アイテムがなくてパズルが解けない」という心配はなく,自由に世界を探索させることができる。


ゲートのない世界


 「BotW」はゲートを設けず,ゲームの進行に必要なアイテムを最初からプレイヤーに与えている。それはマップに関しても同様だ。

 一般的にオープンワールドゲームでは一部のエリアにゲートを設け,ストーリーの進行に応じてエリアが開放されていく。例えば「Grand Theft Auto III」「Grand Theft Auto IV」では,全体マップが複数の島に分かれており,ミッションをクリアすると新しい島に渡れるような仕組みになっている。「Horizon Zero Dawn」では,主人公が村の危機を救い,村人の信頼を得てから初めて故郷を離れ,広大な世界へと旅立てる。

 オープンワールドなのに,なぜマップにゲートを設けるのか。その理由はいくつも考えられる。初心者にいきなり高難度のエリアに行かせても,早々に挫折するだけだ。プレイヤーがゲームに慣れるに従って,徐々に難度の高いエリアを開放するほうが,プレイヤーはモチベーションを保ちやすい。
 ミッションをクリアして新たなエリアが開放されるのは,難関を乗り越えたプレイヤーへのご褒美だ。未知のエリアに足を踏み入れるときの期待感と高揚感も与えられる。

「BotW」にはゲートがなく,見渡す限りの大地を自由に駆け抜ける
ゼルダ | ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド

 だが,「BotW」のマップにはゲートがほぼない。ほとんどの壁は自力で乗り越えられる。スタミナが許す限り,どこまでも登れる。ミッションをクリアしないと到達できないエリアもない。

 「Fallout 4」「The Elder Scroll V: Skyrim」といった自由度の高いRPGでは,メインクエストの順番が決まっている。一方,「BotW」は4体の神獣をどの順番で攻略するのかはプレイヤーの自由で,しかも神獣を1体も起動させなくてもラスボスを倒せる。

 「BotW」のゲームデザインには近年の大作の面影が多く見られる。ファンタジー世界を冒険する感覚は「The Elder’s Scroll V: Skyrim」に近く,無人の平野を一人歩く姿は「ワンダと巨像」を思わせる。どんな難関にも複数の解法が用意されているゲームデザインは「Deus Ex」シリーズに似ている。

 こうした要素を取り込みながら,「BotW」はほかのゲームを盲従することはなかった。「アイテムやアビリティをストーリーに沿って,一つずつ開放する」「マップにゲートを設ける」「メインクエストを決められた順番で攻略する」という定石を拒否して,「序盤からキーアイテムをすべて与える」「最初からマップ全域を開放する」「メインクエストをどの順番でもプレイできる」という独自の構造を築いた。既存のゲームの常識から逸脱することで,それらとは一線を画した自由度を実現している。


自由の裏返しは平凡である


 「自由」には代償がある。「ゲームクリアに必要な能力を最初に与える」ということは,裏返せば「ゲームを進めても新しい能力を習得することはない」。正確には,新しい能力がまったくないわけではない。「BotW」では神獣を解放したり,アイテムを強化したりすると,新しい能力が得られる。
 ただし,これらは主に戦闘用の便利スキルであって,新しい道を切り開いたり,ゲームに劇的な変化を与えたりするものではない。とあるサイドクエストをクリアすると,写真を撮影して図鑑を作れるアイテムを入手できるが,これはオマケ要素だろう。

 「BotW」には,「Middle Earth: Shadow of Mordor」や「Prey」のように中盤からゲームがガラリと変わる驚きはない。「ライズ オブ ザ トゥームレイダー」のように新しい装備を一つずつ入手して,「常に何かを学習している」という喜びもない。

 また,「4体の神獣をどの順番で攻略してもいい」ということは,「どの順番でも攻略できるように,難度が均等に調整されている」ことを意味する。神獣のクエストはメインストーリーの骨幹を根幹を成すものだが,いずれも大まかな流れはよく似ている。

神獣のダンジョンは,いずれも同じような流れで攻略を進めていく
ゼルダ | ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド

 「BotW」を始めてからの10時間は,アイテムの使い方を模索したり,武器を試したり,祠のパズルに挑戦したり,未知なる大地を探索したりと,さまざまな驚きに満ちていて楽しかった。
 ただ,最初の神獣を解放してゲームのコツをつかんだ頃から,驚きが褪せて作業感がだんだん強くなってきた。ゲームを大幅に変えるような新能力がないため,先の展開に期待を持てない。こちらはどんどん習熟していくのに,メインクエストの難度に起伏が少ない。ほとんどの武器はいずれ壊れるので,宝探しのモチベーションが低く,成長しているという実感が薄かった。

メインクエストをクリアすると入手できる武器は,いずれ壊れてしまうのでありがたみをあまり感じられない
ゼルダ | ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド

 「最大限の自由度」を実現するために,「BotW」は「ゲート」を極力排除した。しかし,そこにはデメリットも伴うということだ。
 「BotW」を叩いていると思われるかもしれないが,「BotW」は間違いなく名作だ。ゲームデザインの常套である「ゲート」から逸脱したことは,大胆かつ独創的な発想だ。クリエイターの意図に縛られず,大地を自由に駆け抜ける。物理と化学を駆使して,パズルを自分なりに解く。心に残る体験が満載で,「オープンワールドゲームの傑作」という世間の評価も大いに頷ける。

 だからと言って,「あらゆるオープンワールドゲームは『BotW』を見習うべき」とは思わない。プレイヤーを制限しない「BotW」は斬新だが,巧みなレベルデザインでプレイヤーを一歩ずつ誘導していく従来のオープンワールドゲームには,「BotW」とは違う楽しさがあるからだ。
 「BotW」は「ほかのオープンワールドゲームより優れている」というより,「ほかのオープンワールドゲームとは違う楽しさを狙った」という表現がしっくり来る。

 ほとんどのオープンワールドゲームがゲートを設けているのは,すべてのプレイヤーがスムーズにゲームを進められるようにするためだ。そこで,クエストの順番と装備開放のタイミングを慎重に設定している。
 対して,「BotW」はゲームデザイナーによる縛りを極力無くし,プレイヤーに最大限の自由を与えた。「ゲートを排除する」という手法は見事に奏功したが,一利一害であると感じる。

 今回は「BotW」の卓越した自由度を取り上げたが,あらゆる難関に複数の解法があるという本作のゲームデザインもまた語るに値する。次回も「BotW」に焦点を当ててみたい。

■■Jerry Chu■■
香港出身,現在は“とあるゲーム会社”の新人プログラマー。中学の頃は「真・三國無双」や「デビルメイクライ」などをやり込み,最近は主に洋ゲーをプレイしている。なるべく商業論を避け,文化的な視点からゲームを論じていきたい。
  • 関連タイトル:

    ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド

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