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「そうだ アニメ,見よう」第36回は「ようこそ実力至上主義の教室へ」。岸 誠二氏×橋本裕之氏で描かれる新たな学園黙示録
一部のファンに絶大な人気を誇る,ほのぼのアニメ「ご注文はうさぎですか??」の劇場版が,2017年11月11日より全国40館で上映される。監督を務めているのは美少女アニメに定評のある橋本裕之氏。可愛いキャラを描かせたら業界一と呼ばれる,その橋本氏の最新作が,今回紹介する「ようこそ実力至上主義の教室へ」だ。
「そうだ アニメ,見よう」第36回のタイトルとなる本作は,衣笠彰梧氏によるライトノベルが原作で,既刊1〜6巻がMF文庫Jより発売されている。制作スタジオはLerche,監督は橋本氏と「暗殺教室」や「月がきれい」の岸 誠二氏による,異例の2人体制となっている。
「ようこそ実力至上主義の教室へ」
さらに,生徒に現金と同価値で,学校の敷地内であれば何でも買える「プライベートポイント」を月10万円分与えたうえに,授業中の私語や居眠りなどサボタージュを黙認していた。そんな夢のような高校生活の中で,散財を続けるクラスメイト達。
1か月後,毎月もらえるはずの10万円分のポイントが振り込まれずざわつくDクラスの生徒たちは,担任教師の茶柱佐枝(CV:佐藤利奈)から,学校の評価を徹底的に落としたたためポイントが帳消しになったことを告げられる。この学校では,AからDの各クラスは生徒の能力によって分けられており,Dクラスは「不良品」と呼ばれる生徒が集まる落ちこぼれクラスだったのだ。
そんな中,自分がDクラス配属であることに納得できない堀北鈴音(CV:鬼頭明里)は,このクラスをAクラスへ昇格させるべく,清隆に協力を求めるのだった。
やる気なしオーラ全開の清隆。クラスでも目立たない存在だったが…… |
鈴音の兄は歴代最高とも言われる生徒会長だ |
「うまい話には裏がある」。本作の第1話を見た直後にそんな言葉が頭に浮んだ。本作の舞台となるのは,かなり特殊な学校。敷地内に巨大な複合モールが存在し,生徒はすべてマンションのような寮での生活を強制され,行動も敷地内の監視カメラで監視される。
この閉じた空間で,生徒達は“すべてのものがプライベートポイントで購入可能”というルールのもと,ポイントを巡って熾烈な戦いを繰り広げるのだ。それを知らされるのが,1か月後というのはどうなの,と思わなくもないが,大人の社会では「知りませんでした」ではすまされない。社会の厳しさを経験させるという意図が,そこには隠されているようだ。
そんなサバイバルゲームの主人公となるのが,一見まるでやる気のない男子生徒の清隆だ。彼は「ただ平穏な生活を送りたいだけ」と言いながらも,クラスメイトの危機を持ち前の機転で救う。しかも,常に誰か別の人物の手柄になるように配慮し,決して自分が前に出ようとはしない。
この“厨二ゴコロ”をくすぐる主人公が,じつは入学試験の全教科をわざと50点で揃え,かなりの体術の達人だというのだから堪らない。
本作はこの“実力を隠したがる”主人公を中心に,ひと癖もふた癖もあるキャラクター達が錯綜する学校群像ドラマなのだ。
協力して欲しいと清隆に持ちかける鈴音 |
Sポイントを巡るクラス同士のサバイバルマッチ
各クラスのプライベートポイントは,普段の生活態度やテストの順位などによって変動する「クラスポイント」で支給ポイントが決定され,他人への譲渡も可能となる。“学校敷地内のすべてのものがプライベートポイントで購入可能”という,このルールがなかなかのクセ者で,物品だけでなく,「え,そんなものまで?」と目を疑うものまでやり取りできるのが特徴だ。
第3話で,清隆は中間テストの過去問題を先輩から購入し,さらにただ1人赤点だった須藤(CV:竹内栄治)の点数を茶柱から買い取るという荒ワザを見せた。1点につき10万ポイントという膨大なポイントをふっかけられるが,鈴音の協力を得ることでこれをクリア。この「東京都高度育成高等学校」が,特殊な学校であることを再認識させる回となった。
クラスポイントを増やしていけば,最上位のAクラスへの昇進が可能になるという。鈴音の要望でAクラス昇格を手伝うことになった清隆だが,もちろんB,CクラスもAへの昇格を狙っている。今後はほかのクラスとの対決が見どころとなりそうだ。
入学1か月の時点でDクラスのポイントはゼロ。厳しい状況と言わざるを得ない |
ほかのクラスに仕掛けられた罠も“知力”で回避 |
裏の顔を持つDクラスの生徒達
最低ランクのDクラスだが,じつはテストの成績が悪い生徒が集められたクラスというわけではない。鈴音をはじめ,高円寺六助(CV:岩澤俊樹)のようにトップクラスの成績の者も何名かいるのだ。
彼らは,なぜDクラスへ配属されたのか? それはこの学校で実力として判断されるのが,協調性やコミュニケーション能力,運動能力なども含まれるから。
友達をたくさん作りたいと言いながら,裏の顔を持つ櫛田桔梗(CV:久保ユリカ)や,気が弱くネットの中でだけしか自分を解放できない佐倉愛里(CV:M・A・O)など,どこかに問題を抱える生徒達を,「Angel Beats!」や「暗殺教室」など数多くの学園ものを手がけてきた岸監督は,それぞれ個性的に描いている。
また,暗い部分を持つ女性キャラクターが陰気なだけでなく,キュートさを失わないのは,橋本監督の手腕によるものだろう。“ダブル監督”という異例の体制はこうした部分で機能しているようだ。
内向的な愛里だが,ネットの中ではアイドルとして活躍 |
実力を隠す理由も,この学校へ入学した理由も分からない主人公の清隆。第6話の最後に彼の幼い頃の姿が回想シーンとして登場したが,その姿は白い服を着た謎めいたものだった。
鈴音だけでなく,さまざまなキャラクターが注目しだした彼の過去が,今後の物語のキーとなるのは間違いない。謎が謎を呼ぶ展開でグイグイ視聴者を引っ張る本作から,しばらくは目が離せなくなりそうだ。
なお,公式サイトには清隆役の千葉翔也さんをはじめとした主要キャストのインタビューと,岸&橋本監督による対談が掲載されている。清隆のぼんやりとした口調の理由など,気になるエピソードが語られているので,そちらも合わせてチェックしておこう。
「ようこそ実力至上主義の教室へ」公式サイト
放映データ |
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2017年7月〜 |
全12話 |
キャスト | |
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綾小路清隆:千葉翔也 | 堀北鈴音:鬼頭明里 |
櫛田桔梗:久保ユリカ | 佐倉愛里:M・A・O |
軽井沢 恵:竹達彩奈 | 平田洋介:逢坂良太 |
高円寺六助:岩澤俊樹 | 須藤 健:竹内栄治 |
池 寛治:阿部大樹 | 山内春樹:岩中睦樹 |
幸村輝彦:郷田 翼 | 坂柳有栖:日高里菜 |
葛城康平:日野 聡 | 一之瀬帆波:東山奈央 |
神崎隆二:若山晃久 | 龍園 翔:水中雅章 |
伊吹 澪:小松未可子 | 堀北 学:梅原裕一郎 |
橘 茜:小原好美 | 茶柱佐枝:佐藤利奈 |
星之宮知恵:金元寿子 |
スタッフ |
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原作:衣笠彰梧 (MF文庫J「ようこそ実力至上主義の教室へ」/KADOKAWA刊) |
キャラクター原案:トモセシュンサク |
監督:岸 誠二×橋本裕之 |
助監督:木野目 優 |
シリーズ構成:朱白あおい(ミームミーム) |
キャラクターデザイン:森田和明 |
サブキャラクターデザイン:前川 舞,近 響子 |
総作画監督:市川美帆,藤田亜耶乃 |
プロップデザイン:廣瀬智仁,小柏奈弓 |
美術監督:羽根広舟 |
美術設定:九重勝雄 |
色彩設計:加口大朗 |
3DCGI:ラークスエンタテインメント |
CGディレクター:内山正文 |
撮影監督:平川竜嗣 |
編集:坂本雅紀(森田編集室) |
音楽:高橋 諒 |
音楽制作:ランティス |
音響監督:飯田里樹 |
音響効果:奥田維城 |
音響制作:ダックスプロダクション |
アニメーション制作:Lerche |
製作:ようこそ実力至上主義の教室へ製作委員会 |
■Blu-ray&DVD情報
ようこそ実力至上主義の教室へ 第1巻
2017年10月4日発売
初回生産特典
(1)キャラクター原案・トモセシュンサク描き下ろし全巻収納BOX
(2)キャラクター原案・トモセシュンサク描き下ろしアウターケース
(3)キャラクターデザイン・森田和明描き下ろしデジパック
(4)原作・衣笠彰梧書き下ろしオーディオドラマCD
(5)スペシャルブックレット(16P)
(6)イベントチケット優先販売申込券(第1次抽選)
毎回特典
(1)オーディオコメンタリー
(2)原作・衣笠彰梧書き下ろしWEB 予告
(3)ノンクレジットOP
収録話:第1話 第2話 第3話
収録分数:本編約75分+特典映像
Blu-ray品番:ZMXZ-11371 本体価格:9,000円(本体)+税
仕様:1層ディスク 画面サイズ:16:9(1080p High-Definition) 音声:リニアPCM
DVD品番:ZMBZ-11381 本体価格:8,000円(本体)+税
仕様:片面1層 画面サイズ:16:9(スクイーズ) 音声:リニアPCM
発売・販売元:株式会社KADOKAWA
(C)衣笠彰梧・KADOKAWA刊/ようこそ実力至上主義の教室へ製作委員会
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