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結のほえほえゲーム演説:第59回「レトロゲームと演劇の共通項」
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印刷2018/04/21 18:39

連載

結のほえほえゲーム演説:第59回「レトロゲームと演劇の共通項」

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 ごきげんよう。女優・タレントとして活動しております,です。

 現代には,外に出ずとも楽しめる娯楽が多すぎると思いませんか? ゲーム,アニメ,ドラマ,映画なんかは,近年とくにネット配信の充実っぷりが素晴らしく,新作ゲームはダウンロードに対応していますし,動画配信サービスも需要に応じてさまざまなものが提供されています。そのうえ,大概の生活必需品はAmazonで購入できるわけで……。

 家から出る必要がない!!!!!!

 ない。ないんです。や,私があらためて言うまでもなく,本当にないんですよ。

 そんな現代において,家から出なければ味わえない娯楽の一つが「演劇」です

 演劇のチケットの値段は,3000円程度のものから,1万円を越えるものまでさまざまです。ゲームで例えるならダウンロード価格と初回特典付限定版価格くらいの幅があります。とはいえ,一本のゲームで遊べる時間の長さなんかと比べると,値段のハードルは決して低くはないと思うんですよね。現実問題として。

画像集 No.002のサムネイル画像 / 結のほえほえゲーム演説:第59回「レトロゲームと演劇の共通項」
 さて,前回たっぷり意気込みを書かせていただいた,結が5年ぶりに出演した舞台「実弾生活デュエル」が大好評のうちに終了いたしました。

 稽古中,私自身が毎日「本当に面白いなぁこの作品……」と思っていたのですが,終演後のアンケートやTwitterのつぶやきで,予想以上に多くの方々が本気で楽しんでくださったことを知りました。
 4Gamerの記事がキッカケでご来場くださった方もいらっしゃって「連載やってて良かったー!!」と叫びました。だってですよ,我々には家から出ずに済むとっておきの娯楽「ゲーム」があるんですよ。なのに,決して安くはないチケットを買ってわざわざ劇場まで足を運び,そんでもって楽しんでいただけたんです。家なんか出なくても楽しく過ごせる私だからこそ,そこまでしてくれたことの重みも分かるので,ものすごく嬉しかったんです。

 そしてもう一つ。実は今回,私が愛するゲームを愛する方,私と似た趣向を持っている方であれば,それがゲームではなくて舞台でも,似たものに惹かれるんじゃないか……? とも思っていて,それを確かめたかったんです。
 結果,たくさんの人に楽しんでいただけのはもちろん,私の好きな「実弾生活」を好きになってくれた人の気持ちまでもがグワーッと伝わってきました。あらためて,ゲームにせよ,出演作品にせよ,仕事にせよプライベートにせよ,面白いと思えるものだけをオススメしたいとこだわり続けたことが,間違っていなかったと思えました。
 どんな舞台だったのか,その内容についてもじっくりたっぷり語りたいのですが,もし再演する未来があったら,直接ご覧いただきたいという希望が残っているので,いったん我慢しておきます。

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 演劇というものは,面白い作品に出会えたとき「いかに面白かったか」を人に語ってもなかなかに伝わらず,挙げ句の果てに「あれは私しか目撃していなかったのかも……?」といった錯覚にすら陥ります。
 やがて,遠い昔にみた夢を思い出すかのように「あの作品は,私だけのものなのだ」と思えてしまうことがあります。

 それは,遠い昔に買ってもらったり,偶然手にしたことのあるレトロゲームの思い出と似ています。当時の同級生すら誰も知らなかったり,大人になってからも「プレイしたことがある!」という人に出会ったことがなかったり,現在は入手が不可能だったり……。でも確かに,確かに存在していたのです。あのソフトは。あの感動は。誰も知らなくても,私は知っている。私にとってのそれは,PCエンジン「眠れぬ夜の小さなお話」だったり,ファミコン「わんぱくダック夢冒険」だったり。今も捨てきれない,遠い記憶の中の感動を,きっと皆さんも大事に抱えているでしょう?
 現代で発売されるものは,どんなマイナーなゲームでも,インターネットを見ればわんさか情報やレビューが出てくるので,こういった自分の記憶頼りの宝物を持つ機会が減ってきている気がするのですが,それでも私は,やはり持ちたい。自分の記憶頼りの宝物を。
 面白い演劇は,この感覚を比較的手軽に味わわせてくれるものだと思っています。もしも私と同じように記憶頼りの宝物に出会いたいと思うならば,ときどき演劇も見に行ってほしいと思っています。私が出ていなくても,面白い演劇ってたくさんありますから。

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 さて,ここからは完全に余談です。実は私,今まで出演してきた舞台のほっっとんどがうまくいかなかったんです。芝居の話ではなく,演出家やら共演者やらとの人間関係がね……。
 土下座させられたり,窓から鞄を投げられたり,それなりに重くて暗いエピソード満載なので割愛しますが,そりゃあもう末代まで祟ってやるくらいに思っていました。
 でも今回の作品のことは,あんまりにも好きで,あんまりにも楽しくて,「あぁ,今思えば過去の私にも悪いところはあったのかもしれないなぁ」と初めて思えたんです。
 お恥ずかしい話ですが,私が初めて役者という立場で作品に関わることになったとき,生きていくなかで「こんな思い、しなくて良かったんじゃないか?」と感じてきたことを,作品として昇華出来る,やっと報われると思いました。つらい気持ちを抱える人物を演じるたびに,「あぁ良かった,あの日の私を成仏させてやれるぞ」という気持ちになったのを覚えています。
 そんなことを始めてから10年ほど経ちますが,今回は芝居の内容とは一切関係ないのに,演じているうちにイヤな思い出を昇華できたことに,衝撃を受けました。目からうろこですよ。笑いや,人間の明るさが持つ力を初めて思い知らされたのかもしれません。

 そうそう,今回の舞台で,一通のお手紙をいただきました。可愛い文字で嬉しいことがたくさん書かれていたのですが,「出演してくださって,ありがとうございます」という一文を読んだ瞬間,びっくりして思わずボロボロ泣いてしまいました。観に来てくださって,お手紙までくださって,ありがとうと言うべきなのはこちらのほうなのに。こんな風に言ってもらえるなんて。

 往年のバラエティ番組に,「泥んこクイズ」ってあるじゃないですか。不正解の扉にダイブすると,泥まみれになったりするやつ。
 私,生きている中で,あれを思い浮かべることがたまーにあるんです。ああ,不正解のほうを選んでしまった! って。だけど,ごくごくまれに,これは正解の扉だったなぁと思えることもあります。それまで何度泥まみれになっていたとしても。
 今回の舞台は私にとって,間違いなく正解の扉でした。ご来場いただいた皆さんを含めた作品に関わったすべての人達が,私に正解の扉を選んだんだと思わせてくれたんえす。本当にありがとうございました。

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最近プレイしているゲーム(2018/4/21)
PS4:「ワンダと巨像
Nintendo Switch:「ゼノブレイド2
ニンテンドー3DS:「ポケットモンスター ウルトラサンウルトラムーン
iOS:「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ

■■結(女優・タレント)■■
女優・タレントとしてフリーランスで活動中。国内映画祭にて主演女優賞を多数受賞。幼少期からのゲーム好きが高じ,数多くのゲーム番組でMCを務め,イトキチ(糸吉)の愛称で親しまれている。

公式サイト:http://yui-monogatari.com/
公式Twitter:https://twitter.com/xxxjyururixxx
ニコニコチャンネル「結チャンネル」:http://ch.nicovideo.jp/yuichannel
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