ASRock，ゲーマー向けを謳う無線LANルーター「G10」を国内初披露。ボディカラーは地味になったが高速無線LAN機能や奇抜な付加機能は健在

無線LANルーターとしては，かなり奇抜な外見をしたG10

　2015年7月30日，マスタードシードは，東京，秋葉原で新製品説明会を開催し，ASRockのゲーマー向け製品ブランドである「ASRock GAMING」の無線LANルーター「G10」を国内で初披露した。G10は，5GHz帯の電波を使うIEEE 802.11acで最大1733Mbps，2.4GHz帯を使うIEEE 802.11nでも最大800Mbpsという，高速な無線LAN機能ルーターであるだけでなく，風変わりな機能をいくつも備えるという，とてもASRockらしい製品だ。
　国内発売は9月の予定で，価格は未定とのこと。説明会では，ASRock マーケティング副本部長のChris Lee氏によるG10の解説が行われたので，その概要をレポートしよう。

ボディカラーは赤から黒に変更

「限定モデルで赤も出したい」（Lee氏）

　「Gaming Router」と呼ばれるG10は，2015年6月に開かれたCOMPUTEX TAIPEI 2015（以下，COMPUTEX）で初披露された製品だ。製品の詳細な特徴は，COMPUTEXのレポート記事を参照してほしいが，そこで披露されたG10は，ルーター製品とは思えない目の覚める赤色のボディを採用していた。
　ところが，今回日本で披露された製品は，形状こそ変わっていないものの，カラーリングはごく普通の黒。当然ながら出席した報道陣からも，「なぜ黒になったのか？」という質問が投げかけられた。

G10を手にしながら説明するASRock マーケティング副本部長のChris Lee氏（左）。COMPUTEXで披露されたG10（右）は，鮮やかな赤色のボディだった。金色のASRockロゴと合わせて，いかにも中華圏っぽい雰囲気だったのだが

G10の右側面。上側に通風孔のスリットがある

　Lee氏は答えて曰く，「もともとボディーカラーは赤と黒の2色を用意していたが，来場者の意見を聞くと，皆が『黒のほうがいい』というので，黒を製品化することにした」とのこと。たしかに，家庭の中で赤色の機器というのはほとんどないので，実際に設置したら，かなり悪目立ちしかねない。「皆さんは赤と黒どちらがいいですか？ 黒のほうがいいでしょう？」と笑いながらたずねるLee氏に，報道陣からも笑いが漏れた。
　かくして幻の製品に終わったかにみえる赤色のG10だが，ASRockとしては赤色ボディにも未練があるようだ。Lee氏も「Limited Editionのような形で，赤も製品化したい」述べていた。

ボディ前面（左）と背面（右）。前後から見ると奇抜な形状がよく分かる。インタフェース類は背面に集中しており，Gigabit Ethernet対応のLANポートが4つ，USB機器接続用のUSB 3.0ポートも2つ備えている

Multi-User MIMOにより，複数台で同時に通信しても高速

G10の「10」は，Windows 10を意識したものとLee氏。Xbox OneとWindows 10によるゲームストリーミングなどは，高速な無線LAN機能が特徴のG10に適する利用法だという

　外観が特徴的なG10だが，中身にも3つの大きな特徴があるという。
　Lee氏が示した1つめの特徴は，本体内に8本のアンテナを内蔵した4×4 MIMO仕様による高速な無線LAN機能だ。冒頭で触れたとおり，IEEE 802.11acでは最大1733Mbpsと，最大通信速度は非常に速い。実際には通信するデバイス側の仕様にも制約されるので，これだけの速度がどんなデバイスでも出るわけではないが，速くて損はないだろう。

　また，最大通信速度よりも利便性の高そうな無線LAN機能の特徴として，「Multi-User MIMO」への対応も挙げられている。Multi-User MIMOというのは，802.11acにおいて規定された機能で，複数台の機器が同時に高速な無線通信が行えるというのがその特徴だ。既存の無線LANルーターと比べた数値などは公表されなかったが，家庭内で無線LAN機器が増加している現状を考えると，実用性の高いメリットとなる可能性はあるかもしれない。

無線LAN機能の特徴。Multi-User MIMOは，複数台の無線LAN機器を所有している人には役立ちそうだ

　なお，Lee氏の説明では言及されなかったが，G10は内部にQualcomm Atheros製SoC（System-on-a-Chip）「IPQ8064」を搭載しており，これによってゲームアプリケーションの通信パケットを自動認識して，適切なネットワーク帯域を確保するという機能も備えている。G10でとくにゲーム向けといえる機能がこれだ。

　さて，2つめの特徴としてLee氏が挙げたのは，学習型赤外線リモコン機能の搭載である。G10は前面と背面に赤外線LEDを備えており，スマートフォン用アプリ「ASRock Router App」と連携して，赤外線リモコンで操作する家電をスマートフォンから操作できる。

G10の前面下側（左）と背面上側（右）には，リモコン操作用の赤外線LEDがある

　赤外線を使う以上，G10を操作したい機器のリモコン受光部に向けて設置する必要があるため，実際にはそれほどたくさんの機器を操作はできないだろう。だが，エアコンを操作できる位置に設置しておき，帰宅中にスマートフォンからエアコンをオンできると，夏や冬は便利そうに思える。

専用のスマートフォン向けアプリで，家庭内の機器を遠隔操作できる（左）。右写真は，手元のスマートフォンでテレビを操作しようとしているLee氏

　3つめの特徴が，G10の本体上部に格納できる「HDMI Miracast Dongle＆Trabel Router」だ。これは，スティック状のデバイスに，無線HDMI技術「Miracast」のレシーバー機能と，ホテルなどの有線LANを無線LAN化する，いわゆるホテルルーター機能を組み込んだ周辺機器である。

付属のHDMI Miracast Dongle＆Trabel Router。一方の端には有線LAN端子と給電用のUSB Micro-B端子，もう一方にはHDMI Type Aコネクタを装備。これ1台で，無線LANアクセスポイントとMiracastレシーバーの機能を備えている

　これをテレビに接続すれば，スマートフォンやタブレットの映像を無線LAN経由で伝送してテレビ画面に表示するMiracast機能が使える。さらに，持って出かけてホテルの客室にある有線LANポートに接続すれば，簡易無線LANルーターに早変わりというわけだ。
　G10の本体に格納された状態では何の役にも立たないわけで，そもそも無線LANルーターのおまけに付ける必要があるのかも疑問だが，面白い付属品なのは間違いない。

テレビに接続してMiracast機能を使っているところ（左）。G10に格納するとこのとおり（右）。格納状態で何かができるわけではない

　赤外線リモコン機能やHDMI Miracast Dongle＆Trabel Routerといった奇抜な機能に目が行きがちな製品ではあるが，通信速度の速さや，Multi-User MIMO，ゲームアプリケーション向けのネットワーク帯域幅確保といった，ゲーム用途で効果が期待できそうな機能がしっかりしている雰囲気なのはポイントが高い。個人的には，きちんと評価してみたい製品という印象を受けた。
　ただ，気になるのは価格だ。COMPUTEX時点では，北米市場で250ドル（税別）程度という目安が示されていたので，単純計算すると税込価格は3万3480円程度になる。家庭向けのルーターとしては，かなり高い価格であり，価格面で人を選ぶ製品となる可能性が相当に高いのは残念な気がする。G10の無線LANルーター機能だけを取り出して，もう少し手の届きやすい価格の製品が登場したりすると，面白い選択肢になるのではなかろうか。

ASRockの当該ニュースリリース