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印刷2016/01/23 12:00

インタビュー

どんなコンテンツでも“人”を丁寧に描きたい。「終わセラ」「伝勇伝」で知られる鏡 貴也氏が本気で関わる新作タイトル「新約 アルカナスレイヤー」インタビュー

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 2016年1月22日,MiMiのスマートフォン向けシミュレーションRPG「新約 アルカナスレイヤー」iOS版の配信が開始された。

 本作は「伝説の勇者の伝説」「終わりのセラフ」などで知られる鏡 貴也氏を筆頭に,多数の人気クリエイターが制作に関わる新作タイトル。先行配信されていたAndroid版のリリース時点で14万を超える事前登録者数を記録しており,新規IPながら大きな話題を集めていた。

 今回4Gamerでは,そんなアルカナスレイヤーのシナリオ制作を担当する鏡 貴也氏と,本作のプロデューサーである御手洗達生氏にインタビューする機会を得た。本作に込められた想いや今後のアップデート予定などが語られた,インタビューをお届けしよう。

「新約 アルカナスレイヤー」公式サイト

「新約 アルカナスレイヤー」ダウンロードページ

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難しい仕事ほど燃える!

作家・鏡 貴也氏の“ゲームシナリオ”の作り方とは


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。まずは自己紹介を兼ねて,おふたりの略歴と,本作における役割を教えてください。

御手洗達生氏(以下,御手洗氏):
 MiMiで本作のプロデューサーをやっています。以前はNHN Japan(現,NHN PlayArt)で,海外オンラインタイトルの国内向け運営とローカライズを行っていました。

4Gamer:
 MiMiにはどういった経緯で参加されたのですか?

御手洗氏:
 現在所属しているMiMiは,元NHN Japanの仲間たちと一緒に結成した会社です。「面白い物を作りたい」という意気込みのある仲間が集まっているので,開発陣も活発に意見交換をしてくれています。

鏡 貴也氏(以下,鏡氏):
 僕の本業はライトノベル作家で,今回の「新約 アルカナスレイヤー」においては,シナリオや世界観の構築などを担当しています。
 デビュー作は14年前の「武官弁護士エル・ウィン」で,その後に出した「伝説の勇者の伝説」は,ありがたいことに現在まで続けさせてもらっています。最近では,漫画原作として「終わりのセラフ」にも関わっているので,そちらでご存じの方も多いかもしれませんね。

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御手洗達生氏
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鏡 貴也氏

4Gamer:
 「終わりのセラフ」はコミックスのシリーズ累計発行部数が500万部を突破していますし,アニメ版も好評を博しているので,4Gamer読者にもファンが多そうです。
 ちなみに鏡さんは,どういった経緯でアルカナスレイヤーに関わることになったんでしょうか。

御手洗氏:
 企画が立ち上がったのは2年ほど前なんですが,鏡さんにお声がけさせていただいたのは1年半ほど前の話になります。鏡さんとは以前から多少の交流があったんですが,どうせ新規IPを手がけるなら,大好きな作家さんと組みたいということで,思い切ってお声がけさせていただきました。まぁ私が鏡さんのファンだったという話です(笑)。

鏡氏:
 あ,そうだったんですか? 嬉しいなぁ。

4Gamer:
 となると,鏡さんはずいぶん長い期間,本作に関わっているわけですね。具体的な作業をスタートしたのは,いつ頃なんでしょうか。

鏡氏:
 シナリオ制作としては,かなり長い付き合いになりますね。時期によって作業量の濃淡もありましたが,2015年の桜の咲く前には本格的な作業に入っていたと思います。アルカナスレイヤーくらいのタイトルになると,それくらいは時間をかけないと書き上げられませんからね。毎日必ず「この時間からはアルカナの仕事をする」と決めて,習慣のように筆を進めていました。……というか,今もまさにその“続き”を進めているところです。

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4Gamer:
 春から今まで,ずっと毎日テキストを書いているとなると,物語のボリュームがすごいことになっていそうですね……。

鏡氏:
 それはもう,実際に書いてみて「こんなにあるのか!」と驚いたくらいです。著名なクリエイターがクレジットされている作品でも,これほどの分量のテキストを単独で制作している例は少ないと思いますよ。

御手洗氏:
 本作のコンセプトは「ストーリーを楽しみながら,その一環としてゲームを遊べる」というもので,基本的に“シナリオありき”でゲーム制作を行ったため,鏡さんには相当な負担をおかけしてしまいました。ですがそのぶん,完成度の高い作品が仕上がったのは間違いありません。

鏡氏:
 僕は難しい仕事ほど燃えるタイプなので,仕事をもらったときはワクワクしました。新しい仕事に挑戦できているので,毎日楽しみながら仕事をさせてもらっていますよ。

4Gamer:
 鏡さんが名前を出してゲームシナリオを手掛けるのは,本作が初めてだとお聞きしています。やはり,ゲームと小説で勝手は違うものですか?

鏡氏:
 かなり違いますね。例えば,小説で使えるのは文字だけなので,それに応じた表現が必要になります。同じように,漫画は絵が主役ですから,キャラクターを俯瞰するような視点で物語を書かなければなりません。
 対してゲームは,読み手(プレイヤー)が主人公ですよね。なので今回は,世界観に没入できるような物語を強く意識しています。
 とくに本作では,主人公の名前を変更できる聞いて,もう書き始める前からワクワクしていました。セリフに知り合いの名前を入れては「このキャラに○○(本名)って呼ばれたらどう? 気持ちいい?」って,いろんな人に聞いて回ったり。良い表現を探しながら書くのが,本当に楽しかったです。

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一同:
 (笑)

4Gamer:
 本作はスマートフォン向けのタイトルということで,文字数をはじめとするさまざまな制限があったと思いますが,そういった面での苦労はありましたか?

鏡氏:
 画面に表示される文字の量や,シナリオが始まってから何タップ目でバトルに突入しなきゃいけないのかなど,文字数やタップ数に関しては厳しくルールを決めて,全文その尺に収まるよう調整しています。
 「このタップ数以内に物語を作れなきゃ俺たちはクズだ!」くらいの勢いで,シナリオは書き上がったけど事前に決めていたタップ数に収まってないから一から書き直す! みたいなことを何度もやりました。

4Gamer:
 サラッとおっしゃいましたが,それって相当に大変な作業じゃないですか?

鏡氏:
 そりゃもう大変です(笑)。でも,その甲斐あって,世界の命運がぐいんぐいん変化する,ダイナミックな物語が作れました。起承転結の間が短いからといって,お話は小さくなりません。4章から先は「もうこれ最終話じゃないの!?」と思える展開がバンバン出てくるので,楽しみながら読めると思いますよ。

4Gamer:
 相当な苦労と工夫が込められているんですねぇ。そのあたりにも注目しつつプレイさせていただきます。

鏡氏:
 ありがとうございます。僕は,「読者は文字を読みたくないと思っている」という意識のもとで,常に物語を作っています。そこで「読んでもらえる文章」を書くことが僕の仕事ですから,今回も頑張って調整しました。冒頭を読んでみて,楽しいと思ったら,ぜひ続きを読んでみてください。


どんな作品でも“人”を丁寧に描く

キャラクター描写にかける鏡氏の情熱


4Gamer:
 シナリオを制作するにあたり,とくに大変だった部分などがあれば教えてください。

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鏡氏:
 なんといっても,キャラクター制作ですね。普通の小説や漫画と違って,ソーシャルゲームのキャラクターって数が圧倒的に多いじゃないですか。もう,一生分の数を作ったんじゃないかってくらい,キャラクターの設定を作りました。

御手洗氏:
 初期の段階で120人のキャラクターが登場して,その全員に細かな設定を用意していますからね。未実装のものを含めた総テキスト量は,相当なものになっていると思います。

4Gamer:
 レアリティに関係なく,全キャラクター同じような熱量で,背景設定を用意したんですか?

鏡氏:
 そうなります。僕が世界観の指揮を執る以上は,どんなに小さなキャラクターに対しても,適当な扱いはしたくないんですよ。
 これらは実装されるテキストではありませんが,キャラクターごとに「どこで生まれ,どんな経験をして,カードで描写される姿へと至ったのか」を描くストーリーを作っています。

4Gamer:
 それを120人以上ですよね。恐ろしいこだわりっぷりです……。

鏡氏:
 あとは「レアリティによるキャラクターの立ち位置の違い」についても,色々と配慮しています。

4Gamer:
 といいますと?

鏡氏:
 本作のキャラクターを作るときに僕が最初にチェックする要素は,性別,職種,レアリティなんですよ。もし作るカードが“レア”であれば「レアとして一番輝く出自(背景設定)」を考えるわけです。たとえば,レアリティが“ノーマル”のキャラクターであれば,そのキャラクターが現段階でノーマルに甘んじている理由を必ず用意します。
 制作中には「こんな完璧超人がSRなんて,悲しみを抱えてる感が出ないだろ!」なんて議論もありましたね。そのときは,結果的に「どうしても(このキャラクターが)SRとは思えない」という理由で,1からキャラクターを考え直すことになりました。

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4Gamer:
 となると,キャラクターのレアリティ変化にも期待が高まりますね。「今はパッとしないキャラクターも,何かしらの形で見直されるかも」と思えてしまいます。

鏡氏:
 もちろん,レアリティが変化するキャラクターについては,設定制作の段階である程度は決定しています。該当するキャラクターには,成長の余地が残るような物語を用意するなどして,そうした動きに対応しました。

4Gamer:
 野暮な質問かもしれませんが,それほど深い作り込みを行っている理由は,どこにあるんでしょうか。

鏡氏:
 物語に登場するキャラクターは,全員が“自分の人生”という物語を生きる主人公です。そこにレアリティの高低は無関係だと,僕は思っています。
 僕が物語を作るときに一番大事にしているのは,コンテンツは「人が人に届ける,人の物語である」ということです。ですから,たとえどんな形であれ,物語を形成する“人”であるキャラクターをないがしろに作ることはできません。


緻密な世界観はいかにして作られたのか

タイトルに付けられた“新約”の意味とは


4Gamer:
 登場キャラクター数が多いと,それを抱える広く細かな世界設定が必要になるかと思いますが,もちろん苦労されてますよね……。

鏡氏:
 ええ,メチャメチャ広い世界なので,管理が大変です。(御手洗氏に向かって)世界観の詳細って,公開されるんですかね?

御手洗氏:
 今のところは予定はありませんが,いつかの機会に公開してみたいですね。ただ,内部用資料としての世界観設定しか用意していませんし,公開用のメンテナンスも必要になりますから,少し間を置くことになるかと思います。

4Gamer:
 ゲームの土台となる世界観ですから,作るのも大変だったんではないでしょうか。企画時点から,変化した要素などはありましたか?

鏡氏:
 一番大きく変わったのは“異種族”の存在ですね。現在では主要キャラクターの中にエルフが登場しますが,当初の世界設定では異種族の概念は存在しませんでした。実は,ある程度シナリオを書き進めた後から“エルフ”の設定を追加したんです。

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4Gamer:
 となると,すでに書いた原稿は……。

鏡氏:
 全部書き直しです。それを聞いた時の仲間たちは凄い渋面をしていましたが「いや,僕はやるんだ!」と言って,すべてのテキストを修正しました。

4Gamer:
 それにしても,凄い決断ですね。思い付いたとしても,実行できる人は多くないと思います。

鏡氏:
 思いついた要素を実装して完成稿が良くなるなら,尻込みせずにやるべきです。エルフの一件については,まだ調整が利く段階ですから尚更ですね。もちろん,期限ギリギリになって「全部変えろ!」なんて横暴はしませんので,ご安心ください(笑)。

御手洗氏:
 実際,そうした変更のお陰で作品の世界観は大きく広がりました。キャラクターの多様性を考える上でも大きな助けになっていて,結果的に作品のクオリティ向上に繋がったと思います。

4Gamer:
 エルフという異種族の存在や,“聖剣”を中心としたストーリーなど,本作の世界観は比較的硬派なファンタジーのように思えます。昨今では逆に少なくなってきた世界観設定ですが,この方向性はどのように決定されたのでしょうか。

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御手洗氏:
 僕が,鏡さんの「伝説の勇者の伝説」が大好きだったこともあって,本作の世界は“王道ファンタジー”を目標としていました。
 ですが,まさかご本人に「伝勇伝みたいな作品を作ってください!」とは言えず,結果として最初のオーダーは「とにかくファンタジーを書いてください」という,かなり漠然とした内容になってしまいました。正直,けっこう無茶なお願いだったと思っています。……その節は失礼しました。

鏡氏:
 いえいえ(笑)。

御手洗氏:
 ドキドキしながら納品を待っていたのですが,上がってきた物がイメージ通りのド王道ファンタジー作品だったので「これは行けるぞ!」と確信しました。

4Gamer:
 ファンタジーと言っても色々な種類が存在しますが,今回の作品が“王道”の形に向かったのは,どういった理由があったのでしょうか。

鏡氏:
 いやぁ,それはもう「シミュレーションRPGといったら王道ファンタジーだろう!」と思ったからです。そこに疑問は持ちませんでした(笑)。

4Gamer:
 なるほど。確かに,言われて見れば「ファイアーエムブレム」をはじめとするSRPGは王道ファンタジーが多いような気がします。

鏡氏:
 この認識の源流は「Wizardry」シリーズから来てる印象でしょうね。それ以降も,ファンタジー色が強い時代のゲームを遊んで育ちましたから,その影響も大きいかと思います。

4Gamer:
 これは前から気になっていた部分なのですが,本作のタイトルには“新約”という文言がありますよね。これには,どういった意味合いがあるのでしょうか。

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鏡氏:
 “新約”があるからには,もちろん“旧約”もありますよ。ここで言うところの旧約は,この世界観における過去のお話を示しています。

4Gamer:
 詳しくお聞きして良いですか?

鏡氏:
 はい。本作の世界観として「物語が始まる以前に5人の英雄が存在して,各英雄が5つの国の最初の指導者になった」という情報はすでに公開済みですが,実はその“過程”にあたるストーリーも,すでに作り終えているんですよ。
 5人が1つのパーティとして活躍し,最後に英雄と呼ばれるまでの道筋を描く。それが“旧約アルカナスレイヤー”です。こういうお話,なんだかワクワクしませんか?

4Gamer:
 とくに「ロードス島戦記」世代のゲーマーなら,ワクワクせざるを得ない展開ですね。こちらは,メディアミックスなどの形で公開される予定はないのですか?

御手洗氏:
 もともとは,連載企画という形で公開を予定していたのですが,企画が立ち消えになってしまいまして。現在は,設定資料としてのみ存在する状況です。お話としては完成しているので,世界観ともども,いつかお披露目してみたいですね。

鏡氏:
 僕も旧約のお話は大好きなんです。“新約”の世界においても,過去の英雄たちの姿を想像できる要素が,各国の政治体制や情勢にあらわれていますので,色々と探して考えてみてください。

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ストーリー追加アップデートは2ヶ月に1回を予定

熱い対戦が楽しめるPvPも実装確実


4Gamer:
 では,ここからはゲームシステムの部分についてもお聞きしていきたいと思います。すでに本作はリリースされましたが,鏡さんはすでにゲームを遊ばれましたか?

鏡氏:
 はい。リリース前からちょくちょく遊ばせてもらっています。正直ちょっと不安もあったのですが,そんな不安も吹き飛ぶくらい遊べる作品に仕上がっています。最初に実機をお預かりしたのは飲み会の場だったのですが,解散するまでずっと遊んでましたよ(笑)。

4Gamer:
 シナリオに関しては色々とお聞きしましたが,ゲーム部分のコンセプトについてはいかがですか?

御手洗氏:
 システム面に関しては「戦略性あるシミュレーションRPGをスマートフォン向けに最適化したゲームを作る」という指針のもとで,ルール構築を行いました。
 本作においては,シミュレーションRPGの数値管理を“カード”に集約させる事で,戦略性と手軽さの両立を目指しています。

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■「新約 アルカナスレイヤー」ゲームシステム
 本作におけるバトルの基本は,一般的な戦略シミュレーションゲームと同様だが,カードを用いたカスタマイズ要素に独自のシステムが組み込まれている。

○職種ユニット
 バトルでフィールド盤上を移動したり,アクションを行うのが「職種ユニット」。各ユニットには,近接攻撃が得意な“剣士”,防御能力の高い“騎士”,遠距離攻撃が可能な“弓使い”,範囲攻撃ができる“魔法使い”,回復や支援が得意な“ヒーラー”といった,職種が設定されている。
 それぞれに得意な攻撃方法が存在するほか,職種によって攻撃範囲が異なるのが特徴だ。

○キャラクターカード
 職種ユニットに3枚までセット可能なカード。こちらにも,職種ユニットと同様に4種類の職種が設定されており,セットしたカードに応じた攻撃方法(範囲)を職種ユニットに与えることができる。他のカードや職種にユニットの攻撃範囲が重なった場合,該当のマスへの攻撃能力が向上する。
 また,職種ユニットと同じカードをセットした場合のみ,キャラクターカードのスキルが使用可能となる。

4Gamer:
 攻撃範囲やスキルの管理を,ユニットにセットするカードで一元管理するシステムは,ほかに見られないシステムですよね。

御手洗氏:
 ただ数値の高いカードを用意すれば強い,という形にはならないよう,意識したバランス調整を行っています。セットするカードの組み合わせによっては,独自のコンボスキルが発動する場合もあるので,それも探してみてほしいですね。

鏡氏:
 キャラクター設定を読んで,関係のありそうな人物を探すと,スムーズにコンボを見つけられるかもしれません。一見するとつながりのなさそうなキャラクター同士でも,設定をよく読むと関係性が見えてきたりもするので,ぜひいろいろ試してみてください。

4Gamer:
 こういった戦略性の高いゲームでは,自分の腕を見せたい人も少なくないと思います。対人戦などは実装される予定はありますか?

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御手洗氏:
 もちろん,用意しています。すでにシステムは完成していますので,必ず登場すると考えて下さって問題ありません。
 残り体力に関わらず実行できる“遠征”というシステムが用意されていて,放置するだけで色々な恩恵が得られます。プレイヤーさんのスタイルに合わせた楽しみが提供できるよう,調整を行っています。

4Gamer:
 では,今後のアップデートについてはいかがでしょうか。現時点では第6章までのストーリーが公開されていますが,以降はどの程度のスパンで追加を予定していますか?

御手洗氏:
 ストーリー追加などの大きなアップデートは2ヶ月に1回。細かなキャラクター追加やイベント実施などは,2週間に1回のペースを維持したいと考えています。現バージョン1.0.3では,当初問題になっていたローディング遅延なども改善されており,今後も確認済みの不具合/遅延に関しては適宜修正対応を行っていきます。
 合わせて,レイドクエストなどのイベントも随時配信を行っていきますので,新しいシナリオが配信されるまでの期間中は,そうしたコンテンツを楽しんでいただければと思います。
 本筋とは別のコンテンツに関してもシナリオを用意していますから,物語を楽しみたいプレイヤーさんも是非遊んでみてほしいですね。

4Gamer:
 枝葉部分のシナリオも,鏡さんが手掛けられているのですか?

鏡氏:
 もちろん,イベントクエストとレイドクエストも僕が書いています。僕の会社(アタットリー ※後半に詳述)として仕事を請けている事情もあって,ほかの子に仕事を振り分ける事もあるのですが,ほとんどの場合は僕が手を加えているので,実装されるテキストは全て僕の手を通過していると思ってもらって問題ありません。

4Gamer:
 現状では,どの程度まで先のシナリオを用意されていますか?

鏡氏:
 明確にはお話できませんが,部分的にはかなり先まで用意しています。というのも,キャラクターの設定を決めると,逆算的に過去や未来の出来事が決まる事があるんですよ。その影響で,ストーリー設定はかなり先まで決まっています。
 用意した設定がシナリオ上で描かれるにあたって,単純計算で(シナリオがそこに至るまでに)2年以上かかるキャラクターも存在します。いつか,そういった物語を発表できるタイミングが来たら嬉しいですね。

御手洗氏:
 プレイヤーさんの動向に合わせて逐次調整する予定ではありますが,基本的には2か月に1回程度の間隔でリリースを続けられれば良いかと考えています。


後進の育成と共に,自分も向上する

ライターチーム・アタットリーの目指す“創作”とは


4Gamer:
 シナリオ制作には「鏡貴也 with アタットリー」とクレジットされていますが,アタットリーさんはどういった組織なのでしょうか。

鏡氏:
 だいたい4年くらい前,僕が若い子を直接育成する場として作ったライターチームです。立ち上げ当初こそ“教育機関”としての側面の強い組織でしたが,一線級のライターも多く育ってきた現在では,色々な作品のシナリオを手がける会社になりました。

4Gamer:
 鏡さんが中心になって作られたチームだったのですね。もともと,どういった経緯からライターチームを作られたのですか?

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鏡氏:
 僕はデビューから十数年間,ずっと独りで執筆作業をしていました。それで仕事を続けられていましたから,孤独な仕事に疑問を持つ必要もなかったんですね。
 でも周囲の人間は僕とは違って,どんどん出世を重ねていきます。そうすると,皆の価値観が「個人の仕事をこなすよりも,若手の育成が大切」という方向に,周囲の考え方がシフトしていくんです。
 そこで,ふと「僕自身が実行している“創作のやり方”を他人に伝えたらどうなるんだろう」と思ったんですよ。アタットリーという組織は,そういった発想が基になって生まれました。

4Gamer:
 組織体は“共同体”ではなく“会社”という体裁を取っていますが,どんな意図があるのでしょうか。

鏡氏:
 シナリオライターには,数を回した方が上手になる時期もあれば,逆にチャレンジャブルな仕事を乗り越えるべき時期もあるでしょう。会社という組織は,そういった体験のグラデーションを作るにあたって,非常に適しているんです。
 ぼんやりした繋がりを基にした連携組織ではなく,しっかりと教育システムを整備した“会社”として運営を行っていて,内部では教科書なんかも作っていますよ。

4Gamer:
 設立から4年を経て,本作ではチームとして仕事を請けるに至りましたが,現在の手応えはいかがですか?

鏡氏:
 僕の個人的な興味から始まった組織だったのですが,若手の成長には驚かされるばかりです。手前味噌ですけど,アタットリーの中でも上位の子に至っては,かなり上手い作品を書くようになりました。

4Gamer:
 アタットリーを設立することで,何か変化したことはありますか?

鏡氏:
 教えるとなると,自分が無意識に実行していた「自分のやり方」を言語化する必要が出てきますよね。そのお陰で,自分自身の創作が上手になるのが実感できるんです。
 教えることで僕個人が受け持つ仕事の質が向上し,そこで得た物を後進に伝えることで,僕はより先に進める……。というループを繰り返しながら,4年間の活動を進めてきました。

4Gamer:
 本作の“鏡貴也 with アタットリー”は,まさにその決算とも言えるクレジットなのですね。

鏡氏:
 そうですね。僕が信頼できる,志を共有できる子たちと一緒にシナリオを作っているので,どのテキストも僕が責任を持てるクオリティになっています。

4Gamer:
 アタットリーさんの中で,常日頃から教えている事柄などがあれば教えてください。

鏡氏:
 何よりも,きちんと物語を分解しながら訓練を重ねて,コンテンツに適した“クリエイティブ”を用意することです。

4Gamer:
 具体的には,どういった意味合いの言葉なのでしょうか。

鏡氏:
 先に言った通り,僕らが作るのは“人が人に届ける人の物語”です。この中には「届ける人」「届けられる人」「物語の中の人」が存在して,うち1人であっても無視してはいけません。良いクリエイティブは,これを成立させる事で生まれます。
 例えば,御手洗さんが「シミュレーションRPGを作りたい」と言っているのに,ライターが恋愛シミュレーションのシナリオを作っちゃうとか,そんなのは当然ながらダメですよね。
 でも,そういった問題をはらんだクリエイティブは,現実に存在しています。それを見ると「本気で誰かを幸せにする気があるのかな」と,思ってしまうんですよ。
 そこでアタットリーでは,クライアントさんに「何をやりたいのか」という焦点表を大量に書き出して,どんな作品を求めているのかを割り出す作業を絶対に外しません。それが,本当に良いクリエイティブに繋がると,僕は信じています。

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4Gamer:
 国内においては「現場に即した教育機関が存在しない」という切り口から,アニメやゲームに関係するクリエイターさんの後進育成が問題に挙がる事があります。アタットリーさんは,そうした問題に対する“答え”のひとつになるかもしれませんね。

鏡氏:
 ちょっと気恥ずかしいですが……。自分で一緒に関わっている感覚では,良い組織になったのではと思っています。


イベント「リアル朗読会」も開催予定

会場限定の特別クエストが楽しめる


4Gamer:
 ちょっと気が早いかもしれませんが,ゲーム外の展開を行う予定はありますか? 例えば,リアルイベントであるとか。

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御手洗氏:
 まだ詳細をお伝えできる段階ではありませんが,実は「公開朗読会」などのイベントの準備を,すでに進めています。

4Gamer:
 手早いですね! どういった内容のイベントを行うのですか?

御手洗氏:
 単純に朗読会を開いたり,グッズを販売するだけでなく,新しい試みとして「来場者限定クエスト」を配布しようかと考えています。作品を好きだからこそ足を運んでもらえるような,そういったイベントを目指したいですね。

鏡氏:
 イベント用のクエストについても,実はすでに制作がしていまして。かなりレアなストーリーになるかと思いますが「読めて良かった」と思えるような物語を作りましたので,そちらも是非チェックしてください。

4Gamer:
 どこまでコンテンツが用意されているのか,底が見えませんね……。

御手洗氏:
 公開していない要素は,まだまだ山のように用意しています。期待に添える出し方ができるよう,プレイヤーさんからの意見収集も,絶え間なく行っていく予定です。

4Gamer:
 楽しみにしています。では最後に,4Gamer読者に向けてメッセージをお願いします。

鏡氏:
 4Gamer読者の皆さんに愛されるような作品になったら良いなと,心から思っています。頑張って作りましたので,よろしくお願いします。

御手洗氏:
 ゲームが好きな人が満足できるゲームに仕上げました。ぜひダウンロードして,遊んでみてください。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

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