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【Jerry Chu】予言としてのゲーム,寓話としてのゲーム
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印刷2017/01/07 12:00

連載

【Jerry Chu】予言としてのゲーム,寓話としてのゲーム

Jerry Chu /  香港出身,現在は“とあるゲーム会社”の新人プログラマー

Jerry Chu「ゲームを知る掘る語る」

Twitter:@akemi_cyan


予言としてのゲーム,寓話としてのゲーム


 SF(サイエンス・フィクション)には,往々にして警世的なメッセージが込められている。

 現実よりも遥かに発達した科学技術が存在する世界を描くことで,科学的・社会的なテーマを浮き彫りにする。それがSFの魅力だ。
 映画「マトリックス」は全人類が仮想現実空間で生活するディストピアを描き,コンピュータが支配する世界の恐怖を見せつけた。
 アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」の舞台はコンピュータシステムによって管理された近未来世界であり,システムに潜在犯として認識された者は,たとえ罪を犯していなくとも裁かれる。現代社会における治安維持と自由人権とのバランスについて,考えさせられる作品だ。
 海外ドラマ「Black Mirror」もソーシャルメディアやウェブカメラといった,我々の身近にある技術がいかに悪用され得るかを描いている。

「Deus Ex: Mankind Divided」
デウスエクス マンカインド・ディバイデッド

 ご存じのとおり,SFはゲームのテーマとしても人気だ。サイボーグやナノマシンが登場する「メタルギアソリッド」シリーズ,核戦争によって荒廃した未来の世界を闊歩する「Fallout」シリーズ,近未来の戦争に着目した近年の「Call of Duty」シリーズなど,SFをテーマにしたゲームは枚挙にいとまがない。
 そんなSF作品の中でも,とりわけ筆者に強い印象を残したのは「Deus Ex」シリーズである。

「Deus Ex: Mankind Divided」
デウスエクス マンカインド・ディバイデッド

 「Deus Ex」シリーズとは,プレイヤーが生体工学によって強化されたエージェントとなって,企業と政治を裏で操る黒幕に立ち向かうRPGだ。サイバーパンク要素が色濃い世界設定やストーリー,ビジュアルをはじめ,FPSとステルスアクションとRPGを融合させた斬新なゲームデザインが人気を博し,欧米のゲーマーから高い支持を得ている。

 シリーズ最新作となる「Deus Ex: Mankind Divided」PC / PlayStation 4 / Xbox One)は,2016年8月に海外で発売された(日本語版は2017年3月23日発売予定)。前作「Deus Ex: Human Revolution」PC / PlayStation 3 / Xbox 360 / Wii U)と同じく,Eidos Montrealが開発を手がけており,ストーリーは前作とつながっている。そこで,前作を振り返ってから,最新作のテーマを語ってみたい。



 「Deus Ex: Human Revolution」の舞台は,オーグメンテーション(人体拡張技術)が広く普及している2027年の近未来。オーグメンテーションとは,人体の一部を機械に置き換えることで強化を図るという生体工学の技術のことである。

 本作のストーリーを一言で表すならば,それは「予言」だ。オーグメンテーションが発達した世界構築したうえで,その技術に対して人々はどう接するかを描いている。
 オーグメンテーションは人間を進化させるものであると信じ,科学技術の発展と普及を推進する理想家。人間の体を人工的に作り変えることを冒涜と見なし,オーグメンテーションの規制を主張する保守派。オーグメンテーションの普及を食い止めるためには暴力をも厭わない過激派。オーグメンテーションを悪用し,民衆を支配しようとする野心家。オーグメンテーションを軸に,さまざまな思惑が交錯する様をプレイヤーは目撃する。

「Deus Ex: Human Revolution」
デウスエクス マンカインド・ディバイデッド

 「Deus Ex: Human Revolution」はSFにカテゴライズされるが,その世界設定は現実味を帯びている。開発チームは生体工学の専門家であるWill Rosellini氏をコンサルタントとして迎え入れたという(出典元)。当然,誇張はされているが,ゲーム内に登場するハイテク義手や光学迷彩といったテクノロジーは現実に存在するものだ。
 つまり,本作は現実をベースにしたうえで,オーグメンテーションがこれからどのように進化するかを見据え,テクノロジーは世界と人間をどう変容させるかを予想している。

 プレイヤーは最先端のオーグメンテーションを駆使して敵対組織と戦う一方,異なる信念を持ったキャラクター達と接することで,オーグメンテーションの是非を考えさせられる。オーグメンテーションの恩恵を受けながら,テクノロジーによって広がった貧富の差を目撃する。
 オーグメンテーションは人類にとって,はたして福音なのか呪縛なのか。テクノロジーの存在意義を問う「Deus Ex: Human Revolution」は,RPGとしてもSFとしても優秀だ。

「Deus Ex: Human Revolution」
デウスエクス マンカインド・ディバイデッド



 「Deus Ex: Human Revolution」のストーリーが「予言」であるならば,最新作「Deus Ex: Mankind Divided」は「寓話」だろう。

 オーグメンテーションを施された人々(「Augmented」の略語である「Augs」と呼ばれる)の集団暴走事件が発端となり,彼らは社会から隔離され,自由を奪われていた。機械化された人間が弾圧される中で,「Deus Ex: Mankind Divided」の物語は幕を上げる。
 本作のトレイラーやビジュアルイメージには,「The Mechanical Apartheid」や「Augs Lives Matter」といった人種差別を想起させるキーワードが盛り込まれている。


「Deus Ex: Mankind Divided」のビジュアルイメージ
デウスエクス マンカインド・ディバイデッド

 「Apartheid(アパルトヘイト)」とは1994年まで南アフリカ共和国で制定されていた人種隔離政策のことであり,「Augs Lives Matter」というスローガンは黒人差別問題を訴える運動で掲げられた「Black Lives Matter(黒人の命だって大切だ)」を思わせる。
 つまり,本作は最先端の科学技術によって築かれた「未来の予想」よりも,我々が直面している人種差別という「現代の時弊」に注目している。

 ゲーム内でも機械化された人間が,差別を受けたり隔離されたりする描写が見られる。プレイヤーは機械化されたエージェントとして,差別される側の視点から人種隔離政策を疑似体験できるのだ。Augsという虚構の設定を通じて,現実に存在する人種差別を仄めかすという,いかにも「寓話」に近い構図ではないだろうか。

アパルトヘイト博物館(南アフリカ共和国/ヨハネスブルグ)の入り口
(出典元:作者 Annette Kurylo / Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0)
デウスエクス マンカインド・ディバイデッド

「Deus Ex: Mankind Divided」に登場する駅。機械化された人間(Augs)と,そうでない人間(Naturals)は入り口が分かれている
デウスエクス マンカインド・ディバイデッド

 人種差別問題を前面に押し出した「Deus Ex: Mankind Divided」は,海外で物議を醸した。
 ゲーム研究者であるSteve Wilcox氏は,人種を抜きにしてApartheidを語るのは不適切であり,人種隔離政策を糾弾せずに善悪の判断をプレイヤーに丸投げするのはおかしい,と指摘している(出典元)。
 また,ゲームメディアのZAMは「人目を引くために政治的なテーマを利用しているだけだ」と批判し(出典元),Polygonは「Augsは自らの意志で体を機械化した上流階級だから,現実の黒人の比喩になっていない」と疑問を呈している(出典元)。

 確かに「Apatheid」は人種隔離政策を指す言葉だが,「Deus Ex: Mankind Divided」で描かれる差別は「人種による差別」ではない。Augsは尋常ならざる能力を持ち,かつ暴走する可能性があるから畏怖される。ただ肌の色が違うだけで差別されてきた黒人とは訳が違う。
 それに人種隔離政策を明確に批判するようなスタンスは,ゲーム内でも見当たらない。前述の批判は正論だと言える。

 こうした批判に賛同しつつも,筆者はあえて「Deus Ex: Mankind Divided」の肩を持ちたい。ゲームは他人の人生を擬似体験できるエンターテイメントである。たとえ現実を批判しなくても,ただ現実を「描写」することに意義はあるはずだ。

機械化された人間が被害者になった事件に対して,警察は関心を寄せない。犯罪に怯える者たちの苦しみはサブクエストで語られる(「Deus Ex: Mankind Divided」)
デウスエクス マンカインド・ディバイデッド

 「Deus Ex: Mankind Divided」は人種差別を描き切っていないが,差別は十分に描写している。電車に乗るとき,Augsは一般人とは別の列に並ばなくてはならない。プレイヤーが一般人の列車に乗ると,警察に呼び止められる。殺人事件の被害者がAugsであれば,警察はろくな捜査もしない。
 Augsは警察に頼れないばかりか,隔離区域に強制移住させられ,過酷な居住環境を強いられる。「差別されて生きる」とはどういうことか,本作を通じて(ある程度なら)体験できるだろう。

Augsであるプレイヤーが一般人の列車に乗ると,警察に呼び止められる。明らかな差別である(「Deus Ex: Mankind Divided」)
デウスエクス マンカインド・ディバイデッド

 アメリカのように異なる人種が混じり合う国では,人種差別は極めて身近に存在する課題だろう。しかし,香港人として育った筆者は,人種や差別をほとんど気にすることなく成長した。それは幸いなことだが,差別問題に馴染みの薄いプレイヤーに擬似体験させるゲームはあってもいいはずだ。
 ゲーム自体が人種差別を批判せずとも,プレイヤーがゲームを通じてそれに触れ,現実に存在する課題に関心を持つようになるのなら,それは意味のあることではないだろうか。

 ゲームは能動的なメディアだから,プレイヤーに「体験」を与える。人体拡張技術に関する記事を読むよりも,機械化されたキャラクターを実際に操作したほうが,オーグメンテーションの力を実感できるはずだ。人種隔離政策についての講義を受けるよりも,仮想世界で間違った列に並んで呼び止められるほうがインパクトは大きい。能動的な体験で得たものは,本や映画で綴られた知識よりもずっと心に残るだろう。

 差別の描写に稚拙なところはあるかもしれないが,積極的に現実の問題を取り上げようとした姿勢に拍手を送りたい。「Deus Ex: Human Revolution」と「Deus Ex: Mankind Divided」はシナリオもさることながら,ゲームプレイとビジュアル,音楽も絶妙なので,SFとRPGに興味あるならチェックしてほしい。

■■Jerry Chu■■
香港出身,現在は“とあるゲーム会社”の新人プログラマー。中学の頃は「真・三國無双」や「デビルメイクライ」などをやり込み,最近は主に洋ゲーをプレイしている。なるべく商業論を避け,文化的な視点からゲームを論じていきたい。
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