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「零 〜濡鴉ノ巫女〜」を生み出した任天堂&コーエーテクモゲームスに,Wii Uによって実現した斬新な恐怖体験について聞いた
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印刷2014/09/27 00:00

インタビュー

「零 〜濡鴉ノ巫女〜」を生み出した任天堂&コーエーテクモゲームスに,Wii Uによって実現した斬新な恐怖体験について聞いた

柴田氏の実体験を反映したゲーム


 さて,ここからは,菊地・柴田両氏とともに開発に携わった任天堂の大澤 徹氏と大谷 明氏を交え,本作の制作秘話などを聞いた。一部オカルト的な内容が含まれるため,その手の話が苦手な人は注意してほしい(零のインタビューをあえて読む人に,そういう人は少ないだろうが……)。

4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。
 何でも柴田さんは心霊現象などに強い興味をお持ち,実際に見たこともあるそうですね。

柴田 誠氏(以下,柴田氏):
 ええそうなんですよ。でも,私が見るときはほとんど顔がぼやけているんですよね。

4Gamer:
 顔が見えないというのもそれはそれで怖いですね。

柴田氏:
 意識して見ようとすると,体はハッキリ見えるのに顔にだけピントが合わないんです。

4Gamer:
 零 〜濡鴉ノ巫女〜では,どちらかというと美女でスタイルのいい幽霊が数多く出てきていましたが,それとは違うんですね。

柴田氏:
 現実と同じく,幽霊の世界でも美人や美少女というのはほとんどいません。美少女の霊は一度しか見たことがないんです。その美少女の霊はそんなに怖くなかったのが問題だったんですが,今回は霊の数も多いので,その霊をモチーフにしたものも出しました。

4Gamer:
 実体験がそのままゲームになっているわけですね。そう考えると,急にゲームの中の霊の怖さが増してきます。

菊地啓介氏(以下,菊地氏):
 その手の話はある意味,彼のライフワークですからね。今回の舞台である日上山を作るときに参考にした心霊スポットなども,取材ではなく個人的に訪れた場所もあるそうです。

コーエーテクモゲームスで「零 〜濡鴉ノ巫女〜」のディレクターを務める柴田 誠氏(左)と,プロデューサーの菊地啓介氏(右)。テクモ時代から,零シリーズすべての作品を手掛けてきた
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4Gamer:
 実際にどこに行かれたんですか?

柴田氏:
 今回は山にまつわる話ですので,一例として青森の恐山に行ったときの体験ももとになっています。

4Gamer:
 霊場として有名なところですね。イタコがいるという……。

柴田氏:
 行ったのが5月だったので,時期的にイタコの人はいませんでした。でも,やっぱり霊体験はありましたし,その体験をゲームでも生かしています。それと,そこらにいるおばちゃんが怖がらせる意図もなく「見たことがある」なんて話をしていたのがすごくリアルでしたね。もう日常になっているという……。

4Gamer:
 やっぱり恐山はそういう場所なんですね。
 そんな柴田さんとシリーズ1作目から一緒に零を作っている菊地さんもそういう体験はされるんですか?

菊地氏:
 僕には霊感みたいなものが一切ないんです。でも何か見えないものがいるという話を否定しているわけでもなく,どちらかといえば信じているほうなので,見えるという柴田の言うことも自然に受け入れて,彼の体験や夢の話などをゲームに反映させることも多いです。
 ただ,僕はめちゃくちゃ恐がりなんですよ(笑)。このゲームを作っていなければ,ホラー映画だってきっと見ていません。それくらい苦手でした。

4Gamer:
 それは意外ですね。

菊地氏:
 その分,ホラーゲームに対する正常な恐がり方ができますから,柴田が作るものを正しく見られるというメリットはあります。
 そういえば以前,霊感があるというライターの方に「零に出てくる霊はすごくリアルですね」と言われたことがあって,すごく戸惑ったことがあったんですよ。実際に見えないものですから,柴田が見えるものとその人が見えるものが果たして本当に同じ姿をしているのかも僕には分からなくて,褒めていただいたのに「そ,そうですか……」としか答えられなかったんです。

4Gamer:
 霊がリアルと言われると,確かに返答に困りますね。それはともかく,このWii U版も,拝見した範囲だけでも十分怖いということは伝わってきました。

柴田氏:
 そのライターの方は,「本物の霊は動きがもっと速いんだ」とクレームを入れてましたが,私が見たのはこのくらいです,という会話をしました。これは,見えている人の感覚的な話ですよね。
 でも,この「見えるはずのない霊の存在が見える感覚」をゲームで表現したいというところが,このシリーズの基本的なテーマですね。
 また,霊が出てくるときに特定の周波数の音が聞こえることがあるんですが,今回のWii Uではそういった音をWii U GamePadのスピーカーからも出せるようにもなりましたから,TVに向かって射影機を構えるとスピーカーが増えるということで,集中すると音が変わったり,霊が寄ってくるような状況も表現できました。

大澤 徹氏(以下,大澤氏):
 任天堂社内に,ゲームはそれほど得意ではないけど,すごく音にこだわりを持った人がいて,その人にテストプレイをしてもらったときに,「このゲームは本当に音がいいですね。すごくこだわりが感じられました」と褒められたんです。コーエーテクモゲームスさんの零における音のこだわりを,その言葉で実感しましたね。

大谷 明氏(以下,大谷氏):
 引っ越ししたばかりの開発室で1人夜中にヘッドホンの片耳だけしてプレイしていたんですが,ゲームの音なのか周りの音なのか分からないことがあって,けっこう怖いんですよ。

任天堂の大澤 徹氏(左)と大谷 明氏(右)。任天堂で多くの人気作品を手掛けてきたクリエイターで,プライベートではホラー作品への造詣が深い
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4Gamer:
 ちなみに,この手の作品を作るときには,心霊現象が起きがちだとよく聞きますが,そういったことは……?

大澤氏:
 ああ。柴田さんの体験談で,タンスから血が流れてきた話とか。

4Gamer:
 えっ!?

柴田氏:
 いや,ちょうどお盆だったんですが,朝起きるとタンスから血が流れてきていただけなんですけどね。それ以上どうということもなくて,妻に「どうせあんたのせいでしょ」と怒られながら拭いたんですけど,拭く前にとりあえず写真は撮っておきました(笑)。

4Gamer:
 ええええええ……。


新要素を追加しても,零シリーズの良さは失われていない


4Gamer:
 大澤さんと大谷さんは,今回,どのようにプロジェクトに関わったんでしょうか?

菊地氏:
 大澤さんとは本作まで合計4作品をご一緒させていただいて,本作ではコ・プロデューサーとして主にホラー部分の演出やストーリーを担当していただきました。大谷さんとは初めてご一緒させていただいたんですが,ゲーム全体の調整と,バトル部分を中心に担当していただいています。
 実は大谷さんは,大澤さんともども任天堂さんの中で一緒にホラー映画を観に行ったり,ホラー情報を交換したりする「ホラー部」を作っているというお話を聞いていて,いつかご一緒したいと思っていたんです。それが今回かなったという。

4Gamer:
 ということは,菊地さん以外はみなさんホラーが大好きだと。

菊地氏:
 そうなんです。3人ともすごくマニアで,全員が自分なりの“ホラー観”みたいなものを持っていて,それがかち合うととんでもないことになってしまいそうなので,それぞれ役割を分けて,別の担当をお願いしました。

4Gamer:
 今回のゲームの企画などは,みなさんで考えたんですか?

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大澤氏:
 両社で集まって,プレイヤーはどんなホラーゲームを遊びたいのか? ということを最初に考えました。
 廃墟や富士の樹海みたいな心霊スポット的なところは,実際には行きたくないけど,興味が湧く場所でもあって,そういう雰囲気をホラーゲームとして疑似体験できれば面白いのではないかという話になって,今回の舞台設定がおぼろげに見えてきたんです。
 ただ,そうは言っても単純に廃墟や樹海のモデルを作っても,世間のみなさんが持っている「心霊スポット」のイメージほど怖くならないんですよ。そこで,心霊スポットというものが持つイメージを壊さず,いかに舞台を構築するかという試行錯誤を繰り返しましたね。

4Gamer:
 そういった話し合いを経て,今回の舞台が屋外になったんですね。

柴田氏:
 ええ。心霊スポットという場所は基本的には屋外が多いですし。それに,ゲームの目的が失踪した人を捜すというものに変わったことも大きかったですね。

4Gamer:
 これまでのシリーズから目的や舞台が大きく変わったことについて,プロデューサーの立場として菊地さんはどう思われました?

菊地氏:
 ホラーゲームの場合,屋外エリアというのは開放感でちょっと安心できる場所なんです。そういう印象もあったので,舞台を屋外にすることに若干の心配はありました。
 先ほど大澤さんも仰っていたように,ただ背景を作るだけで怖いと思わせる空間を作るのはすごく難しくて,それならばいっそこれまでの屋内での展開と同様に,“屋外という空間に閉じこめられてしまう”というところまで作り込むことにしました。

柴田氏:
 屋外とは言っても,移動できる範囲をある程度制限しつつ,例えば樹海などで見られる朽ち果てたテントを片隅に置いたりするなどして,屋外ならではの嫌悪感を持たせるような設計をしています。
 そんな中で幽霊がどこから出てくるか分からないという,閉塞された屋内とは違う,広いからこその恐怖を出せたのではないかと思っています。

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4Gamer:
 怖さの質としても,前作と違うものを目指したということですね。

大谷氏:
 ただ,僕なんかは今回開発者としては新参者で,零シリーズもそれまでプレイしたことがなかったので,前作からこう変えてやろうという意識はありませんでした。
 加えて,僕が好きなホラーのジャンルが,血みどろのスプラッターなので,ほかの皆さんが怖がるツボとも違うんですよ。でも,受け取り手となるプレイヤーさんの中には,きっと僕と同じツボの人もいるでしょうから,血が噴き出すシーンなども交えつつ,その一方で雰囲気だけでしっとり怖がらせるようなシーンもまぶして,プレイした誰もが怖いと思えるような作り方を心掛けました。

柴田氏:
 屋外ということもあって,よりテンポよくスピーディな展開も多いので,前作と違う怖さがあると思います。キャラクターが増えたり,バトルの要素などが増えたりもしていますから,これまでよりもてんこ盛りな印象を持たれると思いますが,最終的には「やっぱり零だ」と思ってもらえるという自負はあります。

4Gamer:
 その「やっぱり零だ」と思える点って,具体的にはどこなんでしょう?

柴田氏:
 世界観だったり,ストーリーのペーソスですね。あと,各エンディングのあとに残る読後感のようなものは,これまでのシリーズと共通しているのではないでしょうか。

菊地氏:
 僕らがどんなに新しいものを目指して作ろうとも,作っている人間が同じなので,それぞれの個性が必ず出てしまっているんですよね。
 大谷さんのように新しいスタッフが加わったとしても,核となるメンバーは同じなので,前作とまったく異なる内容であっても,最終的にはこれまでどおりの“零っぽさ”みたいなものは感じられるのではないかと思っています。

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