連載
インディーズゲームの小部屋:Room#135「真説・鏃靈園奇譚」
さて本作は,タイトルにもある「鏃靈園(ぞくりょうえん)」と呼ばれる学園を舞台としたシングルプレイ専用のRPGだ。鏃靈園は,闇の眷属と戦うために,特殊な能力を持った若者達を集めて鍛え上げることを目的とした学園だ。しかし,あるとき突如として開いた異界に通じる穴から現れた無数の魔物により学園が占拠され,災厄の巣へと変わり果ててしまった。プレイヤーはからくも難を逃れた鏃靈園の園生となり,学園を解放するために仲間と共にこの呪われた園に足を踏み入れることに……。
ゲームの目的は,5月1日から翌年の3月1日までの期間内に,鏃靈園に起こった異変を解決すること。このことから分かるように,ゲーム中には時間の流れの概念があり,街に出て情報収集したり,フィールドを探索したりしている間にも,刻一刻と時間が経過していく。期間内にクリアできなかったときは,キャラクターのステータスに大幅なペナルティを受けた状態で,5月1日から再スタートすることになる。
ゲームでは,「迫撃科」「魔術科」「工科」など,10種類の学科(=職業)に所属する園生による,最大6名からなるパーティで学園内を探索していく。もちろん,すべてのキャラクターを自分で作成可能だが,ゲーム開始時にあらかじめ6名の園生が登録されているので,まずはこのキャラクターを使って探索を開始してもよい。というのも,キャラクター作成時に設定する項目が非常に多岐にわたり,ゲームに慣れないうちはキャラクター作成ですら難しいからだ。
各キャラクターには,名前や性別,学年といった,ゲーム攻略とは直接関係しない設定のほか,「力」「持久力」「精神力」といった12項目の能力値,さらには「社交性」「協調性」「決断力」など10項目の性格値があり,キャラクター作成時には10種類の学科と組み合わせて,これらすべてを設定しなければならない。つまり,とてもややこしい。
また,Wizardryのように各ステータスの数値はランダムで振り分けられるため,その気になればとことんこだわってキャラクター作成を行えるのも特徴だ。
本作における戦闘は,各キャラクターが自分の性格値に沿って独自に行動するオート戦闘が採用されており,プレイヤーは“撤退”以外の指示を出すことはできない。
したがって,あまり適当な性格値を設定してしまうと,ちっとも敵を攻撃しない前衛キャラや,ピンチになっても回復してくれない後衛キャラなどが生まれることに……。やっぱり,最初は初期登録されているキャラクターでゲームシステムを覚えていくのがよさそうだ。
とりあえずパーティを組み,探索に乗り出してからは,戦闘中に決して倒されないことを心がけよう。戦闘で体力がゼロになったキャラは“重態”となり,治療に失敗して“死亡”してしまうと,そのキャラのデータは完全に消去されてしまうからだ。また,仮に治療が成功しても,ペナルティとしてそのキャラの「持久力」が1減少し,元に戻すことはできない。しかも本作はオートセーブ方式なので,「しまった!」と思ったときにはもう手遅れなのだ。
フィールドの表示は2Dグラフィックスだが,ダンジョン探索と罠の解除,未知のアイテムの収集と鑑定,シビアなゲームバランスと常に隣り合わせの“死の恐怖”といったゲーム要素は,まさにWizardryに通じるところがある。味方キャラクターをあえて簡略化した斜め見下ろし型の戦闘シーンも,個人的にはかなりグッとくるところがあり,とくに1980年代の国産PC華やかなりしころのRPGに似た雰囲気が感じられる。本作は,そうした“古き良きRPG”を愛する人に強くオススメしたい作品だ。
Little Globeの公式サイトでは,本作の体験版が公開されているほか,製品版は1575円(税込)にて発売中。ゲームシステムを理解するまでのハードルはちょっぴり高いが,それを乗り切ればどっぷりと楽しめること間違いなしの一本なので,気になる人はまずは体験版からお試しあれ。
■Little Globe公式サイト
http://littleglobe.main.jp/- この記事のURL:
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