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Access Accepted第348回:ほのかに見えてきた次世代ゲーム
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印刷2012/06/25 12:00

業界動向

Access Accepted第348回:ほのかに見えてきた次世代ゲーム

画像集#001のサムネイル/Access Accepted第348回:ほのかに見えてきた次世代ゲーム

 ゲーマーは,華やかで臨場感のあるゲームのグラフィックスに興奮し,発売前から大きな期待を寄せる。それがいわゆる「次世代コンシューマ機」「次世代ゲーム」となると必要以上に夢がふくらむものだ。ロサンゼルスで開催されたE3 2012では,残念ながら任天堂のWii U以外の新たなハードウェアの発表はなかったが,今週は,そんな次世代ゲームについて考えてみたい。


「第8世代」は間近に迫っているのか


 北米のゲームメディアはしばしば,現在のゲーム業界を「第7世代の終わり」と形容する。
 ここで簡単に振り返ってみると,一般に,Magnavoxが製造した世界初のコンシューマ機「Odyssey」が,フランク・シナトラを使ったテレビコマーシャルの効果もあって10万台の売り上げを記録した1972年から1980年代前半が第1世代と呼ばれる。
 「Atari 2600」などの第2世代が1980年代前半までの10年間を占め,1983年に初登場し,世界累計で約6300万台を売ることになる任天堂の「ファミリーコンピュータ」第3世代にあたる。第4世代は,ファミコンの能力をアップした「スーパーファミコン」などの時代で,それに続いて「セガ・サターン」「PlayStation」「Nintendo 64」などが登場した,1993年から1998年あたりまでが第5世代と呼ばれている。
 3Dグラフィックスの表現能力に拍車がかかった第6世代は,「Xbox」「ニンテンドーゲームキューブ」の挑戦を退けた「PlayStation 2」がほぼひとり勝ちで,それに続く第7世代が,高解像度グラフィックスやネットワークが当たり前になった現行機というわけだ。

 こうした世代分けは恣意的なもので,分類にうまく当てはまらないハードウェアもあるし,携帯ゲーム機にはまた別の世代分類があるのだが,便利なのでよく使われている。
 ともあれ,いわゆる第7世代となる現在は,モバイルやタブレット端末を利用したカジュアルなゲームタイトルが大きなシェアを獲得したり,「Microsoft Kinect」のような新しいユーザーインタフェースが市場に受け入れられたりなど,ゲーム向けのプラットフォームは多様化している。さらに数年が経過しないと現在の歴史的位置付けは見えてこないのだろうが,2012年内の発売が見込まれている「Wii U」が,第8世代の始まりと言われることになる可能性は高い。

「CryENGINE 3」が描くハイレベルなグラフィックスが特徴となる「Crysis 3」。開発元のCrytekは,メディアのインタビューで「Crysis 3は,当社が開発する,最後のパッケージソフトになる」と大胆発言をしており,今後は現在開発中のオンラインサービス「GFace」を舞台にビジネスを展開していくようだ
画像集#002のサムネイル/Access Accepted第348回:ほのかに見えてきた次世代ゲーム

 ちなみに,一つの世代の終わり頃には,デベロッパのノウハウが蓄積されているため,技術的にも作品のまとまりとしても歴史に名を残す見事なタイトルが出てくることが多い。その意味からしても,E3 2012で話題になった,「Assassin's Creed III」「Watch Dogs」「The Last of Us」,そして「BEYOND TWO SOULS.」などのタイトルを見ると,確かに第7世代の終わりなのかなという気がしてくる。


実はPCゲームの祭典(?)だったE3 2012


 Wii U以外の次世代コンシューマ機は出てこなかったE3 2012だが,ショーフロアや商談ブースで行われていたデモには,ある特徴があった。それは,多くの新作タイトルのライブデモが実機ではなくPCで行われていたということだ。筆者が調べただけでも「Medal of Honor: Warfighter」「Splinter Cell: Blacklist」「Far Cry 3」「Metro: Last Light」,そして「The Elder Scroll V: Skyrim」のDLC「Dawnguard」などは,PCにコンシューマ機のコントローラを接続するという形でデモが行われていた。

 その理由は単純だろう。そもそもゲームがPCを使って開発されているため,実機向けのE3専用デモを制作したり,作動を確認したりする手間が省けるのだ。現在のPCのグラフィックス処理能力は,第7世代のコンシューマ機をはるかにしのぐため,最適化の必要もなくスムーズにプレイできることも大きな要因だろう。
 以前であれば,マルチプラットフォームタイトルは例外なく実機でデモが行われており,そうでなければムービーという形でゲームを紹介していた。だが,E3 2012で筆者が取材したタイトルはどれもライブデモかプレイアブル展示になっていた。

 次世代コンシューマ機も視野に入れていると思われる,Ubisoft EntertainmentのWatch DogsとLucasArts Entertainmentの「Star Wars 1313」も,デモではPCが使われており,とくにStar Wars 1313の場合は,「Unreal Engine 4」の「Elemental」デモと同様,NVIDIAの「GeForce 680 GTX」が使用されていたので,グラフィックスはDirectX 11世代のものになると考えて間違いないだろう。

E3 2012で初公開された「Unreal Engine 4」。やはりこれほどの映像を見せつけられると,次世代ゲームではこれが普通になるのではないかと,期待せざるを得ない
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 DirectX 11がリリースされてからすでに2年が経過しており,DirectX 11を正式にサポートするPCタイトルもかなりの数になる。つまり,我々は次世代コンシューマ機向けのグラフィックスを,PCゲームという形で見ていることになる。この2年間でゲーム開発者も相当なノウハウを蓄積しているのは間違いなく,ゲームの開発はスムーズに進むはずだ。

 どうやらグラフィックスでは,2Dから3Dに進んだような目の覚める変化は望めないらしく,そうであるなら,何が次世代ゲームらしさなのかというあたりが問題になる。簡単な答えはないだろうが,任天堂はWii Uで非対称のゲームプレイを,Microsoftは「Xbox Smart Glass」を提案しており,ともに複数のディスプレイを使ってゲームを楽しむという共通点を持っている。次世代ゲームの鍵は,このあたりにあるかもしれない。
 E3 2012のトピックであったFree-to-Play(基本プレイ料金無料)型のタイトルやクラウドゲーミング,そしてネットサービスなど,PCをルーツに持つものがコンシューマー機で重視されつつある。Wii Uの「Mii-Verse」や,PlayStation Networkの「ワンダーブック」にも,次世代ゲームの要素が見つけられそうだ。

 任天堂の宮本茂氏は,海外メディアのインタビューに答えて「Wii Uはグラフィックスではなく,ゲームそのものの面白さを取り戻すのが狙いだ」という主旨の発言をしている。ハイレベルなグラフィックスが当たり前になった現在,次のゲームがどのようなものになるのか,プラットフォームホルダーやデベロッパの試行錯誤が再び始まるだろう。

プラットフォームホルダーの先陣を切って発表された任天堂のWii U。ソーシャルネットワークへの取り組みがユニークだが,何よりもマルチスクリーンでゲームプレイがどれだけ変わるのかが楽しみだ
画像集#003のサムネイル/Access Accepted第348回:ほのかに見えてきた次世代ゲーム

著者紹介:奥谷海人
 本誌海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,北米ゲーム業界に知り合いも多い。この「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年に連載が開始された,4Gamerで最も長く続く連載だ。バックナンバーを読むと,移り変わりの激しい欧米ゲーム業界の現状が良く理解できるはず。
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