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印刷2010/10/18 13:43

業界動向

奥谷海人のAccess Accepted / 第279回:Mythicに降ってわいた,内部告発のスキャンダル

奥谷海人のAccess Accepted

 EA Mythicの社員がブログを公開し,内部批判を展開。これをめぐって,Electronic Artsはもちろん,欧米ゲーム業界内外の人物やMMORPGファンを巻き込んだ論戦が起きている。自らを“寄生虫”と名乗る人物は,身元が明らかになる危険性を冒してまで,なぜ内部批判を行う決意をしたのだろうか。

第279回:ythicに降ってわいた,内部告発のスキャンダル

 

内部状況を赤裸々に語る“EAの寄生虫”
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EA Louse氏が開発に携わっていたという「Warhammer Online: Age of Reckoning」は,パッケージ自体は発売時に100万本売れたものの,無料のお試し期間が終わった時点でプレイヤー数は約30万人,現在では約12万人ほどまで落ち込んでいるとされる。欧米の月額課金制MMORPGの中でも,ファンの定着率は低く,「Dark Age of Camelot」を成功に導いたノウハウがうまく活かされていないという意見が多い

 北米時間の10月12日,BioWare Mythicの開発者の一人と名乗る人物,EA Louse(EAの寄生虫,といった意味)氏が,「EA Louse: Bye Bye Mythic」と題したブログを立ち上げて激しい会社批判を展開し,ネット上で話題になった。

 最初のエントリーとなった「なぜWARは失敗したのか」でEA Louse氏は,Mythic Entertainment(現BioWare Mythic)の「Warhammer Online: Age of Reckoning」の開発がなぜうまくいかなかったのかというテーマを取り上げ,エグゼクティブ・プロデューサーのジェフ・ヒックマン(Jeff Hickman)氏,ゲームデザイナーのポール・バーネット(Paul Barnett)氏,コンテンツ・ディレクターのケイト・フラック(Kate Flack)氏,マーケティング副社長のユージーン・エバンス(Eugene Evens)氏,さらにMythic Entertainmentの創業者であるロブ・デントン(Rob Denton)氏など,いわゆるアッパーマネジメント(上級管理職)の人々を名指しで批判したのである。

 EA Louse氏は,ブログを立ち上げた動機として「11月に行われる予定のBioWare Mythicのレイオフ予定者の中に,自分が含まれているのを知った。EAが,アートワークのすべてをアウトソースしながら,何も達成できていない理由を我々に押し付けてくるのは耐えられない。Mythicは死につつあり,その犯人に仕立て上げられているのは俺達なんだ」と述べている。
 EA Louse氏の書き方が極めて過激であるだけに,信用度はやや低く感じられるのは仕方ない。同氏の語る話には風聞や誤解なども含まれている可能性もあるだろうし,そもそも,彼が自称どおりの人物であるのか確かめるのも難しい。読者の皆さんにも,その点は頭に入れていただいたうえで,EA Louse氏のブログに目を通していこう。

 EA Louse氏は“WAR失敗の理由”として以下のように書き込んでいる。
 欧米ゲーム業界でも非常に家族的なメーカーとして知られていたMythic Entertainmentは,2008年7月,Electronic Artsによって買収される。当時彼らが制作していたWarhammer Onlineは,イギリスのGame Workshopが制作/販売するテーブルトップRPGをライセンスしたコアゲーマー向けのMMORPGだったのだが,EAはそれを「World of Warcraftに肩を並べるほどの作品」にしようとし,反対する開発者達の要望を退けたという。もともと,目指すところが異なっているのだから,うまくいくわけがないということだろう。
 さらに,新たなプロジェクトリーダーがビッグバジェットの作品を制作した経験に乏しかったこと,ゲームデザイナーが達成できないことまでをファンに何度も約束してしまったことなどを挙げている。それなのに――と,EA Louse氏は怒りをぶつける――「解雇通知が送られてくるのは我々であり,上級管理職は自分の責任を回避し,新車でドライブしている」。

 

買収によって失われた,Mythic Entertainmentの企業文化
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EA Louse氏はElectronic Artsを批判しているのではなく,買収されたMythicが本来の価値観を失ってしまったことを嘆いているようだ。Mythic Entertainmentは,創業者の一人であるマーク・ジェイコブズ氏により1984年に設立されたデベロッパだ。上の写真は,2001年に正式サービスが始まった「Dark Age of Camelot」で,現在でも5万人ほどのプレイヤーがいる

 かつてのElectronic Artsは,定番となったスポーツタイトルから得られる豊富な資金力をバックに,「Ultima」シリーズのOrigin Systems,「Command & Conquer」シリーズのWestwood Studios,そしてイギリスのBullfrog Productionsなど,いくつもの名門デベロッパを買収してきた。しかし,買収されたデベロッパが成功しているうちはまだしも,失敗作を作り出した途端にあっさり解散させ,ファンに親しまれていた多くの開発会社が歴史の中に消えていった。

 全世界で約1万人の社員を抱える,欧米ゲーム業界を代表する大企業であるElectronic Artsだが,労働環境の整備が不十分であると批判されたこともある。その一つが,同社で働く開発者の妻達のサイト,「EA Spouse」で,残業や過度のプレッシャーの中で働く夫らを守ることを目的に,Electronic Artsの労働環境を告発したものだ。これは裁判に発展し,Electronic Artsが未払いの残業代,総額約12億円を支払うことで決着している。
 たまたまElectronic Artsの例を挙げたが,こうした裁判沙汰は,欧米ゲーム業界各社でしばしば見られることでもある。

 そういった経緯もあってか,Mythic EntertainmentやBioWareが買収された2008年,Electronic ArtsのCEO,ジョン・リキテロ(John Riccitiello)氏は,「当社は昔と違い,デベロッパの文化や個性を大切にする」と宣言し,EA Partnersなどの新しい戦略を打ち出した。ただ,BioWareと同時期に買収されたPandemic Studiosが2009年に閉鎖されるなど,同社は赤字改善のため,依然としてリストラを続けている状況だ。

 EA Louse氏のブログに話を戻すと,最初の書き込みだけで1000以上ものコメントが寄せられており,やはり「よく書いてくれた!」という無記名の賛同コメントが目立つものの,実名で淡々と反論する内容も少なくない。EA Louse氏に賛成の意を表す人の中には,「買収される前から,Mythicにいる」と書き込む人もおり,書き込まれた内容が事実だとするなら,以前のMythicを知る人ほど,現状をよしとしていない様子が,これらの書き込みからうかがえる。

 ブログを読む限り,EA Louse氏は自分の失職よりも,Mythicのコーポレートカルチャー(企業文化)が変わってしまったことを憂いているようだ。Mythicの成功作である前作「Dark Age of Camelot」を事実上主導したマーク・ジェイコブズ(Mark Jacobs)氏が,Warhammer Onlineの責任を取る形で辞職したあと,Electronic ArtsやGames Workshopに反対意見を述べられないイエスマンが増え,Mythicは,昔のようなMythicではなくなってしまったと彼は嘆く。そうした郷愁めいた思いは,記述中「BioWare Mythic」と,自分の家というニュアンスを持たせた「Mythic」をはっきり使い分けていること,そして雇用者がワイワイと集まって仕事をしていた時代を連想させる,「“ドーナツデイ”がなくなった」という彼のコメントからも感じ取れる。

 

労働者による告発は,欧米ゲーム業界の火種になるか?
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奇妙なことに,欧米のメディアの関心は,EA Louse氏のブログよりも,「Star Wars: The Old Republicに240億円もの巨費が投じられている」という短い文章に集まっているようだ。BioWare Mythicは,このプロジェクトにはほとんどタッチしていないので,実のところその情報の真偽そのものが不明なのだが

 EA Louse氏のカミングアウトは,欧米ゲーム業界に波紋を呼ぶかもしれない。
 2007年の経済危機以降,ソーシャルゲームなどの低予算タイトルへのシフトが進んだため,アメリカのゲーム企業の労働者規模は10%ほど縮小したと言われている。アウトソーシングによって,多くのイラストレーターやモデラーが職に就けなくなっているのは筆者も身近で見聞きしていることだ。
 EA Louse氏のブログは「末端の人が切られるのに,プロジェクトの責任を取らずに高級車を乗り回す管理職」に対する告発のようにも読めるだろう。今回のブログをきっかけに,労働者を保護するための措置が,ゲーム会社に求められるようになるかもしれない。

 もっとも,欧米メディアの関心は,EA Louse氏が書き込んだ「BioWareが開発中のStar Wars: The Old Republicは,業界最大級の3億ドル(約240億円)も費やしたプロジェクトだが,失敗が予想されているため,Electronic ArtsやLucas Artsはパニックに陥っている」というくだりに集まっており,かけた金額の大きさがMMORPGファンの間で話題になっている。

 今回の件は始まったばかりで,今後どのような方向に向かうのかはまだ分からない。
 すでに「God of War」の生みの親であるデイビット・ジャッフェ(David Jaffe)氏らが,EA Louse氏のモラルをブログで批判しているし,ファンに愛されながらもMythicから解雇された,前コミュニティ・ディレクターのサニャ・ウェザーズ(Sanya Weathers)氏も,「解雇された理由は弁護士から止められているので話せない」としながらも,EA Louse氏に反対している。
 ちなみに,EA Louse氏のブログは,最近Valveが発表したばかりの「Defense of the Ancients 2」の開発者であるIceFrog氏を批判する匿名のValve社員のブログにリンクされており,こうした末端の開発者による告発合戦が,堰を切ったように始まる前ぶれなのかもしれない。

 こうした内部告発は,情報の漏洩やイメージ悪化につながると訴えられる可能性もあるし,EA Louse氏にとっては,次の雇用先が見つかりにくくなることにもつながる。アメリカの場合,このような「ホイッスル ブローワー」(警告を鳴らす人)は法律で保護されるのだが,法整備が十分に進んでいない若いゲーム産業では,守られないケースも多い。
 事実,このブログが立ち上げられた翌日13日,EA Louse氏は「今朝,解雇された」と書き込んでいる。最初の書き込みで「解雇されるにしても,今月の給与だけはもらっておきたい」としていたが,どうやらそれはかなわなかったようだ。

 

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。サンフランシスコ在住の4Gamer海外特派員。ゲームジャーナリストとして長いキャリアを持ち,多様な視点から欧米ゲーム業界をウォッチし続けている。2004年に開始された本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,4Gamerで最も長く続く連載だ。
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