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印刷2010/08/30 11:59

業界動向

奥谷海人のAccess Accepted / 第274回:世界最大のゲームイベント,Gamescomの現状と展望

奥谷海人のAccess Accepted

 世界最大規模のゲームイベントとして知られるGamescomが,ドイツのケルンで開催された。アメリカのE3と日本の東京ゲームショーの狭間と言える期間に開催されるため,新作タイトルの発表が少ないのがメディアにとっては残念だが,発売前のタイトルがプレイできるとあって,多数のファンが押しかけるイベントだ。そんなGamescomを簡単におさらいしてみよう。

第274回:25万人の来場者を集める世界最大のゲームイベント,Gamescomの現状と展望

 

2010年は史上最高となる25万4000人の入場者を記録
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ドイツ西部の大都市ケルンにおいて,2010年もつつがなくGamescomが開催された。この2日前から開発者会議であるGDC Europeも行われるため,取材する身としては1週間を超す長丁場に耐える必要がある。気温が20℃を下回る寒い日の翌日が,30℃を超えるなど,なんとも上がり下がりの激しい気候だった

 ドイツ,ケルンの夏を彩る恒例のイベント,Gamescomが2010年8月18日から22日まで,地元のコンベンションセンター,ケルンメッセで開催された。世界33の国と地域から505社のゲーム関連企業が集まり,業界関係者は総計約1万8900人が参加した。驚くべきは,会期初日のビジネスデーを除く4日間の一般来場者数で,ついに25万人の大台を超える25万4000人が記録されたことだ。

 最近2年でフランス,イギリスを超え,アメリカに次ぐ日本のゲーム市場規模に肉薄するほどまでに成長したドイツ。イギリスやフランスよりも2000万人ほど多い,8100万人の人口を持つ国であるだけに,潜在的なゲーム購買力はさらに大きいはずだ。
 リサーチ会社のGermany Trade & Investによれば,ドイツの人口のうち75%がインターネットを利用できる環境にあり,18歳以下の青少年層の5人に4人が日常的にゲームに触れているという。したがって,ゲームがドイツの重要なエンターテイメントの一つであるのは間違いない。

 成長を続けるドイツの問題点といえば,アメリカや日本,そしてフランスのように巨大なゲームパブリッシャが国内に存在しないことだろう。ドイツのパブリッシャとしては,Deep Silver (Koch Media)を筆頭にdtp Entertainment,Kalypso Mediaなど,PC向けのタイトルを中心にするところが多く,そのどれもが,残念ながら世界市場にインパクトを与えるほどのブランド力を持っていない。伝統的にPCゲーム市場が大きく,そのためPlayStation 3やXbox 360,Wiiが登場して以降のゲーム業界の動きにうまく対応できなかったことが,大きな理由であろうが,規模の大きなゲーム市場を持つヨーロッパの国としては,珍しい状況だといえる。

 そのためか,アメリカのパブリッシャが新作を発表するElectronic Entertainment Expo(E3)や,アジア市場の動きが分かる東京ゲームショウに比べると,Gamescomは今一つ独自性に欠ける印象を受ける。Sony Computer Entertainmentを筆頭に, Electronic ArtsやActivision Blizzard,スクウェア・エニックスやNCsoftといったメーカーが大きなブースを設けてファンにアピールをしているのだが,ほとんどが(ドイツにとっての)外資系企業であり,ミニE3という雰囲気は払拭できない。

 来場者数は,E3と東京ゲームショウを合わせたほどに成長しているのだが,それら二つの重要なイベントに挟まった時期に開催されるGamescomの立ち位置は昨年(2009年)と同じく微妙だ。ドイツのメーカーに十分な力があれば,Gamescomに新作をぶつけてイベントを後押しすることも可能だが,ドイツ国内でゲーム企業に就職している勤労人口がわずかに1万人程度とされる今の状況では,多くは望めない。Microsoftや任天堂の協力をうまく利用しているとも言えず,カプコンやセガが出展を取り止めているのも残念なところだ。

 

オンラインゲームの成長をヨーロッパが牽引
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Gamescom名物の「混雑」。会場であるケルンメッセは,中央の巨大な通路の両側に,巨大なホールが4つあるという構造だが,週末から日曜日になると,普通に歩くのがもはや不可能なほど混み合う。来場者向けに,ライン川のほとりに屋外キャンプ地が設けられているほか,10万人を越える人で賑わう夜間のコンサートが開かれるなど,会場周辺はGamescom一色になる

 ドイツにおいて孤軍奮闘の働きを見せるのが,フランクフルトのCryTekだ。Electronic Artsからリリースされる予定の「Crysis 2」を2011年に控える同社の強みは,技術力の高さだ。自社開発のゲームエンジン「CryENGINE 3」は初めてマルチプラットフォームに対応し,Epic Gamesの「Unreal Engine 3」の強力なライバルになりつつある。
 現在,300人ほどの会社規模を持つCryTekでは,複数のプロジェクトを同時進行しており,Crysis 2のほか,Microsoft Game Studiosから発売予定の「Codename: Kingdoms」という新作が発表されている。
 2009年には「TimeSplitters」シリーズで知られるイギリスのFreeRadicalDesignを買収。同年にはブダペストを拠点にするBlack Sea Studiosも買収しており,今後1〜2年のうちに,これらのサテライトスタジオから新作が発表されるはずだ。
 会社が成長することで優秀な人材が集まり,いずれそうした開発者達が自らのメーカーを設立するようになれば,ドイツのゲーム産業も活気づいていくだろう。

 オンラインゲームもまた,PCに強いドイツ国内の成長市場だ。Gamescomの主催者であるBIU(German Federal Associations of Interactive Entertainment Software)は,ドイツ国内には約1240万人のオンラインゲーム・プレイヤーがおり,オンラインゲームの収益は,年間約2億ユーロ(約215億円)に達するとしている。
 北米のリサーチ会社,DFC Intelligenceによれば,アメリカとEUのオンラインゲーム市場は,2010年の約8億ドル(約677億円)が,2015年には約50億ドル(約4229億円)に成長すると見積もっており,そうなった場合,人口もPCユーザーも多いドイツがヨーロッパ市場を牽引することになるだろう。
 今回のGamscomでも,Free-to-Playタイプのブラウザゲームやソーシャルゲームのメーカーが目立っており,Frogster InteractiveやBigpoint.comといったドイツ国内のパブリッシャに注目が集まっていた。FrogsterやBigpoint.comは現在,50か国以上でゲームを運営しており,この分野ではドイツゲーム産業の力は強い。
 そのためか,MMORPGを開発するメーカーのGamescomにおけるプレゼンスも拡大しつつある。「World of Warcraft」のActivision Blizzard,「FINAL FANTASY XIV」のスクウェア・エニックスを始め,「Guild Wars 2」のプレイアブル版を初出展したNCsoft,同じく「Star Wars: The Old Republic」のプレイアブル版を公開したElectronic Arts,そしてヨーロッパに進出した「Perfect World -完美世界-」のPerfect World Entertainmentなど,いずれもブースは来場者でいっぱいだった。Gamescomが,E3や東京ゲームショウとの差別化をはかれるのは,これらオンラインゲームなど,ヨーロッパの成長分野という部分なのかもしれない。

Gasmescomで見た,ちょっと面白いゲーム

タイトル:Busy Scissors
開発元:Little Orbit
発売予定日:2010年10月

 

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 Gamescom会場に停められた大型トレーラーの中に簡易のヘアサロンが設置されており,割と奇抜なヘアスタイルのスタイリスト達が,無料で整髪サービスを行っていた。これが何かといえば,ヘアケア製品で有名なRedkenが監修した散髪ゲーム「Busy Scissors」のブース。
 結構長い人の列ができていたのだが,ゲームのほうはちっとも目立っておらず,ほとんど全員が,無料の整髪サービス待ちという状況だった。
 イギリスのLittle Orbitが制作したBusy Scissorsは,ヘアスタイリストになったプレイヤーが,客のさまざまな要望に応えてカットやシャンプー,カラーリングなどを行うというもの。7種類のカッティングテクニックと35種類のヘアスタイルをマスターし,最終的にヘアサロンのオーナーになるのが目的だ。
 対応機種は,WiiおよびNDSで,発売は2010年10月が予定されている。

タイトル:Cyberbike: Megnetic Edition
発売:Bigben Interactive
発売予定日:2010年内

 

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 フランスのメーカーなのに,イギリスにある有名な時計台の名前を冠したBigben Interactiveが発売するWii専用ゲーム「Cyberbike」は,エクササイズバイクを周辺機器にしてしまったことで話題になったゲームだ。ドイツ以外のEU地域でのみのリリースとなり,バイク付きで99ユーロという手頃(?)な値段が特徴。
 このCyberbikeによって同社は昨年(2009年),創業以来最高の業績をあげており,それを受けて2010年にリリースされるのが,「Cyberbike: Magnetic Edition」である。
 残念ながら公式資料は用意されていなかったので,具体的にはよく分からないのだが,なにやら磁気のパワーを利用しているらしく,バイクの色も以前のホワイトからブラックに変更。ゲームの内容はあまり変わっていないようだが,公道だけでなく炭鉱内,あるいは羽根のついたバイクで空中を走るようなミッションが展示されていた。

タイトル:Demolition Company
発売元:GIANTS Software
発売予定日:発売中

 

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 日本では「ファーミング シミュレーター 2009 〜大地へ挑もう! ぼくらの農業生活〜 日本語版」としてリリースされている「Farming Simulator 2009」のデベロッパ,GIANTS Softwareが,その最新版となる「Farming Simulator 2011」をGamescom会場に展示しており,いかにもドイツの農村の女性といったコスプレのお姉さんが無料で麦わら帽子を配布したりしていた。しかし,そんな独特の雰囲気以上に気になったのが,同社がリリースしたばかりのビル解体シミュレーション「Demolition Company」である。
 Demolition Companyは,Gamescom期間中にリリースされたゲームだが,デモの展示はまったくなく,パンフレットが配られているのみ。ジャックハンマーやコンクリートソー,そしてもちろん爆薬を駆使してさまざまなビルを解体するというシミュレーターで,解体で得た資金をブルドーザやモンケーン(クレーンに取り付けられた鉄球)などに投資できるので,これでさらに事業を拡大しよう。すでにSteamで販売されているので,筆者のように本作が気になって仕方がない人は,チェックしてみよう。

 

 

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。サンフランシスコ在住の4Gamer海外特派員。ゲームジャーナリストとして長いキャリアを持ち,多様な視点から欧米ゲーム業界をウォッチし続けている。2004年に開始された本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,4Gamerで最も長く続く連載だ。
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