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印刷2009/01/16 14:22

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奥谷海人のAccess Accepted / 第202回:ゲーム産業に大変革の波が到来か

奥谷海人のAccess Accepted

 ゲーム産業は日々,目まぐるしく進化している。前回は「パッケージ販売が下火になり,オンライン配信の時代に向かう」などと書いたが,2009年末にはダウンロードというコンセプトそのものが,過去のものになってしまうかもしれない。どんな3Dゲームでもストリーミングできるようになりそうなのだ。

第202回:ゲーム産業に大変革の波が到来か

 

「雲」という名のスーパーコンピューティング
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クラウド・コンピューティングというコンセプトは,数年前から存在していたが,それをゲームへ本格的に応用するのはAMD Fusion Render Cloudが初めてになりそうだ。これで,ユーザーは好きなデバイスで,高解像度の映画やクオリティの高いグラフィックスのゲームを遊べるということだが……

 30年ほど前に生まれたテレビゲームは,技術の発展とともにその姿を変貌させてきた。グラフィックスの進化はいうに及ばず,ゲームセンターでしか遊べなかったゲームが家庭で楽しめるようになり,いまでは外に持ち出して楽しめる。さらに,インターネットを介して遠くにいる人達と一緒に遊べるようになるなど,進化のスピードは著しい。
 そして技術の進化に伴って,ゲームにまつわるビジネス形態も変わってきた。ちょっと前までゲームは,お店で買うものだったが,いまではインターネットを介してゲームそのものや,追加コンテンツをダウンロードするシステムが浸透し始めている。現在,ようやく軌道に乗り始めたダウンロードビジネスだが,どうやら早くも次の段階へ移行する雰囲気が見えてきた。

 2009年1月9日,アメリカのラスベガスで開催された2009 International CES(以下,CES)において,AMDが「AMD Fusion Render Cloud」と名づけられた,かなり面白い計画を発表した。
 大ざっぱに説明すると,AMD Fusion Render Cloud は,コンテンツプロバイダがレンダリング処理をした高解像度の動画を,エンドユーザーが使っているPCのWebブラウザへ配信するというものだ。つまりユーザーはインターネットに接続できれば,持っているハードウェアの性能に左右されることはなく,一定のクオリティで動画を楽しめるのである。そして,この技術はゲームにも応用できるのだ。細かい仕組みは異なるが,コンセプトは「G-Cluster」と同じと考えていいだろう(関連記事)。

 

 

ゲーム用プラットフォームの存在価値はなくなるのか?
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こんなグラフィックスのゲームでも,薄型ノートPC,さらには携帯電話で遊べるようになるかもしれない。ハイスペックのゲーム機やゲーム用PCは,必要とされなくなるときが近づいてきたのか?

 AMD Fusion Render Cloudは,複数のPhenom IIプロセッサとAMD 790チップセット,そして1000個ものATI Radeon HD 4870グラフィックスチップを使用し,演算速度は1ペタFLOPSを超えるという。まさに,エンターテイメント向けスーパーコンピュータといったところだが,コストは従来のスーパーコンピュータの数分の1程度に抑えられる予定だ。

 クラウド・コンピューティング(Cloud Computing)というコンセプトは以前から存在した。ちなみに「雲」の意味であるクラウドという言葉は,さまざまな使われ方をするが,ここではインターネットの隠喩であると考えて差し支えないだろう。
 一つのスーパーコンピュータが“データセンター”の役割を果たし,そこにすべてのユーザーがアクセスする。だが,とくにそのことを使用者が意識する必要はないので,頭の上に漂っているのを誰も気にしない,雲のような存在になるのだ。

 クラウド・コンピューティングがIT業界で大きく注目されたのは,2002年頃である。GoogleのGmailやGoogle Calendar,AppleのMobile Meといったサービスも,クラウド・コンピューティングの一形態といわれている。
 CES会場で,アクションゲーム「Mercenaries 2: World in Flames」を使用した,ストリーミングデモが行われたAMD Fusion Render Cloudだが,これは派手な爆発シーンが多い本作を,ノートPCのブラウザで表示させて遊ぶという内容だった。これが本格的に実用化されれば,一般家庭で使うゲーム用デバイスの演算能力を競う時代は,完全に終わりを告げるかもしれない。

 ゲームというのは,本や音楽,映画とは違い,“プラットフォーム”となるハードウェアによる制約が多い。新しく開発された技術やインフラの整備によって,さまざまなものが生まれ,あるいは廃れていくという,ハードウェアへの依存度が高いメディアである。
 AMD Fusion Render Cloudは,グラフィックスに必要な画面とブロードバンド接続が可能なハードウェアであれば,ゲームも楽しめるというものだ。しかもユーザーの端末側では複雑な演算が行われないため,バッテリーの持ちもよくなるという。もちろんゲームの場合は,どうやって操作させるのかという問題があるので,単に映像を配信するのとはわけが違う。たとえば,携帯電話にRTSをストリーミングしても,そのままではまともに遊べないだろう。
 とはいえ,AMD Fusion Render Cloudのようなクラウド・コンピューティングは,ゲームビジネスを根本から変える可能性がある。いまはプラットフォームホルダーが圧倒的な力を持っているゲーム業界だが,その勢力図が一気に塗り変わるかもしれない。
 また,不正コピーへの対策としても効果的だ。最初は映像配信に利用されることになりそうだが,ゲーマーとして見逃せないテクノロジといえるだろう。

 

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。昨年末に,氷点下を切るほどの寒さに見舞われたサンフランシスコ在住の奥谷氏。「これはたまらん」とばかりに,羽毛布団など,さまざまな防寒グッズを購入したそうだ。だが,いざ年が明けると,なんと気温が20度を超え,Tシャツでも過ごせるようになってしまったという。とりあえず奥谷氏と逆の行動をとれば,なにかとうまくいきそうだ。一緒にラスベガスにでも行きましょう。
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