連載
奥谷海人のAccess Accepted / 第185回:ライプツィヒつれづれ。GC 2008版
世界で最も華やかなゲームイベントといわれるGames Conventionは,家族向けの総合イベントとして拡大し続けており,ついに来場者数が20万人を突破。さらに,メディアやビジネス商談向けのミーティングスペースも拡大され,そこでもさまざまなゲームが発表/公開された。そんなGCだが,すべてが順調とはいかないようだ。
ヨーロッパ最大のゲームイベント
Games Convention。ついに20万人突破!
第7回となるGames Convention(以下,GC)が,今年もドイツのライプツィヒ市にあるコンベンションセンター,Leipziger Messeで8月20日から24日まで(20日はビジネスデー)開催された。ヨーロッパ最大のゲームイベントとして台頭したGCは,ついに20万人の大台を超える20万3000人の来場者数を記録。ブースを出展した企業は,前年の503社から547社へ増えるなど,順調な成長を続けている。
最も気を吐いていたのは,Activision Blizzardだろう。公の場で「Activision Blizzard」という名称を使ったのは初めてのことであり,欧州での販売を手掛けるLucasArts Entertainmentのタイトルを含め,多くの人気作を出展して会場を賑わせていた
当連載の読者であればGCがどんなイベントなのかはご存知のことと思うが,手短に説明しておこう。GCは,ゲーム開発者向けのカンファレンス,ビジネスミーティング専用の商談エリア,そしてファンの参加という3要素がうまく組み合わさった,ゲームイベントである。
GCは,年内にリリースされる予定のゲームを,会場にやってきたファンが実際に遊べるのが特徴であり,今年は,Activision Blizzardの「Call of Duty: World at War」「Guitar Hero: World Tour」「Starcraft II」,そして「World of Warcraft: Wrath of the Lich King」,Electronic Artsの「FIFA 09」や「Spore」,さらにはSony Computer Entertainmentの「LittleBigPlanet」やSEGAの「Sonic Unleashed」など,プラットフォームを問わずさまざまな作品がプレイアブル展示されていた。
週末にあたるイベント後半ともなれば,自分の思った方向にも歩けないほどのファンでごった返し,プレスや開発者達にとっても,その熱気がひしひしと伝わってくる,業界と消費者の接点が限りなく近いイベントなのだ。
そんなGCだが,今年は“異変”があった。GCは4Gamerにとってはドイツや東欧から出展されるゲームを取材できる良い機会であり,昔のE3 (Electronic Entertainment Expo)にあった,小さなブースが集まる「Kentiaホール」を巨大にしたような,混沌とした展示も魅力の一つだった。ところが,今年はいくら探しても,あっと驚くような意外なゲームが見当たらない。ロシアのBuka EntertainmentやND Gamesはプレスお断りのビジネス商談に徹しているなど,中小のパブリッシャ/デベロッパにはゲームの展示をやめてしまったところが多かったのだ。
また,ドイツ最大のKoch Media(Deep Silver)は奮闘していたものの,任天堂が出展を見合わせたこともあって,全体的に新作の発表が少なかったのも残念だ。Electronic Artsの「The Godfather II」や「FIFA 09」,Futuremark Game Studiosの「Shattered Horizon」など,GCで初公開された新作もあったのは確かだが,どちらかというと,すでに公開されているゲームのおさらいといった感じだった。
どうなる,来年の大型ゲームイベント
今年のGCは,来場者数が去年より2万人増え,ついに20万人を超えたが,その雰囲気は開催前から伝わっていた。4Gamer編集部も,数週間前からホテルの手配に当たっていたのだが,今年は思うように進まなかった。結局,市内を走るトラムを使って片道45分ほどのダウンタウン南部に部屋を押さえることができたが,参加者の中にはライプツィヒ市内でホテルを確保できなかった人もおり,そんな人達は,近隣都市から,臨時バスやタクシーを使って往復しなければならなかったのだ。
アトラクションからジョブフェアまで,ゲーム以外の分野にも拡大し続けているGCだが,人口50万人のライプツィヒ市では,まかない切れないほどの規模になってきたのである。
そんな状況に業を煮やしたのが,ドイツのソフトウェア販売促進団体のBIUだ。BIUは,ドイツ東南部の“片田舎”にあるライプツィヒの収容能力や集客力の限界から,主催者であるLeipziger Messeに対して,ドイツ各都市での持ち回り開催を提案したが,交渉はうまくまとまらなかった。
Games Conventionの名物といえば,大ホールをつなぐカマボコ型の通路にひしめく一般客の波だろう。今年は,混雑時にお客さんを誘導して,人が流れやすくなるように工夫されており,5日で20万人の観客を上手く捌いていた。来年は,ここまで賑やかになるだろうか……
そこで,BIUは西の玄関口である商業都市ケルンのKoelnmesseと提携し,2009年にGAMEScomという新たなゲームイベントの開催を発表した。ケルンは人口が約100万人で,国際空港のあるフランクフルトやデュッセルドルフからも遠くなく,会場となるKoelnmesseは世界で4番目の面積を誇るイベント会場であるという。各プラットフォームホルダーを含め,多くのパブリッシャがGAMEScomに鞍替えすることになりそうだ。
もっとも,Leipziger MesseもGCを諦めたわけではなく,「すでに世界最大規模のゲームイベントとして認知されており,ゲーム企業からの理解は得られるはず」として,2009年も8月19日から23日まで開催すると発表している。ゲーム会社は,同じ地域で二つのイベントへ出展して,大きな出費を強いられるのは避けたいはずだから,おのずとどちらかのイベントに軍配が上がるだろう。だが,しばらくはドイツ東西に分かれての,壮絶なイベントバトルが繰り広げられるかもしれない。
ドイツ本国では際どい立場にあるLeipziger Messeだが,Games Conventionブランドが着々と根付いているのは確かだ。今年で2回目となるGames Convention Asiaが,シンガポールで9月19日から23日まで開催される(関連記事)。2007年は300社7万人程度の参加者があり,東京ゲームショウでは見せ場が作りにくいことへの不満から,アジアや欧米企業には人気が高い。
さらに,Leipziger Messeは,近い将来に北米市場への参入も企画しており,E3の縮小で穴の開いたアメリカでのゲームイベントの主催に乗り出すようだ。アメリカでは,Penny Arcade ExpoやE for All Expoなど,さまざまなゲームイベントが立ち上がっているが,どれも多くの企業を誘致するには至っていない。業界関係者だけが入場できたE3とは違い,メディアやバイヤーからファンまで,すべての人が楽しめるような大型イベントが北米で誕生することは,熱望されているのではないだろうか。
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