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BoosterMedia Japanが開発系イベント「日本における次世代ウェブゲーム」を開催。HTML5を使ったゲーム開発や,他社との取り組みを紹介
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印刷2015/11/17 19:48

イベント

BoosterMedia Japanが開発系イベント「日本における次世代ウェブゲーム」を開催。HTML5を使ったゲーム開発や,他社との取り組みを紹介

イベントの冒頭では,BoosterMediaの本社があるオランダ・アムステルダムの市長 Eberhard Van Der Laan氏がスペシャルゲストとして登壇し,挨拶を行った
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 BoosterMedia Japanは2015年11月12日,「日本における次世代ウェブゲーム」と題したイベントを,東京都内で開催した。
 このイベントでは,HTML5を使った同社のゲーム開発について紹介されたほか,ブラウザゲームの現状と今後の展望や,Yahoo! JAPANおよびバンダイナムコエンターテインメントとの取り組みに関するプレゼンテーションがなされた。本稿では,その会場の模様をレポートしよう。


HTML5ゲームは,マルチデバイス/マルチプラットフォーム展開に最適


BoosterMedia CEO Laurens Rutten氏のプレゼンでは,マルチデバイス展開などでのHTML5を使ったゲーム開発のメリットや、同社開発タイトルが紹介された
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 BoosterMedia CEO Laurens Rutten氏のプレゼンでは,HTML5を使ったゲーム開発のメリットが紹介された。まずRutten氏は,HTML5が2015年現在,多数のブラウザに対応し,優れたパフォーマンスを発揮しており,ゲーム開発に採用される事例が増えていることを指摘した。

 次にRutten氏は,HTML5を使ってブラウザゲームを開発するメリットを,Unityとの比較で紹介した。1つめとして,HTML5はスマートフォンなどモバイル端末向けのブラウザをサポートしていることだ。残念ながら現在のUnityは,すべてをサポートしているわけではない(逆にUnityの対応プラットフォームのすべてがHTML5をフルサポートしているわけでもないが)。

 2つめは,HTML5は基本的に1バージョンしか存在せず,Unityのようにプラットフォームごとにバージョンが違うということがないこと。したがって基本的にはソースコードが一つとなり,アップデートや不具合対応を含めたマルチプラットフォーム/マルチデバイス展開が非常にスムーズになるのである。

 3つめは1社で開発環境を構築しているUnityと異なり,HTML5はオープンな開発環境であること。4つめは,Unityのように開発上で独特な作法を必要としないことが挙げられた。
 そして5つめは,HTML5で開発したゲームが,App StoreやGoogle Playを含めた多くの流通チャンネルを利用できることである。
 とくにRutten氏は,あるブラウザゲームタイトルの簡易版をネイティブゲーム化してApp Store/Google Playにて配信したBoosterMediaの事例を紹介した。この試みでは,簡易版のネイティブゲームから本家のブラウザゲームへのユーザー流入が見られたとのことで,Rutten氏は低コストでユーザー獲得が可能だとアピールしていた。

 また,HTML5は3Dグラフィックスに弱いというイメージがあるかもしれないが,今や多くのブラウザがWebGLに対応したことにより,それも克服されている。
 Rutten氏のオススメはオープンソースの3Dエンジン「Three.js」で,物理演算やVRをサポートするプラグインも用意されているとのことだ。

 ただし,開発環境をほかのものからHTML5に移行するのは,そう容易なことではない。そこでBoosterMediaでは,HTML5を使ったゲーム開発の技術援助やパブリッシング,マネタイズなどに関するサポートを一手に引き受ける体制を整えているとのこと。また自社開発スタジオでは,後述するバンダイナムコエンターテインメントとの事例のように,他社IPをゲーム化する取り組みも行っている。Rutten氏は,興味があればぜひBoosterMediaにコンタクトを取ってほしいとしてプレゼンをまとめた。

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HTML5ゲームは,ネイティブゲームの競争激化を解決する策の一つになり得る


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Kantan Games 代表取締役 Serkan Toto氏
 ブラウザゲームの現状と今後の展望に関するプレゼンを行ったのは,Kantan Gamesの代表取締役を務めるSerkan Toto氏だ。
 氏は,プレゼンの冒頭で,1990年代初頭にHTMLが登場して以来,PC向けのWebゲームや,フィーチャーフォン,スマートフォン向けにゲームの開発が進められてきた歴史について紹介していた。

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2007年にGREEとDeNAが日本市場でフィーチャーフォン向けのFree-to-Playのソーシャルゲームをヒットさせたことにより,モバイル端末向けブラウザゲームが飛躍的に進化を遂げたことも紹介された
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 ゲーム市場の世界的な調査会社Newzooの報告によれば,世界全体のゲーム市場の規模は2017年には1000億USドルを超える見込みだという。そのうち,カジュアルなPC向けブラウザゲームは2018年に約70億USドル,一方でPC向けMMOゲーム(クライアント型,ブラウザ型の双方とも)の市場は340億USドル以上に上るとのこと。
 これらの予測をもとにToto氏は,PCのブラウザゲーム市場が非常に大きく,かつ向こう数年間は非常に安定していることを指摘した。

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 モバイル端末向けブラウザゲームについては,近年における日本のスマートフォンゲーム市場の事例が示された。グラフを見ると,2012年から2014年にかけてはネイティブゲームの成長が著しいが,ブラウザゲームの市場規模も減少することなく安定的に推移していることが分かる。このことからToto氏は,ユーザーは必ずしもブラウザゲームからネイティブゲームに流れているわけではないと説明した。

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Toto氏は,日本にはPC,モバイルを問わず多数のブラウザゲームプラットフォームがあることも指摘した
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 ちなみに,モバイル端末向けブラウザゲームが一定の市場規模を保っているのは,世界全体を見渡しても日本のみで,2014年時点においてもフィーチャーフォンゲーム市場が6億5000万USドルに達しているという(CESA調べ)。この事実についてToto氏は,GREEとDeNAが日本においてモバイル端末向けブラウザゲーム市場を開拓したからであると分析していた。

 さらにToto氏は,現状において,すでに「グランブルーファンタジー」や,BoosterMediaの各タイトルなど,HTML5を使って開発されたクオリティの高いゲームがあることに言及していた。また,非公式ではあるが,「Starcraft」のコードをHTMLに変換し,ブラウザ上で動作させた事例も紹介された。

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 以上のように,ブラウザゲームの市場性の高さや長所を紹介してきたToto氏だが,スマートフォンゲームにおいて,ネイティブゲームとHTML5を使ったブラウザゲームのどちらが有利なのか,結論を出すには時期尚早だという。
 Toto氏は,唯一言えることとして,スマートフォンのネイティブゲーム市場は世界的にレッドオーシャン化しており,非常に厳しい競争を強いられることを指摘した。一般のスマホゲームプレイヤーが,ゲームでなにがどう動いているかを意識しているかどうかは不明だが,氏はその解決策の一つとして,HTML5を使ったブラウザゲームの開発とリリースを挙げてプレゼンをまとめていた。

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BoosterMediaのタイトルを扱うYahoo!ゲームの「かんたんゲーム」は高齢者にも人気


ヤフー 須藤 岳氏
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 ヤフーでゲーム事業を手がける須藤 岳氏のプレゼンでは,Yahoo!ゲームの「かんたんゲーム」が紹介された。
 2014年7月にサービスを開始したかんたんゲームは,「気軽に楽しむ」「深く楽しむ」「マルチデバイスで楽しむ」という3つのコンセプトを掲げている。

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 気軽に楽しむことについては,無料で,かつログインやインストールを不要にすることで,誰でも簡単に楽しめることを指す。また,ゲームの内容を1文で説明するなど,煩わしさを徹底的に排除している。

 深く楽しむことについては,一見すると気軽に楽しむことと矛盾するようだが,Yahoo! JAPAN IDに紐付くランキングシステムや47都道府県別の順位提供などにより,ユーザーのモチベーションを保つことを指している。
 そしてマルチデバイスで楽しむことに関しては,文字どおり一つのゲームタイトルを複数のデバイスでプレイできるようにすることである。

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 具体的な数字は提示されなかったが,以上のコンセプトに基づいた展開により,デイリーの利用ユーザー数は2015年10月にはサービス開始時の10倍以上に達したとのこと。

 一方で,ユーザー層は,男性と女性がほぼ半々,年齢層別では40歳代の層が最も多く,50歳代や60歳代以上の層も目立っているという。

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 また,1日あたりの平均利用時間は30分以上に及んでいる。比較対象となっているYahoo!ゲーム全体のグラフは,ニュースの閲覧なども含まれているため比較対象として単純な比較はできないのだが,それでもユーザー数の増加と合わせるとYahoo!かんたんゲームのエンゲージメントの高さが読み取れると,須藤氏は説明した。

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 さらに須藤氏によると,Yahoo!かんたんゲームは,HDML5を使ったBoosterMediaのタイトルの出来があまりにもよかったために企画をスタートさせたとのこと。また須藤氏はBoosterMediaの長所として,未知な領域にトライする企業であること,PDCA(plan-do-check-act)サイクルが迅速かつ正確であることを挙げていた。
 今後はBoosterMediaとの良好な関係を保ちつつ,引き続きさまざまなパートナーからもタイトルの提供を受けていくという。

 最後に須藤氏は,ユーザーにとっての主役はプラットフォームではなく,ゲームタイトルそのものであるとし,ゲームが活躍するにはどうすべきかを考え続けなければならないと語っていた。


BoosterMediaからバンダイナムコIPを使ったタイトルが今冬リリース予定


バンダイナムコエンターテインメント 桝井大輔氏
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 バンダイナムコエンターテインメント ネットマーケティング部の桝井大輔氏のプレゼンでは,同社の「カタログIPオープン化プロジェクト」が紹介された。このプロジェクトは,同社の「パックマン」や「ゼビウス」など17のオリジナルIPをオープン化し,日本国内クリエイターによる二次利用を可能にするというものだ。

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 プロジェクト発足の理由は,これらのIPが持つポテンシャルを,必ずしも自社で活かしきれていないことにあるという。そこでIPをオープン化することで,さまざまなクリエイターと協力することにより,既存の枠組みを超えた新しい価値や事業を創出しようというわけである。

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 このプロジェクトには,現時点で160社以上の企業がエントリーし,8月から順次公認タイトルがリリースされている。
 またエントリー企業のうち,新規取引先が76%,業種別ではゲーム業界以外の企業が25%に及んでいるとのことで,今後どんな展開が見られるのか,桝井氏自身もワクワクしていると語っていた。

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 そうしたエントリー企業の中にはBoosterMediaも含まれている。バンダイナムコエンターテインメントとしては,HTML5に注目しつつも,なかなか手が回らない状況だったとのことで,今回の取り組みには大きな期待を抱いているという。
 その成果の第1弾は今冬リリース予定であり,桝井氏は「非常に面白いコンテンツを世の中に出すことになります」と紹介しつつ,今後のカタログIPオープン化プロジェクトの展開にも注目してほしいとしてプレゼンを締めくくった。

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