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「マリオ」「ゼルダ」の作曲者も登場! まさに“LIVE”としか言いようがない,「VIDEO GAMES LIVE in JAPAN」レポート
その手の催しは,日本でも例えば「ドラゴンクエスト」シリーズや,「ファイナルファンタジー」シリーズで以前から行われているし,最近でも「逆転裁判」や「モンスターハンター」のコンサートが,数多くの観客を集め,どれも好評のうちに公演を終えている。
では,それらとVGLは何が違うのか? という問いに対し,一言で答えるのは少々難しい。一部は共通しているし,一部は違っている。しかし,大枠で見ると,何もかもが新しく映るのである。
やや乱暴な言い方をしてしまうと,オーケストラとは演奏の一形態……,もっと言えば,“楽器”に過ぎず,どんなジャンルの音楽だって奏でることが可能なのだ。
しかし,オーケストラを使ったコンサートの多くは,クラシックのフォーマットに則ったものがほとんどであるのも事実。実際,これまでに行われてきた,ゲーム音楽のオーケストラコンサートのほとんども,クラシック演奏会のフォーマットの枠内で,クラシックではない音楽を演奏するものだった。
無論,それが悪いわけではないし,日頃,オーケストラに接する機会のない人であれば,ゲーム音楽という入り口から,オーケストラの魅力に気づくこともあるだろう。
だが,VGLは,それらとは違う。オーケストラの持つポテンシャルを生かしつつも,映像とのシンクロを重視し,VGLのプロデューサーでありMCでもあるトミー・タラリコ氏がオーディエンスを煽りまくるのだ。
「マリオ」や「ゼルダ」の作曲者,近藤浩治氏も登場
まずは,ゲームファンとしても有名だった故マイケル・ジャクソン氏(のキャラクター)が,「スーパーマリオブラザーズ」や「スパルタンX」,果ては「キャプテン翼」まで,さまざまなゲームに乱入してムーンウォークを決めたりするという映像と,実写版「パックマン」とでも言うべき映像が上映されると場内は暗転し,今回の演奏を担当した東京ニューシティ管弦楽団,合唱を担当した洗足学園音楽大学フレーバーコーラス隊が入場。
チューニングの後,指揮者のジャック・ウォール氏が舞台に上がった。
スクリーンには次々と,「インベーダー」や「ドンキーコング」「魔界村」など往年のアーケードゲーム映像が映し出され,それらのメロディがメドレー形式で奏でられていく。
この1曲めが終わると,トミー・タラリコ氏が登壇し,「私は小さい頃からビデオゲームと音楽が好きで,その頃から,いつの日か,ビデオゲームの歴史において多大な功績を残してきた日本で,こうしたライブをやるのが夢でした。夢を叶えさせてくれてありがとう」と感謝の言葉を述べるとともに,「私達は,ビデオゲームが,いかに文化に影響を与えているか,芸術として優れているか,そしてなぜ21世紀を代表するエンターテインメントになったのかを,VGLを通じて証明する」と宣言。
続いて,「この中に,ディズニーファンはどれぐらいいる?」「では,スクウェア・エニックスファンは?」と場内へ質問を投げかけると,どちらに対しても大きな拍手が。
そして2曲めは,ディズニーとスクウェア・エニックスのコラボレーション作品,「キングダム ハーツ」が演奏された。
4曲めは,KONAMI往年のアクションゲーム「Frogger」。こちらは,ただ演奏をするだけでなく,場内から2人を選び,ゲームをプレイさせながら,それにオーケストラが音楽を合わせていくという趣向。これなど,インタラクティブ・アートと呼んでも差し支えない試みといえるだろう。
そこからは,今回の指揮者であるジャック・ウォール氏が作曲した「Myst」,目隠しピアニストとしてYouTubeなどで名をあげたMartin Leung氏による「ファイナルファンタジー」のピアノソロ,「ワンダと巨像」,そして「ゼルダの伝説」で第一部は終了。
なお,ゼルダの伝説の演奏前には,作曲者の近藤浩治氏がステージに上り,「23年も前のことだからあまり思い出せないんですが(笑),時代背景など関係なく,勇ましい音楽を意識して作りました」と,当時を振り返ってコメントしていた。
日比野氏は,「メタルギアソリッド」シリーズや「龍が如く2」,最近では「ラブプラス」などの楽曲を手がけているが,元々は演奏家としてキャリアをスタートし,途中でゲームの音楽に携わるようになった人物。
ちょうど,ゲームにオーケストラの音楽が使われ始める頃のことだったようで,この日ステージで残した「テクノロジーの進化が芸術を作った」というコメントは,まさにビデオゲームにおけるハードウェアやテクノロジーの進化を,音楽側から間近で見てきたからこその実感のこもった言葉だったように感じられた。
そんな日比野氏が,今度はトミー・タラリコ氏作曲の「Advent Rising」を紹介。イタリア系アメリカ人であるトミー氏らしく,「イタリアンオペラ」のテイストも持った楽曲は,ここまでに演奏されたどの楽曲とも毛色の違う雰囲気。
Advent Rising自体,日本では発売されていないPCゲームであるため,遊んだことのある人が会場内にいたかどうかは不明だが,この楽曲をきっかけに興味を持つ人もいたのではないだろうか。
また,続いての「Warcraft」も,世界中で大人気なのに日本では……というゲームの代表例。こちらもやはり,音楽を通じてゲームに興味を持った人もいたことだろう。
オーケストラによる「スーパーマリオブラザーズ」が終わると,近藤浩治氏がピアノソロで,同じくスーパーマリオブラザーズの楽曲をプレイ。近藤氏もまた,これまで日本で演奏したことがなく,今回が演奏姿の本邦初公開となった。
そして「Halo」の楽曲を組曲風にアレンジした「Halo Suite」では,トミー・タラリコ氏がエレキギターを手に大暴れすると,「クロノ・クロス/クロノ・トリガー」では,ジャック・ウォール氏が指揮棒を手放し,傍らに置いてあったアコースティックギターを演奏。
こういった演出効果もあって,大盛り上がりのうちに本編は終了。
当然の如く始まったアンコールは,「ファイナルファンタジーVII」より「One-Winged Angel」,Martin Leung氏によるピアノソロ,そして「悪魔城ドラキュラ」の3曲。
最後には悪魔城ドラキュラの作曲者,山根ミチル氏と山下絹代氏による挨拶も行われ,そこで山下氏は「私が作った曲が,VGLで演奏されることで,永遠になりました」と喜びを語った。
もしまた日本でVGLが開催されることがあるならば,いっそのこと大きめのライブハウスなどで見てみたい。トミー・タラリコ氏は,冒頭の挨拶で「耳で聴き,画面を見て,オーケストラだからといっておとなしくしないで,感情のままに手をたたいたり,叫んだりしてください」と語っていたが,それをするには今回の会場はちょっと堅すぎたような印象だ(日本人はTPOをけっこう気にしちゃいがちだし)。
まあ,140人規模のフルオーケストラ&合唱団が乗れるステージとなると,会場も限られてしまうのだが……。
「VIDEO GAMES LIVE in JAPAN 〜ゲーム音楽と映像の祭典〜」セットリスト
ACT I
1.Classic Arcade
2.Kingdom Hearts(キングダム ハーツ)
3.Sonic(ソニック・ザ・ヘッジホッグ)
4.Frogger(Interactive Segment)
5.Skype Interview
6.Silent Hill(サイレントヒル)
7.Myst
8.FF - Piano Solo(ファイナルファンタジー)
9.Shadow of the Colossus(ワンダと巨像)
10.Zelda(ゼルダの伝説)
ACT II
11.MGS3: Snake Eater(メタルギアソリッド3)
12.Advent Rising
13.Warcraft
14.Mario(スーパーマリオブラザーズ)
15.Mario - Piano Solo(スーパーマリオブラザーズ)
16.Halo Suite
17.Chrono Cross/Chrono Trigger(クロノ・クロス/クロノ・トリガー)
ENCORES
18.One-Winged Angel(ファイナルファンタジーVII)
19.Martin Leung - Piano Solo
20.Dracula(Castlevania)Rock(悪魔城ドラキュラ)
「VIDEO GAMES LIVE in JAPAN」公式サイト
YouTubeで話題の目隠しピアニストも初来日決定! トミー・タラリコ氏に,「VIDEO GAMES LIVE」の魅力を聞いた(4Gamer)
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