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印刷2009/07/28 10:30

連載

【切込隊長】MMO系RPGはどうしてクリッコゲームばっかりなのか?

切込隊長 / アルファブロガーにしてゲーマー。その正体は,コンテンツ業界で今日も暗躍(?)する投資家

切込隊長:茹で蛙たちの最後の晩餐

ブログ:http://kirik.tea-nifty.com/



 何の酔狂か,修羅の形相の4Gamer編集者から連載の執筆依頼を頂戴した切込隊長であります。


 読者からすると「何屋だお前」という雰囲気がするかもしれないが,平たく言えば,ゲーム屋がゲームを出すために必要な資金をどこからか引っ張ってきて企画を企画として成立させるための仕事,が中心である。まあ,制作委員会とかコンテンツファンドとかそういうもんを立ち上げる仕事だ。
 世間的には「財務」とか「調達」とか言う。最近は,ゲームよりアニメやテレビの仕事のほうが多いような気もするが,気にしない。ゲームもアニメも「コンテンツ」だからなあ。企画を立ち上げたいけど,会社には金がないのでどこからか引っ張らなければ作れない,という人たちが相手の商売であって,でも仕事柄,どうしても収益性とか帳尻とかそういう観点でコンテンツを見ることになる。

 そんな私が原稿を書くのだから,4Gamerにこんな記事載せてどうするんだという記事から連載を開始しよう。お題は「なぜ,MMOではユーザーは必死に敵をクリックしているのか」である。


なぜ,MMOではユーザーは必死に敵をクリックしているのか


ウルティマ オンラインがちょうど日本でブレイクし始めたころの懐かしき画面。当時は当時で独特の雰囲気がありました
ウルティマ オンライン
 確かに,まだ「ウルティマ オンライン」(以下,UO)が出始めの12年前,ハマってしまった私は必死に動物をクリッコして倒していた。Player Killer(以下,PK)に怯えながら,動物の皮を剥いでは皮鎧を作って装備屋に売りに逝き,簡便な市場システムを搭載された店長から「もうお前の商品は要らねえぞ」と門前払いされ,泣きながら銀行にしまいこみ,気がついたら鯖が落ちて二日前に巻き戻されていた。私が費やした20時間を返せ。もう二度とやるか。
 そういうクレームも,当時は常態的にオチる鯖の前には無力だった。あのときは心が折れていたのに,翌日には平気でログインしている自分がいる。そしていつの間にか私自身がPKになり,赤ネームとしてお尋ね者となった。

 私の話はどうでもいい。

 UOが流行ってしばらくの,そういう牧歌的な時代は,MMOといえばクリッコするものであった。アイテムをクリッコ,敵をクリッコ。アホほどクリックし続けて成り立つ世界では,ゲームバランスもクリッコ前提であった。デザイン上,どうやら「誰もが遊べるように設計する必要がある」だけでなく,「システムに優しい」設計をした結果,完成されたのがクリックし続けるRPGとしてのMMOだったようだ。

 あれから十年の時代を経て,私たちは大人になった。いろんなオンラインゲームが出て様々なタイプの操作系が実現できるようになったいま,私たちはどういうゲームをして遊んでいるかというと,いまだに一定の割合がクリッコゲーだったりする。クライアント立ち上げて接続して敵見つけ次第クリッコ。クリッコクリッコ。

 で,日本で開始されるゲームサービスなどの立ち上げの仕事とかで回ってくるゲームは,国産か韓国産・中国産か,あるいはイタリア産,英語圏産を問わず,実にクリッコゲーの企画ばっかりである。もう要らないよ,こんなにクリッコするMMOは。ユーザーも朝から晩までクリッコして,金も使って廃人になって,何が楽しいんだ。実際,ネットでの評価は一定して「こんなクリックゲーはつまらん。クソだ」という内容が圧倒的になる。
 気の利いたゲームメーカーだと,リリース前にクライアント調査とか金をかけてやるわけだが,これまた気が滅入るほど「クリッコゲー死ね」という回答のオンパレード。「本サービスが開始されたら,課金してゲームする意向はありますか」とか質問に入っていると,容赦なく「NO」の回答が響き渡る。世の中そんなもんだ。悲しいぜ。

 ところが,さまざまオンラインゲームの運営状況や収益状況を見比べてみると,圧倒的に利益が上がっているのはクリッコゲーベースのMMO系RPG。いやもう圧倒的。それは大型タイトルについていた客がそのままついてるからだろう,さすがに新規タイトルだと状況違うよね,と思って2008年度にリリースされたゲームに限定してみても,上位は全部クリッコゲー。何でこんなに流行るのクリッコゲー。

 あるゲーム会社は,クリッコゲーの世界観がいいからだ,という。別のゲーム会社は,ゲームシステムが優れているからだという。最近では,そこにプレイヤー同士の「社会」が完成されているから,そこにロイヤリティを感じているんだ,とも。

 でもさあ。世界観が楽しければ,他にもいろいろゲームがあるんだよね。システムだって,無料ゲームでそこら中にさまざまなアイデアのが落ちてる。プレイヤー同士のCGM的な仕掛け… が好きならmixiでもやって疲れてろ。そう思うわけです。

 このところ,海外のメーカー,とりわけエンジンを提供しているところと話し合っていて思ったのは,クリッコゲーのベースを作ってユーザーのトランザクションを捌くコストが圧倒的に安く,仕様の作り込みのために必要なコストを考える必要がないので,結果としてMMOという分野では圧倒的な安値でサービスを開始できる。したがって,ユーザーが飽きないようなイベントやアイテムリリースの仕掛けを多数用意したり,広告宣伝費をたくさん使って人がたくさんいるように「見せ」たりすることができる,という戦略のようだ。

 逆に,クリッコゲーであれば初心者でも子供でも安心して入れる,という初動効果もあるよ,したがって多少クソゲーであってもユーザーでにぎわうロビーを見れば,決してすぐにやめようとはしないんだ,優れてるなあ,そういう話であります。

 なんでそういう話になっているかというと,オンラインゲーム業界で伝説になっている某大型タイトルは,構想や開発に3年以上の時間と巨額の開発費用を使い,いざゲームを開始してみたら数週間も経たずにユーザーがいなくなり,約1年でクローズしてしまったという「野心的」な事例があるからで。オンラインコンテンツのノウハウがあるという触れ込みのはずなのに,蓋を開けてみたら彼らにはまったくなくてびっくり,という。

 MMOや,MMO的仕組みを含んだMOというジャンルは,ゲームデザインそのものよりもレベルを上げさせるための狩場やユーザーが増えた場合の充分な拡張性を確保することが重視され,結果としてクソゲーであっても長く遊べる環境を整備する必要を考えると操作系は単純なクリッコに集約させてデザイン上の不安定要素をなくそう,ということなのかも知れん。

 オンラインゲームという単体の括りで言うと,正直もう市場としての伸びはなくなって,旧来型のゲームにオンライン機能がついたり,逆にオンラインゲームがコンソールゲームの様式を取り入れる形での進化をしていくのは間違いない。だから,株式上場はしたけど売上がなかなか伸びないオンラインゲームメーカーや部門は必死なんだろうと思うわけでね。

 クリックだけのMMOエンジンであれば,びっくりするほど安い金額で手に入り,表現を乗せ換えたりシステムを一部変えるだけのわずかな手間と期間で別のゲームに仕上げられる,という初期投資の安さも組み合わさると,結果としてこのようなクリッコゲー大氾濫の状況が出来るのだなあという夢を見ました。

 いい朝でした。


■■切込隊長■■
言わずと知れたアルファブロガーで,その鋭い観察眼と論理的な文章力には定評がある。が,身も蓋もない業界話にはもっと定評がある。ゲーマーとしても知られており,時間が無いと言いつつも,膨大に時間を浪費するシミュレーションゲームを愛して止まない。今回の連載をお願いするや否や,「インペリアリズム2とかって編集部にありませんか?」と問い合わせてきた切込隊長。……これまた渋いゲームをご存じですね。

 
  • 関連タイトル:

    ウルティマ オンライン

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