イベント
黒川文雄氏,飯田和敏氏らが参加する同人サークル「チーム・グランドスラム」も出展。インディーズゲームの祭典「東京ロケテゲームショウ」をレポート
フレッシュなアイデアに満ちた挑戦的な作品が非常に目立っていた本イベント。来場者の意見を熱心に聞く若い開発者の姿や,サークル同士で意見交換をする場面なども数多く見受けられたのも印象的で,大規模なゲームショウとはまた違った魅力を放っていた。
中でも注目だったのが,黒川文雄氏,飯田和敏氏,中村隆之氏,納口龍司氏という,ゲーム業界で数多くの実績を残してきたメンバーで構成されたサークル「チーム・グランドスラム」だ。グランドスラムのブースでは,ビル解体&人質救出ゲーム「モンケン」というプロジェクトの存在が確認できた。サークル結成の経緯とモンケンについて,黒川氏と飯田氏に直接訊いたので,その内容を会場全体のレポートとあわせてお届けしよう。
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まず「グランドスラム」というサークル名が非常に気になるのですが……。
ダサいでしょう(笑)。僕が音楽,映画,ゲーム,すべてのエンターテイメントを経験しているからっていう理由で付けたんです。サークル名の提出期限があと1,2時間しかなかったから「あっ,これでいいや」って感じで。
4Gamer:
飯田さんは名前を聞いてどう感じましたか。
飯田和敏氏(以下,飯田氏):
個人的に,あんまりいいとは思わないですけどね(笑)。ただ,黒川さんは実際にすべてのエンターテイメント産業を通ってきた人なので,その名前を付ける資格があるんですよ。僕はまだそこまで行ってはないので。
黒川氏:
制覇したかどうかは分からないですけど,一応すべて経験しているよっていうことですね。
4Gamer:
なるほど。では,グランドスラムのプロジェクトである,「モンケン」について聞かせてください。
「モンケン」の根底にあるものって,実は「あさま山荘事件」なんです。あの事件では赤軍が人質を盾に10日間閉じこもってましたけど,その時,人質を救助するために使われた重機の名前が「モンケン」っていうんですよ。「モンケン」では,昭和に起こった印象的な出来事を裏のテーマとしてなぞっていきたいなと思っています。
4Gamer:
キャラクターが可愛らしい感じに描かれているので,裏にそういう重いテーマがあったというのは驚きました。ゲームの開発段階はどのくらいでしょうか。
飯田氏:
基本的なロジックの部分は全部できているので,あとはまとめるだけという感じですね。ただその前にロケテゲームショウに参加して,皆さんの意見を聞きながら最終的な調整をしようと。
4Gamer:
なるほど。「モンケン」では,飯田さんはどのようなこと担当しているのでしょうか。
飯田氏:
僕は納口さんに「やれっ!」っていう係です。藤子不二雄みたいなタッグって感じですかね。
4Gamer:
どっちがFでどっちがAか,気になるところですが(笑),次にグランドスラムのこれからの活動予定を教えていただけますか?
黒川氏:
いろいろと考えてはいるんですけど,せっかく飯田さん,中村さん,納口さんという素晴らしい才能に出会えたので,やはり物作りをメインにしながら,様々な活動をしていきたいですね。
まだ始まったばかりのサークルなので,「これから」しかないんですよね。なのでとてもワクワクしています。今日みたいに,将来のゲームカルチャーの担い手がいっぱいいる中で,僕らみたいなロートルは邪魔かもしれないけど,やっぱり僕らも,いつまでも遊んでいたいと思っていますからね。
歳は取っちゃいましたけど気持ちは若いし,実はまだそんなに達成感もない。自分達のキャリアを振り返ると,長いことやってきたなって感慨にふけることもありますが,基本的には忘れっぽい性格なので。
あと,ゲーム作りって常に変動していくじゃないですか。学生さんでも,スマートフォンやタブレットでゲームを作る人達がいっぱい出てきている。素人とプロの境界が揺らいでいる時代なので,こういうダイナミックな状況で何ができるのかいろいろと試してみたいですね。
4Gamer:
実際に会場をご覧になられて,どのような印象を持たれましたか。
飯田氏:
まだ負ける気はしないかな(笑)。
黒川氏:
言うなぁ(笑)。
飯田氏:
でもすごく刺激は受けますよ。さっき言った,境界の揺らぎを感じますね。これはゲームに限ったことじゃなくて,あらゆるコンテンツが,一次創作,二次創作,三次,四次と続いていって,もはや従来の考え方だけでは成立しない産業になってきているなと。
昔と比べて,若い人がいろいろなことに挑戦できるフィールドも増えましたよね。ツールもデバイスも多種多様で,そういう意味では入り口も出口も広い。僕らは既成のものに囚われすぎた感じもするんですよ。いわゆる,フォーマットがないとできないとか,ハードウェアがないとできないとか,そういうことを言われて時代を過ごしていたから。
でもそうじゃなくて,「ノールールで活動できる」というのは環境として素晴らしいですよね。なので,その中で自分達ができることをやってみたい。同時に,今まで自分達が既成概念として持っていたものとか,権威とかは一旦取り払わなくちゃいけないとも感じています。あと,こういう場で出会った人達と,何か次のチャレンジができるかもしれないと思いますしね。お互いプラスになることがあればハッピーだし,ここがそういう場になればいいなと。
4Gamer:
なるほど。では実際にインディーズでゲームを作ってみた感想をいただきたいです。
飯田氏:
僕はコンシューマゲームで,意識的にやっちゃいけないことをやって,“脱法ゲーム”を作ってきたので,なんでもアリだと逆にやりにくい感じがしましたね(笑)。
黒川氏:
コンシューマっていうのはビジネスなので,細かい契約とか,大きなお金が発生しますよね。なので,最終的には(ゲームは)出来上がると思うんですよ。
でも同人とかインディーズって,ほかで仕事をしている人もいれば,それをメインじゃなくて趣味でやっている人もいる。そういう意味でいうと,よほど「ゲームを作りたい」という気持ちが強くないと,出来上がるまでの時間が苦痛に感じるんだろうな,とは思いました。
飯田氏:
〆切りもない,制約もない,ギャランティーもない,じゃあ何でやるのかって言ったら「楽しそうだから」っていうことだけだと思うんですよね。
4Gamer:
確かにインディーズで活動されている方って,そういうモチベーションでやっている方がほとんどですよね。
黒川氏:
インディーズでゲームを作ること自体が勉強の対象になっている学生さんとかだったら,ある意味目標は一緒なのでいいと思うんですけど,僕らみたいに自分達の意志でやっていると,お互い持っているものに違いがあるから,そこの擦り合わせが大変ですよね。
4Gamer:
分かりました。「モンケン」については,開発が進んでお話できることが増えてきたら,またお聞かせいただきたいと思います。本日はありがとうございました。
手作り感満載なグランドスラムブース。開発途中のため,画面撮影はNGだったのが残念だった |
ブースの看板(?)にたくさんのモンケンを描き込んでいる納口氏 |
ここからは,会場内で特に印象に残ったブースをフォトレポート形式でお届けしていく。会場の様子を少しでも感じてもらえたら幸いだ。
一夢小路の出展しているノベルゲーム |
東京ロケテゲームショウ公式サイト
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