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海外展開の先駆者が自らの経験や事例を披露。「グローバル&ソーシャル時代のゲーム戦略セミナー」レポート
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印刷2012/01/23 11:00

業界動向

海外展開の先駆者が自らの経験や事例を披露。「グローバル&ソーシャル時代のゲーム戦略セミナー」レポート

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 2012年1月20日,日本オンラインゲーム協会(JOGA)と日本マイクロソフトの共催による,「海外進出ネットワークゲーム系企業に学ぶ! グローバル&ソーシャル時代のゲーム戦略セミナー」が,東京都内で開催された。このセミナーでは,オンラインゲーム/ソーシャルゲーム業界が,グローバル展開においてさらなる成長を期待されていることを鑑みて企画されたもの。そのうち,セッション「グローバル展開企業によるオンラインゲーム&ソーシャルゲームの最新動向」では,ゲームポットとジークレスト,6waves Japanといった,すでに海外展開で実績を上げている企業のスタッフによるパネルディスカッションが行われた。

セッション「モバゲー・グリー ユーザー行動分析調査」では,シード・プランニング 野下氏が,同社の「Mobage・GREEのスマートフォンゲームユーザー行動分析調査」(2012年1月刊行予定)から一部を抜粋し,データを披露した
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セッション「グローバルスケール展開を可能にするクラウドプラットフォーム」では,日本マイクロソフトの砂金氏が,クラウドサービス「Windows Azure」の特徴を説明した。ちなみにAzureのマスコットであるクラウディア・窓辺を仕掛けたのも砂金氏だそうだ
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日本オンラインゲーム協会 事務局長 川口洋司氏
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GCREST America 大野木氏

 モデレーターを務めたJOGA 事務局長 川口洋司氏は,同協会が韓国/台湾/シンガポール/北米/ロシア/エジプトといった地域のゲームコンテンツ団体と提携し,国産オンラインゲームの海外進出を積極的にサポートしていることを紹介。また2012年1月中には新たにフィリピンの団体と提携することが明かされ,そのほか提携国以外の国々とのマッチングも積極的に行っていると,川口氏は説明する。
 また2010年の国産オンラインゲームの海外における売り上げは4億7000万円となっており,ブラウザゲーム/ソーシャルゲームの海外進出が盛んになった2011年の売上は2010年の130〜140%ほどになっている見込みとの報告もなされた。
 川口氏は,国内展開だけではオンラインゲーム業界全体に限界が来ることを想定し,JOGAはこれまで海外進出支援をしてきたと述べる。また今後は,スマートフォンを使ったオンラインゲーム/ソーシャルゲームの海外展開も支援していくとのことだ。

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 GCREST Americaの大野木氏は,ジークレストが北米に現地法人を構えるまでの経緯などを紹介した。ジークレストでは,さまざまなリサーチの結果,最初の海外進出先に北米を選択し,「アットゲームズ」のローカライズ版「TinierMe」を展開することを決定。その過程では有料アイテムの価格帯の見直しや,肌の色の選択肢などを増やすといった調整を施したという。

 TinierMeが順調に実績を挙げていったことにより,2010年3月,サンフランシスコにてGCREST Americaを設立することとなったのだが,当初のメンバーは大野木氏を含めてわずか4名。当時のオフィスは手作り感の強い雰囲気だったが,今では会社全体の規模も大きくなり,福利厚生の充実に努めているそうだ。

 大野木氏は,日本企業が海外進出する場合,多大な経営リソースをもった現地企業と戦うことになると述べる。それはメジャーリーグに進出し,New York Yankeesと戦うようなもので,生半可なものでは勝てないと続け,以下の3ポイントを挙げた。

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●会社としての意気込み
中途半端な参入の仕方では絶対に成功しない。一線級の人材と巨額投資の覚悟が必要

●コンテンツではなく,まずは自らのローカライズ
異国の生活習慣・ビジネス習慣すべてにおいて日本とは別物。どれだけ会社と担当人材をローカル化できるかがキー

●日本側の手厚いサポート体制と柔軟性
日本のやり方を無理に押しつけない。柔軟に物事を考え,迅速かつ手厚いサポート体制を

 6waves Japanの所氏は,6wavesが全世界4億3000万人の登録会員数を誇る,ソーシャルゲームパブリッシャ/デベロッパであることを紹介。同社が得意とするのは“流し込み”──すなわちデベロッパが開発したタイトルに,多くの顧客を流入させることであると,所氏は述べ,その中でもとくにデベロッパとの協業を重視していると説明した。具体的には,広告枠を設置するにしても単なる説明に留めるのではなく,Facebook上の知り合いが遊んでいるタイトルを紹介するといった感じだ。

6waves Japan 所氏
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 続いて所氏は,日本の企業が海外進出するにあたって抱く「本当に儲かるのか?」という懸念に言及する。所氏は,自社タイトルのデータを示し,ARPU(ユーザー一人あたりの平均売上金額)で比較すると確かに海外では日本の5分の1程度に落ち込んでしまうのだが,ARPPU(課金ユーザー一人あたりの平均売上金額)になるとそれほど差が生じないことを指摘し,「きちんとプレイヤー数を増やせば,日本も海外も有料プレイヤーの支払額は変わらない」と説明。また,きちんと対応すれば,同じタイトルでも海外のほうが圧倒的な収益を上げられるというデータも示し,海外進出にチャレンジする価値があるのではないかと,聴講者に呼びかけた。

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 ゲームポットの近藤氏は,同社が段階的に海外展開に取り組んできたことを紹介。第1段階では他社タイトルをグローバルにパブリッシングし,第2段階では,2009年,北米に現地法人としてGamepot USAを設立した。そして現在は,「ペーパーマン」「リヴリーアイランド」「アルテイル」といった自社タイトルを各国にライセンスする第3段階にあると,近藤氏は述べる。

ゲームポット 近藤氏
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 近藤氏は,ゲームポットにおける各タイトルの海外展開事例を紹介し,そのポイントを以下のようにまとめた。

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●商品(タイトル)の特性に合うマーケットを特定する
●規模が大きく成長性が高いマーケット/地域を優先する
●競争優位(独自性)を持つ商品で,先行者メリットを狙う
●最適なパートナー(プラットフォーム)を探す
●人脈を最大限に活用し,ビジネスチャンスを逃さない
●マーケットの独自ニーズを正確に把握し,ローカライズする(最適化)
●自社で直接サービスする場合は,とくに綿密な市場調査と準備をする

 ここからは,パネルディスカッションから主だった部分を抜粋して紹介していこう。まず,タイトルをライセンスアウトするにあたり,どのようにパートナーを選定しているかというテーマでは,近藤氏が“足を使った”地道な作業が必須と述べる。というのも,とくにアジア各国では企業の移り変わりが激しく,一度作ったパイプがまた次に使えるとは限らないからだそうだ。そうした背景から,アジアでは知り合いからの紹介を通じたパイプ作りが重要であるとも,近藤氏は話していた。

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 現地スタッフの採用というテーマでは,大野木氏が,北米には報酬によって職を転々とするという文化があり,なかなか難しいと述べる。またZyngaなどの台頭により,全体的に人件費が高騰しているため,なかなか報酬に見合う優秀な人材を採用できない状況にあるそうだ。そこで自分達自身で人材を発掘しながらネットワークを拡大し,その中からまた人材を発掘していくという手法を取っているという。大野木氏は,時間をかけて人材を採用・育成していく必要があるとまとめた。

 日本と海外のソーシャルゲーム業界の違いというテーマでは,所氏が,海外のゲームパブリッシャ/デベロッパの狙いはマスマーケットにあると指摘し,日本ではローカライズや,地域に向いたタイトルの選定といった部分が重視されがちだが,最初から世界中で理解されやすいゲームを作ったほうが成功しやすいと述べる。さらに所氏は,確かにアニメなど日本の独自性が受けるケースもあるが,全体から見ればマイノリティの部類に入ることは意識しておかなければならないとも話していた。

 その一方でローカライズをする際のポイントについて,近藤氏は,好まれる絵柄や価格設定の調整に加え,翻訳の重要性を指摘する。1次翻訳は自社でやるにしても,それ以降はネイティブの翻訳家に書き直してもらう必要があるそうだ。
 また大野木氏は,TinierMeを北米展開すると決めたときに,アットゲームズの要素を一つ一つ検証し,例えばある言葉に卑猥な意味が含まれないかどうかというところまで含めて,徹底的なローカライズを図ったとのことである。

 プレイヤー数をどのように増やしていくかというテーマでは,大野木氏が,TinierMeの立ち上げ時にMySpaceやFacebookのアニメ系のコミュニティを中心にプロモーションをかけていった手法を披露した。また,ゲーム内で影響力の強いプレイヤーを調査していくと有名なインディーズ系のミュージシャンやDJだったこともあったそうで,そういった人材を通じて集客を行った事例もあるという。

 ちなみに大野木氏によれば,現在,北米ではデイリーベースでのデータ収集が一般的となっており,一日の売上をプレイヤー数で割って5〜6セントになると良質なタイトルに分類されるとのこと。所氏も,従来のARPU/ARPPUは投資情報としては有用なデータだが,それだけを見て運営の指標とすることはないと話していた。

 最後に,3名のパネリストは,海外展開にあたっては他者のアドバイスを参考に成功確率を高めていくのは当然として,最終的には自社の強みを生かして実際にチャレンジを行い,そのデータを集めて改善していくほかないと聴講者に呼びかけ,セッションを締めくくった。

「日本オンラインゲーム協会」公式サイト

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