連載 : PCビギナー救済連載「PCゲームのお作法」

PCゲームのお作法

 

(1)DirectX編

 

 PCゲームがどうにも動かない。そんな経験をしたことはないだろうか?

 ゲーム機なら,CD-ROMなりDVD-ROMなりをドライブに入れるかカートリッジを差せば動くのに,PCゲームだけは,なぜかそんな常識が通用しない。あるゲームは何の問題もなく動くのに,別のゲームはさっぱり動かず,よく分からない英語のメッセージが出るだけだったり……。

 本連載は,そんな事態に出くわして途方に暮れたことのある人達のために用意されたものである。
 読み進めると,「あるゲームが動かないとき,どうすればいいか」(あるいは,残念ながらどうにもならないか)を,自分でチェックできるようになるはずだ。PCゲーム,とくに3Dゲームが起動しなくて疑問や不満を感じたことがあるなら,オンラインの掲示板などに「助けてください!」と書き込む前に,ぜひこの連載をチェックしてほしい。

 

 

まずはDirectX Runtimeのアップデート。話はそれからだ

 

 いきなり結論めいた話で恐縮だが,Windowsを使っているPCゲーム初心者〜中級者が目にしがちな,定番のエラーメッセージというものがある。下の画面はその例だ。

 

ここは「d3dx9_29.dll」が見つからないというエラー画面だが,「29」はバージョンを示しており,「32」「33」など,別の数字になることも当然ある。また「d3dx9」ではなく「d3dx10」のこともあるので注意

 

 どれくらいの人がこのエラーを見たことがあるかは想像するほかない――かなりの数に上るような気はする――が,いきなり「dllが見つからないからアプリケーションを開始できない」とか言われても,分かるわけがない。あなたがPCゲーム初心者なら,それが普通である。
 ただ,「ワケ分かんない」ままでは,ゲームをプレイできないから,何とかせねばならない。その「何とかする」方法が,第1回のテーマでもある「DirectX Runtimeのアップデート」(Runtime:ランタイム)である。

 

 「DirectX」(ダイレクトエックス)はWindowsにおいて非常に重要なものなので,詳しく説明しようと思えばいくらでもできるのだが,ここでは「ゲーム(やビデオ,音楽など)をWindows上で高速に動かすための仕組み」と憶えておいてほしい。ゲームに関連した大事なものなんだと,漠然と考えておいてもらえれば十分だ。

 

 この“仕組み”は,「Windows 95」(というOSが20世紀にはあったのである)で初めて採用されてから,機能拡張を経て順調にバージョンアップが進んでいる。ちょっと専門的な言葉が並んでしまうのを断ったうえで続けると,2007年7月時点の最新版は,「Windows XP」でDirectX 9.0c,「Windows Vista」ではDirectX 10になっている。
 DirectX 9.0cはWindows XP Service Pack 2(以下Windows XP SP2)で標準対応。DirectX 10もWindows Vistaで標準対応しているから,いま現役で稼働している(と思われる)PCのほとんどは,DirectX 9.0cかそれ以上に対応しているわけである。

 

 「じゃあなんでバージョンを最初にチェックするのさ?」という話になるが,ここからが非常に重要なところ。注意して読み進めてほしい。
 実は,DirectXという仕組みを構成する一つの要素として,「DirectXが使われているゲームを正しく動作させるためのプログラムの集まり」が存在する。この集まりこそ,先ほど述べたDirectX Runtimeであり,DirectXという仕組みを利用したゲームの動作には,DirectX Runtimeが絶対に必要なのだ(図1)。

 

図1 DirectXを使ったゲーム(ゲームプログラム)が,あなたのPCで動作するイメージ。こんなふうに,DirectX Runtimeがあることで,ゲームとOSが“つながり”,動作するようになるわけだ

 

 しかもやっかいなことに,DirectX Runtimeは,ほぼ2か月に一度のペースで更新されて新しくなっている。
 これはなぜかというと,ゲーム開発者向けのDirectX開発キットが,同じペースで更新されるからだ。開発キットは「DirectX SDK」(SDK:Software Development Kit)と呼ばれるが,ゲーム開発に便利な機能や新しいハードウェアのサポートを追加するとか,新たに発覚した問題へ対処するとかいった理由で更新される。そのとき,最新のDirectX SDKで作られたゲームを動作させるには,その最新版に対応したプログラムの集まり,つまりRuntimeが必要というわけだ。だから,最新の(DirectX SDKで作られた)ゲームをプレイするには,ユーザー側で最新のDirectX Runtimeを導入しておかねばならないのである(図2)。

 

図2 図1に,DirectX SDKの存在を加味したのがこの図だ。DirectX SDKがアップデートされると,あなたのPCにあるDirectX Runtimeとバージョンがズレてしまう。すると,ゲームは動作しなくなってしまうから,DirectX Runtimeのアップデートが必要になる,という理屈

 

 これは,パッケージ流通が全盛で,インターネット接続環境もいまよりずっと遅かった時代には問題にならなかった。最新版のDirectX Runtimeは,ゲームのROMメディアにゲームプログラムと一緒に入っており,ゲームをインストールすると,同時にインストールされていたからだ。DirectX Runtimeの存在なんか知らなくても,だいたいどうにかなっていたのである。
 だが,最近は違う。基本無料のオンラインゲームはパッケージ流通のないものがほとんどだ。また,インターネット接続環境の高速化によって,体験版をダウンロードして遊ぶ機会もぐっと増えた。ゲーム本体のダウンロードを想定したゲームタイトルの場合,(DirectX Runtimeの配布条件など)いろいろな理由により,DirectX Runtimeが付属するケースはあまりない。そしてどうなるかというと,

 

とりあえず最新のゲームをダウンロード

インストール

実行

d3dx9_xx.dllが見つかりません
(xxには数字が入る)

 

 というわけ。そう,d3dx9_xx.dllというのは,DirectX Runtimeを構成する(重要な)ファイルの一つなのだ。DirectX Runtimeが,プレイしようと思っているゲームで使われているバージョンと同じにっていないから,ゲームの起動に必要なファイルがない。だから起動できませんよ。……冒頭のエラーは,そういう意味だったのである。

 

 

DirectX Runtimeを入手しよう

 

4Gamerの最新ドライバ(へのリンク)ページ。こちらからDirectX Runtimeのダウンロードサイトへ飛べるようになっている

 さて,DirectX Runtimeが必要なのは分かったところで,マイクロソフトのサイトからダウンロードするわけだが,4Gamerの最新ドライバページでは,基本的に常時,最新版配布ページへのリンクを用意してあるので,そこからダウンロードページに進んでほしい。最新版であれば,過去のバージョンをすべて含むので,基本的には最新版にアップデートしておけば大丈夫だ。DirectX Runtimeへのリンクは二つ用意してあるが,ここは上のリンク「DirectX エンド ユーザー ランタイム Web インストーラ」を押そう。

 

 リンクを開くと,下のようなページが開く。これがダウンロードページだ。少々分かりにくいが,まずは「確認が必要です」という注意書きの隣にある[続行]ボタンを押す。これは,あなたが利用しているWindowsが正規版かどうかのチェックなので,正規版を使っているなら別に悩む必要はない。あとは,その下に図で示したように進めてもらえれば,最新版のDirectX Runtimeを導入できる。
 なお,今回はWindows XPを利用して行っているが,Windows Vistaでも手順に違いはないので安心してほしい。

 

「DirectX エンド ユーザー ランタイム Web インストーラ」を押すと,こんなページが開くので,[続行]ボタンをクリックする

 

正規版OSを利用しているかどうかをチェックする「Windows Genuine Advantage」をインストールするよう求められるので,[インストールする]を選択(※ここは,2度め以降は表示されない可能性がある)

 

無事正規版OSの認証が終わると[ダウンロード]ボタンが表示されるので,これをクリック

 

ページが切り替わって,「dxwebsetup.exe」(=DirectX Runtimeを導入するプログラム)のダウンロードを確認するダイアログが表示される。ここは[実行]を選択しよう

 

ダウンロードが終わると,「セキュリティの警告」が表示される。ちょっと鬱陶しいが,ここも[実行する]を選択

 

「DirectX セットアップの開始」が開いたら,「同意します」のラジオボタンを選択して[次へ]をクリック。あとは画面の指示に従っていくだけだ

 

DirectX Runtimeのアップデートが終わると「インストールの完了」と表示されるので[完了]ボタンを押す。さあ,これまでエラーの出ていたゲームをさっそく起動してみよう

 

 DirectX Runtimeは,だいたい2か月に一度の割合で更新されている。なので極端な話,インストールした2か月後以降に登場した別のタイトルをプレイしようとすると,またDirectX関連のエラーが出てしまう可能性があるが,もう大丈夫。慌てず騒がず,DirectX Runtimeを最新版に更新してほしい。これで,「せっかくインストールしたのにゲームをプレイできない」という最悪の事態は,かなりの割合で避けられるようになるはずだ。(佐々山薫郁)

 

ちなみに。

 「DirectX」は,そもそも3Dグラフィックスやサウンド,ネットワーク,ゲームコントローラの入力などを実現する複数の“仕組み”の集合体を指す言葉なのだが,Windows Vista世代では,3Dグラフィックスを担当する「Direct3D 10」「Direct3D 9 Ex」以外の開発が中止され(て,別の仕組みが採用され)ているので,今後は“DirectX=3Dグラフィックスを動かす仕組み”に変わっていき,呼称も「Direct3D」に変わる可能性がある。実際,DirectX開発チームの資料を見ると,DirectX 10ではなく,Direct3D 10という言葉が前面に押し出されてきていたりもする。
 ただ,ゲームの動作条件としての「DirectX ○以上」という表記は慣例化しているので,そう簡単には変わらないだろう。ユーザー視点では,これまでどおり「DirectX」という理解で,今後も(少なくともしばらくの間は)問題ないと思われる。

タイトル 連載:PCゲームのお作法
開発元 N/A 発売元 4Gamer
発売日 - 価格 N/A
 
動作環境 N/A


【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/weekly/pc_manners/001/pc_manners_001.shtml