― レビュー ―
Xbox 360用ゲームパッドはPCでどれだけ使えるのか
Microsoft Xbox 360 Controller
for Windows
Text by Gueed
2006年1月12日

 

 2005年12月10日に発売されたMicrosoftの次世代ゲーム機,Xbox 360。欧米では歓喜をもって迎えられながらも,日本では発売初週の売り上げが初代Xboxを大きく下回るなど,アチコチから舞い込む苦戦の報を,ゲームファンはさぞ複雑な思いで聞いていることだろう。

 

Microsoft Xbox 360 Controller for Windows
問い合わせ先:マイクロソフト Xboxカスタマーサポート
電話:0120-220-340

 本誌読者には釈迦に説法と思うが,Xbox 360は,Windowsベースのゲーム機なので,開発,実行環境ともにPCゲームとの親和性が高い。そして,同年12月22日に,その親和性をハードウェア的に具現化したかのようなPC用ゲームパッド「Microsoft Xbox 360 Controller for Windows」(以下Xbox 360パッド)が発売されたのである。
 コンシューマハードウェアメーカーの純正品が,変換機器を必要とせず,そのままPCで利用できるというのは極めてまれで,PCゲームのパッドユーザーにとって有力な候補となりそうなこの製品。本稿では,製品仕様や位置付けだけでなく,キーボード以外でのプレイが想定されるゲームを使って,Xbox 360パッドが“アリ”なのかどうかをチェックしてみたい。

 

 

Xbox 360用ワイヤードコントローラ+ドライバCD
=Xbox 360 Controller for Windows

 

200円分の価値がある(?)ドライバCD-ROMが,Xbox 360パッドには付属する

 Xbox 360パッドについては,互換性がどうこういう前に「Xbox 360用に販売されているワイヤードのXbox 360用コントローラとまったく同じ」と説明するのが一番早いだろう。本稿では便宜的に,以後このXbox 360用コントローラを「純正パッド」と表記するが,Xbox 360パッドのハードウェア仕様は,純正パッドと何一つ変わらない。
 パッケージには,PCで利用するためのドライバCD-ROMが付属しているため,価格が純正パッドの3500円から200円高い3700円になっており,併せて,紛らわしくないようにパッケージの色が赤と緑で区別されている。もっとも,Microsoftの日本語Webサイトにある「Microsoft Hardware」のダウンロードページから,PC用ドライバのダウンロードは可能。要するに,純正パッドでもPCと接続して利用できるわけで,どうしてもドライバCD-ROMが欲しいというのでなければ,純正パッドを選択しても,何ら問題はない。このあたりは気分でどうぞ,といったところか。

 

PC周辺機器売り場で主に見かけることになるXbox 360パッドの赤いパッケージ。Xbox 360本体売り場の近くでは,このパッケージの赤部分が黄緑になるが,コントローラ自体はハードウェア的にまったく同じだ

 

Xbox 360パッドの仕様(出典:マニュアル)

 また(あまり重要ではないが)PCで使用する場合には,ハードウェア的な制限が少しある。それは,コントローラ中央部の「Xboxガイドボタン」と,そのボタンを囲む「リングライト」の部分。Xboxガイドボタンは,Xbox 360のシステムメニュー呼び出しや本体電源オン/オフなどといった機能を持つ。また,リングライトは,環状に配された四つのLED「クアドラント」により,Xbox 360本体経由で接続されているパッド数とその番号を識別するために用意されているものだ。これらを利用できないからといって,不都合はないと思う。

 

中央でポコッと膨らんでいる半球型のXboxガイドボタンだが,(今のところ)PC接続時はまったく使用できない。LEDくらいは点灯していい気もするが,こちらもPCの電源を入れたときにチカチカする程度だったりする。マニュアルにも使えないと書いてあるのを承知で,Microsoftに確認してみたが,今後どうなるかについてはやはり明らかにされなかった

 

 

日本人の手にフィット
デザイン良し,ホールド感良しの優等生

 

 では,実際にパッドをじっくり見ていくことにしよう。
 Xbox 360パッドは,2軸のアナログ入力,1軸の8方向デジタル入力を用意し,さらに,右手親指用となる4個のデジタルボタン,パッド上部の左右にそれぞれアナログトリガーとデジタルボタン,そしてスタート/バックボタンという構成だ。以下に写真を並べてみたので,参考にしてほしい。
 前述のガイドボタンを除けば,初代Xboxパッドと同様のボタン数である。Xboxに触ったことがある人は,初代Xboxパッドで右手側にあり,少々使い勝手の悪かった白/黒の両ボタンが,左右トリガーの近辺に移動したと考えればいい。なお,このボタンには「LBボタン」「RBボタン」という名称が付いているが,本稿では以後ショルダーボタンと呼ぶ。

 

[正面]スティックやボタンの位置関係は初代Xboxパッドと同様。表面加工はマットだが,やや滑りやすい [上面]ショルダーボタンとトリガー,上部のパネル。これらは光沢のある素材で高級感が演出されている [側面]ショルダーボタンとトリガーが同じ高さにあるのが分かる。スマートなグリップはかなり握りやすい

 

[背面]初代Xboxパッドにあった拡張スロットの出っ張りはない。コードの付け根がボタンに近く,こちらは少し気になる [下面]今回は試していないが,「Xbox 360 ヘッドセット」(別売)を挿入するソケットがついている [コネクタ]無理に引っ張ってもXbox 360本体やPCへ影響を与えないよう配慮された,クイックリリース式ケーブルを採用する

 

 正面から見た形こそ,初代Xbox用パッド(右の写真中央)とほぼ同様だが,左右のグリップ部分とパッド中央部がかなりスリムになった。これは初代Xbox用パッドにあった二つの拡張スロットがごっそり削られたためで,このシェイプアップが結果的に抜群のホールド感を生んでいるのは評価したい。初代Xbox用コントローラを使っている人のために追記すると,アナログトリガーが初代Xbox用コントローラのそれよりも高い位置に配されているため,親指と人差し指をぐいっと開く,あの妙なストレスもなくなっている。
 初代Xboxパッドには北米版と,北米版よりも小型の日本版という,手のサイズを考慮した2パターンが用意されていたが,「日本版でもまだ大きい(厚い)」と思っていた人は少なくなかったと記憶している。しかしXbox 360パッドは,握った瞬間の違和感が少ない。多くの日本人の手にしっくりきそうな仕上がりである。

 また,特筆すべき点ではないかもしれないが,マット加工を施したホワイトの本体と,光沢のあるパネル,そして原色系のカラフルなボタンというデザインが個人的にはお気に入りだ。家電製品の高級感と,トイが持つ,特有のワクワクをミックスした佇(たたず)まいは,ポイントが高い。
 ただ一点,トリガーとショルダーボタンの位置関係は少し気になった。二つのボタンがほぼ水平に配置されているので,人差し指と中指で両方を同時に使おうとすると,パッド自体のホールドが極端に弱くなる。さらに,この状態からほかのボタンも押そうとすると,まともに持っていられなくなるので,トリガーとショルダーボタンだけは人差し指だけで交互に使用することになりそうだ。

 パッドの厚みが変わったことで,側面のフォルムが初代Xbox用コントローラよりもプレイステーション2用コントローラ「デュアルショック2」に近付いているのは面白い。デュアルショック2は,プレイステーション2の圧倒的な普及率から,2006年1月現在,最も一般的なゲームパッドといえるが,Microsoftは同製品をしっかり分析したのだろう。とはいえ,十字キーとボタンを優先するデュアルショック2,アナログスティックとアナログトリガーを優先するXbox 360パッドという具合に,コンセプトの違いは一目瞭然である。

 

左から順にXbox 360パッド,初代Xbox用コントローラ,デュアルショック2を握ったところ

 

 このほか,少々気になったのは,デュアルショック2をしばらく使ってから改めてXbox 360パッドを握ったときに感じた,グリップ部にある多少の違和感である。思い起こせば,これは初代Xbox用コントローラでも気になっていた部分で,違和感の正体はトリガーの出っ張りだ。デュアルショック2にない,この出っ張りのために,左のアナログスティックと右にある4ボタンの押下を背面から支える指がなくなるのである。気にしなければ気にならないかもしれないが,デュアルショック2と比べて中指の収まりが悪いと訴えるプレイヤーも出てくると思う。

 

これはパッド右側の例だが,Xbox 360パッドでは,トリガーの構造上どうしてもできてしまう膨らみが少し気になった(左)。デュアルショック2だと,十字キーとボタンの背面がえぐれた形状なので,中指のポジションが決まりやすいのだ(右)

 

 

反応速度やコマンド入力に問題はないが
標準ドライバの不完全さが目立つ

 

 ここからは,実際にいくつかのゲームで使ってみたい。だが,その前にドライバについて触れておく必要がありそうだ。

 

必要最少限の動作確認が行える程度のドライバソフトウェア。シンプル以前に,機能不足と言わざるを得ない

 2006年1月6日時点で,Microsoftから入手できるXbox 360パッド用ドライバでは,「ボタンの反応をおおまかに確認する」ことしかできない。冒頭で話題にしたガイドボタンやリングライトに対応していないのは仕様としても,Xbox 360パッドの基本機能であるバイブレーションやフォースフィードバックすら対応していないのは問題。どうしても,不完全な印象はぬぐえない。
 また,使用頻度が高くなると思われるアナログトリガーにも,設定画面を見た段階でいくつか気になる点が出てきた。これは,実際にゲームをプレイしながら説明していこう。
 なお,テストに用いたPCの環境はにまとめたとおりだ。

 

表 テスト環境

 

「式神の城 II for Windows」(上),「GUILTY GEAR ISUKA」(下)。どちらもキーボード以外の入力装置を用いたプレイが前提だ

 さて,まずはデジタル入力系のゲームから。今回は縦スクロールシューティングの「式神の城 II for Windows」,そして格闘アクション「GUILTY GEAR ISUKA」を選んでみた。
 どちらのタイトルも自機およびキャラクター操作の反応速度が最も気になる部分だが,遅延は見られない。デジタル十時キーによるドットレベルの移動もキビキビ動くので,文句ナシといえる。

 格闘ゲーム特有のコマンド入力も,初代Xbox用コントローラ同様にまずまず。ただ,十時キーがパッドの左端からやや距離のある位置にあるので,よほど手の大きな人以外は,親指を伸ばしたまま使用することになりそうだ。親指と人差し指を開く格好で利用することになるため,長時間プレイするとストレスが溜まるかもしれない。

 

Xbox 360パッドでデジタル十字キーを使う場合,指のポジションはこのような感じになる。格闘ゲームなどでキャラクターが左を向くときは,指の伸縮というより,手の移動によってコマンドを入力することになると思う

 

 続いては「今後はこういったライトな操作のレースゲームにおいて,パッドの使用頻度が上がるだろう」ということで,Xbox 360版も存在する「ニード・フォー・スピード モスト・ウォンテッド」(英語版,以下NFS:MW)をチョイス。
 しかしここで問題が発生した。ドライバ画面を見た時点で気になっていた“トリガーの扱い”が原因だ。

「ニード・フォー・スピード モスト・ウォンテッド」。本文で触れた問題点はさておき,アナログスティックとアナログトリガーを親指のデフォルト位置とするXbox 360パッドの本領を存分に発揮できるゲームといえる
 Xbox 360パッドが持つ左右のアナログトリガーは,それぞれZ軸の+(プラス)と−(マイナス)としてまとめられていおり,それぞれを「別系統の機能として併用」できない。要するに,プラス側に10の力をかけ,マイナス側に10をかければ,入力が相殺されてしまうのだ。
 この状態だと,NFS:MWのようなレースゲームで――通常はそうするはずだが――左トリガーをブレーキ,右トリガーをアクセルに割り当てたりしたときに問題が生ずる。この状態で両トリガーを引けば,望まれる反応は「フルブレーキ&フルアクセル」なのだが,現状では「入力なし」と判定されてしまうのだ。「エンジンの回転を上げた状態でクルマにブレーキをかける」という動作をシミュレートできない,と言い換えたほうが分かりやすいだろうか。アクセル中にブレーキをかけてもブレーキランプは点灯せず,ただエンジンの回転数だけが下がる。最終的にクルマが停止するという結果は同じになる場合もあるが,意味合いはかなり異なってしまう。
 ドライバの問題というのが唯一の救いだが,早期の改善が必要な部分だろう。

 

アナログトリガーの扱いは,Z軸(丸く囲んだ部分)のプラスマイナスで制御される。トリガーの開放と同時押しがプラスマイナスゼロと同じ扱いになってしまう点が致命的。ドライバレベルで解消できる問題なので,今後のアップデートに期待したい

 

「マイクロソフト ヘイロー コンバット エボルヴ」。Xbox 360パッドの登場に合わせて,Xbox 360のデベロッパが,これまでよりもPCへの移植を前提とした開発を進めてくれるといいのだが

 最後に,左右のアナログスティックを使う作品として,Xbox版も存在する「マイクロソフト ヘイロー コンバット エボルヴ」も試してみた。
 “Xbox系コントローラに最適化されたゲームにおける操作性”を見るわけだが,やはりXboxネイティブ対応のゲームとXbox 360パッドの相性は抜群。きちんとキーをマッピングすれば,プレイ感覚はXbox版とほぼ同様にまで高められる。  FPSに限った話ではないが,今後,Xbox 360とPCにクロスプラットフォームでゲームが投入されるとき,完全に同一の入力デバイス,同一の操作感でプレイできるとすれば,これはかなりうれしい。

 

 

ドライバの改善が必要不可欠だが,
汎用パッドとしての期待感は高い

 

 以上,ハードウェアとソフトウェアの両面から見てきたが,なんと言っても課題はドライバだ。バイブレーションやフォースフィードバック,アナログトリガーは,とくに早急な対応が望まれるところ。いくつかWebサイトを回ってみると,有志によって気の利いたドライバが開発されているようだが,それはそれとして,本格的な普及を目指すなら,Microsoftによる公式な対応が必要不可欠だろう。

 もっとも,これらはすべてソフトウェアで解決できるレベルの問題であり,Xbox 360パッドが持つ,ハードウェアとしての機能と汎用性が魅力的なのに変わりはない。クロスプラットフォームのゲーム制作を容易にできるという視点から,MicrosoftがXbox 360パッドの発売に踏み切ったのはまず間違いなく,Xbox 360からの移植タイトルをプレイするとき,ハードウェア的に最適なゲームパッドなのも確かだ。
 ドライバの件があるので「今すぐ買い」とまでは言えない。だが,PC用ゲームパッドを探している人は,ドライバの改善に期待しつつ,動向を追っておくといいだろう。

 なお,Microsoftは現在,ドライバアップデートに向けて,ユーザーからのフィードバックを集めている最中とのこと。そういう意味で,今すぐの問題解消は期待できないのは残念だが,報告によって,今回指摘したような問題が改善される可能性は大いにありそうだ。使ってみて気になった部分は,同社の製品フィードバックページから送ってみることを勧めたい。

 

タイトル ゲームパッド/アーケードスティック
開発元 各社 発売元 各社
発売日 - 価格 製品による
 
動作環境 N/A


【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/review/xbox360controller/xbox360controller.shtml