― レビュー ―
ゲームのためのPCデスク,その意義と必要性を考える
ROCCAFORTE
Text by UHAUHA
2006年10月13日

 

ROCCAFORTE
メーカー/問い合わせ先:MSY(昌屋)
直販価格:6万1590円(税込)

 いきなりだが,今あるゲーム環境に満足しているだろうか?
 “ゲーム環境”と聞くと,PCのスペックを思い浮かべる人がいるかもしれないが,ここで指摘したいのはそれではない。ディスプレイやキーボード,マウスをはじめ,ステアリングコントローラやジョイスティックなどを,自分の使いやすいように配置できているかということである。

 

 多くのデスクトップPCユーザーは,いわゆるPCデスクや学習机を中心にPC環境を構築していると思うが,たいていの場合,ゲームデバイスを設置するには手狭だ。食卓用のテーブルやコタツなどを流用していればスペースを確保できるものの,デバイスを設置すると,それによって押し出されたキーボードの置き場所に困ることになったりして,解決策としてベストではない。
 こういった問題に正面から取り組んでみせたのが,MSY(昌屋)製のゲーミングデスク,その名も「ROCCAFORTE」(ロッカフォルテ)だ。イタリア語で「堅固な(Forte)要塞(Rocca)」という名のデスクについて,今回は掘り下げてみたいと思う。

 

 

巨大な梱包でやってくるROCCAFORTE
搬入も組み立ても一人暮らしには酷?

 

段ボールには,MSY製品のブランド名である「武者震」のロゴが大きく描かれている。知らない人が見たら「なんだこれは!?」と思うこと請け合いだ。なお,飲料の350ml缶を横に置いてみたので,サイズの参考にしてほしい

 今回の検証に当たっては,MSYから貸し出しを受けたのだが,組み立て前のパーツは,1490(W)×830(D)×190(H)mmという巨大な段ボールに入って送られてきた。大きさだけでなく,梱包時に45kgという重量もなかなか強烈で,配送業者が一人ではトラックから下ろせず,筆者が手伝うことになったほどだ。購入するときには,「問題なく搬入できるか? できるとして,ひとまず置いておくスペースがあるか?」を,事前に十分検討しておく必要がありそうだ。読者のなかには,アパートなどで一人暮らしをしている人も少なくないだろうが,そういう人にとっては,いろいろな意味でかなり厳しいシロモノかもしれない。

 

 段ボールは上面が開く仕様で,非常に開封しやすい。また,それぞれの部品が細切りにした段ボールや発泡スチロールを使って,完全に固定されており,輸送時に傷がついてしまうようなことはないだろう。
 一つ補足しておくと,これは2006年秋以降出荷分の,いわば“新梱包”。ROCCAFORTEに関して,4Gamerでは当初2006年夏のレビュー掲載を考えていて,“旧梱包”ベースでテストを進めていたのだが,旧梱包では,部品それぞれが(傷を防ぐためのクッション材で覆われてはいるものの)無造作に詰め込まれた感じで,とてもではないが,プレミアムな専用デスクといった雰囲気ではなかった。今後流通するROCCAFORTEはすべて新梱包になると思われるが,購入時には念のため,新梱包かどうか確認しておくことを勧めたい。

 

上段左右と下段左は,新梱包を開けたところである。部品ごとにしっかりと保護&固定された状態だ。ちなみに下段右が旧梱包。今後は流通しないバージョンなので,深くツッコむことはしないが,梱包の外観だけ見ても,中がどうなっているかは容易に想像できよう。旧梱包の「ちょっとこれは……」という中身を見ていると,整然とした新梱包は感動的ですらある

 

 筆者の場合,テストルームが一軒家の2階にあるため,庭で開封し,担当編集者と二人で運搬した。その部品構成は以下のとおりで,カッコ内は個数を示している。

  • メインテーブル(1)
  • メインレッグ(1)
  • サイドレッグ(2)
  • キーボードプレート(1)
  • キーボードプレート用滑り止めシート(1)
  • サイドテーブル(2)
  • マルチパーパステーブル(2)
  • L型プレート(2)
  • A型六角レンチ(1)
  • B型六角レンチ(1)
  • 六角Bネジ(4)
  • 六角Aネジ(50)
  • ストッパーネジ(2)
  • 軍手(1)
  • 布(1)
  • 両面テープ(1)
  • 取扱説明書(1)

 ここまでくればいうまでもないが,ROCCAFORTEは組み立てが必要だ。作業自体は非常に簡単。取扱説明書の指示どおり作業すれば,迷わず組み立てられるだろう。ストッパーネジだけは大きめのプラスドライバーを別途用意して締める必要があるものの,それ以外は付属の六角レンチを利用すればネジ留めできる。
 組み立ての大まかな流れは下記のとおり。

  • 「サイドレッグ」に「サイドテーブル」を固定する(左右いずれも組み立てておく)
  • 「メインレッグ」と「サイドテーブル」を「L型プレート」でつなげる
  • 「メインテーブル」に取り付けられた「ROCCA Slider」(後述)に「キーボードテーブル」を取り付ける
  • 「メインテーブル」を,2.でつなげた部品に乗せて固定する
  • 「マルチパーパステーブル」を取り付ける

 「簡単」とは述べたが,部品点数が多いため,それなりの作業スペースは確保しておく必要がある。また,部品一つ一つが大きくてそこそこ重いので,取扱説明書にもあるように,2〜3人で作業するのを勧めたい。とくに,独特の形状を持つ「メインテーブル」はかなり重いので,1人で支えながらネジ留めするのは困難を極める。せっかくのROCCAFORTEに傷をつけないためにも,誰かに手伝ってもらうのがいいだろう。

 

組み立ての様子。まず「サイドレッグ」を組み立て(左上),それを「メインレッグ」(右上)と組み合わせる(左下)。この状態になったら「メインテーブル」を取り付け(右下),あとは「キーボードプレート」と「マルチパーパステーブル」を取り付ければ完成だ

 

 組み立て時に少々コツがいるのは,1.と5.だろうか。「メインレッグ」「サイドレッグ」に固定してあるプレート側とテーブルの底面それぞれに用意されている4か所のネジ穴をぴったり合わせる必要がある。そのため,組み立てるテーブルを載せてネジ穴の位置を確認し,ずれていればテーブルを外して四角プレートを微調整するという作業を何度か繰り返すことになった。

 

本体サイズは1430(W)×805(D)×1060(H)mm(突起物含む)

 さて,出来上がったROCCAFORTEを概観しておこう。
 左右対称の大きなテーブルが「メインテーブル」。これを中心に,左右奥にはスピーカーや周辺機器などの設置が想定された「マルチパーパステーブル」,左右手前にはキーボードやマウス,ゲームデバイスの設置が想定された「サイドテーブル」が配置される。さらに,メインテーブル中央にはスライドし,さらに角度もある程度変更できるROCCA Sliderがあらかじめ取り付けられており,ここには「キーボードプレート」が載る。ユーザーを中心に,周囲をぐるりと囲む形になるのが,“要塞”の名の由来である。
 ROCCA Sliderにより,「キーボードプレート」は「メインテーブル」と同じ高さで利用できるだけでなく,少し下げて「メインテーブル」の下にしまえたりもする。傾斜角を15度まで設定したり,「キーボードプレート」を360度回転させたりも可能だ。

 

「メインテーブル」の下には,ROCCA Sliderが用意されており(左上),前後最大571.5mmの範囲で「キーボードプレート」をスライド可能だ。「キーボードプレート」は滑り止め材をはめ込んで用いる仕様(右上)。実際には,下段の写真のように,スライドさせることでキーボードの出し入れを容易に行える

 

 テーブルは25mm厚のMDF材製(MDF:Medium Density Fiberboard,木材チップを繊維状にまで分解し,接着剤で固めた素材)で,高い剛性が保たれている。表面には光沢のあるウレタン塗装が施され,高級感を演出しているが,一方で手垢やホコリが非常に目立つ。ツヤ消し加工でもよかったのではないだろうか。
 デスク全体を支える脚――「メインレッグ」と「サイドレッグ」はスチールパイプ。6本で支える仕様ということもあり,1本1本は直径40mmとかなり太い。脚の先にはフットアジャスターがついており,調整することで本体のグラつきを抑えられるようになっている。ちなみにデスクの下は脚以外,完全な開放スペースとなっており,特別に「ROCCA Zone」と命名されている。

 

 

細かな課題はあるものの
デバイスの使い勝手はまずまず

 

 というわけで,実際に使ってみよう。

 

 

●FPS/RTS/RPG&Windows操作

 

やむを得ないとはいえ,キーボードサイズの制約が出てしまっているのが残念なところだ。ちなみに筆者が使用している「Microsoft Wireless Optical Desktop Comfort Edition」だと,左右のクリアランスはほとんどなかった

 まずFPS/RTS/RPG,あるいは一般的なWindows操作を想定し,キーボードとマウスの使い勝手を見てみるが,キーボードは,「どこに置くか」で,ずいぶんと変わってくるように感じた。名前どおり「キーボードプレート」に置くのがセオリーなのだろうが,このときは「メインテーブル」の幅が510mmで,これよりも横幅の大きなキーボードは置けないという問題がある。マクロ操作を重視して,特殊キーの多い,大きなキーボードを使っていると,ROCCA Sliderの上下スライド機能や角度調整機能を利用できない場合があるのだ。
 もちろん,「キーボードプレート」を「メインテーブル」と干渉しない位置まで下げれば話は別だが,今度は「キーボードの位置が低い」「一部のキーが押しにくい」という,別の問題が発生し得る点は気をつけたい。

 

 またいずれの場合も,手首なり肘なりを固定することは考慮されていない。ROCCA Sliderを「メインテーブル」と平行になる状態で固定し,キーボードを「メインテーブル」奥にずらせばある程度のスペースは確保できるが,この場合,当然のことながらROCCA Sliderを固定して使うことになる。
 もっとも,ROCCA Sliderにより,かなり自由にキーボードの位置を設定できるため,いわゆるPCデスクと比べれば,長時間使っていても疲れにくい印象。ROCCA Sliderと「キーボードプレート」をうまく設定できれば,使い勝手はいい。

 

 若干気になったのは,昇降機能が裏目に出たのか,「キーボードプレート」に載せた状態だと,タイプ時に少々揺れ,そして「カタカタ」という音が生じた点。固定自体はしっかりなされているので,実使用に問題はないのだが,わずかなグラつきや雑音でも気になるタイプの人だと,少々不快に感じるかもしれない。

 

 一方マウスに関しては,表面加工の問題があって,ボール式は滑り,光学/レーザーセンサーは接地面の凹凸を読み取れず,いずれの場合も反応しないという問題がある。ただ,逆にいえば,マウスパッドを設置するスペースは左右どちらにも十分用意されているので,使いやすい場所にマウスパッドを置けばいいだけの話だ。「メインテーブル」上のキーボード横だけでなく,場合によっては「サイドテーブル」にも置けるわけで,マウスの使い勝手に不満を覚えることはないだろう。
 ちなみに,「メインテーブル」左右手前にせり出した部分のサイズはおよそ460(W)×300(D)mmなので,大きめのマウスパッドも設置できる。

 

 

●ドライブシム(ステアリングコントローラ,アクセル/ブレーキペダル)

 

 ROCCAFORTEでステアリングコントローラを使う場合には,「メインテーブル」か「キーボードプレート」に固定することになる。ここで問題となるのが,ROCCA Sliderの存在だ。いずれの下にもROCCA Slider(の一部)があるため,ステアリングコントローラの固定具と干渉する可能性が出てくるのである。MSYでは,ROCCAFORTEで利用可能なステアリングコントローラの一覧を発表する予定があるようだが,少なくとも2006年10月中旬時点では明らかになっていないので,試してみるほかない。

 

 とはいうものの,さすがに全製品で試すわけにもいかないため,今回は(本来はプレイステーション2用だが)PCでも利用可能で,ステアリングコントローラの定番といえるロジクール製の「GT FORCE Pro」,そしてThrustmasterの新製品である「Rallye GT Pro Force Feedback」(以下Rallye GT)の取り付けを試みた。

 

 結論から述べると,GT FORCE Proは,「メインテーブル」と「キーボードプレート」のいずれでも,問題なく取り付けられる。まるでROCCA SliderがGT FORCE Proとの干渉を避けるべくデザインされているかのようだ。
 これに対してRallye GTは,「メインテーブル」だとOK,「キーボードプレート」はNGとなった。左右2点の固定具で机を挟み込むようにして固定するという仕様そのものはGT FORCE Proと同じだが,Rallye GTはいわゆるV字形クランプを採用しており,固定具間の幅はGT FORCE Proほど広くない。そしてこの形状では,「メインテーブル」なら,ROCCA Sliderの2本のレールにうまく固定具が“乗る”ので事なきを得るものの,「キーボードプレート」の場合は,同プレートの底面に取り付けられた,昇降機能やチルト機能を提供するユニットと物理的に干渉してしまう。
 ほかのステアリングコントローラに関していえば,筆者の経験上,「メインテーブル」には工夫次第でなんとかなりそうである一方,「キーボードプレート」には,むしろ取り付けられない製品のほうが多そうな印象を受けた。

 

「メインテーブル」に取り付けたところ。左がGT FORCE Pro,右がRallye GTだ。右では固定具がレールを押さえているのが分かるだろう。ちなみに「キーボードプレート」へ固定できたGT FORCE Proだが,ROCCA Sliderは見た目以上に頑丈で,不安なく操作できた。フォースフィードバックが効いても,ガタツキのようなものは感じられない

 

 キーボードに関していえば,ステアリングコントローラを「メインテーブル」に取り付けているときは左右,「キーボードプレート」に取り付けているときはこれに加えてメインテーブル中央にも置けるが,いずれの場合もスペースは十分にあるため,一般的なPCデスクと比べて設置の自由度はかなり高い。
 また,アクセル/ブレーキペダルを置く足下は,ROCCA Zoneにより余裕がある。どのステアリングコントローラ付属のペダルユニットであっても,問題になることはないだろう。

 

 

●フライトシム(ジョイスティック,スロットル,ラダーペダル)

 

 フライトシム環境のテストとしては,Thrustmaster製のジョイスティック&スロットルセット「HOTAS Cougar」と,同製品専用となるラダーペダル「SIMPED F16/C Rudder Pedals」を用意した。

 

 HOTAS Cougarはジョイスティックとスロットルがセパレートで用意されているが,使いやすさという点で理想的なのは,キーボードを「メインテーブル」上に置き,「キーボードプレート」にジョイスティック,左の「サイドテーブル」にスロットルという配置だ。これは,スロットルが付属しない単体ジョイスティック製品でも有効だが,ROCCA Sliderによって,高さと角度を調整できるため,使いやすい位置までジョイスティックを微調整できる点がすばらしい。
 ROCCA Sliderだけでジョイスティックを支えることになる点に対して,小さな揺れなどを気にする人がいると思う。この点については,ジョイスティックをしっかりと握ると,自然に下方向への力が働いて押しつける形になるためか,気にならなかったことを付け加えておきたい。あまりにも本体重量の軽いジョイスティックだと,多少は気になるかもしれないが。

 

 左右の「サイドテーブル」にHOTAS Cougerのジョイスティックとスロットルを置くというのも,ROCCAFORTEの形状からすると容易に思いつく設置方法だが,この配置では,「サイドテーブル」間の幅が広すぎて,脇が開いてしまう。「サイドテーブル」の内側ギリギリに設置してもほとんど改善はない。体格のいい外国人ならいいのかもしれないが,多くの日本人にとって,この配置でプレイするのは無理がある。

 

 そこで,「サイドテーブル」を固定しているプレートのネジをゆるめ,内側に傾けるようにしてみると,使い勝手は格段に向上した。ただし「サイドテーブル」が逆ハの字状態になってしまうため,見た目もあまり褒められたものではない。また,ネジがゆるむことで,ROCCAFORTE全体の強度に悪影響が出る可能性もある。

 

「サイドテーブル」にジョイスティックを配置したところ。プレートを内側に傾けるにせよ傾けないにせよ,この配置ではジョイスティックとスロットルに安定度の高いものを利用することを勧めたい。それぞれ片手で操作することになるため,それほど安定度の高くない製品の場合,操作時に動いてしまい,最悪,落下する危険もあるからだ

 

 なお,足下に置いて使用するSIMPED F16/C Rudder Pedalsは,他社製のペダルユニットと比べても屈指の大きさだが,ROCCA Zoneで広い空間が確保されており,設置するのに問題はなかった。

 

 

ケーブルの取り回しとディスプレイの設置方法が
今後の課題

 

 以上,どのようにしてROCCAFORTEを使いこなすかを考えてきた。一部相性問題が生じたり,ユーザー側で使い方を考え出す必要はあるものの,設置自由度がかなり高いのは,ROCCAFORTEの持つメリットとして挙げていい。設置面積が広いため,「ドライブシムをプレイしているときは,ジョイスティックを脇にどけておく」なんてことも容易で,デバイスが増えれば増えるほど,要塞風な外観になっていくだろう。

 

ご覧のとおり,ROCCA Zoneは実に広々としている

 ただ,ここで指摘しておきたいのは,デバイスの増加に伴って煩雑になるケーブルの取り回しに対し,ROCCAFORTE側に,有効な打開策が用意されていない点だ。
 6本の脚以外は何もないROCCA Zoneは,広々としており,ペダルなどを置くには確かに適している。だがこれは,床に置いたデバイスやPCから伸びるケーブルを隠したり,すっきりまとめたりする構造が何一つ用意されていないということでもある。
 PCデスクを謳う製品のなかには,外から見たときにケーブルが隠れるよう配慮されていたり,ある程度まとめて配線できるよう,束ねたり引っかけたりできるような仕組みが用意されているものも少なくない。そんな状況にあって,高級デスクであるROCCAFORTEに,残念ながらそういった配慮はない。取り回し方によっては,座っているプレイヤーの腿(もも)の上をケーブルが通り抜けたり,ペダルを踏む足のすぐ近くに,ケーブルが垂れ下がるような事態を迎えてしまうのだ。

 

今回紹介したHOTAS Cougarとラダーのように,同時に使用するデバイスが多くなるほど,取り回さねばならないケーブルの数は増えていく。ケーブルを束ねなければ垂れ下がってペダル操作の邪魔になる可能性があり,束ねるには紐のようなもので脚に固定するほかなく,見栄えはよろしくない。ROCCAFORTEを使ううえで,ユーザーは頭を悩ませることになる

 例えば「メインテーブル」や「サイドテーブル」に,人目の死角になるような形でUSBハブやACタップなどが用意されていれば,ケーブルの取り回しの手間は,相当低減できたのではなかろうか。少なくとも,デバイスを使うたびに,「メインテーブル」と「サイドテーブル」や「マルチパーパステーブル」の隙間などを使って,床に置いたPCとつなぐなどといった手間からは,ゲーマーは開放されたはずである。
 また,テーブルの底面や6本の脚などに,ケーブルを束ねる機構などが用意されていれば,ディスプレイやゲームデバイスを設置したときの見栄えは,ずいぶんと異なるものになっていたに違いない。多くのゲームデバイスを駆使してゲームをプレイするためのデスクであるROCCAFORTEだからこそ,ケーブルの取り回しについて,もう少し考えてほしかった。

 

FP93GX
メーカー:BenQ
問い合わせ先:ベンキュージャパン
応答速度2msで,WCG 2006公式製品にもなっている解像度1280×1024ドットの19インチ液晶ディスプレイ。ちなみにBenQはWCG 2006のメインスポンサーでもある
実勢価格:3万4000〜4万円(2006年10月現在)

 また,ディスプレイをどう設置するか,という問題もある。
 問題といっても,CRTディスプレイを置けない,というわけではない。「マルチパーパステーブル」間は720mmあるので,24インチCRTディスプレイでもスペース的には大丈夫だ。ここで指摘したいのは,マルチディスプレイ環境についてである。

 

 現在販売されているグラフィックスカードは,ほとんどがデュアルディスプレイに対応しており,一部にはトリプルディスプレイ対応グラフィックスカードが存在する。また,一般的なグラフィックスカードをトリプルディスプレイ対応にするMatrox Graphics製デバイス「TripleHead2Go」のような製品もあり,予算的な制約を抜きにすれば,2〜3台のディスプレイを設置することは,まったく現実的な話だ。とくに,ドライブ/フライトシムでは臨場感が大切なので,マルチディスプレイ環境に積極的な人も少なくないだろう。

 

 まず比較的現実的な――とはいえ中央に“額縁”が来ることになるため,ゲームに使われるケースはあまり多くない――デュアルディスプレイについてだが,「メインテーブル」に2台設置するのは物理的にほぼ不可能だ。「ならばマルチパーパステーブルに置くか」といわれると,間が空きすぎてしまってかなり厳しい。

 

 次にトリプルディスプレイだが,ROCCAFORTEのスペースをもってすれば,19インチクラスの液晶ディスプレイを横に3台並べるのは造作もない。今回は「マルチパーパステーブル」を90度回転させて,BenQ製ディスプレイ「FP93GX」を3台並べてみたが,横方向にはまだ余裕がある。実際には,20〜22インチクラスでも問題ないはずだ。
 ただし,「メインテーブル」と「マルチパーパステーブル」の高さが異なるため,柔軟な高さ調節機能が用意されている製品でもなければ,高さを揃えて3台を横に並べるのは難しい。FP93GXには,高さ調節機能は用意されていないため,近くにあった雑誌をスペーサー代わりにしてみたが,この場合は,ROCCAFORTEが持つ見栄えが損なわれてしまう。
 せっかくゲーム用デスクを買うのなら,奮発してマルチディスプレイ環境を……という人もいるはずだ。そういった考えに対して,ソリューションが用意されていないのはいかがなものだろうか。
 MSYでは,オプションとしてディスプレイアームを発売する予定がある(2006年10月時点では,時期,価格ともに未定)ようだが,「マルチパーパステーブル」の高さを調節できるようにするなど,もう少し,ディスプレイを含めたゲーム環境への配慮がほしかった。

 

 

ツメの甘さと価格がネックだが
PCデスクの可能性を示した点は評価に値する

 

 今回試用して強く感じたのは,自分を囲むようにデバイスを設置できることの使いやすさと,全体的なツメの甘さだ。

 

 さまざまなゲームに対応できるだけの懐の広さを生かして,自分の周囲をデバイスが囲むような形で要塞を作り上げられるプラス面は確かに大きい。ただ,6万円強という値段を見てしまうと,全体的にいろいろ足りないマイナス面がかなり目立ってくるのも,また確かである。
 繰り返しになるが,ケーブルの取り回しに対する配慮や,「サイドテーブル」や「マルチパーパステーブル」の高さ&角度調節機能などは,ゲーマー向けを謳うのであれば,最初から用意されていてしかるべきだった。要塞というアイデアは間違いなくユニークで,かつ魅力的なのだが,開発陣はそこで満足してしまったのではないか。厳しいことを書かせてもらえば,完成度という点で,ROCCAFORTEはあと一歩足りないと感じる。

 

 とはいえ,日々の生活と密接に結びついた“机”だけに,感じ方は人それぞれだろう。筆者が感じた不満も,人によっては我慢できるレベルかもしれない。
 幸いにして「パソコンショップ アーク」(東京都秋葉原)や「ファイナルアプローチ」(三重県),グッドウィル四日市店(三重県)など,実機が置いてある店舗が存在する。MSYによれば,実機デモが行われるショップの数も,今後増えていくそうなので,ROCCAFORTEが気になっている人は,筆者が指摘したポイントを中心に,一度実機をチェックしてみるといいだろう。

 

タイトル そのほかのハードウェア
開発元 各社 発売元 各社
発売日 - 価格 製品による
 
動作環境 N/A


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http://www.4gamer.net/review/roccaforte/roccaforte.shtml