― レビュー ―
「2005年最速」グラフィックスカードに死角はないのか
GeForce 7800 GTX 512リファレンスカード
Text by Jo_Kubota
2005年12月16日

 

GeForce 7800 GTX 512リファレンスカード

 2005年12月12日の記事で,Radeon X1800のCrossFireは,GeForce 7800 GTXのNVIDIA SLI(以下SLI)に対して,互角か一歩譲る結果となった。この結果,コンシューマ向けの世界最速グラフィックスチップの座へ自動的に就くことになったのが,今回取り上げるGeForce 7800 GTX 512である。
 既報のとおり,GeForce 7800 GTX 512の「512」は,標準のグラフィックスメモリ容量がGeForce 7800 GTXの倍に当たる512MBへ引き上げられたことによるネーミングだ。ただし,その実態は「ただグラフィックスメモリ容量を2倍にした」などという,生やさしいものではない。ピクセルパイプライン24本,頂点パイプライン8本という基本的な仕様自体はそのままに,動作クロックの劇的な向上を果たしたグラフィックスチップなのである。

 

エンジニアリングサンプル版のグラフィックスチップには「GF-7800-U-A2」の刻印。やはり開発レベルではUltraだった?

 動作クロックを確認してみると,GeForce 7800 GTX 512のリファレンスはコア550MHz,メモリ1.7GHz相当(850MHz DDR)。GeForce 7800 GTXは同430MHz,1.2GHz相当(600MHz DDR)なので,その差は圧倒的だ。なぜNVIDIAがこのチップを「GeForce 7800 Ultra」と名付けなかったのか分からないほどである。
 そんな高クロックのグラフィックスチップとグラフィックスメモリを冷却するため,チップクーラーは4本のヒートパイプを装備する2スロット仕様のものになった。

 

左:4本のヒートパイプを装備するチップクーラー
中央:チップクーラーを外したところ
右:搭載するグラフィックスメモリはSamsung Electronics製の1.1ns品だった

 

 

■CrossFireのテストに準じた構成で違いを見る

 

 さて,さっそくテストに入っていくわけだが,今回は12月12日の記事とテスト環境を完全に揃えた(表)。そのうえで,先に計測したRadeon X1800 CrossFire Edition(以下Radeon X1800 CFE),あるいはGeForce 7800 GTXのスコアと,GeForce 7800 GTX 512のスコアを比較していくことにしたい。

 

 

 なお,これも前回の記事と同じだが,以後本稿ではCatalyst Control Center/ForceWareから,垂直同期のみオフに設定した状態を「標準設定」,4倍(4x)のアンチエイリアシングと16倍(16x)の異方性フィルタリングを適用した状態を「4x AA&16x AF」と呼ぶことにする。さらに,8倍のアンチエイリアシングと16倍の異方性フィルタリングを適用したものは「8x AA&16x AF」と呼ぶ。

 テストに使用するアプリケーションは,ベンチマークソフト「3DMark05 Build 1.2.0」(以下3DMark05)と,「Quake 4」「TrackMania Sunrise」「Battlefield 2」の実ゲームタイトル3本。12日に判明した以上に意味のあるデータを取得できる見込みがないので,「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」のテストは省いた。
 Quake 4においては,「The Longest day」というマップで7名によるデスマッチを行い,そのリプレイデータを利用してTimedemoから平均フレームレートを計測。TrackMania Sunriseでは,1周53秒程度の「Paradise Island」というマップのリプレイを3回連続で実行し,その平均フレームレートを「Fraps 2.60」で測定している。Battlefield 2では,「Dragon Valley」で実際に行われたコンクエスト(16人×16人対戦)のリプレイをスタートから120秒間再生し,同じくFraps 2.60で平均フレームレートを計測した。

 

 

■壁に当たった印象を受ける3DMark05のスコア

 

 さて,3DMark05のスコアからだ。まず,総合スコアをグラフ1〜3にまとめた。
 標準設定,1024×768ドットにおけるシングルグラフィックスカードのスコアで比較すると,GeForce 7800 GTX 512はGeForce 7800 GTXよりも約23%スコアが高い。コアクロック上昇分(約28%)ほどは上がっていないが,それでも,GeForce 7800 GTXよりさらに20%以上高速な点は,素直に評価していいと思う。
 その一方で,SLI動作をさせると,GeForce 7800 GTXと差がなくなってくる。高レベルのエフェクトを適用し,さらに高解像度になってくると,だんだん地力の差が見えてくるが,描画負荷が低い状態では,ほとんど差がない。何か壁に当たっているかのような印象だ。

 

 

 続いてFeature Testsの結果をグラフ4〜6にまとめてみた。意味がないことを承知で,あえてRadeon X1800 CrossFireと比較してみると,Radeonが圧倒的な強みを見せる頂点シェーダ(Vertex Shader)のテストにおいて,GeForce 7800 GTX 512のSLIが項目「Simple」で逆転している点が興味深い。

 

 

 

■テスト構成ではSLIパフォーマンスを生かし切れない

 

 ここからは実ゲームタイトルにおける比較に入っていこう。まずはQuake 4だが(グラフ7〜9),ここでは標準設定とそれ以外で,傾向がまったく異なっている。標準設定では,GeForce 7800 GTX 512のSLIに,メリットはまるで見いだせない。それどころか,GeForce 7800 GTX 512のスコアにも負けているほどだ。
 これに対して,グラフ8,9で描画負荷が高くなってくると,GeForce 7800 GTXのSLIやRadeon X1800 CrossFireに対して,GeForce 7800 GTX 512は明確なアドバンテージを見せつける。とくに8x AA&16x AFでは,1280×1024ドット時に,なんと50%以上高いスコアを叩き出しているのだ。

 

 

 TrackMania Sunriseでは,さらに興味深い事態を迎えている(グラフ10〜12)。
 高解像度かつ高レベルフィルタリングで,GeForce 7800 GTX 512 SLIがGeForce 7800 GTXのSLIやRadeon X1800 CrossFireに圧倒的な差を見せつけている点はいいのだが,そのスコアが,解像度を変えてもフィルタリングを重くしても,まったく変わらないのである。常時170fps前後で,明らかに異様だ。

 TrackMania Sunriseは,最近のハイエンドグラフィックスチップからすると「軽すぎる」部類に入るゲームなので,順当に行けば,負荷が軽くなるほどフレームレートは伸びるはず。それがないのは,テスト環境にある,Athlon 64 4000+/2.4GHzというCPUの処理能力が,限界を迎えたからと見て,まず間違いない。GeForce 7800 GTX SLIでも,標準設定における1024×768ドットと1280×1024ドットの間に差がないあたりから,その傾向は出ているが,GeForce 7800 GTX 512 SLIで完全に露呈したと見ていいだろう。

 なお,標準設定でRadeon X1800 CrossFireのスコアがおかしい件については12日の記事で説明したとおりなので,本稿では解説しない。

 

 

 これを踏まえると,Battlefield 2の結果も納得できるだろう。グラフ13,14を見ると分かるように標準設定や4x AA&16x AFでは,CPUがボトルネックとなってしまっているのだ。むしろ,GeForce 7800 GTX 512やGeForce 7800 GTXのシングルグラフィックスカードが若干ながらSLIよりも高いスコアを出しており,“SLIを実現するためのCPU負荷”が,マイナスに作用していることすらうかがえる。

 8x AA&16x AFまでフィルタリングのレベルを上げ,さらに解像度を1280×1024ドット以上に設定すると差が出てくるのは,描画負荷が高まったからだ。とくに,GeForce 7800 GTXのスコアが大きく下がってくるが,Battlefield 2では描画負荷が高くなってくると,グラフィックスメモリ容量の差が効いてくる,と言い換えることもできるだろう。512MBのグラフィックスメモリ容量を搭載するGeForce 7800 GTX 512 SLIとRadeon X1800 CrossFireがほぼ同じスコアになっているところからもこれは裏付けられる。

 

 

 

■消費電力に覚悟が必要なGeForce 7800 GTX 512

 

 続いて,2005年12月時点における,ハイエンドグラフィックスカードの消費電力とコア温度を計測してみることにしよう。OSを起動してから30分間放置した状態を「アイドル時」,3DMark05で解像度を1600×1200ドットに設定し,ピクセルシェーダのテストを5回連続でループさせた直後を「高負荷時」とした。
 消費電力の測定にはワットチェッカーを利用。グラフィックスチップのコア温度はいずれもグラフィックスドライバ側,つまりForceWareあるいはCatalyst Control Centerから計測している。また,グラフィックスチップの温度は,実際にディスプレイと接続するカード側(マスターカード)のそれを代表として掲載する。テスト環境はバラックで,とくにPCケースなどには入れていない。

 まず消費電力だが,システムベースとはいえ,GeForce 7800 GTX 512 SLIが高負荷時に430Wを記録した点は,特筆しておきたい(グラフ16)。GeForce 7800 GTXのSLIに比べ60Wも消費電力が高いGeForce 7800 GTX 512 SLIが“地球に優しくない”ソリューションなのは間違いないところだ。
 今回のテストには550Wの電源ユニットを用いたので,問題なく動作したが,テスト環境はあくまでも最小構成。RAIDアレイを構築したり,メインメモリを2GB搭載したり,サウンドカードを差したりすれば,消費電力は当然,さらに高くなるわけで,550Wクラスでは容量不足になる可能性すらある。
 もっとも,シングルグラフィックスカードだと,GeForce 7800 GTXとの差は高負荷時で18w。SLI動作時ほどひどくはない。

 

 

 次に温度は,さすが2スロット仕様のヒートパイプ付きチップクーラーというべきか,GeForce7800 GTX 512のコア温度は高負荷時でも52〜55℃で,非常に低い(グラフ17)。以前4Gamerでは,GeForce 7800 GTXのリファレンスクーラーの冷却能力が足りていない点を指摘したことがあるが,GeForce 7800 GTX 512のそれに,冷却面での不安はないといっていい。また,チップクーラーのファンは温度によって回転数が自動的に変わるタイプだが,グラフィックスチップの温度が低いので回転数は上がらず,結果としてかなり静かな印象を受けた。
 ちなみに,騒音面で気になったのは,Radeon X1800 CrossFire Editionのチップクーラーだ。アイドル時は3製品の中で最も静かに感じられたものの,負荷が上がるにつれて,高域の騒音が気になるようになる。高負荷時には最もうるさかった。

 

 

 

■SLIに意味はないが,シングルカードなら魅力的

 

 GeForce 7800 GTX 512のSLIが最速であることは想像できていたが,改めて確認してみると,その潜在能力には驚かされる。しかし,SLIで動作させる場合,組み合わせるCPUとして,Athlon 64 4000+/2.4GHzは明らかにパフォーマンス不足だ。今回のテスト結果から推測するに,Athlon 64 FX-57/2.8GHzを使用しても,SLI動作時におけるベンチマークスコアの劇的な向上は期待できそうにない。

 2005年12月時点におけるGeForce 7800 GTX 512搭載グラフィックスカードの価格は9万〜9万5000円程度。しかも,SLI用に20万円近い金額を投資したとしても,CPUパフォーマンスが足りなければ真価を発揮できないわけで,“GeForce 7800 GTX SLIで最強ゲームPC”というのは,いささか非現実的であると言わざるを得ない。GeForce 7800 GTXのSLIは,ゲーマーではなく,CPUも徹底的にオーバークロックして,まだ見ぬ地平を見てみたいというベンチマークマニアのものだろう。

 しかし,はじめからシングルグラフィックスカードしか考えていないのなら,話は別だ。とにかく高いフレームレートを維持したいが,SLIで要求される,高いレベルのケース内冷却を難しいと感じているようなゲーマーにとって,GeForce 7800 GTX 512が理想的な選択肢となる可能性はある。
 解像度やフィルタリングは必要最小限に抑え,画面の美麗さよりも快適さを重視するスポーツ系FPSプレイヤーにとっては,面白い存在といえるだろう。