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日本でeスポーツを普及・発展させる意義とは。セッション「日本のeSports業界に立ちはだかる壁への『挑戦』」をレポート
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印刷2019/04/02 17:36

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日本でeスポーツを普及・発展させる意義とは。セッション「日本のeSports業界に立ちはだかる壁への『挑戦』」をレポート

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 日経BPは2019年3月20日,「スポーツ×テクノロジー」「スポーツ×ビジネス」を軸に,スポーツビジネス界のキーパーソンが議論する「SPORTS Tech&Biz Conference 2019」を,東京・虎ノ門ヒルズフォーラムにて開催した。
 本稿では,KPMGコンサルティング Advanced Innovative Technology / Professional SENIOR MANAGER Hyun Baro氏によるセッション「日本のeSports業界に立ちはだかる壁への『挑戦』」の内容をお伝えしよう。

 世界的なeスポーツ事情を少しでも知っている人であれば,リアルのメジャースポーツに匹敵する規模のeスポーツ大会が海外で開催されていたり,eスポーツの市場規模が急速に拡大したりしていることは常識だろう。
 Hyun氏は,世界では今やeスポーツが大きな産業となり,大会を主催するゲームのパブリッシャやオーガナイザー,実際に競技をするプロチームとプロゲーマー,資金を調達するスポンサー,試合の模様を配信するプラットフォーマー,そしてeスポーツファンなど,さまざまな企業や人が関わっていることを紹介。さらに大会の賞金が莫大な額となっていることを示し,eスポーツは投資に見合うコンテンツになっているとした。

Hyun Baro氏
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 またHyun氏は,世界におけるeスポーツの主流ジャンルがMOBAとFPSであることや,その試合を動画配信サイトで観戦できるのはもちろん,国によっては専用チャンネルで24時間eスポーツ関連の配信をしていたり,eスポーツ専用競技施設が設けられていたりすることも紹介した。面白いケースでは,カップル向けに2台のeスポーツ用PCを備えた部屋を提供するホテルが台湾にあるという。

 加えて,大手企業もeスポーツに注目している。Hyun氏は,ナイキが,NBAのスターであるレブロン・ジェームズ選手と同じ位置付けで,eスポーツのトッププレイヤーを広告に起用していることに言及した。

 そうした世界的な状況と比較すると,日本のeスポーツは市場規模が小さく,配信の視聴者数も少ない。
 Hyun氏によると,その理由の1つは「イベントの数が少ない」ことだという。2016年における各国や地域のeスポーツイベント開催数はヨーロッパ,北米,中国,韓国……の順で,日本は単独ではなく「その他」に含まれており,Hyun氏は「絶対的にイベントが足りていない」と表現した。

 さらにHyun氏は,法の規制などにより大会の賞金額が低いこと,オンライン配信も若年層を中心に盛り上がっているとはいえ,まだメインストリームにはなり得ていないこと,そしてeスポーツ専用施設も東京都内を中心にいくつか存在するが「ショーケースみたいなもの」であることを指摘し,日本ではeスポーツが産業たり得ていないことを指摘した。

 また世界でeスポーツに使われるゲームといえばPCゲームだが,日本ではコンシューマゲームが主流だったことも,eスポーツの普及が遅れている理由の1つになっているという。加えて,日本でゲームといえば一人で楽しむコンテンツという認識が長らくあり,競技性を伴うゲームに親しむ人が少なかったことも影響しているとHyun氏は分析した。

 以上をまとめてHyun氏は,「ゲームに対するネガティブな印象」「PCゲームとコンシューマゲームの違い」「法規制」「大手スポンサーの不在」の4つが,日本のeスポーツ業界の乗り越えるべき課題であるとした。

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 それでは,そもそもなぜ今,日本でeスポーツを普及させる必要があるのか。Hyun氏は,まず現在の若年層にもっともリーチしやすいメディアがインターネットの動画コンテンツであり,その中でもとくにeスポーツ配信のポテンシャルが高いことを挙げた。
 また現在,日本では2015年にスポーツ庁が設立されるなど,スポーツ政策に力を入れている。しかし,その盛り上げにはスポーツ単体ではなく,ほかの産業との連携が必須であり,eスポーツが参入する余地も十分にあるというのが,Hyun氏の見解だ。
 そしてeスポーツは,スター選手の付加価値が極めて強いという特徴を持つ。つまり,エンゲージメントの高いファンを多数持つスター選手は,ビジネス面から見て非常に有用というわけである。

 加えて2019年にはラグビーのワールドカップ,2020年には東京オリンピック,2021年にはワールドマスターズゲームズ2021と,リアルスポーツの国際大会が続々と日本で開催されることもチャンスとのこと。Hyun氏はこうしたリアルスポーツと,うまく連携できれば,ゲームのネガティブな印象を変えることができるかもしれないと期待を語った。
 実際,日本野球機構(NPB)や日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)は,KONAMIと連携し,eスポーツリーグを展開している。

 また2018年には,日本のeスポーツ市場規模が前年比13倍の48.3億円に上ったという調査結果もある。内訳を見ると,とくにスポンサー収益が大きく伸びている。
 さらに東京都が,2019年度に「東京都知事杯 eスポーツ競技大会」(仮称)を開催することを決め,大会経費の一部として2019年度予算案に5000万円を盛り込んだことも紹介され,Hyun氏は「すごくいい傾向」と評していた。

 話題は,KPMGコンサルティングが,慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)の2018年度秋学期にて,寄附講座「eSports論」を行ったことにもおよんだ。この講座では,eスポーツのマネジメント人材育成や,先進テクノロジーを使った解析手法のeスポーツへの応用などを取り上げ,講師はプロチームのマネージャーやスポンサー,アナリスト,配信プラットフォーマー,イベント主催者などeスポーツの専門家が務めたという。

 なお本講座は基本的に大学院生向けだったが,受講者の大多数は学部生であり,若年層の興味・感心が高いことがうかがえたとのこと。
 また本講座では,シニア施設にてeスポーツを活用する実証実験も取り上げられたそうで,Hyun氏は「こうしたeスポーツをヘルスケアに応用する動きは,まだ海外に例がない。うまく行けば,日本発のeスポーツビジネスになり得る」と話していた。

 セッションの終盤では,eスポーツの普及・発展において,韓国がどのような課題を乗り越えてきたかが紹介された。それによると,韓国では「StarCraft」のヒットを機にeスポーツのブームが起こり,2004年に行われたSKYプロリーグの決勝戦にて10万人の観客動員を記録したことにより,ビジネス的にも価値を認められたという。
 しかし2010年前後に起きた八百長事件により,eスポーツの市場価値は下落。プロチームの数が半減し,2つあった専用チャンネルも1つになってしまった。そして同様の事件は2015年にも発生したとのこと。
 Hyun氏は「eスポーツは成長性が高い反面,急速に発展した歴史の浅い産業なので未知の課題が多い」とし,「日本のeスポーツは遅れているといわれているが,先達の経験した事例を踏まえ,きちんとガバナンスやコンプライアンスを確立していくのであれば全然遅くない」とまとめていた。
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