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「AnimeJapan 2017」で行われた,気になりすぎる講演「絵が描けなくてもできるアニメのお仕事」の内容をレポート
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印刷2017/04/05 11:20

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「AnimeJapan 2017」で行われた,気になりすぎる講演「絵が描けなくてもできるアニメのお仕事」の内容をレポート

 2017年3月25日,東京ビッグサイトで開催された「AnimeJapan 2017」のセミナーステージで,「絵が描けなくてもできるアニメのお仕事」と銘打たれたパネルディスカッションが開催された。
 キャッチーなタイトルだが,最初に種明かしをしておけば,「絵が描けなくてもできるアニメのお仕事」とは,アニメの営業広報販促(販売促進)グッズ制作など,アニメ作品をその周辺で支える仕事のことだ。これらの仕事は,アニメファンなら(場合によっては,ファンでなくとも)必ずと言っていいほど何らかの形で目にするものだが,どのような事が実際に行われているのだろうか?

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本当に絵が描けない? 登壇者達


 登壇したのはバンダイビジュアルの成澤和也氏,SuperGroupiesの伊藤菜見子氏,ランティスの佐橋 計氏,ぴえろの福井洋介氏の4名。
 まず最初に,パネルディスカッションのタイトルどおり「本当に絵が描けないのか」を実証するコーナーが始まった。実証方法は簡単で,各自がこれまで担当してきた作品に登場するキャラクターやメカを,スケッチブックに描くという,実に直裁な実演だ。
 結果,以下のような作品が誕生した。ぴえろの福井氏は他作品に比べて明らかに一段上の仕上がりを見せたが,それ以外は「似たり寄ったり」としてかまわないだろう。ちなみにバンダイビジュアルの成澤氏は「高校時代はアニメの仕事がしたくて,ずっと絵を描いていた」と述べたが,その経歴をして,この完成度だ。

(左)成澤画伯による「ガンダム・バルバトス」。(右)伊藤画伯による「ルルーシュ」
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(左)佐橋画伯による「SDガンダム三国伝 劉備ガンダム」。(右)福井画伯による「バカボンのパパ」。ほかの登壇者から「描けるじゃないですか!」と批判の声が続出した
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なぜこの仕事を選んだのか


 アニメの監督や動画マン,あるいは声優といった職業を目指すのは,ある意味,分かりやすいアニメとの関わり方である。では,登壇者達はなぜ「宣伝」や「販促」といった,いわば裏方仕事を選んだのだろうか。

 最も異色な経歴を持っているのは,バンダイビジュアルの成澤氏だろう。
 成澤氏はもともとテレビっ子で,アニメがとくに好きだった。高校3年生の頃には近所のレンタルビデオ店に入り浸り,置いてあったアニメ作品をすべて見たというのだから,相当なものだ。
 しかしながら高校卒業後,成澤氏はナムコへの入社を決める。「エースコンバット」が好きだった成澤氏は,「エースコンバット」のようなゲームを作る仕事を目指して,技術者としてナムコに入ったのだ。

 電子機械関係の技術を習得していた成澤氏だったが,入社したナムコでアミューズメントゲームの制作部門に配属となる。そこでプログラマーとして働き,「機動戦士ガンダム 戦場の絆」にも携わることになった。
 この間もずっとアニメを見続けていた成澤氏は,やがて「作品を通じて感動と喜びを届けたい」という思いを強くする。そしてナムコとバンダイが合併したのを機に,バンダイビジュアルに転籍という形で移り,以後,バンダイビジュアルの宣伝マンとして今に至るという。

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 ランティスの佐橋氏もまた,一風変わった経歴の持ち主で,学生時代,音楽を仕事にしたいと考えていたという。だがミュージシャンとして活動するのは自分には無理だと思い直し,漠然と「エンタメをやりたい」という希望を胸に,新聞社や出版社をターゲットとして就職活動をしていたという。
 したがって,佐橋氏にとって最初の就職先であるキングレコードは,音楽の会社だからというだけでなく,「講談社の関連会社だから」という理由も大きかった。かくして佐橋氏は,最初に内定をもらったキングレコードに入社することを決める。

 佐橋氏が入社した頃は,「エヴァンゲリオン」が社会現象とも言えるヒットを記録していた時期だった。レーザーディスクが飛ぶように売れ,また林原めぐみさんが次々にヒットアルバムを世に出していた。営業としてキングレコードで働く佐橋氏は,このとき,「自分が売るものがどういうものなのか,理解していないとちゃんと売ることはできない」と考え,自社が扱う多くのアニメ作品に触れたという。

 こうしてキングレコードに13年間務めた佐橋氏に,転機が訪れる。以前からその音楽性に注目していたランティスから,販促部門への移籍の誘いが来たのだ。
 キングレコードでの仕事に楽しさと充実感を感じていた佐橋氏は,このオファーに対して大いに悩んだが,「キングレコードのような大きな会社に居続けると,自分がどういう音楽に関わっていくかを自分では決められない。でもランティスなら,アニメやゲームの音楽をやることが決まっている」ことを決め手として,転職を決意した。

 佐橋氏が入社した頃のランティスは,全社員の合計が24名。このため部署の境界も曖昧で,結果として「SDガンダム三国伝 BraveBattleWarriors」の制作委員会にも顔を出し,そこで「主題歌を作ってくれ」と依頼されたりしたという。明らかに販促の枠を越えた仕事だが,佐橋氏は「小規模な会社ならではの面白さがあった」と語った。

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 上記の2人に比べてストレートな経歴を持つのは,SuperGroupiesの伊藤氏だ。
 伊藤氏は商学部の学生として,大学3年から就職活動を開始。このとき,「好きなものを仕事にしたい」と,旅行アニメに関わる職業を考えたという。とはいえ当時の伊藤氏は,アニメはそれほど見ていなかったという。
 旅行かアニメかの二択で悩んだ伊藤氏は,最終的にアニメ業界を選択した。なぜなら「アニメより旅行のほうが好きなので,趣味として残しておきたい」と考えたからだ。自分の仕事の成果が現実の物として出てくる仕事,あるいは,自分はこれを作っていると言える仕事に憧れていたという伊藤氏は,最初に内定をもらったムービックへの就職を決めた。

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 ぴえろの福井氏は,ある意味,初志貫徹に成功している。成澤氏と同様にテレビっ子だった福井氏は,小学校の卒業文集の「将来の夢」欄に,「テレビのプロデューサーになる」と書き,その夢をなんとなしに持ち続けながら,営業としてぴえろに入社することを決めたという。プロデューサーではないにしろ,小学校時代の夢の実現と言えるだろう。
 テレビ局のプロデューサーを目指す気持ちもあったが,福井氏は「自分は飽きっぽいので,なにか1つの仕事しかできないと,仕事そのものに飽きてしまうのではないか」という危惧があり,一方で,ぴえろの営業は,「これが仕事です」と言えないくらい多様だ。福井氏にとって,そのことが飽きない仕事として魅力に感じられたという。

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 以上のように個性的な履歴を持つ4人の登壇者だが,全員に共通することがある。それは,アニメが好きで,それが昂じて今の仕事をしているということだ。
 この「アニメが好き」という気持ちは,仕事を続けるにあたって,あるいは仕事の品質を高めるにあたって,非常に重要だという。


実際に何をする仕事なのか


 続いて,それぞれの実際の仕事の様子が語られた。

グッズ制作の場合

 最初にマイクを握ったのは,SuperGroupiesの伊藤氏だ。伊藤氏はグッズ制作の大きな流れを説明したが,中でも詳しく語られたのが企画書だった。伊藤氏がアニメグッズの制作に入る場合,基本的にはまず最初に,このような感じのグッズを作りたいという企画書を用意し,それを元にして権利元やさまざまな分野のアーティストと細部を詰めていく。逆に言えば,企画書あってのグッズなのだ。

実際の企画書
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 この企画書において重要なのが,イメージを相手にうまく伝えることだ。伊藤氏の場合はアパレルを中心としたグッズ制作であるため,着用イメージなどを企画書で説明するわけだが,そこで正しくイメージが伝われば,企画書に添えられた絵の精度はあまり問題にはならない。
 伊藤氏が,壁ドンのイメージでグッズを作りたいと考えたとき,「壁ドン」ではあまりにフランクな言葉すぎるかもしれないと考え,写真を中心にした企画書を作ったという。
 そのため打ち合わせの場では,「あっ,これ壁ドンですね」と素早くイメージが伝達され,より良い壁ドンを目指して商品は洗練されていった。

より良い壁ドンへ
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音楽の場合

 続いてランティスの佐橋氏が,音楽の場合を解説した。佐橋氏によれば,ランティスはもともと,「新しい提案をしよう」という意図で作られた会社だという。アニメ音楽で言えば,以前はアニメのタイトルを連呼したり,最後にタイトルを叫ぶことで曲の締めとしたりするような楽曲が多かった。
 それはそれで,印象的な名曲をいくつも産んできたが,一方で,「そろそろ違う方向性も求められているのでは」という思いがあり,それがランティスという会社が誕生するきっかけになった。

 そのため曲作りでは,ランティスの音楽プロデューサーはアーティストに対してかなり踏み込んだ要求をするという。アニメのストーリーや設定を理解し,それらを踏まえた楽曲を作ってほしい,あるいはキャラクターの心情を汲み取ったうえで歌詞を作ってほしい,といった発注が行われ,仕上がってきた楽曲が目標に届いていないと感じたときは,リテイクもある。
 このような曲作りは,アーティスト主導の一般的な音楽制作現場とは,明らかに一線を画するものだという。

宣伝・販促の場合

 宣伝(広報)については,バンダイビジュアルの成澤氏が説明を行った。まず,「宣伝とは何をする仕事か」について,成澤氏は「それが宣伝になるなら,なんでもやる仕事」と再帰的に定義する。そのうえで,どんなに有名なIPであっても,世界にはそれを知らない人は必ずおり,そういう人達にそのIPを知ってもらう,これが宣伝の第一歩だと語った。

 この知らない人に知ってもらうという仕事は,現実的に考えれば果てがない。知ってもらったら知ってもらったで,より深く知ってもらうのもまた宣伝の仕事だ。
 宣伝の仕事にとって,ここで終わりというポイントはない,と成澤氏は述べた。「だからこそ,宣伝マンにとって非常に大事なのは健康」という言葉にはいろいろ感じるところがあるが,偽らざる真実と言えるだろう。

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 宣伝の実務は,どちらかというと制作サイドに近い仕事が多くなると成澤氏は指摘した。バンダイビジュアルにおいては,例えば15秒のテレビコマーシャルの構成を考えるのは宣伝の仕事だし,コマーシャルに誰を起用し,またナレーションの台本を考えるのも宣伝の仕事なのだ。

 さらに,「テレビCMを打つ」といった既存の枠を超えて,宣伝の企画を立てることもある。
 例えば,雑誌の見開き広告のラフを切り(あくまでラフなので,絵心は不要),アーティストにイラストを発注し,あるいは声優にコメントを取り,雑誌に掲載される広告を作る――ここまでならば,雑誌広告を作るという範囲の仕事だ。

 だが,これに加えて,同時期に発行する別の媒体の表紙を,雑誌広告とリンクしたイラストにし,これによって,どちらか片方を手に取った人が,もう片方も欲しくなるような仕掛けを作るところまで成澤氏の仕事の範囲は及ぶという。まさに,「宣伝になるなら,なんでもやる」という言葉どおりの仕事だ。

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 販促は,宣伝とは少し異なる。ここからは,ランティスの佐橋氏が説明を行った。
 佐橋氏は成澤氏の言葉を借りつつ,販促とは「それが販売につながるならば,なんでもする仕事」だと語る。一般的な販促は,販売店向けのキャラクタースタンドや特別な販売什器の制作,売り場のデコレーションなどが思い浮かぶが,販売店に置くチラシや冊子を作ったり,販促イベントを開いたりなど,宣伝の仕事と重なる領域も発生する。そのうえで宣伝と販促の違いとして,佐橋氏は,「どちらもお客様のほうを向いた仕事だが,宣伝は作品を作る側と見る側に近く,販促は販売店側に近い」と語った。


プロデューサーの場合

 最後に,プロデューサーという,いささか雲をつかむような仕事について,ぴえろの福井氏が語った。
 福井氏はまず,プロデューサーの定義は,会社ごとに違うと述べ,そのうえで,「今日の登壇者は,全員プロデューサーと言える」とした。というのも,プロデューサーの条件としては,

  • 多くの人の賛同を集め
  • アイデアを出し
  • お金を集め
  • チームを作る

があり,今日の登壇者は全員,この条件を満たしているからだ。

 アニメはチームで作られる。したがって,アニメを通じて新しさや喜びを提供しようとした場合,それができるチームを作らねばならない。そのため,最初の条件「多くの人の賛同を集める」はきわめて重要で,これが達成できなければ作品が世に出ることはない。さらにそのほかの条件も満たし,チームの方向性を示していくのがプロデューサーだと福井氏は言う。
 福井氏はまた,プロデューサーには柔軟な発想が不可欠だとも述べた。というのも,年齢を重ね,職歴を重ねるうち,どうしても人は自分の成功体験や成功例に引きずられがちになる。これを避けるためには,柔軟さが不可欠なのだ。


コンテンツを支える仕事


 さて,いろいろと果てのない仕事にも思えるこれらのアニメ裏方業だが,そこにはどのようなやりがいがあるのだろうか。

 総じて言えば,やはり「ファン(ユーザー)の反応」が,やりがいの根源にあるという。宣伝なら,自分が企画し作り上げた宣伝に反応があれば嬉しいし,グッズなら実際に使っている人を見るととても嬉しく感じるという。

 各種SNSの普及によって,リアルタイムで反応が得られる時代だが,やはり全員,「Twitterのエゴサーチはやります」と言う。当然,そこにはネガティブな反応もあるが,長年仕事をするうち,ネガティブな反応はむしろ改善点のヒントになり,ありがたく感じるようになるという。まったく反応がないのが一番キツイらしい。
 ちなみに,ぴえろの福井氏は「企画することそのものが楽しい」と語ったが,これについては「毎日が文化祭前日みたいなもの」(伊藤氏)など,賛同する声が次々に出た。

 続いて,これらの仕事に対する向き・不向きについて。

 ここでもまず,大前提として,アニメが好きであることの大切さが強調された。
 佐橋氏は,アニメ業界を目指して就職活動をする学生には「業界に入ることが目的になってしまっている人が多い」という。言うまでもなく,本番は,入ってからだ。したがって,具体的でなくてもいいから,例えば担当するアーティストと一緒に武道館を目指す,といった程度のイメージで十分なので,入社したらこうしたいという夢を持つことが重要だと佐橋氏は語った。
 これについては成澤氏も強く同意し,「こうしたいというビジョンを持ったほうがいい」とアドバイスした。

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 最後に,会場に詰めかけた聴講者にとって最も切実な問題,つまり,どうしたら入社できるのか,という話だ。

 これについて成澤氏は,「今振り返って思うのは,学生時代からずっと『こういうことがしたい』『こういうものが作りたい』ということを考えていた」と語った。そして自分が何をしたいのかをひたすら考え続けることで,自分がやりたいことも見つかってくると述べた。
 自分のやりたいことが見つかれば,あとは,それをやり続けること,それが,この業界に入る近道というのだ。

 また伊藤氏は,いろいろなことに興味を持つことも大事だと指摘した。アパレルのアニメグッズを企画する伊藤氏が,今の仕事をやれているのも,学生時代からファッションに興味があったからだ。ただアニメだけしか知らない,興味がないではなく,引き出しが多いことが,この業界でも強みになる。

 これは,成澤氏の一意専心の姿勢と矛盾するものではない。というのも,引き出しを増やそうというのは,「アニメが好きなところを捨てて,ほかの興味を持つ」ことではないからだ。アニメが好きなことを自分の中心に据えたまま,それ以外のことにも興味を持つ,それが働き続けるにあたって有益だという話は,否定の余地のないように思えた。

コンテンツを支える仕事は非常に幅広い
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4Gamer「AnimeJapan 2017」記事一覧


 パネルディスカッション全体を振り返ると,90分という長丁場ながらも,かなり駆け足の進行だった。だが,それだけ具体性に富んだ講演だったのも事実で,聴講者の得るものは多かったようだ。
 さまざまなコンテンツがユーザーの時間を奪い合っている状況。このような講演を通じてコンテンツを支える人々の働きがより注目されることは,短期的にも長期的にも重要だと思わせる講演だった。
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