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パッケージソフトの行く末や,e-Sportsの今後,そしてジンガジャパン閉鎖の内幕などが語られたトークイベント,「黒川塾(七)」をレポート
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印刷2013/03/16 23:03

イベント

パッケージソフトの行く末や,e-Sportsの今後,そしてジンガジャパン閉鎖の内幕などが語られたトークイベント,「黒川塾(七)」をレポート

「黒川塾」キュレーターの黒川文雄氏。映画やゲーム,カードゲームなど,さまざまなエンターテイメントに携わってきた
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 2013年3月15日,メディアコンテンツ研究家の黒川文雄氏が主催するトークイベント,「エンタテインメントの未来を考える会 黒川塾(七)」が東京都内で開催された。
 映画配給やゲーム宣伝のほか,カードゲームメーカーであるブシロードの副社長を務めた経験を持つなど,さまざまなエンターテイメントに携わってきた黒川氏をキュレーターに,「来るべき未来へのエンタテインメントのあるべき姿をポジティブに考える」ことをコンセプトとした黒川塾。七回目となる今回は,お笑いコンビ「アメリカザリガニ」の一人で,日本ゲームユーザー協会(JGUA)の会長でもある平井善之氏,2012年に閉鎖されたジンガジャパンの代表取締役CEOを務めた松原健二氏,日本eスポーツエージェンシーの代表取締役である筧 誠一郎氏,そして,ゲームのチューニングを業務とする猿楽庁の長官である橋本 徹氏「僕らのゲーム業界ってなんだ……!?」というテーマのもと,急激に変化するゲーム業界の今について語った。

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黒川氏(左)とアメリカザリガニの平井善之氏。平井氏は日本ゲームユーザー協会(JGUA)の会長も務める
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松原健二氏(左),筧 誠一郎氏(中央),橋本 徹氏(右)


パッケージソフトはどうなるのか?


 最初の議題は,パッケージソフトと家庭用ゲーム機は今後,どうなるのかというものだ。パッケージソフトを販売することは,これまで当たり前のように行われてきたビジネスモデルだが,しかし,その売上は年を追うごとに縮小傾向にある。
 その一方,スマートフォン向けアプリが高い人気を獲得し,PCではダウンロード販売が勢いを増している。こうした現状から,「パッケージソフトや家庭用ゲーム機はなくなってしまうのではないか」という声が日本のゲーム業界から聞かれてくるという。

 これについて平井氏は,パッケージソフトの手ざわり感や,ゲーム機の周りにみんなが集まる感覚が重要ではないかと語った。お笑いタレントである平井氏は,ニンテンドー3DS用ソフト「GUILD01」の制作に関わるなど,ゲームに縁の深い人物。自らJGUAも立ち上げた理由は,ユーザーの立場からゲームを盛り上げるためであり,ゲーム開発者や関係者など,多くの人から,最近ゲームが売れないという話を聞いたため,何かすべきだと思ったという。

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 パッケージソフトが売れないとはいうものの,パズル&ドラゴンズが1000万ダウンロードを突破する(関連記事)など,ソーシャルゲームは拡大傾向にあり,全体として「ゲームは売れている」と見ていいのではないかと指摘したのは,松原氏だ。それに対して平井氏は「お店でゲームを手に取り,急いで家に帰るロマンチックな体験」を忘れたくないと語る。
 家族や友達がゲーム機の周囲に集まり,パッケージを開いて遊び,ゲームを通してコミュニケーションするのは,とても健全なことであり,肯定したいというのがJGUA会長としての平井氏の意見だ。

 筧氏は,そのようなコミュニケーション体験は,ネットの普及によって変化してきたと説明した。かつてゲーム機の周りに近所の友達が集まっていたものが,ネットを通して人が集まる状況になったということだ。日本のプレイヤーが海外のプレイヤーと友達になれるなど,ゲームという共通言語を使った新しい交流といってもいい。
 パッケージソフトも,平井氏の言うように,仲間うちでの共通言語としての性質を持っており,コミュニケーションツールとしての側面を今後伸ばしていけば良いのではないかという。

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 もっとも,パッケージソフトが今後,数を減らしていくだろうという認識は,全員が持っているようだった。
 松原氏は,家庭用ゲーム機がなくなることはないとしながら,ダウンロード販売はメーカーにとって在庫リスクがないというメリットがあるため,パッケージソフトはほとんどなくなっていくだろうとする。また橋本氏は,自分自身は「パッケージソフト派」であるとしつつ,同じソフトでもダウンロード版ならメディアを入れ替える必要がないなど,利便性が高いこと指摘した。

 1973年生まれで,パッケージソフトの全盛期を過ごしてきた平井氏が語る,ロマンチックな体験やコミュニケーション感覚については,共感を覚える読者も少なくないかもしれない。だが松原氏は,ゲームを遊ぶ人の世代が変わることで,パッケージソフトにまつわる原体験はやがて,スマートフォンやタブレットで遊んだ原体験になっていくのではないかとする。また橋本氏は,時代の流れからパッケージソフトが減っていくことは避けられないものの,「ものを手に取る」という喜びは簡単に色あせるものではないという意見を述べた。


日本から,世界に通用するe-Sportsの選手を


 続いて筧氏が,e-Sportsの現状に関するプレゼンテーションを行った。
 筧氏は,日本では「スポーツ」といえば身体を使うものだと思われがちだが,英語のSportsという単語には,思考力を競い合う競技も含まれると前置きしたうえで,e-Sportsの対象となっているゲームを遊ぶ人の数は,全世界5500万人を超えているという試算を明らかにした。

筧氏によるe-Sportsの現状に関してのプレゼンテーション
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 世界において,e-Sportsの地位は向上しつつある。韓国では,子供が将来なりたい職業として,サッカー選手の次にe-Sports選手が挙がっているし,「League of Legends」では賞金総額6億円の大会が開かれ,「FIFA13」の公式世界大会「FIFA INTERACTIVE WORLD CUP」では,優勝者がゼップ・ブラッターFIFA会長から表彰され,リオネル・メッシ選手と並んで壇上に立つなど,e-Sportsの選手には大きな注目が集まっているという。

 こうしたe-Sportsの世界で,日本人が活躍してほしいと筧氏は語った。
 筧氏は,あるプレイヤーから「ゲームがうまい人は,小学生のときはクラスのヒーローだが,中学生になるとオタクと呼ばれる」という話を聞いたことがあるそうだ。
 サッカーや野球に熱中していても,オタクとは呼ばれない。しかしゲームはオタクと見られる風潮があるというわけだ。e-Sportsが盛んになれば,こうした偏見はだんだんとなくなっていくのではないかと筧氏は期待している。

 平井氏は「かつては高橋名人のような“憧れの人”がいたが,今はそうしたアイコン的人物が存在しない」とし,また黒川氏は「今のゲーム業界にはスターがいない。昔はクリエイターが憧れの存在だったが,だんだんとクリエイターの名前が出なくなった」と語る。いずれも,現在のゲーム界がスター不在という認識で,この状況が,e-Sportsのスター選手が登場することで改善されるのではないかというのが黒川氏の考えだ。
 こうした意見を受けて筧氏は,日本のe-Sports選手も海外へ出て,皆の憧れになるような選手として活躍してほしいと語った。

会場では,誰もが公平に戦える「白ゲーム」(筧氏)である3D格闘「EF-12」も紹介された
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「最初から世界に通用するものを作る」
ジンガ流のビジネス術


 最後に松原氏は,自身が代表取締役CEOを務めたジンガジャパンでの体験を語った。
 ジンガジャパンは,世界最大規模のソーシャルゲーム開発会社Zyngaの日本支社であり,同社がサービスする「ファームビレッジ」「あやかし陰陽録」といったタイトル名を聞いたことがある人も多いはずだ。

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 コーエーテクモゲームスの代表取締役社長としてオンライン系のコンテンツに携わってきた松原氏は,同社を辞したあと,次はソーシャルゲームをやりたいと考えていたそうだ。そんなところにオファーを提示してきたのがZyngaで,とりわけ同社のプロダクト開発副社長マーク・スカッグス(MarkSkaggs)氏とのやりとりが印象に残っているという。
 スカッグス氏はソーシャルゲームの歴史に残るヒット作となったFarmVilleや,「CityVille」の生みの親であり,それ以前はElectronic Artsで「Command&Conquer: General」「The Lord of the Rings:The Battle for Middle-Earth」といったコアゲーマー向けのRTSを手がけてきたといおう。松原氏は同氏のそうした経歴から,スカッグス氏がシンプルなソーシャルゲームに物足りなさを感じているのではないかと考えていたが,案に相違してスカッグス氏は「お客さんが楽しんでくれるのは素晴らしいことだ。Electronic Arts時代よりも多くの人が自分のゲームを遊んでくれる。1か月当たり2億人に遊んでもらうのが嬉しくないわけがない」と,ソーシャルゲームに対し非常に意欲的であり,松原氏もその考えに納得したという。

 ジンガジャパン時代の仕事について,松原氏は「日本と海外は違うと説明することだった」と語る。日本では一般的な「ガチャ」だが,アメリカではくじがあまり好まれないという文化の違いがあるため,日本でガチャがなぜ受けているのかが,なかなか理解されなかったという。また,「iモード」の経験がある日本のユーザーはブラウザゲームにすぐなじんだが,海外ではスマートフォンにインストールするアプリが好まれるといった違いもあったという。
 Zyngaの仕事の進め方もまた,日本とは違うものだった。日本企業は国内での足場を固めてから海外進出を行うが,日本でシェアを広げる方法は日本に最適化されたものであり,同じことを海外に適用しようとしても無理が出る場合がある。しかしZyngaは,最初から世界を相手にするというやり方であり,それが同社が急成長を遂げた鍵だったという。

 松原氏は日本を「特殊だが大きな市場」とし,そこに向けたソーシャルゲームを作るための体制を整えた。そして,「あやかし陰陽録」といったヒット作が生まれたものの,Zyngaは日本からの撤退を決定し,ジンガジャパンは閉鎖されることになった。
 当時のZyngaはシェア至上主義であり,シェアを広げるために会社の規模を大きくしていったが,やがて,手を広げすぎたことが問題になって統廃合が検討され,その対象にジンガジャパンが含まれてしまったと松原氏は分析する。
 しかし,松原氏が手がけたあやかし陰陽録は今もサービスが続けられており,自分の手は離れたものの,誇らしい気持ちだと語った。

左から筧氏,平井氏,黒川氏,松原氏,橋本氏
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 松原氏はまた,現在のソーシャルゲームは,ガチャが全盛であり,クリエイターは「ガチャ以上の収益があがるシステムを考えねばならない」という制約があるため,先へ進めないでいると分析する。
 それに対して平井氏は「ゲームの中で助けてくれた人にお礼をするなど,粋な課金があってもいいのではないか」と提案。松原氏も「どこの国の人でも,プレゼントをもらえばお返しをする。Twitterにはすでに,知り合いにちょっとした贈り物ができるgifteeというサービスが存在しているので,こうしたやり方をゲームに取り入てもいいかもしれない」と語り,課金に関するちょっとしたアイデアが出たところで,トークイベントは終了した。
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