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「推しを身に着ける」という選択。オタクのキャラクター解釈をそのままアクセサリーにしてくれる,夢のオーダー会に参加してきた

 推しを,身に着けたい――。

 そう思ったことはないだろうか。筆者はある。オタクとして,大好きなキャラクターと一緒にいるかのような気分が味わえたらちょっと気分も上がるし,心から尊敬するキャラクターに見守られていると思うと背筋も伸びる。

 ただ,どうしても市販のキャラクターグッズだと,主張が強すぎると感じられることがある。もちろんそのようなキャラクターがはっきりデザインされたアイテムも筆者は大好きだが,身に着けるものとなるとTPOによっては避けなければならないこともあるし,作品を知らない人に突っ込まれたときにあたふたしてしまう。

 そんなときにぴったりなのが,「推しの概念のアクセサリー化」だ。そんなことができるんですか? と思ったそこのあなた。できるんです。新星急報社さんならね。

 新星急報社さんは,個人でハンドメイドアクセサリーを制作しているアーティストだ。普段は「文芸と服飾」をコンセプトとして作品制作・販売をしているが,なんと個人のオーダーも受注している。そしてこの個人受注では,作品やキャラクターの概念はもちろん,詩歌や論文に至るまで,とにかくあらゆるイメージをアクセサリーに落とし込んでもらえるのだ(※差別的なもの、またキャラクターなどをモチーフにする場合は、元の作品の二次創作ガイドラインでアクセサリーの販売が禁止されているものについては除く)。

 面白いのは,アクセサリー化するのは「自分の中のイメージ」である,という点だろう。同じゲームを100人がプレイしたとして,その感想が寸分たがわず一致することはないはずだ。それと同じで,新星急報社さんは「作品そのもの」ではなく「誰かの目を通した作品の解釈」をアクセサリーにしてくれる。だから,たとえ同じ作品の同じキャラクターでイメージアクセサリーを作ってもらったとしても,絶対に被らない。作品やキャラに自分が抱いた気持ちが,身に着けられる形になって手元にやってくる……。そんなステキなことがあるなら,ぜひとも行ってみたい! 

 ということで,今回は新星急報社の対面オーダー会に参加してきた。

前準備は入念に


 オーダー会は予約制で,どんなアクセサリーが欲しいかを客が説明する時間,新星急報社さんがそれを聞いてパーツを提案する時間,実際に決定したパーツを組み立てていく時間を含めて基本的に1時間だ(時間のかかるアクセサリーを頼みたい場合は,1人で2枠取って2時間にもできる)。「どんなアクセサリーが欲しいか」=キャラの解釈を説明する時間は限られており,事前に資料を送付する,などの下準備もできない。つまりすべてを現場で解説する必要がある。

 ということで,筆者は受注会参加前に今回頼みたいキャラクターに関する資料を用意した。そのキャラクターとは,colyのソーシャルゲーム「魔法使いの約束」(iOS/Android)に登場する「ムル・ハート」である。

 魔法使いの約束とは,月に脅かされている異世界を舞台に,月と戦うために選ばれた魔法使いたちと,それを統率する主人公(プレイヤー)との交流を描くファンタジー作品だ。ムルはその中でも狂言回し的な立ち位置で,かつては天才と呼ばれたものの,月に恋して魂が砕けてしまった,異色の経歴を持つ魔法使いである。

 そのムルに関して,およそ2000字のプレゼン資料を作成した。オーダー会で使える説明時間は,およそ10分が目安である。あまり長すぎても,短すぎてもよくない。そこで手短に,作品の世界観,基本のプロフィール,経歴,筆者から見たムルの魅力,そして筆者の好きなムルのセリフをまとめてレポートに仕上げたのである。その場で思いつくままに推しの魅力を語るのもいいが,それだと漏れてしまう話があったり説明に時間がかかりすぎてしまったりするので,このように事前に話すことを決めておくのがベターである。

 とはいえ長いので,以下は興味のある人だけ見てください。

新星急報社さんにお渡ししたプレゼン



◆お願いしたいアクセサリーのモチーフキャラクター
ムル・ハート(魔法使いの約束)

画像集 No.001のサムネイル画像 / 「推しを身に着ける」という選択。オタクのキャラクター解釈をそのままアクセサリーにしてくれる,夢のオーダー会に参加してきた

◆ゲームの世界観
1年に1度,「大いなる厄災」と呼ばれる巨大な月に襲われている異世界。その世界では,各国から選ばれた21人の魔法使いが,「賢者」と呼ばれる異世界から来た人間に統率され,「賢者の魔法使い」として月を追い返すための戦いに身を投じている。

◆プロフィール
身長:177cm
誕生日:2月11日
年齢:およそ1500歳
出身:西の国(お祭り好き,変わり者の魔法使いが多い国)
特技:カードやチェス
職業:宝石商人(家業,のちに出奔),哲学者,天文学者,鉱物学者,発明家など多数
髪色:紫
目の色:グリーン
マナエリア(個人的なパワースポットのようなもの):月の映る池のほとり
アミュレット(マナエリアに近い力が得られるアイテム):ムーンストーンの指輪
よく使う魔法:花火

◆経歴
宝石商の家に第二子として生まれ,宝石商になるが,自身の好奇心を抑えきれずに出奔。哲学者,天文学者,鉱物学者,発明家など,多数の肩書を得る偉大な研究者となる。
月に恋しており,「賢者の魔法使い」の役目を誇りに思っている。
あるとき月に接近しすぎて魂がこなごなに砕けてしまい,人格や記憶をほとんど失った。現在は愛憎関係にある友人・シャイロックが魂の破片を収集しつつムルの教育を行っており,今では自由奔放な性格になっている。シャイロックがムルにつけたあだ名は「月に恋して身を滅ぼす、迷惑男ムル」。

◆魅力
●好奇心の塊であることの功罪
自身の好奇心の探究者であるムルは,「その先に何があるか」を考えることなく好奇心に飛び込んでは,自らを危険にさらしている。あるときは大魔法使いにデリカシーのない質問を投げかけて結果的に相手を死においやり,あるときは魔法を科学のように誰でも使えるようにする道具を発明して,世界を魔法動物乱獲・自然破壊の方向へ舵を切らせてしまった。ムルの言葉や思想の歴史は,世界の歩みを進めた一方,ありとあらゆるものを傷つけてきた歴史でもある。

●波乱を愛し,破滅に飛び込んでいく
これは西の魔法使い全体に言えることでもあるが,ムルにとっては恐怖や混乱や恥辱や難問は愛すべきものであり,そのような状況を与えられるとむしろ喜んで飛び込んでいく。それが破滅につながっている可能性がどれほど高くても,スリルや自分自身の気分を何よりも優先するのがムルの生き方である。

●1500年生き抜いてきた
魔法使いは,死ねば石になるが,魔法使いの石を食べれば食べるほど魔法使いは強くなっていく。そのような世界で千年以上も生き延びられる魔法使いはめずらしい。ムルは1500歳であり,前述のように危険な言動を繰り返しては生命の危機に陥ってきたが,それを機転と運と実力で乗り切ってきた。
一方でその人生は,「魂が砕け散る以前」と「魂が砕け散った以後」に分かたれており,その前後ではまったく違う性格を持っている。

●シャイロックとの関係
シャイロック・ベネットは,ムルと合わせて「愛憎の二人」と公式に称される腐れ縁の相手。シャイロックの経営する酒場にムルが現れ,どうせ偉そうな男だろうと警戒するシャイロックに,ムルが初対面にも関わらず「君の孤独に対するフェチズムを教えてくれ」と迫ったことで,二人は急激に意気投合。しかしその夜のうちに喧嘩になり,シャイロックは出禁を言い渡すが,その後もムルは熱心に通い続け,シャイロックと心から思い合う知己になった。
だが二人の間には常に緊張感がある。ムルの開発した魔法科学の装置によって西の国では産業革命に近い状況が発生し,シャイロックの愛した故郷の景色はどんどん失われていった。シャイロックは結果を考えずに禁忌に手を出すムルを憎んでいるが,同時にそれがムルの「自然」であることも理解しており,ムルのありのままの好奇心を愛する心との間で板挟みになっている。特に魂が割れたあとのムルは,シャイロックが育てたも同然の存在なので,シャイロックにとっては「自分がムルの“自然”に手を加えてしまった」という葛藤にも苛まれているようだ。当のムルは,シャイロックが自分だけに俗っぽい感情を向けてくるところを面白がり,愛している。

◆好きなセリフ
「何が良くて何が駄目なのか、それって誰が決めたの? 世界はきみが思ってるよりずっと曖昧で適当さ。周りと違ってたっていい、もっと自由に楽しもうよ!」
「そこに自己がある。自己とは世界そのものさ。あなたの住んでる世界の正体!」

さっそく会場へ


 当日。張り切って作った資料を新星急報社さんと自分のために2部印刷し,カバンに入れて会場へ赴く。今回は西荻窪にある雑貨&カフェ「スピカのおやつ」での開催だ。新星急報社さんは店舗がないため,オーダー会はどこかのお店やレンタルスペースを使う場合がほとんどである。

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「スピカのおやつ」の窓辺

 かわいらしい雰囲気のお店の奥,窓辺の席に案内されると,さっそく新星急報社さんが待機していてくれた。その日もお手製のネックレスとグラスコードというステキな装いで,つい「それ,おしゃれですね!」と声をかけたくなってしまう。到着時間は開始よりやや早めだったが,さっそく始めさせてもらうことにした。

 最初に流れを説明してもらえる。おおむね「こんなアクセサリーが欲しい」という客からの説明〜パーツや形の提案まで30分程度で,その時点で値段が確定し,その後組み立てに入る,という流れだ。こうして考えるとかなり時間がないので,説明に時間を割きすぎないようにする必要がある。筆者は結局,5分ほどかけて資料を読み上げた。

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オタクの資料プレゼンの様子

 ここからはアクセサリーの具体的な相談だ。まずイヤリングにするかネックレスにするか迷っていた筆者だが,新星急報社さんは説明を聞くなり,スマートに選択肢を提示してくれる。

 「聞いていて思ったのは,周囲のことを考えない自由さと,一直線ではなく分散・拡散していくイメージですね。イヤリングだと揺れる構造や光の透過による浮遊感が協調できます。逆にネックレスだとデコラティブにするほど重くなるので軽やかさは失われますが,大きい形が作りやすいので,印象に残りやすい強烈なインパクトのあるデザインが可能です」

 う,うわ〜! これはどちらも魅力的である。悩んだが,ネックレスをほとんど持っていないということもあり,ネックレスを選択した。軽やかに人を惑わせる,というイメージだと確かにイヤリングがぴったり合いそうだが,同時にムルの生き抜いてきた1500年は,決して軽くない。今回はそちらに着目したいと考えた。

 「それでいくと……」と言うと,新星急報社さんはすぐさまチェーンが大量に入った袋の中から何種類かのチェーンをピックアップしてくれる。「まっすぐよりかはちょっと奇妙な感じがいいですよね」と,ややひねりや変形したパーツが含まれているチェーンを何種類か提示された。私は何も言っていないのに全色金色である。「ムルは絶対金色!」と思っていた私の心の中を,読まれている……?

 そう,これが新星急報社さんの醍醐味なのだ。たくさんのパーツの中から,自分の解釈に合致するものを導き出して的確に提案してくれる。ときには「あなた本当にこのキャラクターを知らないんですか!?(注:本当に知らない)」と言いたくなるような瞬間もあるのだから,プロは本当にすごい。

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提案してくれた3種類のチェーン

 結局3番目に提案してもらった,ひねりがありつつ2つのパーツが有機的に結びついたようなチェーンにすることに。「2つのパーツ」というところが,ムルの持つ2つの人生とも関連付けられるような感じがあり,それでいて遊び心のある雰囲気が,ムルっぽいと思ったのだ。……このアクセサリー,こんな調子ですべてのパーツに意味を持たせるの? と思ったあなた。持たせますよ。オタクなんで。

怒涛のパーツ選び


 そこからペンダントトップの周囲の飾りを選んでいく。まずはムルの髪色(紫)や目の色(青みの強いミントグリーン)に着目して,それに近い色のパーツを見せてもらった。

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たくさんの輝くガラスパーツ

 「まずは印象的な明るい色の瞳ですね。これにぴったりだと思ったのが,こちらのヨーロッパ製のクリスタルガラスパーツです。シマーエフェクトというコーティングの加工がかかったものです。こういう強烈な光り方をするガラスが入ってもいいんじゃないかと思います。これはすでに廃盤になってしまったもので,実はシャンデリア用なんですよ」

 す,ステキすぎる。しかも話していなかったが,ムルには初期のイベスト(「欲望と祝祭のプレリュード」)で「シャンデリアにぶらさがって破壊する」シーンがあるのだ。これはあまりにもぴったりなのではないか。

 さらにカラーの提案が複数ある。「アンティークグリーン」というムルの目の色に似たかなり明るい青緑のものと,「パラダイスシャイン」というパープルとグリーンが混ざったような深い色味のものだ。それぞれ名前にも雰囲気があり,光り方も魅力的である。

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左がアンティークグリーン,右がパラダイスシャイン

 私が迷っていると,「あとで形を整えるときに決めましょうか」と言って,悩む時間をくれた。ううむ,どちらも捨てがたい。

 そして次の提案。ムルを語るうえで外せないのが「月」のモチーフだ。月に近づきすぎて魂を砕かれてしまったというムルの人生の転換点は,なんとしてもアクセサリーに落とし込みたい。

 「キャラクターが身に着けているアイテムにもムーンストーンがあったので,ムーンストーンはぜひ入れましょう。直接的な月のモチーフ自体は,人生を切り替えたものということで,あえて後ろに入れるのはどうかなと思って」

 新星急報社さんの提案は,ネックレスの背後のチェーン(ネックレスを留める部分)に三日月のパーツを入れるのはどうか,というプランだった。確かにそれはかっこいい! キャラクターにとって重要なパーツだからといって,ペンダントトップの位置に置かなければならない理由はなく,むしろ背中側に光らせることでより深い意味を楽しめる……。なんて奥深いのだろうか。

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背中側に入れることにした,デコラティブな月のパーツ。キュービックジルコニアという人工石が埋め込まれている

 さらに提案してもらったのはアメジストだ。

 「アメジストはパープルの石で,ムルの髪色にも合います。また,ブドウの色にも見えるので,バッカスに関係のある石としても扱われるんですね。バッカスは酒の神で,時代によっては演劇や狂乱の神様でもあります。シャイロックが酒場を経営しているというエピソードもあると聞いて,これも合うかなと思いました」

 うわあ〜! これまた絶叫したくなってしまった。実は「まほやく」には,ムルとシャイロックをはじめとするキャラクターたちが,シャイロックのワインに対抗心を燃やす魔法使い・バッカスの住む街に出かける,というイベントエピソードもあるのだ(「未完のワインに思いを馳せて」)。「まほやく」には神話や古典をモチーフにした固有名詞が多く出てくるので,必然と言えば必然のつながりかもしれないが,話していないイベストにまで物語がつながっていく経験はほかに代えがたい快感である。

 そして肝心の,ネックレスの先端部分である。

 「強烈な魅力,という印象を受けたので,枠にセットして使うタイプのめちゃくちゃ大きなガラスを置くのはどうかなと思いました。グリーンやパープルのガラスにしてもいいですが,あるいは……このコロラドトパーズボルケーノという新しく仕入れた色はどうでしょう。偏光のすごく強い色です。これを入れることで,全体が何色とも言い難い強烈な印象になってくると思います」

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ツメつきのデザインがゴージャスでステキ

 この色味はムルのキャラクターデザインの中にはないものだが,一見バラバラした印象のパーツに一気にまとまりと深みを持たせてくれる。そしてよく見るとグリーンやイエローが見える深いブラウンのガラスには,ムルが数百年単位で積み重ねてきた研究の重みが沈殿しているようにも感じられた(オタクの感性)。「いや,でももっとほかの可能性もあるのでは?」と思い,同じ形で違う色のガラスパーツや,ほかのシャンデリアパーツと組み合わせを取り替えてみたりもしたが,やはりこの組み合わせがしっくりくるので,採用することに。

 それからペンダントトップをさらに目立たせるべく,フープを入れてもらう。まっすぐの正円ではなく,ちょっとひねりやゆがみを感じる形状のものだ。

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使うパーツが出そろってまいりました

 ……これ,死ぬほどかわいいんじゃァない!?

 これでもう完成かな? と思う方もいるかもしれない。だが,まだまだなのだ。「ムーンストーンにはやはり象徴的な位置にいてほしいので,ペンダントトップの上に入れます」と新星急報社さん。わかってらっしゃる。ムルのアミュレット(魔法使いにとってのお守りのようなもの)はムーンストーンの指輪なので,ここにもムーンストーンの小さなビーズを入れてもらう。

 そして筆者からオタク・オーダー(オタクの要望のことです)が入る。

 「シャイロックはムルの人生をつなぎとめた存在なので,留め具のところにシャイロックの目の色である赤のパーツを入れたいです! 背中側は,月と一緒に人生を破壊したもの・つなぎとめたものが混在している感じにしたいです」
 「なるほど。赤い石も種類がありますよ!」

 そこで出してもらったのがガーネットとルビーだ。微細なパーツで,目を離せばどこかに行ってしまいそうな大きさだが,深みのある色をした立派な天然石である。シャイロックは人工的に量産されたものを嫌悪し,自然にできたもの,思い入れを込めて作られたものを愛する人なので,ここはガラスでなく天然石で大正解だ。ここでも「オタクの答え合わせ」が続く。

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見えづらいが,指先に触れているのがルビーとガーネットである

 結局オタクはルビーを選択,数種類あるルビーから一番しっくりするものを選んだ。ワインっぽい雰囲気のある緋色だ。

 背中の留め具をつけるチェーンにも選択肢が複数ある。ぴちっとした六角形,ぼこぼこの鎖など,さまざまな種類があるが,ここは「水面に映る月みたいじゃないですか?」と提案された大ぶりのチェーンに決めた。

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一番手前のチェーンに決定

 さらに「ほかに足りない要素はないですか?」と聞かれる。ムルはギャンブルが得意なキャラクターなので,「ギャンブラーっぽいパーツはないですか?」と聞いてみた。それでご提案があったのが2種類。

 「直球のデザインだと,ダイスの形のビーズというのがあります。それか,石だと候補が3つありますね。1つはアイオライト。アイオライトは結晶に差し込む光の向きによって色が違って見えるんです。そこからは二面性を連想させます」

 オタク,内心で勝利を確信する。「魔法使いの約束」は育成ゲームで,ゲームプレイによって魔法使いたちが「特性」を獲得していくのだが,ムルにはキャラクターそのものに「二面性」を獲得できるエピソードが備わっているのだ。

 だがこれだけで終わらないのが新星急報社さんである。

 「もう1つはパイライト,黄鉄鉱です。金に似た状態で産出されるので,採掘者がだまされる,という話があり,〈フールズゴールド〉とも呼ばれます」

 それもいい! でも黄色は少しイメージからずれるかもしれない。

 「あともう1つは,アパタイトという石ですね。リンの化合物なので,土壌改善の肥料になったりとか,用途の多い石です。名前はギリシャ語の『ごまかす』や『騙す』というニュアンスの言葉に由来していて,アクアマリンやフローライトなどの高価な石や,当時工業的に役割を持っていた石と似た状態で産出されるため,『人を騙す』ニュアンスが出ます。また,今入れているのがどれも強い石なので,アパタイトのような脆い石が入っていてもいいのかなと」

 「そうですね! 月によって魂が砕けたことを考えると,脆い石はイメージに合いそうです」

 こうしてアパタイトを入れることに決まったのだが,こちらは月のチャームの手前に組み入れてもらった。片側には月と,それによって砕けた魂のかけら。もう片側にはそれをつなぎとめたシャイロック。いい,よすぎる。

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月のチャームの手前の青い石がアパタイト

金額確認〜組み立て


 パーツ選びはこれにて完了だ。ここでお値段の確認が入る。パーツには当たり前だがそれぞれ値段があり,一定までは標準の料金セットで作ってもらえるが,ここまで見ていただいたような感じで「やってしまえ!」という勢いでパーツを足していったり,あるいは細かい作業を要求したりすると,追加料金が発生するのだ。

 ネックレスの基本料金は9000円(税抜)で,今回の私の予算は1万2000円。しかしこれでもかとパーツを選んでしまったから,さすがに今回はいくつかパーツを取りやめるか,予算を増額しなければならないだろうな……と思っていたが,なんとこれで1万1000円だった。全然オッケーです! ということでこちらの値段と組み合わせで合意して,さっそく組み立てに取り掛かってもらった。

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チェーンをペンチでばちんと切っていく様子

 組み立てを見守りながら,新星急報社さんに舞い込むオーダーについて少し話を聞いた。

 「うちはありがたいことにリピーターさんが多いんですが,毎回違うキャラでオーダーされる方ももちろんいますし,キャラ解釈の変化に応じて,同じキャラについて違うアクセサリーのオーダーをされる方もいます。物語の中で変化したキャラの印象を,それぞれ違うアクセサリーで表したいという方もいました。ほかに面白かったのは,友人同士で来て,自分が好きなキャラクターをご友人のほうに説明してもらう,というパターンです。そうすると,好きなキャラの話なのに自分とは違う新鮮な解釈が出てきて,アクセサリーの表情もまた自分の言葉からは出てこない形になってくるんです」

 ファンの数だけ解釈がある。それはまさに,コンテンツ受容の醍醐味のひとつなのではないだろうか。「友人の推しについて自分なりに解釈して,プレゼントにするのもよさそうですね」と言うと,「そうなんですよ」とまた違うエピソードが出てきた。

 「数名の方からのオーダーで,全員の共通の友人であるAさんへのプレゼントを作ってほしいと言われたことがありました。そのときは友人の方々から順番にAさんの印象を話してもらい,そのプレゼンからアクセサリーを組み立てていきました」

 新星急報社さんでは,このような多様なオーダー対応のほか,予算上限から逆算して組む,「服装規定のある職場でも使えるもの」などデザインの希望を優先して組む,といった注文も可能だ。オーダーメイドのすばらしいところは,やはり自分の希望を伝えて,それに沿った作品を実現してもらえる点だな,と改めて感じた。

 そうこうしているうちに……ネックレスが完成!

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 かわいい〜〜!!!!

 キャラの髪色,目の色,重要なモチーフをしっかり組み込んだうえで,全体のバランスを取りつつ「デコラティブでキラキラ」というキャラの好みにも合ったネックレスに仕上がっている! シンプルなお洋服に合わせてコーディネートの主役にするもよし,派手めなファッションに追加してさらに盛るのもよし,という大満足の出来上がりだ。

 最後はラッピングだ。このときの包装紙やリボンは,対応できる範囲でキャラのイメージカラーにしてもらえる。今回は紫のペーパーとグリーンのリボンでまとめてもらった。

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保証書もつけてもらえます

 怒涛の情報量,あっという間の1時間。オタクの宝物に,またひとつ新たなコレクションが加わった。自分の大好きなキャラクターと一緒にいるような気分になれるのは,オタクにとってはこれ以上ない生活のバフだ。ちょっと勇気を出したいとき,もう少しだけ心の余裕が欲しいとき,このネックレスがあれば少し気分を上げられるのではないかと思う。

 新星急報社さんのオーダー会は,今後も不定期に開催される。詳細は新星急報社さんのホームページから確認してほしい。なおオンラインからでもオーダーは可能なので,遠方の人はこちらを利用するのもいいだろう。

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