連載
「そうだ アニメ,見よう」第47回は京アニ制作の「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」。自動手記人形の少女の成長物語
![]() |
「けいおん!」や「映画 聲の形」などで知られるアニメスタジオ「京都アニメーション」。外注をほとんど使わず,企画から仕上げまでを自社で行うことから,“安定の京アニブランド”とファンの間で謳われるほど,作品のクオリティに定評のある制作スタジオだ。
今回紹介する「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は,その京都アニメーションの最新作となる作品で,感情を持たない代筆屋の少女の成長物語が描かれている。
「そうだ アニメ,見よう」第47回のタイトルとなる本作は,暁 佳奈氏の同名小説が原作で,全2巻(KAエスマ文庫刊)が発売中だ。シリーズ構成は吉田玲子氏,監督は「日常」や「劇場版 境界の彼方 -I'LL BE HERE-」を手がけた石立太一氏が務めている。
「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」
![]() |
感情と両腕を戦場で失ったヴァイオレットだったが,依頼主の気持ちを言葉に代えて手紙に綴る仕事「自動手記人形<ドール>」サービスとそこで出会う。彼女は,ギルベルトが最後に放った言葉「愛している」の意味を知ろうと,自動手記人形の見習いを始めた。
しかし,時には依頼主が胸のうちに秘めた想いもすくい取る必要のある自動手記人形の仕事は,感情を理解できないヴァイオレットには荷が重く,失敗ばかりが続く。そこで彼女は,自動手記人形の養成学校に通うことにするのだが……。
![]() |
![]() |
![]() 戦うことしか知らないヴァイオレットを気遣うホッジンズ |
原作小説のTVCMとしてアニメ化され,そのクオリティの高さが話題となっていた「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」。TVシリーズとなった本作でも,手書きの繊細な作画と色彩豊かな画面表現は変わらず,2018年1月に放送された第1話はもちろん,第2話以降も,さすが“京アニブランド”とうならせる完成度だった。
主人公は兵器として育てられた少女ヴァイオレット。それゆえ感情の機微を理解できず,まるでロボットのように振舞う彼女がなんとも痛々しい。その彼女がさまざまな人々との出会いを通じて,感情を取り戻していく姿が描かれている。
![]() 戦争で両腕を失ったヴァイオレットは義手で生活することに |
![]() C.H郵便社はホッジンズが経営する会社だ |
こだわり抜かれた“映像美”
本作の最大の見どころは,画面に引き込まれそうな“映像美”だ。CG全盛の昨今,これほど手書きの作画にこだわりぬいた作品は珍しい。「響け!ユーフォニアム」や「映画 聲の形」で見せた,京都アニメーションの圧倒的な作画力が存分に発揮されている。
第2話終盤のヴァイオレットとエリカ・ブラウン(CV:茅原実里)の雨のシーンや,義手でタイプライターを操作するシーンなど,丁寧に描きこまれた画面に目が釘付けになってしまうこともしばしばだ。
そして,本作がほかの作品と一線を画しているのは,目の表現だと筆者は感じた。感情に乏しいヴァイオレットの微妙な心の揺れを,本作では複雑な目の動きで表現しているのだろう。“目は口ほどにものを言う”とはこういうことかと思わされた。
![]() |
![]() |
キャラクターデザインと総作画監督を務めているのは,原作のイラストを担当した高瀬亜貴子氏で,大戦前後のヨーロッパをイメージした世界観と,そこに住む人々を繊細なタッチで丁寧に描いている。特に,登場人物の髪型や服装,着けている小物などは,高瀬氏のこだわりが感じられ,リアリティのある空間を作り上げていた。
![]() |
王道展開のストーリー
物語は,ヴァイオレットの成長譚を軸に,エリカをはじめとする同僚,自動手記人形の依頼者達,そしてホッジンズとの交流がしっとりとした語り口で綴られていく。戦闘や奇抜なストーリー展開などはなく,そこに暮らす人々の生活に寄り添った人間ドラマが本作のメインとなるのだろう。
ただ,ヴァイオレットの心の拠り所となっている,ギルベルトの安否が気になるところ。唯一居場所を知っていると思われるホッジンズは,「あいつはもう帰ってこない」とギルベルトの生存を絶望視しているようだが,果たして彼は今後登場するのだろうか。生きていたとして,ヴァイオレットとの関係はどうなっていくのか,ストーリー中盤以降の見どころとなりそうだ。
![]() |
![]() |
京都アニメーションの本気が随所に感じられる本作は,切ない人間ドラマを楽しむのもよし,完成度の高い映像を楽しむもよし,ヴァイオレットの可愛さを愛でるのもよしと,視聴者のニーズに合わせて楽しめる王道作品だ。
現在第4話まで放送されているが,ロボットのように表情を変えないヴァイオレットが,今後どのように変化していくのか非常に興味深い。願わくは,輝くような彼女の笑顔が見られますように。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」公式サイト
| 放映データ |
|---|
| 2018年1月〜 |
| 全13話 |
| キャスト |
|---|
| ヴァイオレット・エヴァーガーデン:石川由依 |
| クラウディア・ホッジンズ:子安武人 |
| ギルベルト・ブーゲンビリア:浪川大輔 |
| カトレア・ボードレール:遠藤 綾 |
| ベネディクト・ブルー:内山昂輝 |
| エリカ・ブラウン:茅原実里 |
| アイリス・カナリー:戸松 遥 |
| スタッフ |
|---|
| 原作:「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」暁 佳奈 (KAエスマ文庫/京都アニメーション) |
| 監督:石立太一 |
| シリーズ構成:吉田玲子 |
| キャラクターデザイン:高瀬亜貴子 |
| シリーズ演出:藤田春香 |
| 世界観設定:鈴木貴昭 |
| 美術監督:渡邊美希子 |
| 色彩設計:米田侑加 |
| 撮影監督:船本孝平 |
| 3D監督:山本 倫 |
| 小物設定:高橋博行・太田 稔 |
| 編集:重村建吾 |
| 音響監督:鶴岡陽太 |
| 音楽プロデューサー:斎藤 滋 |
| 音楽:Evan Call |
| 音楽制作:ランティス |
| OP主題歌:TRUE [ Sincerely ] |
| ED主題歌:茅原実里 [ みちしるべ ] |
| アニメーション制作:京都アニメーション |
| 製作:ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会 |
■BD&DVD情報
ヴァイオレット・エヴァーガーデン 1
2018年4月4日発売
収録
第1話、第2話、第3話
Blu-ray
価格:9,200円(本体)+税
DVD
価格:8,200円(本体)+税
発売元
京都アニメーション・
ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会
販売元
ポニーキャニオン
初回特典
・キャラクターデザイン高瀬亜貴子描き下ろしワンピースBOX仕様
・特製スリーブケース
・オールカラーブックレット
キャラクター紹介
各話紹介
設定紹介&解説
世界観解説 (鈴木貴昭(世界観設定))
スタッフ座談会
コンテ一部紹介
原作・暁佳奈 寄稿
・石立太一監督 初期イメージボードカードセット
・WEBエンドカード絵柄ポストカード
映像特典
・ノンテロップOP
・ノンテロップED
音声特典
・オーディオコメンタリー
その他
・日本語字幕
※特典内容は予告なく変更になる場合がございます。
(C)暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会
- この記事のURL:



































