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「そうだ アニメ,見よう」第31回は「アリスと蔵六」。不思議な能力を持った少女と頑固な老人のハートフルな物語
7月スタートの夏アニメでいちばんの注目株が「Fate/Apocrypha」。「Fate/Grand Order」(iOS/Android)でお馴染みのサーヴァント達が大勢登場するので,放送開始を待ちわびている人も多いはず。その第1話の放送が2017年7月1日(一部地域を除く)に決定した。どんな作品になるか,今から放送が楽しみだ。
さて,「そうだ アニメ,見よう」第31回のタイトルは「アリスと蔵六」。原作は今井哲也氏が「月刊COMICリュウ」(徳間書店)で連載中の同名コミックで,2013年に第17回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞を受賞した作品だ。制作はJ.C.STAFF,監督は「ふらいんぐうぃっち」や「Lostorage incited WIXOSS」の桜美かつし氏が務めている。
「アリスと蔵六」
あることがきっかけで研究所を脱走した紗名は,逃げ延びた東京でひとりの老人・樫村蔵六(CV:大塚明夫)と出会う。蔵六は「曲がったことが大嫌い」が口癖の頑固な性格。行くあてのない紗名を自宅へ引き取ることにした蔵六は,孫娘の早苗(CV:豊崎愛生)に彼女の面倒を頼む。初めて経験する普通の生活に戸惑う紗名だったが,やがて2人と心を通わせていく。
ところが,研究所は能力者のミニーC・タチバナ(CV:能登麻美子)を使って,紗名を連れ去る。それを知った蔵六は,昔なじみの内藤 竜(CV:大塚芳忠)に,紗名の正体を問い詰めた。内閣情報調査室に所属し,研究所の動向を見張っていた内藤は,蔵六に能力のことを打ち明けるのだった。
研究所では“赤の女王”と呼ばれていた紗名。その名の通りわがまま放題である |
新宿のコンビニで出会う蔵六と紗名 |
主人公の紗名は,ある事情から研究所の外の世界をまるで知らない。一般常識も他人との付き合い方も分からない“わがまま”な彼女を,頑固一徹な蔵六は優しく……いや,容赦のない鉄拳とアイアンクローで教え,諭す。愛情溢れる蔵六に,紗名は人間として必要なものを学び,心を開いていく。不器用な蔵六と紗名の心の交流と,彼女の成長が本作のメインテーマとなるだろう。
第5話で,研究所の騒動はいったん終了し,第6話からは,樫村家の一員として生活を始めた紗名のエピソードが始まる。何かにつけて能力を使おうとする紗名と,それを止める蔵六のやりとりが微笑ましく,見ているこちらがホンワカした気分にさせられる。果たして,紗名達は本当の“家族”になれるのか,今後の展開が気になるところだ。
蔵六の愛のアイアンクロー |
樫村家の養女として暮らし始める紗名 |
キーワードは「アリスの夢」と「ワンダーランド」
本作に登場する不思議な能力「アリスの夢」は,鏡の門と呼ばれる円環状のヴィジョンを空間に出現させ,同時に頭にあったイメージを“トランプ”として呼び出すというものだ。トランプは,1人に1つだけ存在し,ミニーCであれば亡くなった旦那さんの手を自由に出現させることが可能になる。
紗名もこの能力者だが,彼女だけは何種類ものトランプを操ることができる。というか,想像できる限り,なんでもできる。その代わり,大量の食料が必要になるなど燃費の悪いところがあるが……。
彼女がいた研究所にある「ワンダーランド」と呼ばれる空間がこの謎のカギを握っているようだが,そもそもこの能力はなんなのか? ネタバレになるので詳しくは書けないが,ここがこの物語の重要なポイントとなってくるようだ。最終話までにこの謎が解かれるのか,考察好きの視聴者にはたまらないポイントではないだろうか。
まさに何でもアリな能力「アリスの夢」 |
蔵六は「能力はなるべく使うな」と紗名にを諭す |
ヒロイン達の生き生きとした表情に注目
本作「アリスと蔵六」を語るうえで外せないのが,ヒロイン・紗名をはじめとした,少女達の魅力だ。能力ものという重いテーマにも関わらず,視聴後に爽快感さえ感じる理由は,紗名やその友達の雛霧姉妹など,少女達の“子供らしさ”のおかげであろう。
笑顔や泣き顔など,くるくる変化する彼女達の表情に,癒された人も多いはず。「ふらいんぐうぃっち」の紹介記事でも取り上げたが,監督の桜美氏は,こうした人物の動きと表情を生き生きと,そして繊細に描くことに定評のある人物。今回もヒロイン達を躍動感のある動きを,丁寧な絵つくりで表現している。
第9話に登場する,雛霧姉妹のお泊り会のエピソードは,少女特有の“何をやっても面白い”状態がきちんと描かれ,子供らしさを堪能できる回となった。
ファンタジックなテイストのOP&ED
こうした紗名達のエピソードを盛り上げているのが,ORESAMAのオープニングテーマ「ワンダードライブ」と,toi toy toi(kotringo edition)のエンディングテーマ「Chant」だ。どちらも童話のような本作のイメージに合った,ファンタジックな楽曲で視聴者を「アリスと蔵六」の世界に引き込んでくれる。
その2曲を含んだサウンドトラックCDが6月28日にリリースされる。注目のグループ「TO-MAS」による劇伴曲も収録され,作中の戦闘シーンや日常シーンを思い起こさせるサウンドが詰め込まれているとのことだ。
第8話で,新たな能力を持った少女・敷島羽鳥(CV:内田 秀)が登場し,ようやく「アリスの夢」について核心に迫りつつある。「ワンダーランド」とは何なのか? 最終話まで残りわずかとなったが,目が離せない展開となりそうだ。
ちなみに,アニメ公式サイトでWeb配信のスピンオフコミック「ワンダれ!!アリスと蔵六学園」が連載している。なぜか蔵六が学生になって登場するというカオスな内容だが,気になる人は一度見てみてはいかがだろう。
「アリスと蔵六」公式サイト
放映データ |
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2017年4月〜 |
全12話 |
キャスト | |
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樫村紗名:大和田仁美 | 樫村蔵六:大塚明夫 |
樫村早苗:豊崎愛生 | 雛霧あさひ:藤原夏海 |
雛霧よなが:鬼頭明里 | 一条 雫:小清水亜美 |
内藤 竜:大塚芳忠 | 山田のり子:広瀬ゆうき |
“ミニーC”・タチバナ:能登麻美子 | 鬼頭浩一:松風雅也 |
クレオ:内田 秀 | 敷島羽鳥:内田 秀 |
美浦 歩:高橋未奈美 |
スタッフ |
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原作:今井哲也(徳間書店「月刊COMICリュウ」連載) |
監督:桜美かつし |
シリーズ構成:髙山文彦 |
キャラクターデザイン:岩倉和憲 |
美術設定:廣瀬義憲 |
美術監督:柳原拓巳 |
色彩設計:田辺香奈 |
撮影監督:大河内喜夫 |
編集:後藤正浩(REAL-T) |
音楽:TO-MAS |
オープニング主題歌:ORESAMA「ワンダードライブ」 |
エンディング主題歌:toi toy toi (kotringo edition)「Chant」 |
音響監督:岩浪美和 |
アニメーション制作:J.C.STAFF |
■Blu-ray情報
Blu-ray vol.1[通常版]
7月28日(金)発売!
¥6000(税抜)全6巻
BCXA-1237/第1話収録/54分予定(本編約48+映像特典約6分)/リニアPCM(ステレオ)/AVC/BD25G/
16:9<1080p High Definition>/英語字幕付(ON・OFF可能)
≪特典≫
・キャラクターデザイン岩倉和憲描き下ろしジャケット
・ブックレット(4P)
・映像特典[PV集/CM集/ノンテロップOP&ED]
・音声特典:オーディオコメンタリー
第1話:大和田仁美、大塚明夫、藤原夏海、鬼頭明里、松風雅也
Blu-ray Box vol.1[特装限定版]
7月28日(金)発売!
¥1万9000(税抜)全2巻
BCXA-1243/第1話〜5話収録/
150分予定(本編約144+映像特典約6分)/リニアPCM(ステレオ)/AVC/BD50G×2/16:9<1080p High Definition>/
英語字幕付(ON・OFF可能)
≪Blu-ray Box限定特典≫
・キャラクターデザイン岩倉和憲描き下ろしBox&特殊ジャケット
・スペシャルドラマCD vol.1「紗名と動物園と」
“研究所”が解体され、樫村家で暮らすことになった紗名。ある日、早苗の提案からみんなで動物園に行くことに。蔵六たちに一条も同行し、それを追った山田もついてくる。紗名は初めてみる動物たちに目を輝かせる。
・特製ブックレット(52P予定)
キャラクター設定、美術ボードなどの制作資料や、TVアニメ放送記念企画として描かれた人気漫画家による応援イラスト3点(オカヤド、大沖、今井哲也)を掲載。
さらに紗名役の大和田仁美、樫村蔵六役の大塚明夫、プロデューサーの松倉友二、原作の今井哲也にインタビューを実施!
≪特典≫
・映像特典[PV集/CM集/ノンテロップOP&ED]
・音声特典:オーディオコメンタリー
第1話:大和田仁美、大塚明夫、藤原夏海、鬼頭明里、松風雅也
第3話:大和田仁美、豊崎愛生、小清水亜美、大塚芳忠
第5話:大和田仁美、小清水亜美、能登麻美子、今井哲
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