連載
ミュージック フロム ゲームワールド:Track 14
学生のみなさんは夏休みが近づき,社会人のみなさんはお盆前の仕事の追い込みに入る頃でしょうか。私は1年365日,変わらずゲーム音楽を聴きながらの仕事です。さて,車に乗る人は夏空の快晴の下,マイカーでドライブでもしたいと思う季節。そしてゲーマーならレースゲームやドライブゲームのBGMをかけてテンションを上げたいところ。
定番の「アウトラン」「リッジレーサー」「湾岸ミッドナイト」など,音楽面でも人気のタイトルはいろいろありますが,私の一押しはタムソフトが制作した初代PlayStation用ソフト「チョロQ」です! 運転中は,中野恭宏と田辺文雄の両氏が作曲した,気分爽快に疾走するドライビングフュージョンサウンドに,思わずアクセルを踏みすぎてしまう可能性大なので注意が必要です。まあ……私はペーパードライバーなんですけどね。
ちなみにPS版「チョロQ」はサントラ化されていませんが,ゲームディスクにCD-DAで一部のBGMが収録されているので,もし中古ショップなどで見つけたらサントラ盤として買っておきましょう。それでは今週も「ミュージック フロム ゲームワールド」へGET READY!
ゲーマデリックの魂をすべて注ぎ込んだ渾身の1枚
「Rebooot!! / GAMADELIC」
タイトル | Rebooot!! / GAMADELIC | |
発売日 | 2015年6月12日 | |
価格 | 3000円(税抜) | |
発売元 | GAMADELIC | |
コピーライト | (C)2015 GAMADELIC (C)PAON DP Inc. (C)G-MODE Corporation |
1980年代後半に起こった,メーカー公式ゲームミュージックバンドのブームに少し遅れた1991年,データイーストも待望となるゲームミュージックバンド,ゲーマデリックを結成しました。しかし1990年代後期には表立った活動がなくなり,自然消滅のように終焉を迎え,濃いアレンジ曲を好んで聴いていたファンとしては,ちょっと寂しい気持ちになったものです。
しかし,2013年にゲーマデリックがまさかの復活! そんな奇跡の展開に狂喜乱舞したのも記憶に新しいですが,さらに全曲新アレンジ&新録音のフルアルバムがリリースされるとアナウンスされ,活動休止中の鬱憤を晴らすかのように怒涛の活動を見せています。結成から24年が経過しても,これだけワクワクさせてくれるバンドの魅力は,ニューアルバムの中にも200%詰まっていました。
というわけで,今週の1枚めは,このゲーマデリックのニューアルバム「Rebooot!! / GAMADELIC」を紹介します!
今回のアルバムでは,過去のアレンジで見られたラップの要素を取り入れたコミカルな面は排除され,ゲームミュージックを変化球なしでストレートにバンドアレンジした楽曲が並んでいます。1曲めの「Power Of Coal Miner」は“戦う人間発電所”のキャッチコピーで物議を醸した「チェルノブ」からの曲。アグレッシブさと,どこなく危険な香りが同居するメロディに,何者かに追われるような焦燥感を覚える曲で,オープニングからインパクト抜群です。
ゆったりと進行するイントロ部分にゲームのボイスを取り入れて雰囲気を盛り上げ,その後一気にテンポを上げて疾走する「A Blackguard」では,ゲーマデリック流の王道ハードロックが炸裂。「Legend Of The Dark Seal」も,新加入のせいんと☆ぴーちによる,クラシック調のメロディを生かしつつ,対位法を用いたアレンジがバンドに新たな風を持ち込んでいます。それも,しっかりとゲーマデリックの音として消化されており,驚かされるばかりです。
アルバム中で最も高速な「Fire A Heavy Barrel!」はゲーマデリックの限界に挑んだナンバーとして,聴く側も手に汗を握らずにはいられません。中間部でのドラムのツーバス連打をバックに各楽器ソロをリレーでつないでいくアプローチに「まだまだ若い奴らには負けないぜ!」といった気持ちが伝わってくる,気合いの入った1曲です。
ラストは「ミッドナイトレジスタンス」の「Traitor Of The Justice」。哀愁漂うメロディには,ゲーマデリックが活動休止に至ったときのやるせなさと,今回の活動再開に込めた決意の両方が込められているかのようです。歌詞が存在しないからこそ,気持ちをメロディに乗せてファンに伝えたい,そんな思いが感じられるこの曲が,気持ちよくアルバムを締めてくれます。
全体的に原曲をしっかり生かしたアレンジになっており,ゲーム音楽ファンにとっては安心して楽しめるアルバムに仕上がっています。原曲を知らなくても,濃厚なハードロック・インストアルバムとしてロック好きの人にも幅広く聴いてほしい1枚です。
ゲーマデリック公式Twitter
Maro's Music Bar(吉田博昭(MARO)プライベートショップ)
1つの曲が進化していくZUNTATA流テクノサウンド
「QIX++ オリジナルサウンドトラック」
タイトル | QIX++ オリジナルサウンドトラック | |
発売日 | 2015年6月3日 | |
価格 | 1200円(税込) | |
発売元 | ZUNTATA RECORDS | |
コピーライト | (C)TAITO Corp. 1981, 2009 |
1981年にリリースされ,「スペースインベーダー」と並ぶタイトーの代表作として知られる「QIX」。ステージをラインで囲んで陣地を増やしていくというシンプルなルールで大ヒットし,続編や関連作も多数リリースされています。私は世代的に「スーパークイックス」と「ヴォルフィード」の2作をゲームセンターでよく遊んだものです。
そんなQIXシリーズの新作として,2009年にPSP用ソフトでリリースされたのが「QIX++」。今週の2枚めは,ゲームの発売から6年が経った2015年に配信版サントラとしてリリースされた「QIX++ オリジナルサウンドトラック」を紹介します。
「QIX++」の作曲担当は櫻井浩司氏とZUNATAの小塩広和氏の2人。全体的に重厚で,甘さ控えめの無機質ハードコアテクノサウンドに仕上がっており,音楽性とサウンドが完璧に統一されているこのアルバム。テクノアーティストのオリジナルアルバムとして聴いても,まったく違和感がありません。
1曲めの「Quick and Sensitive」から,いきなりメロディ皆無の尖ったフレーズが4つ打ちのリズムに乗って襲ってくるので,ハードコアテクノ好きならテンションが上がること間違いなし! さらに,プレイ中のBGMは同じモチーフを使って「Type.A」から「Type.D」までの4曲が作られており,あとになるほどアレンジに彩りが加えられ,曲自体が進化していく,というコンセプトになっています。
予測のつかないベースの動きや,インダストリアル要素を含んだ攻撃的なサウンドが楽しめる「Resonance」や「Tremor」,デジタル空間の中での夢うつつな気分にさせてくれるスローテンポな「Kaleidoscope」,親しみやすいポップなコード感と音使いが耳に残る「All or Nothing」など,統一された音世界の中で,曲ごとの個性を楽しませてくれます。
ZUNTATAファンはもちろん,櫻井浩司氏の「スペースインベーダー エクストリーム2」や,小塩広和氏の「スペースインベーダー インフィニティジーン」といったテクノサウンドが好きな人にも,ぜひオススメしたいサントラです。
「QIX++ オリジナルサウンドトラック」公式サイト
iTunes「QIX++ オリジナルサウンドトラック」
mora「QIX++ オリジナルサウンドトラック」
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