主人公が3人になった「グランド・セフト・オートV」の進化を実機で確認。水中移動も可能なマップの広さはシリーズ最大規模で，自由度もさらに高まる

　ロックスター・ゲームスから2013年秋の発売が予定されている，シリーズ最新作「グランド・セフト・オートV」（PS3 / Xbox 360）。北米での発売日が9月17日に決まり，ますます期待が高まりつつある本作だが，ゲーム内容はまだまだ謎に包まれている部分が多い。
　今回4Gamerでは，実機デモのプレゼンを通して，初公開となる要素の詳細を知る機会を得たので，その内容をじっくりと紹介していこう。

「グランド・セフト・オートV」公式サイト

　まず，「GTAV」に期待しているファンの多くが気にしているのが，マップの広さだろう。ロックスター・ゲームス曰く「究極のオープンワールドゲーム」を目指した本作は，その広さからして今までとはケタが違う。
　マップの面積は，「グランド・セフト・オートIV」（PC / PS3 / Xbox 360）よりはるかに広いとされた「レッド・デッド・リデンプション」（PS3 / Xbox 360）の3.5倍で，「GTAIV」と「RDR」がまとめてすっぽりと入るほどなのだ。
　もちろん，ただ広いだけではなく，ロスサントスの市街地や郊外のブレイン郡，さらに山，川，湖，農地，砂漠など，土地ごとの特色付けもしっかりとなされている。中には軍事基地のような施設もあるそうだ。また，それらの場所では，24時間のサイクルで人々が生活しているのはもちろん，山野など自然が広がるエリアには，野生動物が生息している。
　さらに，海や川などでは水中（！）に入ることもできる。水中を含めると，プレイ可能なエリアは「RDR」のおよそ5倍になるという。


　そこで気になるのが，移動時間を短縮するファストトラベルの存在だろう。前作「GTAIV」ではタクシーに乗るなどすると，移動アクションを省略して目的地に一瞬で到着できるようになっていた。「GTAV」でも，その要素はもちろん用意されている。
　人里離れた山間エリアなどでは，タクシーや自動車といった移動手段が見つからないこともあるが，そういった場合は，3人の主人公を切り替える「キャラクター・スイッチ」と呼ばれる操作を行うことで対処が可能だ。
　詳しくは後述するが，本作の主人公達は「プレイヤーが操作していない」ときは，それぞれ自分のサイクルで生活をしている。前述のようにファストトラベルが行えない場所に来てしまったときは，ほかの主人公に切り替えてそちらでプレイを続ければいい。プレイヤーの操作から離れたキャラクターは，ファストトラベルが行える場所まで自動的に移動してくれるのだ。状況にもよるが，早ければ数分程度でファストトラベルが可能になるとのこと。


　「GTAV」ではシリーズ初となる，3人の主人公による物語が紡がれるのが特徴の一つ。ロックスター・ゲームスのスタッフによれば，「GTA」シリーズではこれまでもリアルな人間像を描いてきたが，これは，より人間味溢れるキャラクター性を感じられるようにするためなのだという。
　これまでのシリーズでは主人公が1人だったため，ストーリーを展開するうえで，その主人公にさまざまな性格付けをする必要があった。しかし，1人の性格にあまりにも多くの要素を詰め込み過ぎると，破綻が生じてしまう。
　そこで「GTAV」では，主人公を増やし，3人の異なる視点からストーリーを展開することで，無理のない性格付け，実際にいそうな等身大の人間を描くことができるようになったという。

　主人公は，マイケル，フランクリン，トレバーの3人。それぞれのキャラクターを，簡単に説明しておこう。
　マイケルは，かつてアメリカで銀行強盗として名を馳せた，最重要指名手配犯の一人だった。しかし現在は強盗稼業を引退しており，「FIB」（「GTAV」の世界における連邦警察）との取引で非公式の証人保護プログラムを受けており，快適な生活を送っている人物だ。
　しかし，妻のアマンダとの間にはすでに愛はなく，甘やかされて育ったトレイシーとジミーという2人の子供とも大きな溝ができているなど，満足した生活を送っているとはいえない。退屈でストレスの溜まる日々に嫌気がさしたマイケルは，自身の原点といえる犯罪稼業に戻りたいと考えているのだ。

マイケル

　フランクリンは，法を犯すことに罪悪感を持たず，若く，頭が切れ，野心的なストリートギャング。本物のチャンスと大金をつかみたがっている。車の運転技術に長けており，悪徳自動車業者の下で車を差し押さえる仕事をしている。マイケルとは，その仕事を介して出会うことになる。
　トレバーは元空軍パイロット。反社会的な性格で，マイケルとはかつて闇の仕事で手を組んだことがある。アラモ海のほとりにあるブレイン郡で，麻薬の密売人やバイカーギャングに囲まれてトレーラー生活を送っている。

フランクリン

トレバー

　このように，3人の主人公はそれぞれ立場が異なり，別々の生活を送っている。また，3人のキャラクターはそれぞれ得意な武器やスキルも異なっている。

　先述したように，プレイヤーが主人公の一人を操作している間，残り2人の主人公達は，それぞれ異なる生活を送っている。そのため，何をしているのかは，実際に切り替えてみないと分からないのだ。
　キャラクターを切り替える際は，マップのどのあたりにいるかを確認できるのだが，プレイヤーの土地勘のない場所にいたら，そこからどうやって目的地に行けばいいのか，分からなくなることもあり得る。
　その点はどうなっているのか，ロックスター・ゲームスのスタッフに聞いたところ，3人の主人公はそれぞれ，独自の目的意識を持っており，それに沿って生活しているので，見当違いの場所に行くことはほとんどないという。つまり，プレイヤーが3人の主人公それぞれの日常を理解すれば，どこにいて何をしているか，だいたいの見当がつくというわけである。

　今回のデモでは，3人の主人公がどれだけ異なる生活を送っているか，象徴的なシーンを確認できた。
　まずフランクリンは，山間部でヘリコプターに乗っているシーンからスタート。そこからスカイダイビングをして無事に着陸。もちろん，このシーンはイベントではなくプレイヤーが操作できる。
　地上に降り立ったあと，山道を歩いていると，レジャーに来た人々が釣りなどを楽しんでいた。野生動物の姿も確認でき，都心部以外には，「RDR」のような自然豊かな情景が広がっているという印象だ。


　次のトレバーは，どこかのビーチにブリーフ一丁で立っていた。しかも周りには多数の死体が転がっており，何らかのトラブルに巻き込まれていたであろうことが推測できる。
　なお，よく見てみるとトレバーは血まみれの状態だった。スタッフによれば，「GTAV」では銃撃などでダメージを受けると，体に負った傷が見た目にも反映されるという。
　海岸で見つけたボートに乗って海上に出たあとは，スキューバダイビングを行い，水中探索を実行。水中には魚が泳いでおり，海底の描写もしっかりと作りこまれていた。ただ，海にはサメのような海中生物もいるため，安全とは限らない。デモ中にもサメが現れたため，ボートに戻って避難。ここでマイケルにキャラクターを切り替える。

　マイケルがいたのはネオン輝く繁華街で，ここでは，暴漢に襲われているセレブな女性を助け，彼女を自宅まで車で送り届けるというミニミッションを確認できた。
　なお，本作ではミニゲームが多数用意されており，ヨガ講師のようなことをしてお金を稼ぐこともできるという。また，街中にあるATMを破壊するといった犯罪で，手っ取り早くお金を入手することもできるようだ。


　「GTAV」では，ミッションもこれまでのシリーズ作品とは大きく変化している。今回確認できたのは，「Blitz Play」というミッションで，3人の主人公が協力して現金輸送車を襲うという内容だった。
　ミッションの流れをざっと説明すると，ゴミ収集車で進路を塞ぎ，そこにレッカー車を突入させて現金輸送車を破壊。警備員達を始末して，現金を奪うというものだ。


　ポイントとなるのは，これら一連の作業を，すべてプレイヤーが操作するというところ。ゴミ収集車を運転するマイケル，見張りをするトレバー，レッカー車で突撃するフランクリンを，状況に応じて切り替えながらミッションを遂行していくのだ。
　現金輸送車を襲うと警察がやって来て，銃撃戦へと発展する。銃撃戦の最中でもキャラクターの切り替えは可能で，たとえばマイケルが集中砲火を受けて物陰から動けないようなときは，高所にいるトレバーが狙撃して敵を倒すといったことが行える。ちなみに，操作キャラクター以外がいつの間にか死んでいる，といったことはないようなので，ピンチになったらほかのキャラクターに切り替える，といった戦略も有効になりそうだ。

　なお，本作におけるミッションには，計画段階からプレイヤーが準備を行うものもあるという。
　強盗をするときに，身元が割れないようにするための変装道具と衣装，強盗に使う車両の手配など，今まで一般的なゲームでは“お膳立て”されていたものも，プレイヤー自身で揃えることになるのだ。


　そのほか，ロックスター・ゲームスに聞いたところ，本作の主人公達はスマートフォンを持っており，ゲーム内で撮った写真を，SNSの「ロックスター・ゲームス Social Club」に投稿できるといった連動要素も用意されているのだとか。詳細までは明かされなかったので，今後の情報公開を待ちたいところだ。

　筆者が確認できたのは本作のごく一部ではあるが，それだけでも「GTAV」が前作以上に作り込まれていることが伝わってきた。「キャラクター・スイッチ」により多様な視点から物語を楽しめるのは，まるでテレビドラマシリーズを観ているかのようで面白い。キャラクターを切り替えるまで，何をしているか分からないというのも新鮮である。なお，3人の主人公は好きなときに好きなだけプレイできるシステムになっているとのことなので，ご安心を。

　筆者は，これまでのシリーズを踏襲しつつも，挑戦的な要素を数多く取り入れた「GTAV」を実際に見て，現時点で最高峰のオープンワールドゲームになるだろうという期待がかなり高まってしまった。日本での発売日は残念ながらまだ確定していないが，北米でのリリースは9月17日に決まっている。日本でも1日も早く発売してほしいものである。

「グランド・セフト・オートV」公式サイト