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実践的な接客サービス力が試された「ADORES 第4回接客サービスコンテスト」。“アドアーズ錦糸町店”の一日に密着レポート
このコンテストの大きな特徴は,いわゆるロールプレイ方式による審査会という形式をとらず,“営業中の実店舗の中で審査が行われる”という点だろう。一般のお客さんも審査に参加できるため,“お客様”目線からのサービスの質が出場者達に問われることになる。4Gamerでは,そのコンテストと表彰式の模様に密着し,取材を行ってきたのでレポートをお伝えしよう。
「アドアーズ」公式サイト
今年で4回目を数えるという「ADORES 接客サービスコンテスト」。第2回までは店内を模したステージ上でのロールプレイ形式で行われていたそうだが,昨年の3回目からは,先にも書いたように,営業中の店舗で審査を行っている。その理由は,より実践的なコンテストを行うためだそうで,それが本コンテストを非常にユニークなものにしている。
今回行われた本選に出場したのは,アドアーズ全店舗の従業員約1000名から予選を勝ち抜いてきた22名。ここに至るまでに,店舗ごとの選出や,“アドアーズ南砂町SUNAMO店”で行われた「アミューズメントに関する知識」を問う筆記試験など,さまざまな難関をくぐり抜けてきた,接客のスペシャリスト達だ。
本戦の舞台は“アドアーズ錦糸町店”のプライズエリアとメダルゲームエリアで,約3時間の競技時間に22名全員が同時に接客を行う形がとられていた。審査結果は,アドアーズ側の審査員25名(各持ち票3票)と,コンテスト中に同店へ来店した一般客による投票の合計によって決められる。錦糸町店は同社の運営店舗中最大の床面積を誇るそうで,子どもから高齢者まで,さまざまな層の客が訪れる。そのため,出場者は広い店内にくまなく目を配りつつ,あらゆる客層のニーズに対応していかなくてはならないのだ。
ここで筆者が「店員さんが代わりに景品を取ってくださいよ」と,あえて困るようなことを言ってみると,笑顔で「ぜひご自分でがんばってください」とやんわり断られた。面倒くさい客になりきって意気揚々と臨んだのだが,結果は筆者の完敗であった。
この後も店内をくまなく歩き回りながらコンテストの経過を見ていたのだが,出場者達は皆,客とすれ違うたびに欠かさず腰を曲げて礼をするほどに丁寧で,さすが決勝戦レベルの接客ともなれば,誰が優勝してもおかしくないように感じられた。もちろん「コンテスト」に臨んでいる以上,出場者達は普段以上に丁寧な接客を心がけていたはずなので,今回筆者が会場で目の当たりにした接客サービスも,かなり特別なものだったのかもしれない。しかし,このコンテストは約3時間にも及ぶ長期戦であるため,慣れない接客サービスを無理に行っていれば,途中で息切れを起こしてしまうはずだ。営業中の店舗を用いた実践形式のコンテストだからこそ,浮き彫りになってくる部分も多いのではないだろうか。
獲得票数トップで総合優勝の栄誉を獲得したのは,エントリーナンバー22,アドアーズ川口店の菊地 紫(ゆかり)さん。なんと菊地さんは第3回大会の優勝者であり,今回で2連覇の快挙を果たしたそうだ。中川健男代表取締役社長から賞状を受け取った菊地さんは,「始まるまでは口から胃が飛び出るんじゃないかと思うほど緊張していましたが,フロアに出たらいつもどおりの接客が楽しくできました」と涙ながらにコメントを語っていた。
優勝者の菊地さんには,表彰式の後にお話をうかがったのだが,それによると今回はとくに自信があったわけではなく,むしろほかの出場者の接客ぶりを見て「“あの対応は良かったな”などと学ばせてもらう場面のほうが多かった」という。普段自分が勤めている店舗と今回の会場の違いについても,「お店の規模が大きく,客層も幅広かったので,その違いが面白かった」と語っていた。一貫して自分なりの接客を楽しんでいたことが伝わってくる菊地さんの話しぶりからは,その自然な姿勢こそが多くの審査員や来店客の印象に残ったのだろう,と感じられた。
また今回個人的に印象に残ったのは,平日昼間のメダルゲームコーナーにおいて高齢者の姿が多く見られたことだ。メダルゲームなどでは,同じ店で繰り返しプレイすることも多く,またメダルの貸借などで店員とやり取りする場面も珍しくない。客層は店舗の立地によってさまざまというが,メダルゲームを遊ぶおじいちゃんやおばあちゃんは,きっとこの日の接客レベルの高さに感心したことだろう。
また一般の来店客が審査に参加することに「コンテストのことを知らずに来店した人が,審査の模様を煩わしく感じてしまうのでは?」と少々心配したものだが,結果として来客数はむしろ普段より多いくらいだったとか。店舗周辺での周知の甲斐もあって,地域に密着した店舗としてお客さんに親しまれているようだ。
いつの話だとお叱りを受けるかもしれないが,かつては「不良のたまり場」というイメージだったゲームセンターから,明るく楽しいアミューズメント施設を目指し,さまざまな施策を重ねてきたアーケード業界。今回取材したアドアーズの店舗は,ゲームを通して幅広い年齢層の人達が交流できる「街の社交場」としての役割をも,すでに果たしているようにも感じられた。普段はアミューズメント施設に足を向けないという人も,「分からないことがあれば店員さんに頼ろう」という気持ちで,試しに近くのアドアーズ店舗を訪れてみるといいかもしれない。
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