インディーズゲームの小部屋：Room＃180「Universe Sandbox」

　宇宙，それは人類に残された最後のサンドボックス――と，どこかで聞き覚えのあるような，ないようなフレーズをつぶやきつつお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第180回は，Giant Armyの宇宙物理シミュレータ「Universe Sandbox」を紹介する。折りしも新宿上空に謎の飛行物体が飛来（？）したばかりだが，今回は思いどおりの宇宙を丸ごと，自分のPCの中で再現してしまおう。


　本作は，惑星間の重力のシミュレートも可能な，非常に強力な宇宙物理シミュレータだ。操作方法が簡単なのも特徴で，プレイヤーは太陽系に惑星や衛星などを自由に追加できるのはもちろん，マウスクリック一つでさまざまな銀河系や，それを超えた広大な宇宙全体のシミュレートまで行える。星座の確認なんてのも朝飯前だ。


　本作は基本的にゲームではなく，純然たるシミュレータなので，分かりやすいゲームの目的などはない。しかし，簡単なイントロダクションから始まり，楽しみながらツールの使い方を学べる“Fun Things To Do”と題されたメニューが用意されており，まずはこれを一通り試してみるだけでも十分楽しめる。


　このメニューでは，あらかじめ用意された環境を自分の手でちょこっと改変したりしながら，太陽系や惑星の動きがどのように変化するのかをシミュレートできる。例えば，地球を太陽サイズまで大きくしたらどうなるか？　地球を木星の衛星にしたらどうなるか？　月に土星の輪のようなリングを追加したらどうなるか？　光は月や太陽までどのくらいの時間で到達するのか？　といったさまざまなお題を通じて，ツールの使い方を学びつつ，シミュレーションの結果を確認できるというわけだ。うーん，考えるだけでワクワクしちゃう！


　もちろんこのほかに，何もない宇宙空間に自分で一から銀河系や惑星を配置して，オリジナルの宇宙を作り上げることもできる。このときプレイヤーが設定できる項目は非常に多岐にわたっており，惑星の名前や直径，質量，密度から，公転軌道や速度まで，ありとあらゆる項目を自由自在にカスタマイズ可能。地球から25光年離れたあたりに新しく惑星を追加し，フォーマルハウトと名づけてにやにやするなどといった，クトゥルフマニア以外にはかなりどうでもいいようなことをして楽しんでもオーケーなのだ。


　さらに本作には，あらかじめ70種類以上のシミュレーションが登録されており，これを順番に眺めたり，改変したりといった楽しみ方もできる。この中には，例えば我々の住む天の川銀河とアンドロメダ銀河の衝突といった超大規模なものから，2010年1月に地球をかすめて飛んでいった小惑星“Asteroid 2010 AL30”のシミュレートといった身近なものまで含まれており，これらを眺めているだけで何だか不思議な感動を味わえる。AL30の接近なんて，宇宙的視野から見れば正にニアミスといってもいい距離だったんだなあ……。


　というわけで，これまでになかった規模で宇宙をシミュレートし，その気の遠くなるような広大さや，宇宙の魅力を再確認できる本作。宇宙好きやSF好きはもちろん，そうでない人でもきっと新たな発見や感動を得られる一本なので，興味を持った人はまずは公式サイトで公開されている無料版からお試しあれ。無料版では，あらかじめ設定されたシミュレーションのリプレイなど，一部の機能のみ利用できる。製品版は公式サイトで購入すると19.99ドルだが，Steamでは9.99ドルで購入できるので，宇宙の創造主気分を存分に味わってみたい人は購入を検討してみよう。

■「Universe Sandbox」公式サイト

http://universesandbox.com/