連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ / 第42回:
著者近影
久しぶりに「大航海時代 Online」をプレイしようとPLAYSTATION 3の電源を入れてみたわ。すると,「プロ野球スピリッツ6」が起動した。アレ? 最後にPS3で遊んだのは大航海時代 Onlineのはずなのに。いつ入れ替えたのかまったく記憶にない。妖精か? 妖精なのか? 仕方がないのでプロ野球スピリッツ6をプレイしたわ。そしてちゃっかりリーグ優勝を決めちゃった。
ところで,いつの間にかソフトが入れ替わっているといえば,こんなお話があります。
その1 〜ロールプレイング〜
あれは,私が学生だった頃のことでした。
私の家は学校から近いということもあり,友達がよく遊びに来る,いわゆる溜まり場でした。ほとんど毎日のように誰かが来て,遊んでは帰っていきます。
PlayStation,SEGA Saturn,NINTENDO 64といった各ゲイム機とパーティーゲイムが揃っていたのも,うちが溜まり場になった理由の一つでしょう。
あるときから私は,インターフォンが鳴るのを聞いてはいちいち玄関まで迎えに行くのが面倒くさくなってしまったので,玄関の鍵は開けっ放しにしていました。バイトなどで家を出るときだって,友達が来るかもしれないから鍵をかけずに出ることもしばしば。まあ,そのセキュリティの甘さが,結果的にこの怪奇な事件を引き起こす原因となっていたのですが……。
そうこうしているうちに,私は某大作RPGにハマりました。そのため,あんまり友達を家に来させないようにしました。一人でRPGをプレイする時間がほしかったのです。
私の身の回りに不思議な現象が起き始めたのは,友達を来させないようにした,まさにその頃からでした。
あまり来させない,と言っても,やはり学校から近いため,友達がアポ無しで急に訪れることはありました。私も案外押しに弱い性格なので,まあ,そういうときは相手をしますし,バイトの時間が近づけば,友達を家に残したまま出かけたりもします。
私がバイトから帰る頃には,友達も学校に行ったり家に帰っていたり。さすがに家には誰もいないことが多かったわけです。家に帰った私を迎える,紫煙の香り。私はタバコを吸わないので,タバコの煙だけは何とかしてほしいなあ,と思っていました。
そして,タバコの香りに辟易しながら,家に帰るや否やゲイムの電源を入れて,当然のようにゲイムを始めるのです。そんな毎日を送っていました。
某RPGをプレイし始めて2週間ほど経って,私はあることに気づきました。どうやら,私のデータを使って,友達が某RPGを勝手にプレイしているみたいなんです。私がバイトから帰ってゲイム機の電源を入れたら,そのRPGが起動するんですから。
これはすなわち,私が用意した野球ゲイムをプレイせず,そのRPGをプレイしていることを意味します。なぜなら,部屋を散らかしたまま,タバコの煙に気を使うこともなく帰るような友達が,わざわざ私のために野球ゲイムからRPGに入れ替えておくような,気の利かせ方をするわけがありません。
そのうち開き直ったのか,書き置きまで残すようになりました。「レベル上げといたよ」「お金貯めといたよ」「装備整えておいたよ」。そのくせ不思議なことに,ストーリーは進めていないのです。
まあ正直,作業的な部分を全部やってくれているわけだから,楽になった部分はありましたが,それでも自分のデータを勝手にいじられることに若干の抵抗はありました。
そしてある日,私は友達に言ったのです。
「さすがにRPGは勝手にプレイするなよ」
と。
友達は,きょとんとして私に言いました。
「は? やるわけないじゃん。俺,ずっとサクセスモードやってるだけだよ」
まあ,言うことは言ったし,実害はとくにないし,とぼけるならそれならそれでいいか……。そう思って深くは追及しませんでした。
その日はやってきました。
いつものようにバイトから帰り,ゲイム機の電源を入れます。今日で最後だ,と心に決めて。というのも,前日の時点で某RPGは佳境に入り,いよいよクリア寸前までゲイムを進めておいたのです。あとはラスボスを倒すだけ。なぜ,私がそのままクリアしなかったのかというと,書き置きがあったからです。
「クリアするのは明日にして」
という……。
あまりの図々しさに心で舌打ちしながらも,私はこれに従ったのです。
そして私はボスを倒しました。書き置きを見ます。
※え:松本画伯
「おめでとう」
うっせーよ,と思いながらも友達に電話をしました。
「もしもし,クリアしたよ」
「ふうん」
「え? 何その薄いリアクション」
「用ないなら切るよ」
「イヤイヤイヤ,お前が今日クリアしろって言うから」
「は?」
噛みあわない会話。しかしその瞬間! 私はとんでもないものを見てしまいました。2か月前に告白され,交際をお断りした女の子が,ベランダから手を振っている……!!
その2 〜ひとりのGOLF〜
PlayStation 2以降のゲイム機は,ゲイムで遊ぶための機能だけでなくDVD-Video再生機能をはじめ,メディアプレイヤーとしての機能を備えるようになってきました。これは,そんなAV家電としての役割を持ったゲイム機にまつわる恐怖体験です。
昔はゲイムと聞いただけで拒絶反応を示す父でしたが,最近ではゲイムに対する偏見が薄れてきたのか,「『みんなのGOLF』って凄いらしいな」的なことを言ってきます。
私も,親がゲイムに興味を持ってくれると悪い気はしません。だから先日帰省したときには,PLAYSTATION 3と「みんなのGOLF 5」を持って帰り,父にプレイさせてみました。案の定,父は夢中になり,
「ちょっと自分の部屋に持ってっていいか? みんなじゃなくてひとりのGOLFになっちまうけど」
などと言い出しました。
相変わらず冴えない文字通りの親父ギャグを聞き,懐かしさも相まって気を良くした私は,
「昔は親父もゲイムばっかりしてたらバカになる! なんて言ってたのになぁ」
と応じると,親父も
「まあいいじゃねえか」
と照れくさそうにしていました。そんな,久しぶりの和気藹々とした一家団欒を楽しんでいたのです。
3日後,私は急用ができたので,予定よりも早く東京へ戻ることになりました。なんせ急なことだったので,家族にろくに挨拶もできず,慌てて荷物をまとめて帰りました。
※え:松本画伯
東京の喧騒にまみれた生活に戻って一週間後のこと。新しいPS3のソフトを購入し,帰宅後,電源を入れました。
そういえばPS3を起動するのは久しぶりだ……親父はみんゴル,どれだけ上手くなったのかなぁ。親父は実際のゴルフはハンデがシングルの腕前だけど,やっぱゴルフ好きはゴルフゲイムも上達しやすいんだろうか? そんなことを考えながら,ROMの入れ替えを行おうとイジェクトスイッチに触れた,まさにその瞬間! 私の目に信じられない光景が!!
「痴●ゴルフスクール」
なんと,PS3から出てきたROMは,みんなのGOLF 5ではなかったのです。もっと言うと,ゲイムですらありませんでした。私の父は,「ひとりのGOLF」をプレイする,腕利きのシングルプレイヤーだったのです……。
いかがだったでしょうか,納涼ゲイム怪談。あなたが今プレイしているのは,ゲイムなのでしょうか? それとも,ゲイムのような現実なのでしょうか? ともかく,ゲイムより面白い人生にするかしないかは主人公であるあなた次第。ゲームオーバーにならないよう,気をつけましょうね……では,また来週! ……無事に迎えられれば,ね……。
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