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[TAF2012]日本産のコンテンツを世界に向けて配信――アニメ配信ビジネスの先駆者,Crunchyrollの取り組みとは
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印刷2012/03/23 00:00

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[TAF2012]日本産のコンテンツを世界に向けて配信――アニメ配信ビジネスの先駆者,Crunchyrollの取り組みとは

 2012年3月22日から25日(一般公開日は24,25日)まで,「東京国際アニメフェア2012」が東京ビッグサイトにて開催される。ビジネスデーとなる22日と23日の両日は,アニメおよびその周辺の業界関係者に向けて,さまざまなテーマのシンポジウムが催される予定だ。

 本稿では,ビジネスデー初日となる3月22日に行われた,インターネットを通じて日本のアニメーションを世界に配信している企業,米Crunchyroll社のプレゼンテーションの模様をレポートしよう。

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 最初に登壇したのは同社の日本法人であるクランチロール代表取締役 ビンセント・ショーティノ氏だ。氏は米・サンフランシスコにある本社Crunchyrollの成り立ちと,現在の取り組みを下記のように説明する。

 Crunchyrollの母体は2006年に北米の大学生達が趣味で作ったアニメサイトだった。これがたちまちコアなアニメファンの間で話題になり,翌2007年には早くも起業。そして,2008年から本格的なビジネスをスタートしたという。

日本法人クランチロール代表取締役 ビンセント・ショーティノ氏
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 さらにCrunchyrollは,2009年1月からテレビ東京や集英社などのライセンスを受け,日本のアニメ作品を,日本で放映された30分後から英語字幕付きで配信するサービスを始めた。このサービスは世界初の試みで,英語圏のアニメファンを大変喜ばせたが,それだけでなく,当時すでに問題視されていたアニメ作品の違法ダウンロード(いわゆる海賊版の拡散)を減少させることにも繋がったそうだ。とくに,この頃最も被害が大きかった「NARUTO -ナルト-」の違法ダウンロードは,7割も減ったとのことである。

 Crunchyrollのビジネスモデルは大きく分けて2つある。1つは月額7ドルで上記の同日配信サービスを提供する月額課金モデル。そしてもう1つは,日本での放映から1週間が経過したのちに広告つきのアニメを無料で鑑賞できるという,広告モデルだ。


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 現在,Crunchyrollでは300タイトル以上のアニメ作品を配信しており,月に1000万回以上視聴されているとのこと。こういった経緯を踏まえて,ショーティノ氏は,「アニメの有料配信サービスは,顧客の満足はもちろん,作品を提供する企業にとっても違法ダウンロード対策となり,かつ,きちんとしたビジネスとして成立できる」とした。

※最大1080pの高画質配信に対応しているのもCrunchyrollの大きな特徴。
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 ただ,現在日本で放映されているいわゆる“30分アニメ”では,テレビでの放映後にDVDやBlu-rayを販売することで収益をあげるパッケージビジネスが基本モデルとなっている。アニメの配信自体はビジネスとして成立するとしても,パッケージビジネスに代わるビジネスモデルが生まれなければ,アニメ業界としてはなかなか苦しい。

Crunchyroll CEO クン・ガオ氏
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 だが,この問題に対してパッケージビジネスの促進をもって応える姿勢でいることが,次に登壇したCrunchyroll CEO クン・ガオ氏の話から窺えた。

 まずクン氏は,1990年代からこれまで,海外のアニメファンがどのようにアニメ作品と接してきたかを振り返り,その中で同社のアニメ配信ビジネスが果たした役割を説明した。

 インターネット環境が整っていなかった90年代は,一部のコアなアニメファンが,録画されたアニメのビデオテープを日本から母国へと持ち帰り,それをコミュニティ内で貸し借りするなどして作品を享受していたという。遠方のコミュニティメンバーには郵便を使ってビデオを送るなど,今から考えてみるとかなりアナログな手法をとっていたそうだ。

 これが2000年から2005年くらいになると,海外でも物理的な販路,とくにBest Buyのような大手家電量販店を通じてアニメのDVDを個人が単巻で購入できるようになった。これに加えて,ケーブルテレビやブロードバンドの普及も手伝い,海外でもアニメの知名度が高まっていく。しかし,同時にアニメのデジタルデータがP2Pでシェアされるという問題が引き起こってくるのだ。

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 さらに,2006年から2008年にかけて,分散型P2Pの登場や,YouTubeに代表されるストリーミング配信の台頭といった環境の変化が起こる。こうして,違法ダウンロード(アップロード)は,アニメを共有するための方法として広がっていった。

 だが,2009年から2011年にかけて,いくつかのストリーミング配信サービスに規制が入り(すでに機能を停止したサイトもある),現在ではディスクメディアの流通が盛り返したとクン氏は指摘する。ただし,売買はかつての単巻ではなく,DVD/Blu-rayのボックスセットが中心で,さらに言えば,その多くはAmazon.co.jpなどの流通サイトで取り引きされ,Best Buyといった大手家電量販店がそれに続く形となっているとのこと。

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 では,こういった状況の中,アニメの配信ビジネスをどう進めていけばいいのか。その答えの1つが,Crunchyrollの提供する合法かつ本放映からタイムラグの少ない配信サービスであるとクン氏は話し,続けてアニメ配信ビジネスのトレンドを,3つの観点から説明する。

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 1つめは,選択肢の広がり。すなわち,ユーザーが好みのアニメを選べるよう,多数のタイトルをサイマルキャストで配信していくことである。

 2つめは,市場に投入するまでの時間の短縮。かつては日本で放映されたアニメを海外で閲覧するためには数か月から数年かかっていたが,インターネットの普及などによって,現在では数分単位にまで短縮されている。

 そして3つめは,アクセシビリティ。以前であれば,録画したアニメを鑑賞するにはビデオとテレビ(ディスプレイ)が必要だったのに対し,,現在はPCなどの普及によるパーソナル化,さらにスマートフォンやタブレットPCの普及によるモバイル化によって,見る場所を選ばなくなっている。

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 クン氏は,今後の取り組みとして,Crunchyrollのユーザーを招いたコンベンションの開催,Windows Mobile専用アプリの配信(2012年4月予定),視聴したアニメタイトルのパッケージ/関連グッズの販売サービス(2012年夏開始予定)などを挙げていた。さらに,アニメを配給する企業(もちろん日本企業を含む)が,Crunchyrollをプラットフォームとして自社の作品やグッズを宣伝できるような施策も考えているという。

 また2012年4月には,南米にてスペイン語字幕によるサービスの提供を開始するとのことだが,そのあとも各言語域でのサービスを拡充していき,“真の意味でのグローバルアニメチャンネル”の座を確立したいと,クン氏は展望を述べ,プレゼンテーションを締めくくった。

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 海外企業が日本のアニメ/コンテンツの何を評価しているかというと,一つは作品そのものの魅力である。そしてもう1つが,関連グッズ販売なども含めたトータルビジネスのノウハウだ。上記のとおり,Crunchyrollでも2012年夏からユーザーが視聴したタイトルの関連グッズの販売を始めるとのことだが,この取り組みもそうしたノウハウを応用したものといえるのではないだろうか。

 惜しむらくは,本家本元である日本の企業がCrunchyrollのような規模でサービスを提供できていない点だが,ともあれ,こうして日本産のコンテンツが世界で親しまれ,めぐりめぐっていい形でまた日本にフィードバックされることに期待したい。

Crunchyroll公式サイト(英語)

東京国際アニメフェア公式サイト

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