― 連載 ―
「西川善司の3Dゲームエクスタシー」NVIDIA,GeForce 7900&7600シリーズを発表 ピクセルシェーダユニット数は変わらないが性能は2倍に?

1平方mmあたり,1Wあたりの性能を重視したGeForce 7900

R580(Radeon X1900)と,ダイサイズ,テクスチャユニット数,ピクセルシェーダユニット数と,GeForceが苦手とされてきた「F.E.A.R.」の平均フレームレートを示したスライド。ちなみにスライドでG71(GeForce 7900)のピクセルシェーダユニット数が48基になっているのは,前述した“ATI換算”を行っているため(※クリックすると全体を表示します)

 Tamasi氏はまた,GeForce 7900のダイサイズが,Radeon X1900よりもはるかに小さいことをアピールする。
 Radeon X1900のダイサイズは352平方mmで,対するGeForce 7900は190平方mm。半分強の面積で,別記事で示しているように,ベンチマークによってはスコアでRadeon X1900を上回る。
 要するに,ダイの面積あたりで比較すると,非常に効率がいいわけだ。そしてこれは,ダイサイズが半分強である以上,発熱量や消費電力も半分強に落ち着くと期待できる,ということでもある(実際は,理想どおりにはならないのだが)。

 そして,Radeon X1900シリーズと同じ消費電力が許される環境なら,デュアルグラフィックスチップ動作のSLIを利用すればいい。そうすれば,Radeon X1900×1とほぼ同じ消費電力で,より高いパフォーマンスが得られる。さらにその上の性能が欲しいなら,Quad SLIを導入すればいいというのが,GeForce 7900のリリースにあたっての,NVIDIAの主張だ。
 「今世代はPerformance per 1mm2(1平方mmあたりの性能)と,Performance per Watt(1Wあたりの性能)を重視した設計である」とはTamasi氏の弁。「ビッグサイズチップを作ることが能じゃない。今やグラフィックスチップに求められているのは1平方mmあたりのパフォーマンスであり,1Wあたりのパフォーマンスなんだ」とも続けていたが,正直,あのNVIDIAから,そういう言葉が出てくるとは予想だにしていなかった。

 なお同氏は,カードごとの消費電力について,以下のようなデータを公開している。

 

  • GeForce 7900 GTX:120W
  • GeForce 7900 GT:80W
  • GeForce 7800 GTX 512:125W
  • GeForce 7800 GTX:110W

 

 GeForce 7800 GTX 512が動作する環境なら,GeForce 7900 GTXの動作に問題はない,というわけだ。Radeon X1900 XTの公称消費電力が150Wだから,確かにそれと比べれば低く収まっている。理想値である「半分」には程遠いが……。

Radeon X1900シリーズに負けを認めて
開き直った点もある?

 本連載で以前解説したように,Radeon X1900シリーズは浮動小数点(FP)バッファに対して直接アンチエイリアスを適用可能だ。これはGeForce 7800にない機能であり,ATIは「HDRアンチエイリアシング」(HDR:High Dynamic Range)というキーワードで強力に訴求している。そして,3DMark06の「HDR/SM3.0 Graphics Tests」のHDRレンダリングパスがこの機能に対応する。
 しかしGeForce 7800(とそれ以前のNVIDIA製グラフィックスチップ)はHDRアンチエイリアシングに非対応だ。このため,HDR/SM3.0 Graphics Testsでアンチエイリアシング設定を有効にできない。ForceWareから強制的に有効化設定を行っても,実際には反映されないのである。

 

本誌連載のバックナンバー「3DMark06の秘密 第1回」より再掲。詳細は同記事を参照してほしい。Radeon X1900はHDRアンチエイリアシングに対応しているため,きちんと処理が行われる(左)のに対し,GeForce 7800は,ForceWareから強制的にアンチエイリアシング設定を行っても反映されない(右)

 

 また,ATIの主張によれば,Radeon X1000シリーズはピクセルシェーダユニットに強力な分岐ユニットを搭載することで,動的条件分岐を多用する適応型処理のピクセルシェーダプログラム実行効率を劇的に改善。この点,GeForce 7800はどうかというと,実は共有型で動的条件分岐実行時には多大なパイプラインストールが発生するという。

 筆者はこの2点の“不利”について,何かしらの改良が行われると予測していたのだが,意外や意外,そのまま放置されることとなった。要するに,「FPバッファへのアンチエイリアシング(HDRアンチエイリアシング)は未対応」「分岐ユニットの改善も行われていない」ということだ。

 当然,NVIDIA側にも言い分はある。まずHDRアンチエイリアシングについては「対応したアプリケーションがまだ少ない。また,HDRレンダリングにおけるアンチエイリアシング処理については,別の方法がある」(Tamasi氏)とのこと。ここでいう「別の方法」とは,一般的なLDR(Low Dynamic Range)バッファにトーンマッピングしてからアンチエイリアシング処理を行ったり,シェーダプログラムで行ったりすることなど。
 次にATIが指摘するGeForce 7/6の分岐ユニットの弱さだが,これについてTamasi氏は「ピクセルシェーダプログラム内における動的条件分岐命令の実行頻度を考えると,そこに多大なトランジスタ予算をつぎ込む価値があるとは思えなかった」としている。

 まあ,これらについては,Radeon X1000シリーズが,プログラマブルシェーダ3.0(Shader Model 3.0)仕様の特徴であるはずの,頂点シェーダからのテクスチャアクセス機能「VTF」(Vetrex Shader Fetch)をサポートしなかった理由とよく似ている。もっといえば「どっちもどっち」という話である。

待望のメインストリームクラスGeForce 7
GeForce 7600 GTはGeForce 6800 GSに似た構成

GeForce 7600 GTのチップイメージ

GeForce 7600 GTのリファレンスカードイメージ。外部電源供給を必要としていないのが分かる

 ここまで長々と,GeForce 7900について述べてきた。しかし4Gamer読者の多くにとって,より注目すべきなのは,むしろGeForce 7600 GTかもしれない。
 なんといっても,本誌読者の最大多数と思われる,ミドルレンジのグラフィックスカード利用者にとって,待望のGeForce 7世代ミドルレンジ。あまりにも長い間継続販売され続けた結果,相対的にはローエンドになってしまったGeForce 6600シリーズ,とくにGeForce 6600 GTを利用しているような人にとっては,まさに待望といっていいグラフィックスチップだろう。

 

 さてこのGeForce 7600 GTだが,開発コードネームは「G73」。発表時点で“無印”あるいは“GS”モデルはなく,1モデルだけとなっている。基本的なアーキテクチャは,ここまで説明してきたGeForce 7900と同じだ。当然,製造プロセスルールは90nmである。  総トランジスタ数は1億7800万で,1億4600万のGeForce 6600シリーズからは若干増えた。言うまでもなくSLIはサポートされるが,Quad SLIは物理的にサポートされない。

 

GeForce 7600 GTのブロックダイアグラム

 ユニット数を見ていくと,プログラマブル頂点シェーダは5基,プログラマブルピクセルシェーダは12基,ROPユニットは8基だ。このバランスは,GeForce 6800 GSと完全に同じ。ただし,コアのリファレンス動作クロックはGeForce 6800 GSの425MHzよりもかなり高い560MHzとなっている。ちなみに,GeForce 7600 GTはGeForce 7900とは異なり,マルチクロックドメインデザインではないので,頂点/ピクセルシェーダユニットのクロックはいずれも560MHzだ。
 組み合わされるグラフィックスメモリはGDDR3 SDRAMで,リファレンスのデータレートは1.4GHz相当(700MHz DDR)。容量は最大256MBとなる。

 

ATIの最新世代ミドルレンジ向けグラフィックスチップであるRadeon X1600と比較したスライド2点。ピクセルシェーダの個数(Shader ALU)が24となっているのは前述したような“実効性能2倍理論”によるものだ

コストパフォーマンス重視の新モデル
“その次”はまだ不透明

 GeForce 7900の2モデルとGeForce 7600 GTは,最近のNVIDIA恒例の「搭載カードは即日出荷開始」となる。明けて3月10日には,少なくとも何社かの製品が店頭で購入できるはずだ。

 気になる価格は,NVIDIAによる想定だと,GeForce 7900 GTXが499〜649ドル,GeForce 7900 GTが249〜399ドルと,ハイエンドはかなりの幅がある。「最初は高いけど,そのうち安くなるよ」ということなのだろうか? ちなみに4Gamerが入手している情報だと,“初物価格”はGeForce 7900 GTXが7万5000円±5000円程度,GeForce 7900 GTが4万2000円±3000円程度になるようだ。想定価格と比較した場合,GeForce 7900 GTXはかなり高くなる一方,GeForce 7900 GTは,いきなりいい値段で出てくることになりそうである。

 そして注目のGeForce 7600 GTの想定価格は199ドル。発売当初の価格は2万5000〜3万円程度になりそうで,これはちょうどGeForce 6600 GTが発売されたときと同じくらい。かなり戦略的な価格といえ,NVIDIAがGeForce 6600 GTの再来を狙っているであろうことが伺える。メインストリームクラスのグラフィックスカードを愛用するゲーマーのPCの3Dパフォーマンス底上げに貢献してくれそうだ。

 振り返ってみると,今回の発表は(少なくともGeForce 7900に関しては)「見かけのスペックじゃなくて,実際の性能とその効率を見てくれ」というメッセージが,前面に押し出されているような印象を受ける。
 これまでは,最高性能を求めるための手段を選ばなかったNVIDIA。GeForce FX 5800やGeForce 6800 Ultraといったモンスターを次々と発表してきた同社が,効率を重視するというコンセプトを掲げてくるとは,正直,まったく予想していなかった。衝撃,と言ってしまってもいいだろう。
 むしろそうしたスマートな方針はATIの方が得意だったはずなのだが,気づいてみれば今やRadeonは「4億に近いトランジスタ数で352平方mmの大きなダイサイズ」「消費電力150Wという大食らい」「48ピクセルシェーダユニットというチカラワザ」であるという現実。これはちょっと面白い。

 さて今後だが,NVIDIAはもう一回G70世代を投入するという説と,Direct X10世代「G80」に飛ぶという説がある。ほぼ確実なのは,次世代汎用製造プロセスである65nmの前に,グラフィックスチップはいわゆるハーフジェネレーションの80nmプロセスを採用すること。また,Direct X10世代のグラフィックスチップは,プログラマブルシェーダ4.0(Shader Model 4.0)と統合型シェーダ(Unified Shader)アーキテクチャを実現なければならないが,シェーダユニットの個数を増やして,現実的なダイサイズで,80nmプロセスで製造するというのはなかなか難しそうだ。となれば,G80までの間にもう1回(G75?),GeForce 7世代の強化版が投入される,という流れのほうが,自然に思えてくるが……。