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「東京インディーフェス2015」出展タイトルから一部をピックアップして紹介。PSM終了,スティックPC登場などでインディーズゲームは変わる?
このイベントは,インディーズ(独立系)開発のゲームに特化した見本市。40チームを超える国内外のスタジオやサークル,個人などが,それぞれの開発したゲームを出展していた。この記事では,会場でとくに目を惹かれたタイトルの一部を紹介する。
●PC「PicoPark」
tecoparkの開発による「PicoPark」は,最大で10人の協力プレイが可能という「多人数プレイの楽しさ」にフォーカスしたアクションゲーム。「鍵を取って扉を開け,先へ進む」というシンプルなルールだが,プレイヤーたちがうまく連携しなければクリアは難しい。多くの来場者が歓声を上げながらプレイに興じており,会場内に賑やかな一角を作っていた。
なお公式サイトによると,「PicoPark」は新宿の「8bit cafe」に常設されているとのこと。プレイしてみたい人は,足を運んではいかがだろうか。
●PC/iOS/Android「Deserter Simulator」
「クエリちゃん」でおなじみのポケット・クエリーズは,脱走兵シミュレータの「Deserter Simulator」を出展。これは,バイクにでどれだけ走り続けていられるかに挑戦する一種のランゲームとなっている。障害物に激突すると力なく倒れ,爆発物にぶつかれば華麗に吹き飛び,ジャンプ台に乗れば爽やかに空を舞う脱走兵。“脱走”の緊張感はなく,むしろ“脱力”感に満ちている。
通常は三人称視点だが,Oculus「Rift」を利用した主観視点プレイも可能だ。なお,公式サイトでは事前登録を受付中。事前登録を行うと,特典としてスキン“カブ&ソルジャー”をもらえる。
●PC/iOS/Android「Campus Notes」
出展者から“筑波大生の筑波大生による筑波大生のためのゲーム”と語られたのが, 筑波大学在校生&卒業生で結成された4th clusterによるテキストアドベンチャー「Campus Notes」シリーズ。学群(筑波大学特有の学制)ごとの個性的なヒロインたちと関係を築いていくという,他ではあまり味わえないコンセプトが掲げられている。
今回展示されていたのは,今後リリース予定のiOS/Android版。また,PC版の「Vol.2」は4月25日から無料配信が行われているので,興味のある人はダウンロードしてみよう。
●PS Vita「Million Shells」
2015年7月15日でコンテンツの新規販売が終了してしまうPS Mobile。それまでに間に合うよう,目下5月末ごろのリリースを目指して開発が進められているのがFlyteCatEmotionの「Million Shells」。本作はジャンル的にはタワーディフェンスだが,「STGに登場する巨大ボスのような自機で迫り来る敵機を迎撃する」という独特のスタイルを持っている。
自機には3種類の砲台を15基まで設置可能。砲台の建造や強化に用いるポイントを一定量消費して発射する必殺技・オーバーロック(集中砲火)はなかなか爽快だ。
PS Mobileは成功しなかったプロジェクトかもしれないが,「PS Vitaで自作のゲームを動かせる」ということに価値を見出してユニークなタイトルを創出する開発者は少なくない。昨年までの「東京ロケテゲームショウ」などでは「コンシューマ向けインディーズゲームのプラットフォームはXbox 360からPS Mobileへと主流がシフトしているのか」と感じるほど開発者たちに利用されていたので,このまま門戸が閉ざされるのは残念に思える。ソニー・コンピュータエンタテインメントやPLAYISMなどはPlayStationプラットフォームへのインディーズゲーム投入に意欲的だが,それでも何かしら“在野からPlayStationへの導線”は欲しいところだ。
●PC/PS4/Xbox One「Black Witchcraft」
「BLACK WITCHCRAFT」は,韓国・QUATTRO GEARの開発によるサイドビューの2Dアクションゲーム。システム的には通常攻撃があり,ジャンプがあり,仲間の援護攻撃があり……と比較的凡庸ながら,ゴスロリ風の装束を見にまとった主人公の少女が鎌やガトリングガンなどに変形するトランクケースで敵と戦い,援護攻撃ではボンデージ衣装のカラスのような少女やRPG-7を撃つメイドが登場するなど,とにかくフェティッシュなケレン味だらけ。詳細をうかがえるスタッフの方が離席していたので開発状況や日本における展開予定などは確認できなかったが,完成形が非常に気になるタイトルだ。
●プラットフォーム未定「BACK IN 1995」
最後に紹介するのは,初代PlayStation時代のポリゴンモデルを再現したアクションアドベンチャー「BACK IN 1995」。出展のバージョンはまだまだ開発途上だったが,現状でもポリゴンやテクスチャ,解像度,操作感から“当時風”に徹底していることが察せられた。
“レトロゲーム”はドット絵のビジュアルでイメージされがちだが,初代PlayStationも発売(1994年)から21年を経た今日においては十分にレトロゲームのプラットフォーム。PlayStation 2発売当時(2000年)の「スペースインベーダー」(1978年)とほぼ同じレベルだ。「BACK IN 1995」という“新しいレトロ風ゲーム”は,世間のレトロゲームに対する認識へ一石を投じるものになるかもしれない。
●その他,著名タイトルの模様
■“新しい形”のPCとWindows 10でインディーズゲームは変わるかも?
今回のイベントで個人的に興味を惹かれたのが,Windows搭載のタブレットPCやスティックPCによる出展が散見されたことだ。
インディーズゲームは開発規模の都合上,iOS/Android端末に向けたライトなタイトルとして作られることがよくある。また一種のロマンを抱く開発者は,コンシューマハードでのリリースを目指して開発を行う。これらの風潮は,モバイルゲームのプレイヤーが多く,PCゲームよりもコンシューマゲームの市場が発達した日本ではとくに顕著に現れている。
しかしMicrosoftのタブレットPC「Surface 3」やマウスコンピュータのスティックPC「m-Stick」といった“手軽なWindowsデバイス”が登場し,SCEのPS Mobileが終了するなど,今の世情には「これからはWindows用に開発した方が得策だろう」と感じられる部分が存在する。USBポートを介したコントロール機器の接続が容易なことも,「ゲーム用マシン」としてWindows端末がiOS/Android端末に勝る点だ。NVIDIA「SHIELD」などのAndroid TVデバイスは“手軽なWindowsデバイス”の対抗馬と言えるが,普及する可能性は後者の方が高いだろう。
今は「出展者が使い始めた」状況だが、“手軽なWindowsデバイス”でのゲームプレイや、“手軽なWindowsデバイス”に向けたゲーム開発は、今後の主流になるかもしれない。
FullPowerSideAttack.comはPC版「TorqueL」を「m-Stick」で出展していた |
Windowsタブレットで「東方Project」ファン作品を出展していた苺坊主のブース |
Windowsと言えば,今夏の発売が予定されているWindows 10はPC/モバイルに両対応するうえ,ユニバーサルアプリ(複数種のデバイス上で実行可能なアプリ)が標準仕様となっている。現在,PCゲームとモバイルゲームは基本的に分断されていて,ブラウザゲームですら標準でPC/モバイル間の並行プレイが可能なタイトルは稀だ。しかし,“PCとモバイルを一括する”Windows 10の試みがうまくいけば,“Windows向けインディーズゲーム”をプレイ可能な環境は爆発的に拡大するだろう。
ハードウェアやOS,開発環境の変化に伴ってさまざまな変化を遂げてきたインディーズゲーム。Windows 10のリリースに伴うMicrosoftの攻勢が予想される今夏以降,また新たな局面を迎えそうだ。
「東京インディーフェス 2015」公式サイト
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