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DMM GAMESはなぜ,「War Thunder」をサービスするのか。待望の海戦の発表されたタイミングでディレクターに話を聞いた
本作のデベロッパ/パブリッシャであるロシアのGaijin Entertainmentがサービスを開始したのが2011年頃のことなので,「War Thunder」はすでにサービス開始から5年以上が経過したベテランタイトルとなる。なぜ今,DMM GAMESがサービスに乗り出すことになったのだろうか。DMM GAMESでディレクターを務める稲垣順太氏に話を聞いた。
「War Thunder」公式サイト
Gaijin Entertainmentは,中国や台湾でも現地のパブリッシャにサービスを依頼しているとのこと。中国では同国のパブリッシャを使うのは決まり事だが,ともあれ,ヨーロッパや北米とは異なり,アジアの「War Thunder」展開においては,現地の事情をよく知るメーカーに任せるのが現在の方針のようで,ネームバリューや会員数などを勘案して,DMM GAMESに白羽の矢が立てられたというわけだ。
では,DMM GAMESはなぜ,「War Thunder」の日本サービスを引き受けたのだろうか。
稲垣氏は「単純すぎて申し訳ないんですが,プレイしてみて非常に面白かった。なぜこんなにクオリティが高いのかと驚いたからです」と述べる。
ご存じのように,「War Thunder」は第二次世界大戦の前後に登場した航空機や戦車に乗って,ネットを介して集まったほかのプレイヤーとチーム戦を繰り広げるミリタリー系のオンラインアクションだ(関連記事)。「アーケード」から「リアリスティック」まで,3段階の難度が用意され,ビギナーからベテランまで,誰でも楽しめる。
デベロッパであるGaijin Entertainmentは,長い歴史を誇るコンバットフライトシム「Il-2 Sturmovik」シリーズの中の1作「Il-2 Sturmovik: Birds of Prey」や,KONAMIから日本語版がリリースされた「Birds of Steel」など,リアル系のフライトシミュレータの開発で知られるメーカーだ。それだけに,「リアリスティック」モードの難度は高く,空中から始まるほかのモードとは違って離陸からゲームが始まる。離陸ではやるべき操作も多く,キーボードだけで操作するのはほぼ無理で,ジョイスティック必須。Free-to-Playのオンラインゲームでありながら,これほどこだわったゲーム作りを行っていることに,稲垣氏は思わず惚れ込んでしまったというわけだ。なるほど。
稲垣氏は最初,「リアリスティック」モードで航空機を飛ばすことさえままならず,なんとかしようとゲームを繰り返すことで面白さを感じていったというから,かなりのゲーマーだ。筆者はもう「リアリスティック」モードはあきらめムードよ。
さらに,(稲垣氏がプレイした段階では航空機だけだったが)戦車,つまり地上戦の実装が近く,海戦にも言及されており,今後,大きな拡張が続く見込みがあったこと。また,DMM GAMESとしては,航空機や戦車などのミリタリー好きという,これまでなかったプレイヤー層を取り込みたかったこと。こうしたことが,同社が日本でのサービスを決める理由になったと稲垣氏は語った。
日本でのサービス開始については,Gaijin Entertainmentから「できるだけ,プレイヤーの不利益にならないように」と言われたとのこと。
「War Thunder」はワールドサーバーで世界中のプレイヤーと戦えることが大きな魅力の一つ。そのため「日本で独自のサーバーを立てるつもりはない」と稲垣氏は言う。既存の「War Thunder」のプレイヤーにとっては「アパートの鍵を変えるようなもの」であることが理想で,入口がDMM GAMESになっただけで,中身は同じ。ステータスなどもそのまま引き継がれる。そのうえで,DMM GAMESとしては新たなプレイヤーを獲得することを目指している。
DMM GAMESの日本展開では,事前登録した人にデカールがプレゼントされたが,このほか,日本での独自展開について稲垣氏は,「残念ながら,今の段階で具体的にお話しできることはないです」とのこと。とはいえ,日本独自のものはどんどん入れていきたいと考えているそうだ。
とはいえ,客単価が必ずしも高くないため,基本的により多くの人にゲームを知ってもらい,参加してもらうことが重要になる。Gaijin Entertainmentもその点はよく分かっており,「それこそ,『萌え』でもいいから,どんどんやってほしい」というリクエストが出ているという。
というわけで,そういうコラボも現在,視野に入っているそうだ。「War Thunder」とコラボレーションできそうなコンテンツといえば……それほど多くないような気がするが,そのあたりが日本独自の展開となるだろう。もっとも,あくまで「War Thunder」は歴史に題材をとったシミュレーションでもあるため,その世界観を壊してしまうようなことはしたくないとのことだった。このあたりは,続報に期待だ。
もちろん,コラボも大切だが,まずはきちんとローカライズしていくことが重要だと稲垣氏は言う。日本語版のクライアントは以前から公開されているが,実は,これには多くの日本人有志が協力しているとのこと。こうしたユーザーの負担を減らすため,テキストや音声などをさらに日本語化していき,合わせて,最新情報や告知,ゲーム情報などもこれからはすべて日本語で発信する。
とりわけ大切なのは,日本人プレイヤーの声をGaijin Entertainmentに,直接届けることだ。例えば,次にどんな航空機や戦車がほしいといった希望など,これまでは英語にする必要があったが,今後は日本語で直接訴えることができるので,ぜひ,どんどん声を寄せてほしいという。
Gaijin Entertainmentも日本人プレイヤーの意見には積極的に対応したい意向とのことで,もし多くの要望が寄せられたら,日本の新たな航空機や戦車がラインナップされていくかもしれない。事実,(具体的には言えないものの)人気の高い日本の航空機や戦車の図面や情報がほしいというリクエストをGaijin Entertainmentから受け,国立国会図書館や恵比寿の防衛研究所などで集めた資料を送っている。中には,海軍艦艇に関する資料も含まれており,日本人プレイヤーの要望にそった兵器を作ってくれる可能性は高いとのことだった。
ちなみにGaijin Entertainmentの予告(関連記事)どおり,ドイツ・ケルンで開催されたゲームイベント,gamescom 2016では海戦コンテンツ「Knights of the Sea」の試遊が行われた。
まだクローズドβテスト以前のプレαという段階で,空戦や陸戦とどのようにからんでくるのかといったシステム的な部分は分からなかったものの,発表されたソビエト連邦の「1124型小型対潜艦」とアメリカの「PT-109」だけでなく,ドイツの「Sボート」(S-100),海上自衛隊の「PT-15」魚雷艇,イギリスの「Fairmile D」魚雷艇,アメリカの「PT-810」「PT-109」,そしてソ連の「Project 183」の登場が発表されている。ケルン・メッセのブースに用意された試遊台の前には,マジか! というほど長い行列ができており,欧米での人気の高さをうかがわせた。
稲垣氏は,ともかくプレイヤーに負担を掛けないことが最も重要だと述べる。DMM GAMESにログインするという一手間がかかる(その代わり,ゲーム内でログインする必要はなくなった)ようにはなったが,既存のプレイヤーには,今までやれたことが,これからも問題なく行えるようにすることが重要であり,クレジットカードのみだった決済も楽になる。「長い目で見た話になるかと思いますが,プレイヤーの皆さんには,DMM GAMESが日本でサービスを担当することになって良かった,と思ってもらえるようにがんばりたい」と稲垣氏は話を締めくくった。
航空機と戦車が一つの戦場を舞台に戦い,新たな海戦コンテンツも発表された「War Thunder」。ガチガチのシミュレーションから,お祭りゲー的な大騒ぎまでプレイの幅も広く,誰もが楽しめるだろう。今後,DMM GAMESがどのような日本展開を行っていくのか,楽しみにしたい。
「War Thunder」公式サイト
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