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印刷2009/06/16 17:37

連載

男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ / 第34回:「氷川光秀」

男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ
第34回:「氷川光秀」

 

image

著者近影

 私にとって,氷川光秀のエルボーは特別な意味を持っていた。

 中学時代,私と友達は,休みの日になると一日中ゲイムをしていた。それこそアホのように。
 毎週土曜日の夕方からと日曜日は,友達が家に来るのが恒例行事となっていた。

 そんなある土曜日の夕方,ゲイムの合間に何を思ったか,テレビのチャンネルを変えてみると,そこではプロレス中継なるものをやっていた。ブラウン管には,ごっついオッサンがごっついオッサンを豪快に投げ飛ばしている姿が映し出されていた。
 リングの右と左の端っこでは,これまたごっついオッサン達が,その異様な光景を見ながらたたずんでいる。

 これが噂のタッグマッチだ。
 そうか。リングの端っこで寂しそうに佇んでいるオッサンは,タッチしないと試合に参加できないのか。

 実況のアナウンサーが視聴者である私にそう説明している。おかげで中学生の私も,そういうルールなんだな,ということを簡単に理解することができた。

 だが,プロレスはそう甘いものではなかった。そんなに簡単に理解させてくれなかった。せっかくさっき「そういうもの」を覚えたのに,ごっついオッサンは仲間がピンチになったらタッチなしで勝手にリングに入って対戦相手を踏みつけるのだ。
 アレ? 審判が見てみぬフリをしている。これはいいの?

 そうこうしているうちに,試合をしていない,悪そうなごっついオッサンがリングに上がり,よってたかってごっついオッサンを袋叩きにし始めた。
 鐘の音が鳴り響く。どうやら袋叩きにされたごっついオッサンの反則勝ちらしい。

 ???

 なんだこれは? 意味が分からない。友達と顔を見合わせる。

 私と友達がプロレスの虜になるのに時間はかからなかった。当時のプロレス界にまだこんな言葉はなかったが,いわゆる秒殺である。
 私達は,大いに衝撃を受けた。まず,意味が分からない。だが,面白い。
 なんだこのプロレスってやつは。

 それからというもの,恒例行事に変化が起きた。
 土曜日の夕方はテレビを見て,日曜日にはゲイムをプレイ。私と友達の週末はそういうスケジュールになった。ちっちゃい革命である。この革命はのちに「ワールドプロレスリングの変」と呼ばれるようになる。私と友達との間で。

 だが,革命が起こると世の中は大きく変わるのが常。実際,私と友達の身に起きた革命は,日曜日のゲイムにも影響を及ぼし始めた。そう,プレイするゲイムにも,プロレスが侵食してきたのだ。

 忘れもしない,そのゲイムの名は「ファイヤープロレスリング 2nd BOUT」。このPCエンジン用ソフトを,友達が買ってきたのだ。そして二人で,アホのようにプレイした。

 毎週毎週遊んでいるうちに,使うキャラクターも固定されてくる。私はクラッシャー・新也,友達はハリケーン・力丸かスター・バイソン。私のほうがタイミングを取るのがうまいから,友達は簡単に出せるラリアットの使い手をチョイスするのである。

 こうやって私と友達は,どんどんプロレスが好きになっていった。そして,とうとう私達は土曜の夜だけでなく,日曜深夜のプロレス中継まで見るようになった。

 時代は,またしても変わる。再び革命である。とはいっても今度は私達ではなく,ゲイムのほう。スーパーファミコン時代の到来だ。
 やがて,スーパーファミコンでもプロレスゲイムが……っていうかファイプロが発売されることとなった。「スーパーファイヤープロレスリング」。ここで氷川光秀が初登場した。

 そのころは土曜夕方より,日曜深夜のプロレス派だった私は狂喜乱舞した。なぜならば,PCエンジン版はどちらかというと土曜のプロレスのキャラクターのほうが多かったからである。スーパーファミコンになって,なんとなく公平になった気がした。
 やっぱり友達と,アホのようにプレイした。私は氷川光秀,友達はアックス・ドゥガンかヒットマン・セイバー。

 やがて私達に「高校生になる」という革命がおきた。だが,アホな私達は,中学のときほどの頻度ではなくなったものの,休みの日にゲイムをプレイする生活をあらためることはなかった。

 「全日本プロレス2 3.4武道館」。
 これは,友達とプレイしたプロレスゲイムの中で,最も白熱したタイトルである。どれくらい白熱したかというと,友達の使うスター・バイ……じゃなかったスタン・ハンセンのラリアット連発に私がキレ,「お前にはハンセン愛がない」と罵ったら友達もキレ,生身でプロレスをすることになったくらい。
 ちなみに勝負は私が制した。決まり手はフェイスロック。そこでも私は三沢光晴使いだった。

 私は,このゲイムではローリングエルボーでしか勝とうとしなかった。勝ちたくなかった。なぜなら,エルボーで3カウントを取るシーンが,日曜深夜に見るプロレスで一番好きだったから。
 怒ったときのエルボー,序盤で様子を見るときのエルボー,試合の流れを変えるために放つエルボー,そして勝負を決めに行くときのエルボー。エルボーで,すべての感情を表現していたから。


 だから私は,ファイプロの氷川光秀がエルボーを出したときに出る「おりゃー」っていうマヌケな声も好きだし,3.4武道館で描かれていた,プロレスでは出るはずのない音がするエルボーも好き。それはすべて,三沢選手のエルボーが好きだったから。


 それから数年後,私は大学生になり,友達とゲイムをプレイしなくなり,一人でゲイムをプレイするようになり,プロレスラーになった。そして,一度だけ,三沢選手のエルボーを受けた。とても重く,脳が揺れた。
 そのとき友達の顔が浮かんだ。おい,やっぱり「おりゃー」って言わなかったよ。やっぱりあれはファイプロだけだってば。俺の言ったとおりでしょ。
 でもね,私達が昔勝手に想像してたよりももっと,効くんだよエルボーって。今,お前の連絡先知らないないから話せないけど,もし会えたら言うよ。
 あのときの俺の主張は,やっぱり正しかったって。氷川光秀は最強だって。


 一昨日,私は「ファイプロリターンズ」をプレイしてみた。
 私は,改めて確認した。やっぱり氷川光秀は最強だ。
 そしていつの間にか「おりゃー」って言わなくなっていた氷川光秀のエルボーが好きだ。


 ここに謹んで三沢光晴さんに哀悼の意を表し,心よりご冥福をお祈り申しあげます。

 

■■男色ディーノ(プロレスラー)■■
悲しい出来事と一言でまとめてしまうには,あまりに悲しいことが続いている日本のマット界。しかし,立ち止まることはできないのです。たとえ今日(6月16日),東京地方が雷雨に見舞われようとも,ディーノ選手が出場する「花やしきプロレス」は雨天決行なのです。事故が起きないことを切に願っています。
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