連載 : PCビギナー救済連載「PCゲームのお作法」

PCゲームのお作法

 

(4)GPU編・中

 

 なぜ3DゲームをプレイするにはGPUが必要なのか。それを第3回で説明し,PCが必要最低限の3D性能しか持っていないのか,それ以上を期待できるのかの見分け方についても述べた。それを受けた今回は,「GPU編・中」として,「では,どれだけ期待できるのか」をチェックする方法を説明していきたい。

 

 

3Dゲームの動作環境とは?

 

 コンシューマゲーム機用タイトルの場合であれば,ゲームを購入するとき,難しいことを考える必要はほとんどない。所持しているのがXbox 360なら,Xbox 360用のソフトを選べばいい。もしも,複数のコンシューマ機用が存在するタイトルであれば,WiiやPLAYSTATION 3用などのタイトルをうっかり買わないように気をつければいいだけだ。
 だが,連載の第2回第3回で説明してきたように,PCの場合は1台1台スペックが異なる。そのため,ゲーム機と同じ感覚でPC用の3Dゲームを買ってきた場合,それが動作するか,動作するとして快適かどうかは,PCの,もっといえばGPUのスペックに左右されるのである。

 

「バトルフィールド2142」の製品ボックスより。こんな感じで動作環境の情報はどこかに必ず書かれている

 とはいえ,「買ってくるまで動作するかどうかは分からない」ではあんまりだ。そこでPCゲームの場合,「動作環境」という情報が,ゲームメーカーからゲームタイトルごとにそれぞれ明らかにされている。
 メーカーによって「システム環境」「必要環境」とも呼ばれる動作環境は,メーカーのWebサイトやゲームの製品ボックスなどに記載されているので,見たことがあるという人も多いのではないだろうか。「これを下回る環境では動作保証しない」(※環境=PCスペックのこと)といった,厳しい文言が併記されていることもあるが,動作環境とは要するに,「ここに書かれたスペックのPCなら,少なくともハードウェア的には動作しますよ(DirectXなど,ソフトウェア的な要因はまた別の話ですけどね)」という事前情報のことだ。

 

こちらは「ファンタシースターユニバース」の製品ボックスから。動作環境一覧の表記方法はメーカーによって異なる

 そのため,動作環境をチェックすれば,最低限の3Dグラフィックス表示機能でも快適に動作するのか,GPUがなければダメか,どんなGPUならいいのかといったことが一目で分かるようになっている。
 ……なっているのだが,実は困ったことに,ゲームの動作環境には決まった表記ルールがない。表記方法はメーカーごとにまちまち。しかも,GPUだけでなく,ほかのPCスペックについてもいろいろ書いてあったり,さらには注釈のオンパレードだったりして,PCビギナーにはなかなかハードルが高くなってしまっているのが現状だ。
 そこでどうするかだが,今回は第2〜3回でマスターしたテクニックを使いながら,先に手持ち,あるいはこれから購入しようとしているPCのGPUが,どれだけの性能を持っているのかをチェックして,それを基に動作環境の情報と照合する方向で話を進めていきたいと思う。

 

 

押さえるべきGPUメーカーは「NVIDIA」と「AMD」

 

NVIDIAのロゴ

 第3回で,DxDiagについて触れた折,(グラフィックス機能統合型チップセットでなければ)「『NVIDIA』か『ATI Technologies Inc.』と書かれているのではないか」と指摘したことを憶えているだろうか。実はこの「NVIDIA」と「ATI Technologies Inc.」というのが,GPUのメーカー――DxDiagの表記に従うなら「製造元」――である。
 読みはNVIDIAが「エヌビディア」,ATI Technologiesが「エーティーアイ テクノロジーズ」(※Inc.はIncorporatedの略で,会社組織であることを示す英単語)。ATI Technologiesはよく「ATI」と略されるので,本稿でも以後ATIと表記したい。
 ほかにもPC用GPUを製造している会社がないわけではないが,少なくともゲーマー的には,この2社を知っておけば十分だ。

 

AMDのロゴ

 ところで,2社のうちATIは,2006年に「AMD」(※正確にはAdvanced Micro Devicesだが,AMDという略称が一般化している)という会社に買収され,その一部門となった。DxDiagのATIという表記はその意味でちょっと古く,NVIDIAとAMDが4Gamer読者に関係のあるGPUメーカー,ということになる。
 ただ,ATIはPCの世界では非常に有名な会社だったため,買収完了後も,AMDのGPUを「ATIのGPU」と呼ぶことが多い。今後,DxDiag上の「製造元」表記が変わるかどうかは分からないが,PCメーカーのスペック表では,表記の混乱が一部見られるので要注意だ。「AMD=ATI」ということを憶えておこう。

 というわけで,NVIDIAとAMDである。
 両社はいずれもGPUのブランド名を持っている。NVIDIAは「GeForce」(ジーフォース)。AMDは「ATI Radeon」(Radeon:ラデオン)。ATI Radeonは,買収前は「Radeon」とだけ呼ばれていたが,「AMDのATIブランド」を示すため,ブランド名に「ATI」の文字が付与されている。

 

左からGeForceのロゴと(AMDの)ATI Radeonのロゴ

 

 両社が1製品ずつしかGPUを発売していないのなら話は早いのだが,(残念なことに?)GPUには非常に多くの種類がある。なぜかというと,「グラフィックス機能統合型チップセットが持つ,最低限の3Dグラフィックス表示機能と比べてちょっとだけ優秀」なものから「(前略)比べものにならないほど優秀」なものまで,GPUには実にさまざまな種類があるからだ。

 

ATI Radeon HD 2600 XTというGPUを搭載したグラフィックスカードのイメージ。GPUとグラフィックスカードの関係については第2回を参照してほしい

 そこでGeForceとATI Radeonでは,いずれもブランド名の後ろにある数字や英字で「ブランド内における相対的な性能」を示すようになっている。実在するGPUを例に取ると「GeForce 8600 GT」とか「ATI Radeon HD 2600 XT」といった感じ(※「HD?」と思った人もいると思うが,これについては後述する)。
 第2回で控えたDxDiagの「チップの種類」にある名称,もしくはPCメーカーのスペック表にある「GeForce〜」あるいは「ATI Radeon(もしくはRadeon)〜」がそれで,「ブランド名+数字+英字」を組み合わせたものが,そのGPUの製品名だ。

 製品名の数字や英字にはすべて意味があるのだが,そのすべてを憶えるのはかなり難しいため,「憶えましょう」というつもりはない。いつでも参照できるよう,このページをブックマークしておいてほしいと思う。

 

 

 

GeForceとATI Radeonの性能を製品名から推測する

 

上からGeForce 8600 GT,GeForce 7600 GTというGPUを搭載したグラフィックスカードのイメージ。前者はDirectX 10に対応するが,後者はDirectX 9までの対応となる。詳細は後述

 さて,ブランド名はともかく,数字と英字が何を意味するかだが,数字は「世代」「クラス」,英字は「クラス内での相対的な性能」になる。
 「世代」とは,そのGPUがどんな時代の製品かを示すものだ。ゲーム機でいえば,PlayStation 2とPLAYSTATION 3の「2」「3」に当たるもの。この2機種がハードウェア的に世代が異なる――だから「次世代」なんて呼ばれるわけだ――のは,経験的に知っていると思われるが,同じものがGPUにもある。しかも,ゲーム機と異なり,1年に1回くらいの,速いペースで世代は切り替わっていたりする。

 では世代が上がるとどうなるのか。漠然と性能が上がるイメージを持つかもしれないが,むしろ重要なのは,3Dグラフィックス表示機能に関する新たな拡張が行われる点にある。
 第1回で,DirectXのバージョンがWindows XPでDirectX 9,Windows VistaではDirectX 10になっていると説明した。あれはどういうことかというと,2か月に1度の小規模なDirectX Runtimeのアップデートとは別に,DirectXは(OSのアップデートなど)節目節目で,それこそ「9」から「10」といった具合に大規模アップデートが行われ,さまざまな拡張が行われるのだ。そして,新しいDirectXで拡張された部分を動作させるためには,GPU側もハードウェア的にアップデートしなければならない(=古い世代のGPUでは拡張された部分を動作させられない)。そこで,より新しい世代のGPUが登場してくるというわけである。
 さまざな歴史的経緯もあって100%完全に一致するわけではないのだが,おおよそ世代は対応するDirectXのバージョンを示す,くらいに理解しておくといいかもしれない。

 もう一つの「クラス」は,同一世代における性能の違いを示す。GPUはざっくりと「ハイエンド」「ミドルレンジ」「ローエンド」という3クラスに分類され,世代ごとに3クラスが用意され続けている。
 3クラスの違いは,“そのとき”の最新世代ゲーム機において,最も3Dグラフィックス表示機能に優れるものをイメージすると分かりやすい。2007年夏ならPLAYSTATION 3やXbox 360がそれに当たるが,これらをまとめて[最新3Dゲーム機]と呼び,誤解を恐れずに3クラスを分類すると,以下のようになる。

 

ハイエンド: [最新3Dゲーム機]と同等以上,製品によっては大きく超える3Dグラフィックス表示機能を持つ
ミドルレンジ: 特定の条件下で,[最新3Dゲーム機]と同じくらいの3Dグラフィックス表示機能を持つ
ローエンド: グラフィックス機能統合型チップセットより高い3Dグラフィックス表示機能を持つが,[最新3Dゲーム機]より若干もしくは大きく劣る

 

「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」より。そのときどきの[最新3Dゲーム機]と同レベル以上の3Dグラフィックス表示機能は,ローエンドのGPUには期待できない

 簡単にいうと,[最新3Dゲーム機]と同等以上の3Dグラフィックス表示機能は,ミドルレンジ以上のクラスのGPUによってのみもたらされるということだ。

 最後に「英字」だが,これは先ほど「クラス内での相対的な性能」と述べたとおり,同一クラス内における微妙な性能差を表現する。「中の上」とか「上の下」とかいったGPUが存在し,それが英字によって示されるのである。
 また,言うまでもないことかもしれないが,[最新3Dゲーム機]というのは,それぞれの世代のGPUがデビューしたときの“最新”だ。古い世代のGPUにとっての[最新3Dゲーム機]は,PlayStation 2だったり(あるいはそれ以前のゲーム機だったり)するので,同じクラスで比較すると,古い世代のGPUの性能は最新世代と比べると相対的に低くなる。「3世代前のハイエンドでは,最新世代のミドルレンジに勝てない」くらいのペースで性能差は開いている。

 以上,ちょっと文字が多くなったが,これらを踏まえ,原稿執筆時点から5年前となる,2002年以降に登場したGeForceとATI Radeonについて,製品名の見方を順に説明していこう。

 

●NVIDIA製GPU「GeForce」のチェックポイント
 先ほど例示したGeForce 8600 GTを使って,GeForceの製品名の見方をチェックしてみよう。図1を見てほしい。

 

図1 第1世代からブランド名はGeForceのままだが,第5世代のみ“おまけ”がついて「GeForce FX」と呼ばれる

 

 4桁の数字について見ていくと,まず“千の位”が世代を示す。1999年にデビューしたGeForceは,2007年夏の時点で「8」,すなわち第8世代を迎えている。
 “百の位”はクラスを示しており,GeForceでは第5世代(のGeForce FX)以降「8と9がハイエンド,6と7がミドルレンジ,5以下がローエンド」という区分が守られている。同じクラスのなかでは,数字の大きいほうが3Dグラフィックス表示機能(=性能)は上だ。

 

2007年夏時点の最上位GPUは第8世代クラス8の「GeForce 8800 Ultra」となる

 数字の後ろに付く英字が,クラス内での相対的な性能の違いを示すというのは先に説明したとおり。最上位が「Ultra」で最下位が「SE」になる。「無印」というのは,文字どおり英字がつかないという意味。ここで挙げた英字のすべてが全世代全クラスに用意されるわけではないので,あくまで目安だと考えてほしい。
 むしろ注意すべきは,英字が異なっただけで,同じクラスでも性能はけっこう変わってくることだ。とくに気をつけたいのはミドルレンジで,同クラスの「GS」以下は,[最新3Dゲーム機]と同じくらいの性能を発揮できる条件がかなり限定的になる。

 最後に4桁数字の下2桁だが,これは“調整弁”。同じ世代で似たような位置づけの製品が多く登場して,クラスを示す数字も英字も使い切ってしまったときなどに「25」や「50」が設定される。「25」「50」の付いたGPUは基本的に「同じ世代,クラス,英字の『00』モデルより機能が上」という理解で構わない。

 

●AMD製GPU「ATI Radeon」のチェックポイント
 お次はAMD製GPUだ。こちらも,先ほど例示した「ATI Radeon HD 2600 XT」を使って,図2を見ながら説明していきたい。

 

図2 第1世代からブランド名はRadeon(AMDによる買収後はATI Radeon)。第5世代までは,ブランド名に「HD」が付かない。また,「X」世代に「10」がある点に注目。「ATI Radeon X1050」というGPUが存在し,これは一見「X1」世代のように見えるが,これだけは「X」世代になる。「X1」世代は「ATI Radeon X1100」以上なので注意したい

 

 ATI Radeonは,2000年にデビューした第1世代から数えて2007年夏の時点では第6世代となっている。ここでは第3世代以降について説明したいと思うが,図2の物理的な大きさから想像がつくように,ATI Radeonの製品名は,GeForceのそれと比べると少々複雑だ。

 まず世代から。第3世代では「9」で,第4世代では10を示すローマ字「X」に切り替わり,さらに第5世代では「X1」(11の意)になる。さらに,ここでAMDによるATIの買収があって世代表記ルールが切り替わり,「2」となった。

 

2007年夏時点の最上位GPUは「2」世代のクラス9,「ATI Radeon HD 2900 XT」(※XTXは今のところ存在しない)になる

 クラスを示す百の位も「○以上なら〜」というわけにはいかない。世代ごとにミドルレンジとハイエンドに割り当てられる数字が異なるので,気軽に「憶えておこう」とは言えない感じ。とくにミドルレンジの区分が世代ごとに大きく異なる点は要注意で,GeForce以上に,この図をいつでも参照できるようにしておくことをオススメする。

 続いて英字だが,これは用いられる文字こそ異なるものの,考え方はGeForceとまったく変わらない。同一の世代&クラス内の相対的な性能指標を示しており,最上位が「XTX」,最下位が「LE」となる。一部例外があるものの,優劣の順序は図に示したとおりだ。“世代+クラス”によっては用意されない英字もある。
 英字が異なるとパフォーマンスにけっこうな差があるのもGeForceと同じだ。ミドルクラスの「Pro」以下は,「最新のゲーム機と同じくらいの3Dグラフィックス表示機能」を発揮できる条件がかなり限られる。
 GeForceと異なるのは,DxDiag上に英字が表示されず,「ATI Radeon X1900 Series」といった具合に「Series」という単語が英字の代わりに表示される場合があること。この場合,DxDiag上から英字のチェックは行えないので注意したい。およその世代とクラスが分かればいいというならここまででも構わないが,最後の英字まで知りたいときは,PCメーカー(など)のスペック表をチェックすることになるだろう。

 最後に十と一の位だが,ここはシンプル。通常は「00」で,同じクラス&英字なら,「50」が付いているほうが新しく,3Dグラフィックス表示機能が高められている。例えば「ATI Radeon X1600 Pro」と「ATI Radeon X1650 Pro」なら,後者のほうが新しく,3Dグラフィックス表示機能が引き上げられたりしているというわけだ。

 

 

GPUの製品名とゲームの動作環境を照らし合わせる

 

 ここまでくると,ゲームの動作環境にあるGPUの項目が見えてくる。
 ゲームの動作環境にあるGPUの項目はほとんどの場合,以下に挙げる3パターンいずれかの方法で,GPUに関する条件を規定しているからだ。

  • 具体的なGPUの製品名
  • GPUが対応するDirectXのバージョン
  • GPUが対応する「シェーダモデル」

 動作環境には,「必須」「推奨」という二つの基準が用意されることがあるが,前者は「とりあえず動作はする」という最低条件。後者は,そのPCゲームが登場したときの[最新3Dゲーム機]と同等クラスの画面でゲームをプレイするための最低条件と考えるといい。動けばいいというのなら必須動作環境を満たせば構わないが,せっかくPCでプレイする以上,キレイな画面でプレイしたいということなら,推奨動作環境をクリアしているかどうかをチェックするのが正解だ。

 

PlayOnlineに掲載されている,ファイナルファンタジーXIの推奨動作環境表

 というわけで順に見ていくと,1.は図1&2と照らし合わせればOK。例えば「ファイナルファンタジーXI」の推奨動作環境には「NVIDIA GeForce3、GeForce4 Tiシリーズ、GeForceFX5600以上チップ搭載のカード VRAM64MB以上」(※オフィシャルWebサイトより原文ママ)とある。図1に「GeForce3」はないが,「3」なので第3世代。つまり,2002年以前に存在したGPUでも大丈夫というわけだ。もっといえば,先ほど図1&2で示したような,ここ5年以内に購入したGPU搭載PCや,これから購入する予定のGPUを搭載したPCなら大丈夫ということになる。

 

リネージュII公式サイトにある推奨動作環境表から。「GeForce 6600以上」に「GeForce 7400」などは(クラスが低いので)含まれない。一方,「GeForce 7600」はクラスが同じで世代が新しい以上,(リストには挙がっていないが)対応している

 もう一つ例を挙げておこう。「リネージュII」の推奨動作環境におけるGPUの項目は「NVIDIA GeForce 6600/ 6600GT/ 6800/ 6800GT/ 6800GS/ 7800GT/ 7800GTX 以上」(※オフィシャルWebサイトより原文ママ)。つまり,第6世代かつクラス6以上のGeForceならOKというわけだが,このように,ATI Radeonに関する記載がないゲームは少なくない。
 こういった場合には,図1&2にある,「世代が示すDirectXのバージョン」に注目する。第6世代のGeForceについて図1を見てみると,「DirectX 9.0c」とあるから,ATI RadeonでDirectX 9.0cに対応する世代を探すと「X1」なのでX1世代以上が必要。さらに,GeForce 6600はミドルレンジなので,X1世代のミドルレンジ,X1600以上が必要と読み解けるのだ。

 

バイオハザード4の公式サイトより。3.について補足すると,「頂点シェーダ」「バーテックスシェーダ」に関する言及がある例もあるが,こちらはシェーダモデルやピクセルシェーダと比べるとそれほど重要ではなく,基本的に無視して構わない

 上記,GPUに関する条件である2.の「GPUが対応するDirectXのバージョン」と3.の「GPUが対応する『シェーダモデル』」に関しては,まさにいま説明したような流れで対応GPUをチェックできる。この二つに関しては,併記されるケースも少なくないが,そのときは「要求レベルの低いほうが要求される動作環境」と考えるといい。
 また,3.に関しては「ピクセルシェーダ○以上」「シェーダ○以上」「プログラマブルシェーダ○」と書かれることも多い(※「Pixel Shader」「Shader」「Programmable Shader」と,英字表記されるケースもよくある)。
 例えば「バイオハザード4」の必須動作環境は「DirectX 9.0c以上/Shader2.0以上に対応したVRAM128MB以上のビデオカード」(※オフィシャルWebサイトより原文ママ)。図1&2をチェックすると,DirectX 9.0cはシェーダモデル3.0と対応するが,「Shader 2.0」という「より低い要求レベル」があるので,こちらがより正確な動作環境ということになる。
 このときShader 2.0=シェーダモデル2.0以上なので,GeForceなら第5世代のGeForce FX,ATI Radeonなら「9」世代以上が動作環境をクリアするというわけだ。

 

三段階の動作環境が提示されているモンスターハンター フロンティア オンラインより

 最後にちょっと応用編。「モンスターハンター フロンティア オンライン」の場合,必須動作環境となる「ライトモード」は「Intel 915以上 あるいは、DirectX8.1以降に対応のVRAM64MB以上のグラフィックスボード」(※オフィシャルWebサイトより原文ママ)。条件がGPU名でなく,DirectXのバージョンも図1&2にないものだが,こういうときはどうしたらいいだろうか?

 答えは簡単。第3回で述べたように,「Intel」はグラフィックス機能統合型チップセットのメーカーの名前だ。つまり最低限の3Dグラフィックス表示機能しか持っていないわけで,逆にいうと,同じ時期に発売されているGPUは,すべてそれ以上の機能と性能を持っていると考えていい。また,DirectX 8.1というのは,図1&2の世代にそのバージョン表記はなく,少なくとも2002年以前のDirectXである。つまり,2002年以降に購入したGPU搭載PCなら,最低限の動作条件はクリアしているということになる。

 

 

 以上,この「動作環境とGPUの対応」というのは,PCゲームをプレイするときにチェックする項目として,最も難しいところだ。GPUの製品名というのは非常に難しく,PC業界の“中の人”でも完璧には説明できないほどなので,無理に憶えようとせず,適宜このページを参照するのがベター。ぜひ本稿をブックマークしておいてほしい。

 ところで,本文中に何度か「VRAM〜」という言葉が出てきて,それを説明していないことに気付いただろうか? また,DxDiagやPCメーカーのスペック表でGPUの製品名をチェックしたところ,NVIDIAかAMDのGPUなのに,今回の製品名とは微妙に名前が異なり,「Go」「Mobility」「Xpress」なんて単語が付いていたという人はいないだろうか?
 GPU編の最終回となる次回は,こういった細かいクエスチョンに答えていきたいと思う。(佐々山薫郁&ライター:石井英男)

 

タイトル 連載:PCゲームのお作法
開発元 N/A 発売元 4Gamer
発売日 - 価格 N/A
 
動作環境 N/A


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http://www.4gamer.net/weekly/pc_manners/004/pc_manners_004.shtml