イタリア侵攻開始。ローマまで電撃戦を敢行すると,どうしてもジェノバ−フィレンツェ間で多方向からの攻撃を受けて孤立しやすい。しかし,そんなにのんびり戦争しているわけにはいかない
ハーツ オブ アイアンIIで,イタリア奇襲作戦を実行に移すにはどうしたらよいか。まず,なけなしのICを投じて最新鋭クラスの中戦車2個師団を編成する。そのかたわら,プレイヤーは地道に地道に,第三共和制名物の政変イベントを待つ。フランスの政治体制が「独裁的」かつ「干渉主義」方向に,若干ながらシフトしたタイミングがチャンスだ。
こうなればしめたもの,領土拡張欲だけでエチオピアを併合する野蛮なファシスト国家(=イタリア)に制裁を下すべく,即座にイタリアに宣戦布告(して,領土拡張欲を満たす)。バリバリの民主国家でそんなことはできないが,独裁風味のいまならいける。こと陣取りゲームでは,ナポレオンみたいなのがいないとダメらしい。やろうとしていることも,ナポレオンとあまり変わらないし。
とはいえ,サン・ベルナール峠でアルプスを越えるのは難しいので,南仏経由で北イタリアに電撃戦(のようなもの)を敢行。ミラノ近郊でイタリア軍の激しい抵抗に遭遇するも,そこはイタリア軍の宿命で,作戦に支障をきたすレベルではない。戦車部隊がローマ方向に突破を果たせば,あとはアペニン山脈をフランス製スチームローラーが駆け抜けるのみだ。
マジノ線に攻勢をかけるドイツ軍。ヒトラーの錯乱か,はたまたゲーリングの増長か,それとも参謀本部が奇策を抱えているのか,連日連夜の空襲がマジノ線を脅かす。だが,この程度でへこたれる要塞線ではない
さて,イタリアはドイツが独立を保障しているので,フランスの対イタリア宣戦布告と同時に,ドイツによる対フランス宣戦布告がなされる。
だがヒトラーはここで,同時にベネルクス3国に宣戦布告したほうがよい,とは考えなかったようだ。再軍備の進捗に不安があって国際世論を考慮したのか,ドイツはフランスに対し,とりあえず正当な権利として宣戦布告しただけだったのだ。
こうなるとドイツがフランスに攻め込めるルートはただ一つ,マジノ線の真っ正面のみである。フランス史上最大級の無駄使いともいわれた要塞線が,その潜在能力を発揮するときがきたのだ。ドイツ陸軍,空軍はマジノ線に殺到するが,そう簡単に突破できるはずもなく,フランス・ドイツ国境は,あたかも第一次世界大戦のやり直しのような塹壕戦となる。
イタリア戦線を突破したときの主力戦車。ルノー戦車じゃないじゃん! という突っ込みはご容赦を……後の対独戦線で活躍したのも,ルノー戦車でなかったことは秘密だ
それならばと,ドイツはルフトヴァッフェ(ドイツ空軍)をベネルクス3国経由でフランス本土に送り込もうとするが,そこで待っていたのはRAF(Royal Air Force。イギリス空軍)である。アムステルダム上空は逆ゼー・レーヴェ(あしか作戦。ドイツが計画した英本土上陸作戦)状態となり,イギリスは北部ドイツに激しい戦略爆撃を浴びせかけた。
対ドイツ戦線でマジノ線とRAF頼みの遅滞戦術を行っている頃,イタリア戦線は完全に終息,シチリア島を占領し,イタリアのアフリカ領を吸収したところで「イタリア」は地図から消えた。ドイツ軍が無意味な消耗戦に苦しむ間に,フランスはまんまとイタリアの工業力と人口を,資産として獲得したのである。きっとルーブル美術館の収蔵品も,古代ローマの遺品で大幅に増えたことだろう。
こうなってしまえばワンサイドゲームだ。マジノ線攻略で疲弊したドイツに,豊かな国力を背景にしたフランス軍が襲いかかる。マジノ線を出発点に,シャルル・ド・ゴール陸軍大将率いるフランス戦車部隊がドイツに向かって進軍する。なんだか頭の悪そうな光景だが,国境を全部要塞線でふさいでしまったので仕方がない。
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イタリア侵攻が一段落した頃のフランス戦時内閣。やや独裁的で,タカ派で,介入主義。すでにフランスの体をなしていない気もする |
シャルル・ド・ゴール登場。将軍としても登場し,とにかく人材に乏しいフランスを,一人で支えてくれる |
ストラスブールとフライブルクに建設されたドイツの要塞線は相応に堅固だったし,ドイツ軍の精強さに疑いの余地はなかったが,それでも長期戦になれば数が質を圧倒する。都合6か月にわたるフライブルク塹壕戦はフランス戦車部隊の突破で終結し,その頃には東部戦線でソビエトとも戦っていたドイツに,戦線に空いた穴をふさぐ力は残されていなかった。
物騒な歌詞の国歌「ラ・マルセイエーズ」を高らかに合唱しながら,ド・ゴールの戦車隊はドイツ兵を駆逐していき,1940年のうちにベルリンは“大陸軍”の手に落ちた。1806年のときと違って,フィヒテに怒られたり,ベートーヴェンに失望されたり,ヘーゲルに歓迎されたりはしないようだが。
ソビエトが対独宣戦布告。この段階で戦争は事実上終結し,次はフランスとソビエトがどれだけ多くの「旧ドイツ領」を確保できるか,ベルリン一番乗りを果たすのは誰か,という問題になる
大勝利で幕を閉じた今回のリプレイだが,これが多くの偶然に支えられている点はご理解いただけると思う。もしドイツがベネルクス3国に宣戦布告して,北方から攻めてきていたら,それをフランス軍が平地で支えきれたかどうかは疑わしい。イタリア戦線は北部イタリアの攻防を除いて語る価値のない殲滅戦だったが,それでもここで手間取れば,ドイツの突破を招くことになる。敵はイタリアではなく時間なのだ。イタリア軍にとってはひどい話だが。
というわけで,次回はイタリア……ではなく(いやカンベンしてください,ほんと),ソビエトを取り上げてみたい。普通にやれば普通に勝てる国で,普通にやらなかったら何が起こるのか。いろいろ試してみたいと思う。